大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和2年5月22日(金)10:31 ~ 10:52 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 本日、5月22日は国連が定めた国際生物多様性の日です。特に今年2020年は生物多様性にとって重要な年であります。日本は、2010年に愛知県名古屋市で開催した生物多様性条約COP10において、議長国として10年間の世界的な取組の目標となる愛知目標や名古屋議定書を取りまとめました。今年は愛知目標に基づく取組の最終年であるとともに、これに次ぐ生物多様性の世界目標を検討する年に当たります。我が国は生物多様性分野での世界的な貢献を進めてきました。愛知目標の策定に当たっては、2050年ビジョンである自然との共生を提案しました。また、愛知目標の実施に当たっては、生物多様性日本基金を活用した途上国支援や人と自然との接点である里山のような自然環境を保全するためのSATOYAMAイニシアチブを進めてきました。今年の生物多様性の日を迎えるに当たって、生物多様性条約の歴代締約国会議議長国に対して条約事務局からメッセージが求められました。私からのメッセージでは、日本からのこれまでの貢献や、直面する新型コロナウイルス危機後に生物多様性保全や気候変動対策と両立した自立分散型社会の構築が求められることを発信しました。このメッセージは省内で議論を重ね、国立環境研究所の五箇先生とも議論を深めて練り上げたものでもあります。具体的には幾つかポイントがあります。今回のコロナの危機を人間に行動変容を求める生態系からの重大なメッセージと受け止めるべきであること、そしてコロナ収束後の経済社会を生物多様性保全や気候変動対策と両立したものとしていかなければならないこと、そして三つ目が、国際社会が協調して愛知で共有された2050年ビジョン、自然との共生を実現する世界の構築に向かって行動すること、そして最後に、生物多様性保全のために一人一人が何ができるのかという観点から、一人一人ができるその第一歩は、自らの地域の生産、消費を大切にする地産地消、そして一人一人が地元から循環型社会への一歩を踏み出すこと、こういったことから始めようと、そういうメッセージを発出させていただきました。生物多様性条約事務局のホームページに本日掲載されると聞いております。このメッセージに込めたとおり、生物多様性のためにも、従来の施策の在り方にとらわれず、今後の世界を自立・分散型社会、脱炭素型の社会に変えていくことが重要であります。このため、国立公園ワーケーション、そして地域の生産、消費を大切にした魅力的で個性的な里山の拠点創出、こういったことなど、地域での新しい価値観、ライフスタイルの創出や雇用の確保につながる環境の整備も重要です。そして、いわゆる自然のダムのような生態系を活用した防災・減災など、生物多様性保全と気候変動対策との相乗効果をもたらして、地域の強靱性、レジリエンスを高める取組、また生物多様性保全に積極的に取り組んでいる企業との連携、協力、こういったことを一層国内でも進めていきたいと考えています。そうしたこともありまして、今回この国際社会に発信をしたメッセージをつくるに当たっても、様々助言もいただいて、環境省の中でも、勉強会のメンバーも兼ねていただいた国立環境研究所の五箇公一先生、大変個性的な、非常に面白い分かりやすい話をしてくださる方ですが、この五箇先生を中心として分野横断的な有識者との勉強会を早ければ、そう時間を置かずに来月にも開始をすることとしました。幅広い社会的な視点を加えて、今までなかなか生物多様性といったときに国民的な運動まで高まっていないのではないかなと、なかなか理解が難しい、そういった壮大なテーマも含みますけども、五箇先生のように、生物多様性って一人一人から何ができますかといったときに、地産地消から始めましょうという、そういうアプローチも含めて、やはり分かりやすい国民の皆さんに対するメッセージも必要だと思いますので、今後この五箇先生が中心となって議論を深めて、生物多様性の重要性、そして気候変動、コロナからの復興、こういったものを一体的に捉えて新たな経済社会の再設計につなげていきたいというふうに考えています。こういった議論を生物多様性条約COP15、これは今年の中国の開催が延期をされていますので、来年になるとは思いますが、このCOP15でまとめられる次期世界目標の議論、そして次期生物多様性国家戦略の検討をはじめ、幅広く活用していきたいと思います。冒頭、今日は生物多様性の日ということもありますから、この問題で私からの発言は以上です。

2.質疑応答

(記者)NHKの杉田です。生物多様性に関して、大臣が今おっしゃっていらっしゃったように、なかなか一般の方々への浸透が広がっていないと思うんですけれども、今後こうした勉強会を通して、どう理解を深めていきたいと思っているのかということをお伺いできればと思います。
(大臣)おっしゃるとおりだと思います。令和元年8月から9月に実施した世論調査というのがありまして、生物多様性の認知度、これを世論調査をすると、生物多様性の認知度は51.8%、これは、前回調査は平成26年のようですけど、そこに比べると認知度はやや上昇していると。ちなみに平成26年は46.3%です。ただ、COP10直後に行われた平成24年の調査結果というのが55.7%、そのときの方が高いんです。なので、そう考えると、その直後ほどの盛り上がりとか認知度はない、そういった現状でもあります。なお、年代別に見ますと、18歳から29歳の認知度が63.7%、若年層ほど認知度が高いと、そういった現状は心強いことでもあるなと思います。ただ、これはかなり根深い問題で、私も環境大臣になってからの問題意識の一つは、何で気候変動の問題がここまで盛り上がらないんだろうか。そして、これも世論調査を世界的に見ると、気候変動対策に取り組むことが生活の質が上がるというふうに捉えているのが欧米の先進国なんですね。しかし、日本でどういうふうに捉えられるかというと、気候変動対策を進めることは生活の質を脅かす、そういうふうに受け止めている方の方が過半数であり、こういったことがなかなか国民の理解、そして認知度、十分なレベルにまで上がってこなかったところの環境省、また政府としてのアプローチをもう一回再考しなければいけない。メッセージをどのように発信をしていくか、そういったことも含めて、今回、五箇先生にも参加していただいて、今までになかったような国民の皆さんに届く、響く、そういったメッセージを発信できるように、今後どのような形の勉強会にするか、先生とも詰めていきたいと思います。

(記者)朝日新聞の水戸部です。生物多様性ということで、今年はポスト愛知目標を決める重要な年ですし、気候変動対策で言うとパリ協定のスタートの年、SDGsで言えば5周年で、行動のための10年の初めの年ということで、本当に惑星直列のように環境にとって重要なことが詰まった1年だと思うんですが、コロナで立ち行かなくなっているという現状も感じます。大臣自身はこの状況をどう感じて、どう打開したいと考えていらっしゃるか、それが1点ともう1点、夏の甲子園が中止になってしまいました。野球をされていた大臣から、もしメッセージがあればお願いいたします。
(大臣)まず1点目、惑星直列のように重要な年であるということ、おっしゃるとおりだと思います。ただ今は、やはりコロナからの経済社会の回復をいかに感染拡大をリスクを下げる形で早く再開できるか、そして、今この中でも国民生活に多大な影響、特に生活面でも雇用が失われたり、こういった状況を見れば、まずはそれが最優先だというのはそのとおりだと思います。しかし、最近このコロナの状況でCOの排出が相当下がっているという報道もありますが、また推計もありますが、一方で、最近発表された、フィナンシャル・タイムズが報じていましたけども、中国で産業活動が再開されたことであっという間に大気汚染レベルが戻ったと、つまりロックダウンのそういった環境に対する恩恵というのはものすごく短命だと、こういうことが報じられています。これが世界的なものだとすると、リーマン・ショックの後のように逆の反動が来て環境のダメージが大きくなるということになりかねない。決してそういうことがあってはならないと思いますので、今後日本においても、経済社会の活動が、最近の緊急事態の解除、そしてまたこれから東京、首都圏、北海道、そういったところも前に進むことは間違いなくプラスのことですが、その中で決して環境がおろそかにされることがないように私としてもしっかりと発信をしていきたいし、そういった意味でも、先日の政府の緊急経済対策の中でも気候変動、そして脱炭素社会の移行を同時に進めていくということをしっかりと明記をすることができたことは、一つ大きなことではないかなというふうに思っています。
 そして2点目、甲子園中止ということですけど、私は元高校球児として言葉もなかったですね。自分自身が高校3年生のときのことを想像しながら、仮にあのとき今年起きているようなことが起きたら、自分はどういうふうに思っていたんだろうかとか、また周りの友人、当時の、そういったことを想像しながら、この甲子園中止が野球にかけてきた球児のみんなに対する人生を左右するような大きなことだと私は捉えています。私自身そうでしたけど、すべてをかけていたんですよね、野球に。そして、甲子園に行けるか行けないかを問わず最後燃え尽きることができたから、私は当時、自分の実力も理解できていなかったから、高校生で入ったころぐらいのときにはプロ野球選手になりたいと思っていました。だけど、だんだんやりながらなれないことに気付くんですね。だけど、それでも燃え尽きることができて、野球以外の道、そこにまた自分の情熱を傾けることができたのは、やはり最後の大会までチームでみんなでやってきたという、燃焼できたということはすごく大きかったと思います。それが今回、最後に燃え尽きるという、ぶつけるその機会がない。このまま学校卒業を迎えるということになったときに、今どういう気持ちだろうかと。ですから、今各県が今後県大会とかをどうするか、そういった議論があると思います。ぜひ、その球児のみんなの思いをどのようにいい意味で燃焼できる場をつくっていけるかどうか、各地域でも知恵を絞ってもらいたいなと思います。神奈川県は全国で最も野球部の数が多い、そういった県の出身としても、そういったことがやられるのであれば、横須賀の球場とかも使ってほしいですね。非常に心配をしています。

(記者)環境新聞の小峰です。今、最大限に燃焼しなきゃいけないというお話が大臣からありました。
(大臣)完全燃焼ですね。
(記者)完全燃焼ですね。今、大臣が燃焼中の石炭火力の見直しについてお聞きしたいと思いますが、昨日、経産省の有識者検討会がインフラの海外展開についての報告書をまとめました。これについての受け止め、特に大臣が燃焼中の石炭火力の言及についてどう受け止めているかお話を聞かせてください。
(大臣)うまいつなげ方をしていただきました。この経産省の懇談会の中間取りまとめも、環境省がファクト重視をしたように、懇談会委員の意見をベースに取りまとめられたものだと承知をしています。このインフラ海外展開懇談会、この経産省の懇談会の議論のテーマはエネルギー、電力分野、デジタル分野に関するもので、石炭の輸出の公的支援に関する議論のみを行っているものではないということについては、これは環境省がやっているファクト検討会とはまた違うと思います。中間取りまとめの案は懇談会として取りまとめられるものだと承知をしています。その上で感想を申し上げれば、各国の発展の段階、そして個別の状況に応じて、具体的な方策は異なりますが、世界全体が脱炭素化に向かっていく流れについては共有をされている、この点については環境省としても歓迎をしたいと思います。また、本懇談会の中間の取りまとめには、インフラの海外展開に際して各国をエネルギー転換、脱炭素化に導いていくべく、相手国との協議メカニズムを設けるなど政策形成にエンゲージメントをして、脱炭素化に向けた政策誘導を図ることが重要であるとも書かれています。こうした点においても、環境省のファクト検討会でも様々な議論がありましたが、方向性として、また思いとしても同じようなことが共有できている部分もあると、そういうふうに思いますので、ファクト検討会も取りまとめがほぼ終わり、そしてこの経産省の中間取りまとめもあったということで、今まさにインフラの骨子策定に向けた4要件の最終的な調整を各省庁がやっているということですから、その調整をしっかりと私としても見守っていきたいというふうに思っています。

(記者)共同通信の石川です。冒頭発表がありました生物多様性の勉強会について、2点お尋ねします。現在の愛知目標はそのほとんどが達成できないのではないかと見られていますが、今回の勉強会ではなぜ達成できないのかという検証のような議論をやるのでしょうかということと、今回の勉強会が終わった時点でどのような成果物、提言をまとめるですとか、どのようなものを想定されているのか、2点教えてください。
(大臣)詳細はこれから詰めていきたいとは思いますが、五箇先生ともお話をしている中でのイメージとしては、生物多様性だけに閉じないほうがいいだろうと。つまり、今までなかなかなぜ認知度が上がらないのか、そういったこともそうですし、これから気候変動と生物多様性、そしてコロナからの復興、先ほど惑星直列という言葉がありましたけど、まさにこれから新しい経済社会を構築していく上では、気候変動の危機に対してどのようにこれから向き合っていくのか。生物多様性も同じです。そういったことを考えれば、この生物多様性の世界だけに閉じた議論にはしてはいけないなと。そういったところを見ながら、出口をどういうふうにしていくのか、詳細についてはこれから詰めたいと思います。

(記者)日本農業新聞の髙梨です。今日、バイオプラスチックの導入ロードマップの初会合が開かれますが、バイオプラスチックの原材料として、資源作物の他どのようなものの利活用が期待されるかということが1点と、将来的にバイオプラスチックが導入されて商業ベースに乗ったときに、農業分野にどのようなインパクトがもたらされると考えているか教えてください。
(大臣)この前も私がGAPとの関係で、別の記者さんでしたよね、日本農業新聞で前回来られた方は。そのときにもお話をしたんですけど、農業の世界では特にプラスチックというとマルチ、この利用が大変多いと思います。そういうプラスチックの農業資材、そういったところが結果として生分解性だったり、環境配慮型、これが当たり前のことになっていくというのが私としては望ましいと思いますし、世界で農業というのが、特に畜産、酪農、こういった世界で気候変動との関係でいうと目の敵に遭っているような、そういった一部の議論があります。だから、私が大臣就任当初、ニューヨークでステーキを食べてたたかれましたけど、一方で、日本の中で畜産、酪農を考えてすごく頑張っておられる方は環境の配慮もしながらやっています。そういったことをどうやってこれから世界の中でも、日本の農業というのがいかに環境や自然にも配慮されているのか、これを実際にも訴えていかなければいけないなと私は思っています。ですから、プラスチックのこともそうですけど、全体としてどのように自然と共生する形の第1次産業の在り方というのは、非常に重要なことではないかなと。

(以上)