大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和2年5月19日(火)10:31 ~ 10:55 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 今日、まず第1点は、配送業の皆さんに対するEV、電気自動車の導入支援、この公募を開始しますので、そのお知らせをしたいと思います。配送業の皆さんの今の状況というのは、このコロナを受けてデリバリー、そしてまた飲食業の皆さんにおいてはテイクアウトも相当伸びている状況は皆さんも御存じのとおりだと思います。まさにこのデリバリーがこれだけ増えてきたということやeコマース、この需要が相当伸びていることも、このコロナの影響を受けての新しい世の中の景色の一つだと思います。そういったことを、むしろコロナ後の社会の新しい景色の一つとして環境省はしっかりと後押しをしようということで、この事業は配送用のバッテリー交換式の電動車両を補助する新たな事業であります。今まさに私が言いましたが、配送業の配送分野への支援となることを期待しています。そして、配送拠点に交換用のバッテリーがストックをされるこのバッテリーステーション、一つ一つこのバッテリーを交換できるもの、それが置いてあってすぐに交換できる形ですけど、こういったものがこれから新たに日本の社会の景色として現れてくる、こういったことが進むことによってCOの削減、気候変動の対策にもなりますし、またいざ災害があったときに、ここにバッテリーがもう充電されているものがありますから、そういったときにも一つの防災機能も発揮できる、こういったこともすごく大きいことだなと思いますので、ぜひ配送業の方々、そしてまたフードデリバリー、またeコマース、こういったことに関わられている関係の事業者の皆さんにもぜひ活用していただきたい、そんな事業であります。ちなみに、予算は10億円確保してありますので、そのことによって、台数ベースで言うと1000台規模で導入ができる、そのような計算になります。そういったことで1000人程度の雇用拡大の効果があると見込まれていますので、まさにこのコロナを受けた新しい社会の景色を生み出していくんだと、それとコロナからの経済社会の活動の再開と気候変動対策を両立させていくんだと、こういったことについても大変大きいことだと思っています。ぜひ、この新しい景色が一日も早く実現するように御活用いただきたいなというふうに思います。
 2点目は、海洋プラスチックごみの関係の発表があります。海洋プラスチックごみをはじめとする海洋ごみ対策について、漁業者の方々がボランティアでごみを回収して、自治体が処理を引き受けるという連携した取組を推進しています。このような取組のマニュアルを検討するために、今日、実証地域を7カ所決定しました。今後、これらの7カ所の地域の御協力を得て、環境省がごみの種類、量の調査、そして地域の方々の御意見を聞いて、その結果を踏まえて連携体制の構築方法や回収によるごみ減少効果の見える化、ごみの発生源の特定などを行うためのマニュアルを策定、普及させて取組を拡大させていきたいと思います。今年度から漁業者の方々がボランティアでごみを回収いただく場合、そのごみ処理費用を国が定額負担をする、そういう支援を始めていて、23の都道府県を支援することを決定しています。海洋ごみ対策にとって、海を生活の場とされている漁業者の皆さんは重要なステークホルダーであります。全国的に漁業者の方々が御協力をいただいている形でこの海洋プラスチックごみの対策をやるというのは、世界的にも日本の特徴の一つであります。実際に昨年10月に開催をしたG20の海洋プラスチックごみ対策実施枠組フォローアップ会合、これは私も出席をしましたが、ここでもベストプラクティスとして紹介をしています。今回、漁業者の皆さんの協力を得ながら、海洋ごみ、海洋プラスチックごみ対策を促進するように、環境省として新たな取組を一層進めていきたいと思います。
 最後、3点目は、昨日、国連気候変動枠組条約のエスピノサ事務局長とオンラインでバイ会談を行いました。先日のドイツで開催されましたペータースベルク気候対話で私から提案をした新型コロナウイルス感染症からの復興と気候変動に関するオンラインプラットフォーム、この提案について議論をしました。このバイ会談の中では、提案の実現に向けて条約事務局と日本側で緊密に連携して協議をしていくこととなりました。これから更に緊密に事務方同士が調整をして、その実現に向けて全力で協力をしていきたいし、またエスピノサ事務局長には私からの提案を非常に前向きに受け止めていただいて、心から感謝をしています。今日の1点目のEV導入支援にもありますように、こういった世界の中でコロナの影響を受けている社会経済の再開をどのように気候変動との両立を図っていくのか、世界的な大きなテーマでもありますので、今日の1点目のことはこれから国際社会にも日本が発信できる具体的な気候変動とのコロナ対策の両立、この1つでもあると思います。

2.質疑応答

(記者)NHKの杉田です。漁業者の協力による海底ごみ回収実証地域の選定のことでちょっとお尋ねしたいんですけれども、今後マニュアルを策定するに当たって、効果の測定っていうのは具体的にどんなイメージをされているのかということと、実証地域は7箇所でこれまで環境省が行ってきた調査で、例えば東京だったり大阪の湾の方ではプラスチックなどの人工物の回収が多かったと思うんですけど、この地域は含まれていないということで、今後そういうもともとごみが多い地域に広げていくに当たって、どういうふうに広げていこうと思っているのかというのをお伺いできればと思います。
(大臣)まずは、今回選ばれた7地域、この地域の前に既に先行して取り組んでいただいている有志の方々の活動もあると聞いています。そういった社会貢献につながっているということは、我々環境省としても積極的にまず発信をしていきたいし、心から感謝をしたいと思います。その上で、今回、漁業者そして地方自治体との連携体制の構築、それとごみの回収処理の技術的な点など課題もあるというふうに考えていますので、今回7地域の皆さんに、まずはこの皆さんの地域の現状、そして声をよく聞いて、マニュアルの完成をもちろん目指すんですけど、このマニュアルができるのを待つことなく、現場の課題を乗り越えるノウハウなどを発信していきたいというふうに思っています。具体的にどういうふうに詳細を詰めていくのかというのは、後ほど事務方からも補足をさせたいと思いますが、まずプラスチックごみ、これの海の中へ流れ込んでいる状況を見ると、やはり一つの大きなごみの内訳、これはやっぱり漁業の関係のごみというのがある中でも、この漁業者の皆さん自らがこういう活動に協力をしていただいてやっていこうと、そういった形というのは私は日本のいい特徴だと思いますので、これを機会にますます海洋プラスチックごみの2050年までの追加的な汚染をなくしていく、こういったことにまさに現場の方も主体的に一緒になって取り組むという、そんな機運づくりにつながればと私としては思っていますし、先ほど写真でも紹介がありましたが、漁業者の皆さん、まさに人ごとではない課題だと思いますので、漁業の世界の中でもこの問題の関心を更に高めていきたいというふうに私は思っています。何か事務方からありますか。
(事務方)事務方から1点目について技術的なことを補足させていただきます。効果の測定ですけれども、回収、網を引いた面積に対してごみがどれだけ落ちているかという単位面積当たりのごみの量などを調査してきておりますので、こういった手法を応用して、ごみがどれだけ実際に減っているかということを毎年量っていくことを考えております。

(記者)日本農業新聞の鵜澤です。海洋プラスチックごみについてなんですけれども、この大半が陸から出ているプラスチックだと思うんですが、農業分野では廃プラスチックの処理費が年々値上がりしていて、費用の支援もないところもありまして、農業者大変苦労している状態です。農業用排出プラスチックについてはどのような対策をお考えなのか、お聞かせください。
(大臣)私も農林部会長時代に、相当全国のいろんな現場を拝見させていただきました。農業の分野のプラスチックで代表的な一つってのはマルチですよね。このマルチの中にも、生分解性のものが出てきている。だけどそのコストは高い。だからなかなか利用が進まないとか、様々な事情あると思うんです。それと、私が農林部会長時代に力を入れてきた一つはGAPの普及でした。このGAPの普及なぜ必要だったのかというと、農業の生産工程をしっかりわかりやすく見える化をして、一つの、農業の世界の中での、わかりやすい作業マニュアルというんですかね。こういったものを根付かせていかなければいけないっていう一つもありました。その中の課題の一つとしては、やはり、ほ場の近くで使われた、農薬の袋だったり、肥料の袋だったり、そういったものが散乱をしていたり、放置されている。結果としてそういうふうに放置されている、ビニール袋とか、製品の袋とかが、結局海に流れ出る。こういったこともあるわけです。ですので、この結果として、GAPを普及させなきゃいけないっていうのは、オリンピックパラリンピックまでに、日本が自分たちの国産の、産品を出すためには、GAPを取ってないと出せない、こういったことがあったわけで。もう、結果としてそれを進めることで、オリンピックパラリンピック対策だけではなくて、こういった、海洋プラスチックごみを農業分野から発生させることを抑制させる。そういったことにも結果として繋がるんだろうと思い私としてはとらえているので、いろんな課題はあると思いますが、ぜひ、農業分野の皆さんにも、海のことは関係ないとかね、そういったことではなくて、実は、畑や田んぼと海は、最終的に、プラスチックごみの流れが繋がってる可能性もある。そういったことも広く、知っていただいて、今日は漁業者の話をしましたけど、漁業者に限らずに、第一次産業、農業者の皆さんも含めて、あらゆる世界の業界の皆さんと一緒に、この問題は取り組んでいかなければいけないなと考えています。

(記者)朝日新聞の中田です。新型コロナウイルスの対応について伺います。新型コロナ対応の基本的対処方針に関する諮問委員会に、先日から経済の専門家の先生方が加わり、中には行動科学の知見であるナッジにお詳しい先生もいらっしゃいます。環境省においては、大臣主導のもとでのナッジを生かした取組というのを、先駆けて進めてこられたかと存じますが、コロナ後の社会のあり方を議論する場に、こうした専門家の先生が加わったことへの受けとめをお伺いします。
(大臣)大竹文雄先生のことだと思いますが、環境省のナッジの取組にも御協力をいただいている方でもあります。私はコロナによって、今まで、使われることのなかった言葉の一つが、行動変容という言葉だと思います。ここはまさにナッジそのものではありますので、環境省が霞が関の中で先駆けて、ナッジユニットという一つの部隊を作って、いかに、前向きな、自ら進んで、社会のための前向きな行動を進んで取るような、様々な仕掛けを、国の施策の中に導入できるかということをやってきたことが、今、花開き始めてるんだろうというふうに思います。ですので、今回を機にですね、環境省がナッジという日本の中では新しい一つのアプローチを、根付かせていくために、よりできることはあると思います。私自身も、これは環境省の一つの、特徴的な、アプローチになるだろうと、そんな思いから、ナッジを目的にするのではなくて、この行政の政策をより、国民の皆さんにとってプラスの形で効果を発揮するための一つの手法として、より幅広くナッジのアプローチを活用できないかということを常日頃から、事務方とも話をしています。例えば、すごいささいなことですけれども、この部屋の中のあそこの入口に消毒液がありますよね。今までは、消毒液の下にああいうふうに矢印とかなかったんですが、ああいうことをやっているのも、京都の宇治市の方は、このナッジの取組をやってまして、実際に役所に入ってくる多くの利用者の方が、消毒液をどうやって、より使っていただけるかということを考えた時に、消毒液の下に地面に、消毒液に向かって矢印の張り紙をすると、利用率が上がるという、そういった、まさにナッジの効果がはっきりとあらわれるような、そういった取組なども今地域の中では行われています。こういったことをまさに環境省自身も、いろんな形でやってみようと、そういう思いもありますので、ナッジ、まだまだ日本にとっては、未開の分野でもありますので、それを先駆けてやっていた環境省の力が、霞が関全体、そしてひいては社会全体に、より広く、知っていただけることを私としても後押しをしていきたいし、すでに、先日も発表しましたが、国連も含めて、世界中で、このコロナを受けて、ナッジの取組を共有しようという、そういった場もすでにあります。こういったことを通じて、国際社会の中にも、日本のナッジの取組を発信をしていきたい、そう考えております。ちなみに大臣になる前に、厚労部会長してましたけど、厚労部会長として、ねんきん定期便、これの改革にも携わりました。まさに、1年間年金を受け取る時期を遅らせることで、8%の年金の受給額が上がるという、そういったことをどうやって広めるかという、このねんきん定期便の書き方、これもナッジを活用しようとか、やりました。それと、がん検診とか、保健の定期検診の、受診をもっと広めていきたい。こういったことも、ナッジを活用して、より受診率を上げようと、こういったことを、前から取り組んでいたので、環境省がナッジやってることを、これからの私の活動にも生かしていきたいなと思っています。
(記者)新型コロナの関連で伺ってもよろしいでしょうか。今後の経済活動の再開に向けて、政府は事業者さん、業界ごとに感染防止のための事業マニュアルというかガイドラインの策定を促しているんですけれども、中にはどうしても人と接触するような業態であるなどの理由で、ガイドラインの策定に難航している業界もあるようなんですが、環境省所管の事業者さんでそういったケースがおありかどうか、大臣は御存じでしょうか。
(大臣)環境省の所管の業界というと、代表的な一つは廃棄物処理業でありますが、まさにその廃棄物処理業の皆さんは、今この経済社会を緊急事態宣言の緩和とともに、解除とともに再開しようという次元ではなくて、もう緊急事態の中でも我々国民生活の廃棄物処理を停滞させないために、日々もう既に働いていただいている方でもあります。そういった皆さんが感染リスクが少しでも下がる中で我々の国民生活を支えていただこうと、そういったことがまさに我々が今まで訴えてきた、少しでもごみを出すときにこういうことには気を付けてくださいとか、そういったこともそうでした。ですので、今の御質問でいうと、環境省の所管の業界、そこでの3密を回避しながらの活動の再開というのと、廃棄物処理業というもともと緊急事態の中でもリスクがある中でも働いていただいた方との状況とはまたちょっと違うのかなというふうに思います。ただ、もう一つ、例えば観光の分野、これは国立公園の周辺も含めて大きく関わっているところでありますので、ここは相当これから状況をよく見ていかなきゃいけないなと思っています。何しろ現実的に考えれば、経済のV字回復というのはあり得ないというのはもう分かっていますよね。その中で、じゃあ緊急事態が解除されてすぐにみんな観光に行きますかといったら、なかなかそういう状況でもない。そして、今までインバウンドによっていたところは、インバウンドがすぐ回復するなんてまずあり得ない。一番そういった状況を、先行きの見通しを重く深刻に捉えているのは観光業の皆さんですよね。その観光業の皆さんをどうやってより経済活動、社会活動が元に戻るところまで一緒になって歩んでいけるか。そういった問題意識があるから、緊急経済対策の中で雇用対策を打ったわけです。こういったことなども引き続きしっかりと現場を見て、現場にとって役に立つ、感謝していただけるような、そういったことを知恵を絞ってやっていきたいと、そういうふうに考えています。

(記者)この場に参加できていない、ウェブ上で参加しているフリージャーナリストの横田さんからの御質問を代読させていただきます。検察庁法改正案が今国会での採決が臨時国会に先送りになったことを受けての質問です。安倍首相に閣議などで進言できる閣僚として、検察庁法改正案審議の必要性自体に対するお考えと、安倍首相に疑問提示や異論を唱える意向があるか改めてお伺いしたい。もう1点、ネット上で検察庁法改正案の反対の声が広がっていく中、今国会での採決が臨時国会に先送りになったことに対する受け止めや御見解、御感想をお伺いしたいということです。
(大臣)まず、法案の審議のスケジュールというのは、これは国会がお決めになることですから、そこに行政府の一つの環境省の大臣という立場では、法案審議の日程についてコメントすることはありません。ただ、いずれにしても、信なくば立たず、やはり信頼がすべてで、その信頼を積み上げる努力を今まで以上にやっていかなければいけない、そこをしっかりと受け止めて、政府の一員として、今、私は環境大臣ですからこの環境の行政、これが国民の皆さんからより信頼されるようにすることが、コロナの前からある気候危機に対してまさに国民全体で取り組んでいく機運を生むことにつながると思うので、そこをしっかり踏まえて対応していきたいと思います。
(記者)今の質問に関連して追加で伺います。小泉大臣も閣僚の一人としてこの法案を含む案件にサインをされているかと思います。大臣御自身、政治家としてこの法案への賛否をお聞かせいただけますでしょうか。
(大臣)まず、政府全体として取り組んでいく様々な一つ一つの政策に対しては、まさに大臣、大臣、そのつかさ、つかさでしっかりとやるべきことだと思っています。ですから、私としては今しっかりと専念すべきことは、環境行政をしっかりと前に進めていくことです。そういった中でいろいろな日々の意見交換、そういったことは政府内でもあります。そういった中で思ったことは言いますし、そしてまた御存じのことですけど、気候変動とエネルギー政策は直結していて、だけどエネルギー政策は経産省・エネ庁というときに、様々な調整の中で苦労するような調整もあります。でも、そういったことは、それは当然ですから、違う立場もあるから違う省庁なんですから。だけど、最後は政府が一つの方針を決めたらその下で動く、これも当然ですから、そういった中でまさに今回のこの検察庁法ということで言えば、今、内閣委員会で審議をされてということでもあると。それを今国会で見送りという判断については国会の判断でありますが、いずれにしても、信頼、これが最も大事で、その国民の皆さんの信頼をしっかりと勝ち取らなければいかなる政策も前に進まない、これは今回の件に限らず、すべての政策、すべての法案について言えることだと思うので、そこをしっかりと心して、この環境行政を前に進めていけるように信頼回復、信頼の積み上げ、全力で努力していきたいと考えています。

(以上)