大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和2年10月6日(火) 10:33 ~ 10:55 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 先月、福島県の磐梯朝日国立公園、そして北海道の阿寒摩周国立公園を訪問して、温泉街で廃虚となった旅館、そしてホテルなど国立公園の価値や魅力を大きく損なっている現場を目にしてきました。全国の国立公園には廃屋になっているホテル、旅館などが500カ所以上あるとされて、魅力的な大自然や温泉と残念な廃屋が混在をしていて、国立公園の質を大きく下げてしまっていると考えています。政府が掲げた2030年インバウンド6000万人目標の達成に向けて解決していかなければならない課題が、この廃屋の撤去もまさにそうであると考えています。こうした課題の解決に向けて、今回新たに十和田八幡平国立公園の十和田湖畔にある環境省の所管地において、国際観光旅客税を活用して10月8日から民事訴訟を踏まえた強制執行として、廃屋となったホテルの撤去を開始することとなったので、ここにお知らせをしたいと思います。今、こうやってスライドを出しましたが、これが十和田八幡平国立公園の中で黄色の部分が環境省の所管地のエリアです。そして、きれいなこの湖の前の大きな赤い点線の中のものが、かつて営業されていたホテルで撤去予定のものでもあります。今回、このホテル、大変規模も大きくて湖畔への景観にも大きな影響を与えている廃屋の一つということで、この廃屋となったホテルを撤去した後の跡地の活用については、撤去開始に合わせて跡地利用をする民間事業者を公募する予定であります。そして、こちらのスライドも見ていただければ分かると思いますが、このエリアにはこうした廃屋が他にも多数あり、引き続き景観改善を進めていきたいと考えています。なお、この十和田八幡平国立公園は、今回、景観改善に取り組む十和田湖や奥入瀬渓流が紅葉の名所として知られるほか、冬には奥入瀬渓流の氷瀑や八甲田の樹氷なども見ることができます。さっきの廃屋だけではなくて、こういった素晴らしいものがあるからこそ、あのままにしていてはもったいないということがこの湖の紅葉の写真を見てもよく分かると思います。ぜひ感染対策を万全に行いつつ、「Go To トラベル」キャンペーンを活用して、温泉も豊富な十和田八幡平国立公園にぜひ「Go To 国立公園」ということで足を運んでいただければうれしく思います。また、国立公園の廃屋撤去については、環境省では今回紹介したもの以外にも、国際観光旅客税などを活用して、今年度中に阿寒摩周国立公園など6公園、6カ所で廃屋撤去を予定しています。引き続き、国交省など関係省庁や地域関係者と連携しながら、国立公園の廃屋撤去や利用拠点の景観整備の取組を強化していきたいと思います。
そして、今日は最後に、最近、私が触れています容量市場について、今日も一言発言しておきたいと思います。先般、私がこの記者会見の場で容量市場の在り方について発言をしたところ、梶山経産大臣からも私の発言を応援として受け止めた上で、直すべきところは直していくという御発言があったと聞きました。大変ありがたい御発言であり、まずは梶山経産大臣に心から感謝を申し上げたいというふうに思います。経産省は、容量市場が再生可能エネルギーの調整力として必要な火力発電の維持・管理に資することから、再生可能エネルギーの主力電源化にも寄与すると説明していると承知をしています。現在、容量市場をめぐっては各方面から様々な評価、意見があります。例えば、私は昨日、再生可能エネルギーを主に販売する新電力の有志の皆さんから容量市場についての要望書を受け取り、意見交換を行いました。要望書の中では、市場としての透明性や事業者間の公平性について改善が求められており、また今回の落札結果による経営への打撃についても悲痛な声も聞きました。そこで、こうした改善の求めや懸念の声について経産省にしっかり届けるよう、私から環境省事務方に対して指示をしたところであります。経産省におかれましては、新電力を含め、一層幅広くコミュニケーションを取っていただきながら、容量市場について丁寧に検証していただきたいと思います。環境省としては、再生可能エネルギーの主力電源化の観点から、容量市場の在り方が国民、事業者に正しく理解され、より良いものへと向上していくことを期待しています。並行して、再生可能エネルギー主力電源化に向けて経産省と一層コミュニケーションを深めながら、両省が連携して取り組めることを模索していきたいと考えています。今日は、冒頭、私からは以上です。

2.質疑応答

(記者)共同通信の田井です。国立公園内での廃屋撤去に向けてですが、全国で500カ所以上と推測されている段階でして、実際には何カ所あって、どういった問題で廃屋化していったのかといった実態把握、そして多数ある廃屋の撤去の促進に向けてどのようなことを現在考えていらっしゃるかお伺いします。
(大臣)まず、たびたび申し上げているとおり、この国立公園の中のホテルや旅館のうち、500カ所程度が休廃業しているとされていて、更に数百件の施設について営業実態が把握できていないという現状があるそうです。こういったことを受けて、今年度、こうしたホテルや旅館を対象とした実態調査を行って、国立公園内の廃屋の状況把握を進めていきたいと思います。今、指摘された、じゃ、どういった理由でこういう廃虚、廃屋がこれだけ多くなってしまったのか、もちろん経営上の課題、そしてまた時代の背景の中で、バブルのときに建ててしまったものがなかなか今の状況で消費者ニーズに見合わなかったとか、いろんな課題があると思います。ただ、私は現場を、この前、阿寒摩周、川湯温泉、磐梯朝日、様々な地域を見せていただいている中で、本当に素晴らしい財産、資源が眠っていますので、この眠っている資源を徹底的に活用して掘り起こすことができれば、間違いなくこれからより多くの方にその魅力を感じていただくことができて、更にそれは地域の経済にとってもプラスになると、そう思っているからこそ、しっかりとこの課題のまずは状況の把握、実態調査をして、的確な課題解決策を講じていきたいと思っております。

(記者)フジテレビの三上です。国立公園の関連で、昨日出された経団連の規制改革に関する提言の中に、国立公園の民間活用需要で、環境保護の観点から土地や建物の使用制限がされていることが指摘され、コロナ禍での観光需要として民間企業の参入が効果的だとして、その活用に向けて公園事業外の使用許可期限の延長を求める声があります。その受け止めと、今後の見直しなどについてお考えがあればお願いします。
(大臣)まず、環境省と経団連は合意書を交わしたこともありますので、こういった経団連という代表的な経済団体から環境省の所管をする国立公園に対しても関心を持っていただいて、そして具体的な規制改革要望が上がってきたことを私は前向きに受け止めています。そして、環境省においても国立公園満喫プロジェクトの一環として、国立公園の民間活用を積極的に進める観点から、平成29年に環境省が所管する土地の使用許可期間を最長3年であったものを最長10年に延長して、また更新も可能としたところでもあります。この結果、例えば伊勢志摩国立公園では展望台の環境省施設に民間のカフェが導入されるなど、公共施設の民間開放が進みつつあります。国立公園ではありませんが、新宿御苑は国民公園です。なかなか国立公園か国民公園かというものは一般的には知られていないことだと思いますが、この新宿御苑にもこの前、新たにスターバックスが入ったことも含めて、民間の皆さんにやっていただいた方が国立公園や国民公園の価値を高めることができる、そして多くの方に伝えるべき自然の魅力とか日本の代々歴史的に綿々と続いてきた大切な自然共生の考え方とか、こういったものを伝えることが民間の方の方が得意だとなれば、私はそれは積極的にその環境を整えていきたいというふうに考えています。来年、この国立公園が大きく関係する法律改正も含めて、今、鋭意検討を進めているところですので、こういった経団連との意見交換も含めて今後もしっかりと進めていきたいと思います。なお、ワーケーションについても経団連の皆さん、そして他の経済団体も関心を持っていただいていますので、そういった環境がより整うような連携もできればと思っています。

(記者)朝日新聞の水戸部です。日本学術会議の件で質問させてください。昨日、菅総理が内閣記者会のインタビューに応じられて、総合的・俯瞰的活動を確保する観点から判断したと述べられました。それは、なぜ6名の方が任命を除外されたかという納得のいく説明ではなかったように思います。総理は、国費10億円が使われている点や、任命されれば公務員となる点なども挙げられましたが、学術会議の在り方については様々な意見議論があることは承知していますが、これもやはり、なぜ当該6人の方だけが除外されたのかという答えにはなっていないと思います。行政には常に裁量の余地はあるとは思うのですが、その裁量が広がっていけば権力の恣意的な発動に繋がると思います。今回少なくとも公の議論がなくて突然納得できる説明もないままに、恣意的と感じられる措置がとられたことについて、多くの方が声を上げられていると思うんですが、この点について、学問というのは多様な研究、考えがあって発展するものと思いますし、それは社会にとってもプラスだと私は考えています。時には自分と対立する意見であっても、多様な意見を聞く機会を自ら切ることというのは、政治行政にとってもマイナスだと思うのですが、その点、任命権があるのは総理でありますが、一政治家として今回の事案をどう受けとめるか、お考えを聞かせてください。
(大臣)まず、総理自ら御発言されていること、これを総理大臣が任命するということになっていますので、こういったことは総理の御発言に、まずは、聞いていただいているとおりだと思います。そして、官房長官も昨日の記者会見で、相当長く、この件についてのやりとりをされておりますので、そこでの詳細はそちらを拝見していただければと思いますが、今、一議員として、そちらについてどう思うかということで言わせていただければ、総理は、就任前後から、盛んに言われていることは、前例踏襲の打破です。こういう中で、私は、今まで当たり前に続いてきたものを、一度立ちどまって、果たしてこのままでいいのか、それとも見直すべき点があるのか、こういったことについて、問題提起をされる、その姿勢に対して、私は否定されるものではないと思います。ただ、そういう前例踏襲をやめるとき、また変えていくとき、それは様々な声は起きると思います。私も今、省内で、前例踏襲をすべきでないところはやめていこうじゃないかと、こういった議論をしている中では、変えようと思えば、いろんな声は出ます。そういったことに対して、前向きな意味で、物事を改めて考えて、よりよい方向に、制度的にも向かっていく機会になれば、それは一番いいのではないかなと思いますし、おそらく、私も政治家になってから11年経ちますが、日本学術会議というのがここまで一つの議題に上がったことっていうのは初めてのことだと思います。こういった機会を通じて、国民の皆さん、そして民間の皆さん、そして公の世界、こういった中で議論が深まって、よりよい形にいけばいいことなのではないでしょうか。

(記者)テレビ朝日の藤原です。三浦半島の異臭の件でお伺いしたいのですけれども、大臣は先週の会見で、支援できることがあればというニュアンスの話をされていましたが、その後、また異臭の騒ぎがあって、県の方で空気採取をしていくというようなことを表明されました。今後、環境省として支援していくのであればどういう形でいくのか、また決まっていることなどがあれば教えてください。
(大臣)まず、環境省から神奈川県、そして横須賀市に確認をしたところ、異臭を含む空気を採取した際には県環境科学センターで分析することとしているが、採取時には異臭が消えてしまうため、異臭を含む空気の採取ができていないという状況だということです。このため、現段階では、異臭発生源の特定や異臭物質などについては確認ができていない状況です。環境省としては、引き続き地方自治体から情報を収集するとともに、自治体からの相談があった際に、また異臭発生源や異臭物質などが判明した際には、必要に応じて専門家を派遣するなどの協力を行っていきたいと思います。私も地元の横須賀や三浦半島、最近では横浜までという話が報道されるたびに、一体これは何なんだろうかという思いを持って、関心を持って見ていますが、残念ながら、いまだにどこから発生している臭いなのか、そしてそもそもの物質というものは何なのか、これは全く分からないという状況、横須賀で暮らしをしている皆さんにとっても、三浦半島の皆さんにとっても、間違いなく関心事、そして不安に思われていることもあると思うので、関心を持って見ていきたいと、できることはやっていきたいと思います。

(記者)NHKの岡本です。先週のことで恐縮なんですけれども、来年度の税制改正要望について、これまで大臣はカーボンプライシングについて、今後も検討を進めていくことなどを発言されていますけれども、来年度の税制改正要望では、今年度のときと肝心なところは変わらず、背景のところが少し加えられましたけれども、肝心なところは表現は去年を踏襲するものとなりました。それについて大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
(大臣)まず、今回の税制改正要望では、直近の気候変動や経済社会をめぐる国内外の動向について言及した上で、カーボンプライシングについては、専門的、技術的な議論が必要であるとしています。現在、新型コロナウイルスが経済社会に大きな影響を与えていることは重く受け止める必要があると思っています。カーボンプライシングについては、こうした経済の状況もよく見極めつつ検討していく必要があると認識をしています。カーボンプライシングは、環境と成長の好循環を通じた脱炭素社会への移行を進めるための歯車を回していくドライバーとして、有力な政策ツールの一つと考えられていますので、その可能性を追求するという姿勢は変わりません。ただ、しっかりと世の中の状況、また様々な理解が進まなければ実現できるものではありません。税というのは多くの方に影響するものですから、こういったことはよく見ながら、我々としてもその可能性は追い求めていきたいと思います。

(記者)幹事社としてフリージャーナリストの横田氏から質問を預かっていますので読み上げます。第4回有識者会議でトンネル工事でかつて300メートル以上低下とのデータが示され、川勝知事は、南アルプス国立公園内であることから環境への悪影響が多いとして、「トンネル工事断念の方向性になってもおかしくない」、「国立公園保護も国策」と問題視したことに対する見解と、縦割り行政打破の一つとして、閣議などで国策の優先順位の決定方法について、省庁横断的に問題提起するお考えはないのかを伺いたいです、とのことです。
(大臣)まず、リニア中央新幹線静岡工区有識者会議においては、今後も水環境への影響に関する議論は継続されると認識しており、まずは国交省における有識者会議の議論を見守りたいと思います。

(記者)エネルギージャーナルの清水です。国立公園の廃屋等の対応について伺いたいのですが、財政負担をどうするのか、費用負担は、ということです。国立公園のみならず、国立公園だけで500カ所とおっしゃったのですけれども、これは1カ所1億円にしても500億円ぐらい、よりかかるだろうという気がします。国立公園のみならず、国定公園、都道府県自然公園とかいろいろあるわけで、所管は違うにしても、費用をどうやって対応していくのか、求償措置や何かをどうするかとか、かなり構造的な課題があるだろうと思うのですが、単に十和田湖のみならず、今後、中長期的にも逐次きっちり進めていかなければいかぬということだろうと思うんです。こういう財源的な面も含め、求償的なものも含め、制度的な対応というものはどうしていくのか、その辺をお伺いしたい。
(大臣)まさに詳細のところについては、今、来年の法改正をどのようにしていくかということも含めて、様々な議論、検討を、今、部内でやっているところでもあります。ただ、今の予算の関係でいえば、国立公園利用拠点滞在環境等上質化事業という事業がありまして、それは21億円、その中で令和元年度に直轄又は補助事業によって4公園6カ所で廃屋の撤去を行って、令和2年度には7公園7カ所の撤去を予定しています。清水さん、500カ所と言われましたが、おっしゃるとおり、これは予算も必要なことでありますし、500カ所、大変膨大な数にもなります。そういった中で、いかに有効に限られた原資を使っていくのか、こういった中においては、もちろん優先順位、そして廃屋を撤去した際にいかにそれがプラスの効果を生める事業になるのか、こういったことはやはりよく見る必要があると思います。むやみやたらに壊すというものは、予算が全く問題なければできるかもしれませんが、そういう状況にありませんので、廃屋の撤去をするということだけではなくて、様々なツールを使いながら、国立公園の眠っている資源を掘り起こして、いかに魅力あるものを多くの方に感じていただける措置を取るのか、これは一つが廃屋撤去、その他のいろんな様々なツールもありますので、総合的にやっていくことを全力で力を入れていきたいと思います。

会見動画は以下にございます。

https://www.youtube.com/watch?v=_2LmYouCHUw

(以上)