環境省大臣記者会見・談話等


-京都議定書の発効を迎えて-(平成16年11月5日)

<京都議定書の発効>
 ロシアのプーチン大統領は、11月4日、京都議定書批准法案に署名いたしました。ロシアの批准決定により、議定書の発効要件が満たされ、来年2月にも京都議定書が発効することになりました。
 日本は、地球温暖化防止京都会議(COP3)の議長国として、議定書発効の鍵を握るロシアや米国に対し批准を強く働きかけてきました。このたびのロシアの決定を心より歓迎するとともに、京都議定書が発効する運びとなったことを喜ばしく思います。また、地球温暖化対策を一層強力に進めていく必要性を改めて認識し、決意を新たにするものです。

<地球温暖化問題は現実の問題>
 地球温暖化は、既に現実の問題となっています。世界の各地で洪水、干ばつ、熱波、ハリケーンなどの異常気象が観測されています。日本においても、今年の夏は記録的な猛暑でした。東京では、観測史上最高の39.5℃を記録し、真夏日も70日を数えました。日本を襲った台風はその数も多く、勢力もきわめて強大で、多くの人命を奪うなど激甚な被害をもたらしました。
 地球温暖化は長期間の傾向として認識される現象であるため、これらの異常気象が地球温暖化によるものかどうかは容易には判断できませんが、今後地球温暖化が進行すれば、異常気象が頻発しその規模も大きくなることが予測されています。

<国際的なリーダーシップの発揮>
 このような深刻な影響をもたらす地球温暖化問題に対処するため,国際社会は着実な歩みを進めてきました。地球温暖化対策の基盤となっている気候変動枠組条約の実施に続き、京都議定書の発効により、国際社会は新たな一歩を踏み出すことになります。
 京都議定書を未だ批准していない米国やオーストラリアなどに対しては、議定書批准の働きかけを今後も続けていきます。また、共同実施やクリーン開発メカニズムなど京都議定書の制度を各国と協力して活用し、これらの国々における温室効果ガス排出削減に貢献していきます。
 一方、地球全体で温室効果ガスの大気中濃度が増加の一途をたどっていることを鑑みるとき、2012年までの約束を定めた京都議定書の一歩に続く、二歩目、三歩目を力強く踏み出すことが求められています。地球温暖化問題に対処するため、中長期的には、人類が排出している温室効果ガスの量を半分以下に減らさなければなりません。このため、先進国だけでなく、今後排出量の著しい増加が見込まれる途上国との対話をさらに進めていきます。また、2013年以降の枠組みに関する国際交渉に積極的に取り組んでまいります。
 
<京都議定書削減目標達成に向けた国内対策の推進>
 日本は、2002年(平成14年)6月、京都議定書を締結しました。また、京都議定書の6%削減約束を達成するため、地球温暖化対策推進大綱をとりまとめ、これに基づいて様々な対策・施策を進めています。今年は、この大綱の評価・見直しの年であり、政府は、中央環境審議会を始めとする関係審議会での審議を進めながら、その作業を行っています。
 しかし、直近のデータによれば、日本の温室効果ガス排出量は基準年の排出量を大きく上回っており、更なる追加的対策・施策が必要となっています。これまでの検討の中で、「排出量の算定・報告・公表制度」、「自主参加型の排出量取引制度」、「環境税」などの追加的な対策・施策の提案がなされています。私は、議定書上の約束を確実に達成する観点から、これらの対策・施策の導入について関係各方面との対話を更に進め、政府としての政策策定に全力を傾ける所存です。

<脱温暖化社会の形成に向けて>
 京都議定書の目標達成のためには、政府や地方自治体、産業界、NGO、一般市民の方、それぞれが京都議定書の目標達成を自らの課題として認識し、温室効果ガス排出削減につながる行動を起こすことが求められています。
 また、中長期的な視野を持って、日本の社会を温室効果ガス排出の少ない社会、すなわち、脱温暖化社会へと転換していく必要があります。そうした取組において、日本は、これまでの省エネルギーや公害防止の豊富な経験や高い技術力を活かして、世界をリードしていけるものと信じます。例えば、日本で開発されたハイブリッド車は世界各国で既に普及しはじめており、地球規模での二酸化炭素排出削減に大きく貢献しています。
 21世紀初頭に当たって、私たちは挑戦を開始しようとしています。国際社会が一致協力して、その取組を進めていけるよう、日本及び世界の各界各層の皆さんに、地球温暖化防止に向けた取組への積極的な参加を訴えたいと思います。日本は、その先頭に立っていきたいと考えています。