記者会見大臣発言要旨(平成13年6月15日)

(大臣)閣議案件は、環境省関連はございません。司法制度改革審議会意見に関する対処方針が決定され、政府としては審議会のご意見を最大限尊重して司法制度の改革の実現に向けて取組み、3年以内を目途に関連法案の成立を目指すなどの措置を講ずるということです。他に質問主意書が8件ありましたが環境省関連はありません。それから、田中外務大臣が海外出張をなさるので、代理は福田官房長官ということです。また防災白書について村井防災担当大臣からご発言がありました。更に地方分権委員会の最終報告について福田内閣官房長官と片山総務大臣からご発言がありました。
閣僚懇談会では環境省に関係のあることはございませんでした。


(質問)閣僚懇談会で何かご発言されましたか。
(大臣)発言はいたしませんでした。
(質問)米国とEUの首脳会談の結果についてそれぞれ声明が発表されましたが、それについての印象とご感想をお聞かせ下さい。
(大臣)昨日の声明自体は見ていないのですが、聞いた範囲で申し上げます。京都議定書については双方で合意出来ないということだったようですが、気候変動問題については米国とEUがあらゆる場面で協力して、ボンのCOP6再開会合では建設的に参加をすると聞いております。米国とEUの首脳会合でどのような議論が行われたかについては、きちんと詳細な内容、情報を把握して検討する必要があると思っています。
(質問)京都議定書について合意出来なかったという点についてどうお感じですか。
(大臣)声明では合意出来なかったということだけです。実際に何を議論し何について合意出来なかったのかということをきちんと把握する必要があると思っています。それを検討したいと思います。
(質問)今後の日本政府、環境省の方針は何らかの変更はあるでしょうか。
(大臣)まず、内容を把握し検討するのが第1のステップだと思っています。
(質問)先日の党首討論では、小泉首相が日米首脳会談で京都議定書についてどんなことを話すか検討したいとおっしゃっていましたが、30日の日米首脳会談では日本の京都議定書批准に対する態度が明確になるということでしょうか。
(大臣)私は日米首脳会談で両首脳が京都議定書について取り上げていただくことが非常に大事だと思っています。小泉総理も党首討論で、日米首脳会談で何を言うべきかこれからじっくり研究したいとおっしゃっていました。私も環境大臣として総理に何を言っていただくのが適切なのか、EUと米国の首脳会合の結果の検討も含め考えて、総理にお話をしたいと思っています。
(質問)18日の田中外務大臣の訪米では京都議定書の問題は触れられるのでしょうか。
(大臣)この件については田中外務大臣と話をしていませんが、米国へ働きかけることは大事ですから、外務大臣にはお話を頂きたいと思っています。
(質問)これから、話してくださいとおっしゃっるおつもりですか。
(大臣)私が働きかけなくても、今までも前任の河野外務大臣が色々な場でおっしゃっていますし、当然、外務省もそういう方針でやっていただいていると思っています。田中外務大臣も国会でそのようなことをおっしゃっておられたのではないでしょうか。
(質問)平沼経済産業大臣が前回の閣議後会見で、京都議定書についてもっと柔軟な姿勢で行くべきではないかと発言されています。日本として、今度の日米首脳会合で何かそのような案を提示して米国に近づくということを考えておられますか。
(大臣)各閣僚がそれぞれのお立場でそれぞれの意見を持っているのは、それはそれであるということです。情勢の変化に応じ新しいポジションを合意して取っていくわけですから、何らかの形で収束をしていく。その収束をした形が内閣のポジションであるということです。今の時点では、京都議定書に対する内閣のポジションは変わっていません。
(質問)平沼経済産業大臣のおっしゃっていることは、現段階で内閣の意見とは違うということですか。
(大臣)柔軟にやる必要があるということは今まで内閣として言っていないと思います。
(質問)川口大臣ご自身はどうお考えですか。
(大臣)非常に重要なのは環境十全性ということです。米国の参加が必要な理由は正に環境十全性そのものからということです。何度も言っていますが、米国は温室効果ガスの排出量が世界の4分の1を占めており、その米国が参加しない場合、途上国も参加しないであろうと思います。一人当たりの排出量が一番である米国が参加しないのに、一人当たりほんの少しの排出量である途上国が参加するとは考えにくいわけです。将来的に2010年の途上国の割合が排出量で半分を占めるという状況になった場合、そういう状況で環境十全性が保たれるであろうかということから、米国の参加が重要であるとずっと申し上げているわけです。それは内閣の姿勢でもありますし、私個人の考え方でもあります。
(質問)京都議定書の枠組みを守るという位置づけは、削減率と目標年次をきちんと守るということですか。
(大臣)色々な人が色々な言い方をしています。京都議定書に合意しないと米国とEUが言った時に、その京都議定書は何を指すのかという問題があります。今存在する京都議定書は我々が署名したものですが、その細部はこれから検討して決めるわけです。たとえば排出量取引についてはそれぞれの国の割当量のどれだけをリザーブに入れるかや、遵守については守れなかった時のペナルティーのことなど議論している最中です。それらは何も決まっていません。それを決めるのがボンのCOP6再開会合です。京都議定書と言った時に運用ルールのどこまで含めて京都議定書と言っているのかわかりません。普通の人が京都議定書と考えた時には運用ルールが決まっていない署名をしたものだと言うこともあると思います。それを実際にどう動かしていくかはこれから決めるわけです。
(質問)大臣のこれまでのご発言では、削減率と目標年次を含まなければ京都議定書ではないとおっしゃっていますが。
(大臣)削減率と目標年次を含まなければ京都議定書ではありません。
(質問)その2つは動かせないということですか。
(大臣)京都議定書というのは削減率と目標年次を含んでいるということです。
(質問)今までの数字にもこだわらないということですか。
(大臣)当然私はこだわります。
(質問)先日のブッシュ大統領の声明について、基本的な削減率や目標年次についてはっきりしないので玉虫色だというお話でしたが、その後、ハッキリしない部分については確認されましたか。
(大臣)これから確認しないといけないことです。実はブッシュ大統領が声明を発表する前に、米国からアンブレラの国々に通報がありました。こういうことを言うよと話があったので、それは何かと質問しています。その時には「言えない」ということでした。今までずっと議論してきた中で、自主規制だけではうまくいかないだろうということで京都議定書ができたわけです。削減目標と約束年次は含まないといけないと私は思っていますし多くの他の国も思っています。
(質問)米国が言えないというのは、削減目標や約束年次について米国が受け入れるかどうかについてですか。
(大臣)よくわかりません。
(質問)米国にはどういう質問をされたのですか。
(大臣)約束年次と削減目標について何も触れていないが、その点はどうなのかと聞きました。
(質問)それは言えないという答えだったんですね。
(大臣)答えはなかったということです。
(質問)米国自身も決めかねているということですか。それとも決めているが言えないということですか。
(大臣)それについてもわかりません。
(質問)その確認がないと日本としても今後の態度を決められないのではないですか。
(大臣)日本だけではなく他の国々も皆知りたがっていると思います。米国が今後いくつかのことについて、更に議論を進めていくということですから、その過程で日本が働きかける余地があると思います。
(質問)米国に対する働きかけはいつまで行い、また日本が批准の立場を表明するのはいつ頃になりますでしょうか。COP6再開会合までということになりますか。
(大臣)小泉総理からもありました通り、最後の最後まであきらめずに米国に対し働きかけていくということです。働きかける余地がある限りということです。
(質問)ボン会議が駄目になった場合、その後も働きかけるということですか。
(大臣)駄目になるとかならないとかは分からないですから、日本は米国に対し働きかける余地がある限り働きかけるということです。
(質問)COP6再開会合でも、日本は京都議定書批准について態度を表明できないということになりますか。
(大臣)日本の方針は、国際合意である2002年発効が可能になるようにCOP6再開会合で最大限の努力をするということです。
(質問)そうしますとCOP6再開会合の場では、日本として何らかの表明ができるということでしょうか。
(大臣)2002年発効を目指して最大限の努力をするということです。また同時に国内制度の構築に取り組むということです。
(質問)各国の批准の手続きを考えると、ボン会議で合意して京都議定書の枠組みや運用ルールが決まらないと2002年発効は事実上不可能になると思うのですが、それでも今後米国への働きかけは続けていくのですか。
(大臣)温暖化防止にとって重要なことは、一つしかない地球を守るための地球人の試みであるということです。温室効果ガスの大半を占める国々が入らない枠組みになってしまっては、後世の人々に対して誇れる仕事をしたといえるでしょうか。京都議定書はその仕事に向けた努力でして、米国が京都議定書不支持を言い続けていることは非常に残念なことです。それでも我々は最後の最後まで米国に働きかけるべきで、それをやらなければ後世の人々に対して申し訳ないと思います。
(質問)2002年の発効を目指すことと米国の参加を求めるということが両立しない場面がでてくると思いますが、今までの発言からすると2002年の発効が間に合わないとしても米国に対する働きかけを続けていくということになりますか。
(大臣)そういった趣旨ではありません。私の申し上げていることは、2002年の発効を目指して最大限努力を続けるということと、米国の参加が重要でありそれに向けて働きかけを続けていくという両方を行っていくということです。片方が他方に優先するということではありません。
(質問)十全性の観点からなのですが、米国が市場からの圧力もしくは、国際世論の圧力によって京都議定書の枠組みに合流することが担保された場合、日・欧・露で先行して発効するようなオプションはあるのでしょうか。
(大臣)どのようにして担保するかが問題でして、環境十全性の観点からは米国に働きかけていくことに尽きると思います。
(質問)米国の態度が明確になる中、京都議定書のキーとなる日本の態度に注目が集まると思うのですが。
(大臣)米国の態度が明確であるかどうかの判断は簡単な問題ではないと思います。今回のEUと米国のサミットの詳細を検討してみないと分からないことですので、その検討を行っていくことが第一だと思います。また、米国がアンブレラの国々に今回の声明を発表する事前に話をしたときに、いくつかの国は、米国は京都議定書の修正を行おうとしているとおっしゃっていました。私は前回、米国は温暖化問題について京都議定書と共通の要素を持っていると申し上げましたが、今回の声明でも、温暖化を真剣な問題として受け止め、責任を持ちリーダーシップをとり対応していくということです。3月頃の報道にあったような温暖化が起こっているのか分からないというような状況から考えると前進していると思います。もちろんターゲットを明確にして約束年次、拘束性についての発言がないなど問題点も多くあり懸念することも多いわけです。EUとの間でどのような話があったかについて検討していかなければならないわけですが、その中で新しい展開があったのかそれとも全く変わっていないのか、判断する必要があります。
(質問)日本としては米国が京都議定書に戻ってくる可能性があると考えているのですか
(大臣)米国が何を考えているかということについて、情報をきちんと集めて検討していくべきだと考えています。
(質問)EUと米国の首脳対談について予想通りだったのか、期待はずれだったのかについて大臣のお考えはどうですか。
(大臣)その対談の中身をきちんと検討してからでないと分かりません。
(質問)米国の参加と2002年発効のどちらかを選ばなければならなくなった場合に、2002年発効が前提であるという観点から米国抜きでも発効を目指すことになりますか。
(大臣)環境十全性の観点から米国の参加は非常に重要であり、また2002年発効に向けて来るCOP6再開会合で最大限の努力をするということも重要です。これは小泉総理から任命の際にいわれたことでもあり、やります。
(質問)どちらかを選ばなければならなくなった場合にはどうですか。
(大臣)それは仮定の話ですので、先ほど申し上げました2つのことを全力で行っていきます。
(質問)実際問題としてスウェーデン首相の話の中で米国が参加しなくてもEUは参加するということでしたので、COP6終了後にはEUは批准し、米国は参加しないという状況が生まれることになると思うのですが、その中で日本は環境十全性の立場から検討するというだけで、国際社会に対して説得力のある説明ができないとしたら国際社会からの非難を浴びると思うのですが、どうでしょうか。
(大臣)日本がリーダーシップをとって米国に働きかけ、2002年発効を目指してCOP6再開会合で努力していくことに変わりはないわけですから、国際社会から日本が非難を浴びることになるとは考えていません。また事実関係としてCOP6終了後、EUのすべての国が京都議定書に批准できるかどうかは各国の国内制度の問題もあり定かではありません。日本も批准するためには法的なプロセスが必要であるわけです。国内的に担保する措置がなければならないですとか、そのために枠組みが国際的に決まっていなければならないですとかの要件があるのです。また米国も批准のために異なった法的枠組みを持っているわけでして、国によって異なるという事実関係を押さえていただきたいです。
(質問)米国が最終的に参加しないとはっきりした場合には、日本としては環境十全性が保てないとの立場から批准をしないということもあり得ますか。
(大臣)今申し上げられることは、米国の参加は温暖化を抑制していくために非常に重要で日本は最大限の努力をし働きかけていくということと、2002年の発効を目指して最大限の努力をCOP6再開会合で行うということです。

(了)