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環境省大臣記者会見・談話等>政務三役会議後記者ブリーフ要旨

大臣記者会見・談話等

政務三役会議及びロードマップの大臣試案に係る記者ブリーフ会見録(平成22年3月31日(水))


1.発言要旨

(大臣)今日は、定例ではありませんけれども地球温暖化対策に係る中長期ロードマップということで私の方から環境省試案とこういう形になると思います。お手元の資料には、小沢鋭仁試案とこう出ているかも知れませんが、それを発表させていただきたいと思います。皆さんも御案内のように、昨年の12月末にですね、中長期ロードマップ検討会を設置をいたしまして、これまでワーキンググループの会合を24回、全体会合を5回、各分野の専門家の委員の皆様に、お集まりいただいて、集中的な議論をいただきました。これらの議論を踏まえて、今般「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ」について、環境大臣としての試案を取りまとめたので、報告をさせていただくということでございます。試案そのものは100ページの大部なものなので、ここでは概要の紙を使って説明させいただきたいとこういうふうに思います。もう皆さんは、中長期の検討会を2回、全くオープンでやりましたので聞いていただいていることが殆どかと思います。位置づけとしては、検討会の先生方にとりまとめをいただいておりますが、これからこれを使っていくにあたってはですね、責任の所在を私、環境省の方に置くとそういう意味で私の方で発表させていただくと、こういうことが1つであります。
 それではざっとお目通しをしていただきたいと思います。
 まず、1ページ目でロードマップで伝えたいこと、こういうことは以下の3つです。
 このロードマップで、まず第1、2020年に25%削減、2050年に80%削減を実現するための対策・施策の道筋を提示したこと。2つ目は、省エネ家電や太陽光発電などへの投資を進め、エコスタイルを実践することにより、我慢ではなく快適で豊かな暮らしを実現することが可能であるということを示していきたかったこと。3つ目は、温暖化対策は負担のみに着目するのではなく、新たな成長の柱と考えることが重要であるということ。低炭素社会構築のための投資は、市場・雇用の創出や地域の活性化など、さまざまな便益をもたらしうる。私最近使っている言葉は、環境と経済の両立を一歩踏み込んで、環境と成長の両立と、こういう話を示したいとこういうことでございます。
 2ページ目を開いていただきたいというふうに思います。上段の図は、これもう皆さんずっと見ていただいている数字がありますが、検討会で出させていただいたのは、3つのパターンを出させていただきました。15,20,25でありますが、私の試案は現時点において、90年比25%削減という一本の数字で示させていただいております。そこの特徴は御案内のとおりですね、いわゆる、ものづくり、日々のくらし、地域づくりなど、主要な部門において、現状よりも大幅な削減が必要だということが示されているわけであります。
 それから下の方の図から3ページにかけては、25%を実現する際の主な対策、導入量及び追加の投資額等を記載をしています。例えば、住宅のところでありますけれども、新築住宅のところでございますが、5世帯のうち1世帯に太陽光発電を導入、約1,000万世帯に導入する、といったもの。あるいは、次世代自動車に関しましては、250万台といった対策を盛り込んでいます。これらの対策を全て実施した場合ですね、追加投資額の総額は、2011年~2020年の10年間で100兆円になります。しかし、この投資は省エネや創エネによってですね、2020年までに投資額の半額が、2030年までには投資額の全額が回収可能となる、という試算になっております。そこのところを是非御認識をいただきたいと思います。
 4ページ目、これは日々の暮らしのイメージということで、身近な例をお示しをしています。例えば、新築で家を建てる方ということで左側に載っていますけれど、高断熱化、あるいは太陽光発電、高効率給湯器、省エネ家電を導入することにより、合計でそこの下にありますが、最大約300万円近くの投資が必要になります。しかしエコポイントの補助金・減税で今投資を行えば32万円が還元されると、こういうことでございまして、これで光熱費の減少により、9年で元が取れるとこういう試算をそこに示しているということであります。また、こういった高断熱化に伴い、部屋の温度差や結露が解消されて、先ほど冒頭申し上げた、快適で健康的な生活を送ることが可能になると、こういう姿を示しています。
 それから、5ページ目に移らせていただきます。ここは経済分析のところでございます。結論から申し上げますと4つのシミュレーションをしております。12月の末にお示しをしたタスクフォースによる経済影響分析では、イノベーションの促進や価格の低下といったプラスの効果を十分に反映できていなかったということで、私としては、そこが不十分と、こういうことの中でそういったものを取り入れることができるモデルの構築をして、その数字を皆さんにお示ししたいということでこれをシミュレーションをやらせていただきました。まず、モデル分析の[1]と[2]は、一般均衡モデルであります、それから[3]が産業連関分析、[4]がマクロ経済分析というモデルでございます。
 分析結果[1]は、温暖化対策の実施に伴い、イノベーションが促進された場合の効果を分析しておりまして、これもう皆さん、御報告を聞いていただいたはずですが、大阪大学の伴先生に実施をしていただきました。このモデルでは、人々が将来の排出規制の強化を見込んで、いわゆる規制開始前から省エネや創エネを行うと、こういう合理的な行動を見込むことがあり得るということをモデルの中に取り込んでいます。また本モデルでは、温暖化対策技術の大量導入に伴うコスト低減の効果を積極的に見込んでおりまして、再生可能エネルギーの導入を容易にするための規制の見直しといった、目標達成に向けて必要な規制改革にも取り組むことを想定しております。ここが、ある意味でいうと、我々がやろうと思っている政策をしっかりと中に取り込んだモデルを作りたいと、皆さんからお叱りを受けましたが、あくまでもモデルそのものを、いわゆる改ざんとかそういう意味ではなくて、そういった我々がやろうと思っている政策に理解をしてくれていて、それを取り込んだモデルを作りたいと昨年12月に言ったのがまさにこういったことでございます。この分析の結果、なりゆきのケースと比べて、2020年にGDPや雇用がそれぞれ0.4%上昇すると、これもう見てお分かりの通り、左側の図でありますが、2020年のところ、いわゆる0が何もしない場合ですが、それに比べて0.40上がっているということであります。
 モデル分析結果[2]も、温暖化対策の実施に伴い、イノベーションが促進された場合の効果を分析しております。東京大学の松橋先生に実施をしていただきました。このモデルの特徴は、「家計」への影響を見る際、所得階層ごとに18分類をしたこと。分析の結果、イノベーションにより家電製品や太陽光発電など、価格が下がるとともに、より省エネの機器が販売されることで光熱費も下がるために、他の用途に使うことができる所得が、どの所得階層においても増加をしているということでございます。これ、見てお分かりのように、右側にいくに従って高所得の人たちでございますので、この結果だけを単純に見ますと、高所得者ほど、いわゆる所得の増加の割合が大きいという形になるわけでありまして、これは今後の課題でありますが、こういう結果が見込まれるという前提に立てば、じゃあ低所得者向けのいわゆる補完的な政策を実施することが必要だという話も出てくるわけでありまして、これはあくまでも、そのままの結果だというふうに受け止めていただきたいと思います。
 次のモデル分析結果の[3]であります。[3]は、エコ製品、エコ設備等の需要拡大に伴う、関連産業の市場・雇用への波及効果を評価したものでありまして、名古屋大学の藤川先生に実施していただいております。まず、25%削減のための対策導入及び日本のエコ技術の輸出を考慮すると、2020年の時点では45兆円の需要・125万人の雇用が発生します。これは、新成長戦略基本方針で見込む50兆円、140万人の約9割に相当するわけであります。新成長戦略は環境全般で扱っており、このモデルは温暖化だけということでありますので、ほぼ数字がこれで一致をしているということでございます。45兆円の需要増に伴い、2020年時点では、いわゆる波及効果を入れて118兆円の市場規模、345万人の雇用規模の波及効果を誘発できます。電気機械、輸送機械、商業、対事業所サービス等の産業への波及効果が大きいという結論が得ております。
 6ページでございます。マクロ経済分析のものですが、これは、日本経済研究センターが実施してくれています。本モデルの特徴として、リーマンショック以降のGDPの減少や失業率の高止まりといった、より実態に即した経済や雇用の状況を踏まえた経済分析が可能となっています。分析の結果、炭素税の税収を政府支出に充てることで有効需要を増やし、需給ギャップを緩和することで、設備・雇用の供給過剰を改善することが可能と分析されました。その結果、GDPは上昇し、失業率は減少すると試算されました。一連の経済モデル分析で、低炭素投資を国民が前向きかつ積極的に行った場合には、イノベーションが実現されることにより、温暖化対策を行わないなりゆきケースと比べて、経済への影響はプラスになり得ることが示されました。
 以上が、「中長期ロードマップ」の概略でございまして、本日公表したこの試案については、公開の場を設けて国民の皆様からの御意見を賜り、また、関係省庁において進められている様々な検討の動向も踏まえつつ、これはエネルギー基本計画などのことを指しておりますが、さらに精査を進めてまいりたいと思っております。
 それから、今後の進め方でございますが、まだ仙谷大臣と、こないだの閣議後の会見以降、話が進んでおりません。内々事務ベースでは私の方から、内閣官房の方と私なりの考え方を示したりもする時間はあったのですが、仙谷大臣の最終的な時間がとれておりませんので、いましばらく時間をいただきたいと思っております。いずれにしても、これを公表することによって、いろいろな御意見もわき上がってくると思いますので、そういった御意見をしっかりと受け止めて、私としては、この分析が出たからこれが全部これでこの通りに世の中が進むんだと言うような話ではなく、モデル分析はあくまでモデル分析と、こういうことをずっと一貫して言ってきておるものでありまして、こういったデータをベースにしながら次なる政策をどういうふうに打っていくかということが大事だと思っていまして、その議論をしっかりと進めていきたい、と、こう思っておるところでございます。
 以上です。

2.質疑応答

(問)幹事社から2点お伺いいたします。先ほど、公開の場で議論していきたいというお話がありましたけれども、具体的なプランがありましたら教えていただきたいのと、あともう1点、今後政府内の議論の中では、真水の議論というのは進めていく御予定でしょうか。
(大臣)まず、公開の場ということでありますが、まさにそこを今ちょっと議論をさせていただいております。できるだけ幅広い形でやりたいと思っているのですが、逆に言うと、あまり幅広くなり過ぎると、閣僚委員会との関係で、なかなかコントロールできないという意見もあって、私としては、できるだけ幅広く、なおかつ閣僚委員会に関連した形で位置づける国民会議といったものを作りたいと思っておるのですが、そこは今の状況ですと、仙谷大臣あるいは私のところで、とりあえずそういった組織を作りながら、閣僚委員会へのインプットをしていくというような形が望ましいのではないかというような意見が強くなってきておりまして、その辺を今、つめているところです。いずれにしても、温暖化対策に対する国民会議という形で、あらゆる各界の皆さんに入っていただく形で進めていきたいと思います。
同時にまた中環審に関しては、これは環境省としての案でもありますので、中環審へ報告もし、そこの場でも議論を深めていただくことは、これは環境省として、やらせていただきたいと思っております。
それから、真水の議論に関しては、今後このロードマップの議論の中でも出てくる可能性は十分あるというふうに思っています。私としては、いつも申し上げているように、いろいろな対応があり得ていいと思っておりますけれども、いろいろな国際交渉とか、そういうことも考えると、25%一本で示してできる限り国内で削減していく、これが望ましいことはもう間違いないわけでありますので、そういった話で進んでいく可能性も強いと、ただそこに本当に経済界とか産業界の皆さんが入ってくれば、そんなのではとてもやっていけないとか、そういう意見もあるかもしれませんし、そういうのをどんどん公開の場で言ってもらえばいいと思っております。逆に環境派のNGOの皆さんたちは、25%でなければだめだという意見も出てくるでしょうし、そういうのを議論してもらいたいというふうに思っております。

(問)今回この中で示されている対策を見ていきますと、やはり建築基準法であるとか、省エネ法であるとか、都市計画法であるとか、様々な法改正が必要になってくるのではないかなというふうに見えるのですが、この点大臣はどのようにお考えでしょうか。
(大臣)そこまでまだ正直言って至っておりませんが、建築基準法などというのは本当に十分あり得ると思っておりまして、ある意味でいうと、予算的措置と同時に規制的な手法という話も正直言って十分あり得ると思っております。ただ、具体的なところまで、まだとてもつめている段階ではありません。この議論の中で、まさに出てくることを期待したいと思います。

(問) ロードマップの政府内での位置づけというのでしょうか、最終的にいつごろまでに、どういう形で位置づけるのか、それからロードマップで最低これだけは決めなければいけないという、ロードマップのロードマップというのですかね、今後のもうちょっと具体的な落ち着き先を教えてください。
(大臣)ロードマップのタイムスケジュールも、議論をしていかなければいけないのだろうと思っています。私の役目は、私のたたき台を、議論に供するたたき台を出させていただくことだと思っておりまして、そこから先は全部私が一人でスケジュール感も含めて決めるというわけにはいかないのだろうなというふうに思います。ただ、いつまでにということは、いわゆる基本法との関係で言わせていただきますと、基本計画というのを作らなければいけません。その基本計画を作るにあたっては、このロードマップもある程度目鼻をつけないと、基本計画に使っていけないと思うものですから、その基本計画は、法案が順調に成立すればという前提でありますが、あくまでも前提でありますが、そうすると年末とか、来年の年初くらいには作業にかかるという話になるのでしょうから、そういったところもひとつの節目かなとは思っています。

(問)電源構成についてですけれども、やはり原子力に関しては新増設を欠かせないというような結果になっていると思うのですが、当然基本法にも社民党さんからも推進をめぐって反対があったりとか、閣内の統一見解を出すのは難しいと思うのですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
(大臣)たしかに社民党さんからそういう意見が出てくる可能性はあると思います。ただ、一番最初に皆さんにお示しした、いわゆる基本法の時に、基本法の一枚紙とロードマップの中間報告のところでも、その時は新設9基と書かせていただきましたが、既に1基はもうできたということで、今回は8基に多分なっています。これは、元々の政府の中の基本計画の中身そのものでありますので、そこは是非御理解をいただきたいという立場です。今回のロードマップを作るにあたって、それを飛び越えて今までのエネルギー計画を超えて作った数字ではありませんので、何とか御理解をいただきたいと思っています。

(問)先ほどの国民会議の構想なのでけれども、これは主催は政府になるのか、それとも環境省になるのかどちらになるのでしょうか。
(大臣)そこが決まっていない。私が先ほど申し上げた閣僚委員会でそのままやればよいのかなと思っているのですが、いろいろな意見がございまして、今は多数説は、環境大臣、仙谷大臣と一緒にそこはハンドリングしてくださいと。だけど出てきた時は、大いに閣僚委員会に出してもらったらいいじゃないですか、ハンドリングはそちらでやってくださいという意見がわりと強く、有力意見であるが、まだ決まっておりません。あくまでも今の話も私のただのアイディアでありますので、決まっている話ではありません。そうしたいなというものです。皆さんからちょうど御質問がありましたので。

(問)少なくとも関連省庁の担当部局というか、そういったところも参加するような形にはなるのでしょうか。
(大臣)それは違うと思います。要するに、そこはあくまでも国民の皆さんとの意見交換の場ですから、政策決定の場は、あくまでも閣僚委員会と閣僚委員会の下に作るチームになっていくと、そこに各省庁の皆さん入ってきてもらうということだろうと思います。

(問)とりまとめの時期はいつぐらいを目指しておられるのでしょうか。
(大臣)さっき申し上げたようにまだそこまでは決めれていない、と。私自身が一人で決めるわけにはいかない、と。
(問)以前、成長戦略の中には盛り込んでいきたいという話がありましたが。
(大臣)議論していれば材料はいっぱいありますから、そういう意味ではどんどんインプットはしていきたいと思っています。ロードマップとしては、これはあくまでも、環境省というか小沢鋭仁の試案でありますが、政府全体としては、もうエネルギー基本計画やなんかと整合性を持たした話にしていかなくてはいけませんから、それに関しては相談をして決めていきたいと。こういうことです。

(問)最終的には閣議決定をするのでしょうか。
(大臣)ロードマップの制度的なことはどうでしょう。基本計画は閣議決定ですね。
(事務方)基本計画は閣議決定です。そのベースになると思います。

(問)今回の試案は検討会の議論から抽出をされたというお話でしたが、逆に言えば検討会の議論ではあがっていて、今回試案からは落とした、あるいは除外したデータはあるのでしょうか。
(大臣)15とか20のところはみんな落としてあると。こういうことです。
(問)どこかの試算というものは。
(大臣)そこはないです。ありません。

(問)2020年まではあと10年という、結構短い時間だと思うのですが、その中で自動車にしても、新築住宅の省エネ達成度100%にせよ、結構高い目標だと思いますが、この点はいかがでしょう。
(大臣)たしかに高い目標なことは間違いないと思います。ただやって出来ない目標ではないと思っていますし、損する目標ではありませんので、後は、どれだけ温暖化対策の必要性を国民の皆さんが理解してくれて、そしてなおかつこの政策内容が国民の皆さんに浸透して進めていけるかにかかっているとそう思います。高い目標ではありますが、決して無理な目標ではないというふうに思っています。

(問)今回のロードマップの試案を踏まえて、一人あたりの国民負担がいくらぐらいになるのか、今後いつ頃政府として公式に説明されるのでしょうか。時期的なものは。
(大臣)一人あたりの国民負担の作り方は、今日も昼間、なんとかやってみてもらえないだろうか、という話をしています。このマクロの数字がある意味ではそれでありまして、ですから、プラスになります、とこういうことです。それを一人あたりということですと、単純に言えば人口比で割っていくみたいな話になるし、ただ、もうちょっと分かりやすい標準世帯みたいな話だとどうですか、という書きぶりは出来ないだろうかという話はしています。ただ、少なくともそれはあくまでも表現ぶりの話であって、データとしてはこれが一応の結論で、それが、プラスになるんですよ、と。負担ではなくてプラスになるんですよ、と。そういう結果です。

(問)これはちなみに消費税の関係も絡んでくると思いますが、これはこれで国民負担は。
(大臣)消費税はデータ入れていないでしょう。
(事務方)現行の消費税率がモデルの中に入っています。
(大臣)ですから地球温暖化対策税以外新たな増税の話は想定していません。

(大臣)ぜひ皆さんのお力で分かりやすく報道していただけるとありがたいと思います。

(以上)

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