大臣談話・大臣記者会見要旨

原田大臣記者会見録(令和元年5月29日(水)16:33 ~ 17:06  於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 それでは、タイミングが今日がいいと思いましたので、特別に会見をしたいと思っております。
 本日、懸案のフロン排出抑制法の改正が参議院を通過し、採決されまして、成立したところであります。フロン排出抑制法については、事の重大性からすると、この成立を機に、更に私どもがしっかり対応していかなければならないと決意しているところでございます。引き続きのお力添え、よろしくお願いしたいと思っております。その上で、本日、今回の法改正により、フロンの廃棄時回収率向上という、積年の課題を解決するための施策をつくり上げたところです。言うまでもありませんけれども、今回そもそも、なぜフロン法改正を行ったかということでは、せっかく法律ができているのにもかかわらず、回収率が大体3割強、4割弱のところで近年推移していたということがあります。過去の4年間は、日本の温室効果ガスの排出量は、4年間続けて減少してきたという、それ自体はいいことなのですが、ただこの間、フロンガスだけとりますと、むしろ伸びているということであります。資料はお配りしていると思いますけれども、CO2を排出するのに比べまして、フロンガスの排出というのは、同じ単位当たり、数百倍から数千倍も温室効果があるという意味では、CO2をしっかり抑えなければいけませんが、フロンガスを抑えることがいかに効率的でもあり、また大事だということを改めてこの度感じたところであります。代替フロンには二酸化炭素の数十から1万倍という非常に高い温室効果があります。我が国全体の温室効果ガス排出量が4年連続で減少している一方、代替フロンの排出量は増加し続けておるというところでありまして、それが今回の法律改正につながったということは、既に指摘をしたと思います。今回の法改正は、機器ユーザーの回収義務違反に係る直接罰の導入、さらには、機器を引き取る際のフロン回収済み証明確認の義務づけというような抜本的な対策を講じるものでありまして、都道府県と連携して、この改正を厳格に運用することによって、フロン廃棄時回収率の低迷を打破して、地球温暖化対策計画の目標である2020年には50%、2030年には70%を前倒し達成すると、これを目指すことを改めて考えているところであります。
 その上で、お手元の資料で日本、EU、米国の比較表を載せたページを見ていただきたいと思います。これは、左側が法改正後も含めた日本、そしてEU、米国、こう書いているのですけれども、日本はこの中に全部丸がつきまして、ユーザーの回収義務、それから行程管理制度、すなわちマニフェスト、回収業者の登録制度、報告義務、廃棄物業者への規制、そして、回収量等の実績はどうなっているかと、こういうことを全部法律で規定しました。一方、EUはこういうことであります。米国は、大方、この丸が幾つもないということであります。EU、米国がこれであれば、他の国は推して知るべしというような部分があるわけであります。あと、中国のことを述べたいと思いますけれども、折しも、中国におけるフロンガスの発生が大きなニュースにもなったところであります。日本は非常に真面目に、このフロン対策というのを今日までやってまいりました。改正法も成立し、今回で法的措置は4回目に当たるのですけれども、その都度規制をして、ようやく回収率は少しずつ高くなってきました。それでもなお30%から40%と、こういうようなところをうろついているところを見れば、まだまだ日本は、当然自分のこともやらなければいけません。しかし、今回、目を他国に転じますと、ほとんどの国が、我々の基準で言えば、ほとんどやっていないのです。それゆえに私どもは今回、我が国のフロン排出抑制法の状況を、少なくとも国際的にも知っていただいて、でき得ればこのことをモデルとしてほしいなというように思うようになったところであります。冒頭申し上げましたように、フロンの温室効果というのは、一般の二酸化炭素の、それこそ数百倍から数千倍、1万倍にもなるということですから、CO2対策も一生懸命やりながら、フロンガスについて抜け穴ばかりというのはいけません。これは自分たちの問題ばかりではなくて国際社会の問題だと、地球はそれこそみんな共有しておるところであります。日本のフロンガスの排出量というのは、大体、全世界の5%前後と言われておりますので、日本で一生懸命やるだけでなく、国際的に取り組むことが重要なものですから。私どもからすれば、海外での大幅削減に向けて、しっかり働きかけるべきだということであります。世界全体での代替フロン排出量は、二酸化炭素換算で約9億トンであり、将来的には、日本の温室効果ガス排出量の全体の1.5倍の約20億トンを超えると推定されております。我が国だけではなくて、世界的にフロンの排出抑制対策を進めることが重要であると考えるところであります。日本には、上流から下流まで、フロンのライフサイクル全体にわたる総合的な排出抑制の仕組みがあります。特に、フロンガス、フロン回収処理の仕組みについて、日本は主要先進国と比較して高度な対策を実施しております。回収の義務づけに加えて、回収量を正確に把握する、こういう仕組みがEUやアメリカ等でも整備されておらず、我が国の仕組みが国際社会で先進的なものであると誇ると同時に、また、世界各国にその範を示すというような立場にもあると考えてございます。そのために、今度は前のページを見ていただきたいと思います。この資料でいきますと、代替フロン冷媒について、代替候補はあるが普及には課題がある、といった分野があるわけであります。この真ん中の列が、1,400とか1,500と書いているのは、いわゆる地球温暖化係数でございまして、今のところHFC-32、一番下が675倍と書いておりますけれども、これが技術的には一番優れておりますが、それでもなおCO2の600倍以上になると、こういうふうに御理解いただければありがたいと思います。技術開発についても非常に努力はしておりまして、上流の製造段階では、冷凍空調機器の市場が、2030年には世界で35兆円規模になると言われております。環境省が導入促進、経済産業省が技術開発という役割分担の下、連携して支援をしているところですけれども、イノベーションを起こして、日本の優れたグリーン冷媒技術を海外へ展開することで、世界の温暖化対策に貢献したいと考えているところであります。
 さて、中国によるCFC-11の違法製造の論文についてですけれども、先日、皆さんにも既に発表されたと思います。特定フロン、これはオゾン層を破壊する一番悪いフロンでありますが、世界で生産が全廃されているはずのCFC-11のフロンの大気中の放出が増加しており、その原因が中国北東部での違法製造ではないかとということを指摘する、環境省の国立環境研究所を含む国際共同研究チームによる科学論文が発表されました。私どもは、ほぼ間違いなく中国がこれを生産していたということまでは突きとめているところであります。これが事実であるとしたら、大変残念な事であって、いずれにせよ中国にはフロン対策を更に進展させることを期待するとともに、原因については、モントリオール議定書の専門家パネルにおいて調査されているところでありますが、この際、私ども環境省としても、日本としても、モントリオール議定書の事務局にしっかりまたそのことを申し入れて、世界各国にこの状況を知らせること、あわせて、中国にも然るべき指導をしてくれと、こういうことをぜひやめるべきだということを、直接にも訴えるというか言及する、強い監督をお願いする、こういう立場にあるのではないかと思っております。フロンの対策については、我が国は非常に真面目にやっているけれども、まだまだ十分ではありません。それ以上に国際的な場にやはりフロン規制の重要さを訴える、また、そういう立場にもあると、こう考えております。フロンガスについては、モントリオール議定書というのがございまして、そして、それに基づいて各国の規制が行われているはずでありますけれども、今、そういうような状況にあるということを我が国からむしろ発信して、とにかく地球全体の地球温暖化を抑えるということがどうしても必要ではないかなと考えております。あわせて、やはり日本はこの分野の規制・監督を強めるべきだということを国際社会にしっかりまた発信することによって、やはりその必要性を何らかの形で国際社会に訴えようと思っております。私としてはG20でももちろん、今回様々な課題があります。CO2の問題、もちろんプラスチックの問題、当然のことでありますが、議長として、それぞれやるべきことはありますけれども、このようなことについても、しっかりまた各国にこの状況を説明して、また更なる努力をお互いに要請しようと、こういうことも考えているところであります。
 色々なことを申し上げましたけれども、今回、フロン法の改正が成立したという機に、やはり地球温暖化を抑えるために大事な問題点を感じたものですから、皆さん方にも私ども環境省の考えを御理解いただいた上で、また、御協力をお願いできればと思っているところでございます。少し長い説明になりましたけれども、言わんとするところは以上でありまして、また、皆様方から色々な御叱責や御指導いただければと思っております。とりあえず、私からは以上のことを報告しました。また皆さんの御意見もいただければと思っております。

2.質疑応答

(記者)読売新聞の安田です。法案成立おめでとうございます。先ほど大臣もおっしゃった目標についてお尋ねします。50%、70%それぞれ目標があります。現状の30%台からすると非常にやはり高い目標だと思いますが、実際そこを向上させるために、どこから手をつけていこうとお考えですか。もちろん、全体的にアップするということは必要かと思いますが。
(大臣)まず、それは国内の目標でございますから、それを目指して今、しっかり目標を定めてやっています。だから今回の法律もそれを目指すために、色々と規制を強化したところであります。これは国会審議でも随分出ましたけれども、どこに問題があるのかについては、その規制を強化し、その運用するのが、まずは都道府県の役割になっているものですから、都道府県の体制強化も必要でございます。これは都道府県がそのための要員・手が足りないとか、あるいは十分に協議ができていないということもあります。しかし、いずれにしても、私どもは法律ができましたら、今回、さらに都道府県、自治体と、相談・調整しながらやっていきます。これは、今のところですが、例えば、フロンのGメンではありませんけれども、そういうある程度専門的な人が育っていないと、どこで何をしているか、監視も含めて十分体制ができていないという意味では、そのためのかなり専門的な対策をしないといけないと考えています。2019年の今が40%弱で、2020年が50%といったら、なかなかこれは簡単なことではありませんから、いずれにしましても、高い目標を持って、日本としてやはりしっかりやらなければいけないなと思っているところであります。

(記者)朝日新聞の松尾です。今の関連の部分なのですけれども、そのGメン的なものというのは、これは、都道府県に期待されるということなのか、その点について簡単に考えを。
(大臣)これはまだ、今、例えばということで申し上げました。まだまだ詰まった話はありません。そこのところは御理解いただきたいと思います。ただ、一番大事なのは、制度強化は決まったと、直罰も導入することになったと。しかし、そもそもどこで違反があって、どういう形でそれを検証するかというのは、結局は人手にかかることしかないのです。実は今回の法律で、今までは危ないと思って調べに行くにも条例ではそう書いていないとか、例えば個人情報の話だからなかなか教えられないという、そういうふうに運用されていたのですけども、実は今回の法改正で、その資料請求は権利としてできるという条文ができました。いずれにしても、そもそも発見しても指導ができなかったのが現状であります。そこは、今回の法改正で大分改善されましたけども、やはりそれは人がやること、基本的には都道府県の職員にそうしたことをやっていただくことになるのですが、そういう意味では、今、Gメンと申し上げましたけども、その種のかなり専門的な人が、また人数も含めてある程度満たさなければ、なかなかこれは、期待した目標がすぐには達成できません。それらしき人を何とかいずれは整備しなければいけないかと、こういうふうには思っております。
(記者)あと、先ほどの中国の件なのですけども、G20とか、そのほかバイなども、いろいろあろうかと思いますが、議定書の事務局を通じて以外のアプローチというのは、何らか考えておられますでしょうか。
(大臣)それは、実は外務省とも相談をしておりますけれども、議定書事務局にこのことはもう既に報告をいたしました。中国がこういうような状況だということを、国環研が中心となって、これは共同研究で専門家がやったことでありますから、私ども、もちろん間違いないと思っております。このことは事務局にも報告をいたしまして、報道も皆さんで扱っていただきましたけれども、直接にも中国政府に何らかの形で言おうと思っております。何といっても地球環境というのはみんなで共存、さらには共有しているわけですから、それはそういうつもりであります。

(記者)毎日新聞の鈴木と申します。よろしくお願いいたします。先ほど大臣の発言の中で、世界全体でのエアコンの市場規模というのが35兆円規模だと。それに対してイノベーションを起こして世界に貢献していくのだというふうな発言があったのですけれども、先日まとめられた長期戦略の中でも、「環境と成長の好循環」という言葉もあります。やはり、それに関連づけたような発言だったのでしょうか。
(大臣)そこは必ずしも関連という意識はございませんで、こういう形でCO2なり、フロンなりを必要な限りきちんと規制を強めていけば、当然、ユーザーなり、メーカーなり、それを使ってメリットを受ける側は、消費者も含めて、当然それに対応するための工夫をして乗り越えるものと考えています。規制に合ったような技術が必要になりますから。環境規制と経済成長が好循環になるというような理解は正しいと思いますが、いずれにしてもそれが目的というよりも、何といっても、皆さんはお気づきだと思いますが、仮に何千倍も1万倍も温室効果を持つフロンガスが、これだけ排出されているとしたら、これはもうそちらのほうも急がなければいけないということだろうと思っています。
(記者)もう一点なのですけれども、今回の法案成立というのがG20の直前になったということで、世界の中でも日本が一番、今、今回の法案成立で規制が厳しいというようなこともお話ししていたのですけれども、やはりそれもG20を見据えたような今回の法整備になったのか、その辺のことをお聞かせください。
(大臣)それはもともと、今年の初め、また昨年ぐらいから、先ほど申し上げましたけれども、4年連続、我が国のCO2排出量は数字の上で下がってきました。そのことを私は昨年の12月のCOP24でも言いました。このこと自体、何も誇るわけではありませんけれども、こういう形で、自国の削減実績を説明しているところはございません。ただ同時に、データをどう見ても、フロン部分だけはこの4年間ずっと上がってきているのです。それが回収率が3割強、4割弱というような数字なのです。ですから、それはもう、私の前任者の代から、いずれにしてもフロン法はきちんと強化しなければいけないと。私もそれは受け継ぎました。時期としては当然、早目早目に国会対策でお願いをして、できるだけ早くと言ったのですけれども、これはたまたま偶然この時期になりました。きちんと国会の方も対応していただいたと思います。その上で、改めてこの国内のフロン対策の実績や見通し、そしてまた諸外国との比較の中で、これは驚くほど、発見とは言いませんが、よその国はどうなっているのかということを聞いた際、ほとんどやっていないような状況だということが分かりました。それはやはりもったいない話だということで、我が国も努力するけれども、国際社会にもそのことを呼びかけるということも私たちの単なる役割ではなく義務であるぐらいに考えたものですから、今日こうして皆さんにもそのことをお知らせをしているところでございます。自分の国だけやっていればいいという考え方もありますけれども、やはりそういう実態であれば、それは諸外国にもしっかり呼びかけて、それぞれの国の奮起を促すということは必要ではないかと思っております。

(記者)時事通信の武司です。中国の関連なのですけれども、いつ議定書の事務局に報告をされたかということと、あと、今後G20などの機会を通じて中国には何を呼びかけていくか、そのことについてお聞かせください。
(大臣)私からはこういうデータが出ていると、これは日本が中心になりましたけれども、国際的な共同研究の中でこれを出したということで、直接にも、外交ルートを通じて、こういうことになっていると。これはお互いに、やはり自分の国の対策については努力しようということは、もうはっきり申し上げたいと思います。ですから、中国政府も適正な手続で抑制してくださいということであります。

(記者)フロン回収破壊の、この「三つのポイント」、決意の2と3のところで「国際展開」なのですけれども、これまでCO2排出の件に関しては、かなり財政支援という形で他国への制度化支援とか、それから事業化支援をやってきたのですけれども、特にこのフロンの排出抑制に関してはそういう施策が、エネルギー特別会計の制約もあってなかなか財源が賄えないという課題もあるのでしょうけれども、これに関してはこういう方針を打ち出したということで、例えば来年度予算で具体的に財政支援を強化していくとか、そういうお考えはあるのでしょうか。
(大臣)我々の政策が先に、また私どもの思いが先に立ったところでありますから、この問題は当然、今、然るべきところには話すことはしておりますけれども、これからいよいよ予算編成、骨太方針という時期になりますから、その中にでは当然このフロンの問題、また国際的な活動、それに向けての取組は財政的にもお願いしたいと思っております。

(記者)少し話題が変わって大変恐縮なのですけれども、マレーシアからプラスチックの送り返しの話が半ば発表された形になったわけですが、このあたりについて、大臣のお考えをお聞かせください。
(大臣)御指摘のとおり、今日そういうお話が飛び込んでまいりました。報道については承知をしております。今、事実関係について、国内の輸出業者の特定も含め情報収集を行っているところであります。環境省としては、これまでに税関や自治体との連携、リサイクル目的で輸出されるプラスチックの管理の徹底を少なくとも図ってきたと思っておりました。いずれにしましても、引き続きリサイクル目的でのプラスチック輸出の管理を強化していくとともに、本件事案についても事実関係を確認の上、必要なら厳正に対処していきたいと思っております。はっきり言って急な情報だったものですから、マレーシア政府と今、連絡をとりながら、本当にどこが問題があるのかと確認しております。発表では少なくても数カ国、日本やアメリカを含めてというような報道になっておりますので、日本がどこまで関与しているかはしっかり確かめたいと思っております。

(以上)

フロン対策で世界をリードする~改正フロン排出抑制法の成立を受けて~