記者会見大臣発言要旨(平成13年6月12日)

(質問)昨日のブッシュ米国大統領の声明とプロンク議長の統合交渉テキストについてお考えをお聞かせ下さい。
(大臣)ブッシュ米大統領の声明はいくつかの要素が入っていますが、一口にいうと非常に玉虫色に読める声明ではないかと思います。一方で京都議定書については、以前から使っている表現ですが「フェイタリーフロード(致命的欠陥)」という言葉を引き続き使っています。他方では今後の取るべきステップ、原則についていくつか言っています。それを見ますと市場メカニズムの活用など京都議定書に含まれている要素と共通する部分が含まれています。ということで、様々な要素が含まれており、米国が今後これをどのように具体化していくか、国際的な場でどのような取組をしていくのかということについて関心を持っています。評価をしたいことは、米国が今まで閣僚レベルで真剣に議論をしてきていると言っていましたが、実際に真剣に議論してきたということです。中間的な報告であるということですが、真剣な検討作業を行ったということについては評価をしたいと思います。また、地球温暖化問題の重要性を真剣に受け止めて、各国と協力しながらリーダーシップを発揮していくときちんと言ったその姿勢は評価できると思っています。それから、調査研究や技術開発、市場メカニズムの活用の分野などは日本としても協力できる項目もあると思います。ただ、数値目標について直接的な言及がなかったこと、具体的な提案がなされる時期が明らかにされていないことは懸念されます。日本としては、京都議定書の2002年の発効を目指して最大限の努力をすることの方針に変更はありません。国内制度をきちんと構築していくことが必要であると思っています。何度も申し上げていますように米国は世界の温室効果ガス排出量の4分の1を占めており、またその米国が京都議定書に入らないことになれば主要な途上国も参加しないことになると思われますので、米国の参加は非常に大事で、京都議定書という国際的な枠組みは1つでなければいけないと思っています。これからも米国が国際的枠組みに戻って今後のボンでのCOP6再開会合において取組に全力をつくすように願っています。またそのように働きかけていきたいと思います。
プロンクペーパーについては、今までと2点違っているところがあります。今回、今まで示されていた政治的課題についての解決策の案に加え、最終的に締約国会議で合意するための詳細なテキストの案が用意されていました。合意に向けたプロンク議長のご努力に感謝しますし、評価をしたいと思っています。このペーパーの詳細な内容についてはこれからきちんと検討していきたいと思います。また、吸収源と途上国への支援についての違いが今までのプロンクペーパーと違っている点であると認識しています。
(質問)今日の閣議、閣僚懇でどのような発言をするおつもりでしょうか。
(大臣)特にこの件について発言する予定はありません。
(質問)プロンク議長の調停案は吸収源について新しい提案がされていますが、計算すると日本の提案がほぼ全面的に認められるものになりそうです。これは前進と言えるのではないでしょうか。
(大臣)吸収源に関する日本の主張について理解されたということについては今までよりは前進したと言えると思います。ただ、今まで私がプロンク議長に申し上げてきたことは、プロンクペーパーは全体として様々な問題点を含んでいるということです。たとえば市場メカニズムの活用について十分になされていないとか、遵守の規定が非常に厳しいものになっていて、取組を促進するという発想から遵守の規定が作られていないことは問題ではないかなど様々なことを言ってまいりました。そういう点はまだ残っていると思います。いずれにしても詳細は検討します。
(質問)吸収源は計算では日本は何%になりますか。
(大臣)3%です。
(質問)途上国支援についてはどうお考えですか。
(大臣)途上国支援の変化は、今まで附属書Iの国々はヨーロッパや日本、米国などの先進国に東欧などの経済移行国も含まれていたのですが、今回の案では経済移行国については支援額を定める基礎となる排出量を50%割り引くということを言っています。この点についてはニューヨークでの会合で経済移行国にはかなり不満のあった点です。
(質問)ブッシュ米大統領声明は玉虫色というお話でしたが、今の時点で米国は京都議定書の枠を超えているのかいないのか判断がつき兼ねるということですでしょうか。
(大臣)表のところでは、ブッシュ米大統領は「フェイタリーフロード(致命的欠陥)」と言っていますが、今後のステップとおっしゃっている点では京都議定書に含まれている点があります。たとえば市場メカニズムの活用などです。また、技術については温暖化防止条約の中で言っていますし、市場メカニズムによるインセンティブというのは京都議定書が指向しているものそのものです。共通な案と認識しています。
(質問)ブッシュ米大統領は「フェイタリーフロード(致命的欠陥)」と言って米国民に対し、はっきりと京都議定書を批准しないというメッセージを出していると思います。それに対し、EUは米国抜きでも京都議定書を発効させるとはっきり言っているわけです。今日本が迫られているのは、米国が参加する見込みがないとなった時に、EUと一緒に米国抜きでも京都議定書を発効させるという政治的決断をするかどうかということではないでしょうか。
(大臣)米国の参加は非常に重要であるというのが日本のポジションであり、ずっとそれで来ています。それは何故かというと、先程申し上げたように国際的に枠組みが1つであるというのが環境十全性という点では大事であるということ。温暖化防止のために世界全体としてどうやって対応していくのが一番いいのかという観点からいって、最大の排出国である米国が参加しないということは、将来的に先進国全部が先行して、途上国が参加するべきであるという点で充分ではないということです。問題が生ずるであろうということです。ですから米国の参加に向けて働きかけるということについての方針に変更はありません。それから京都議定書と一言でいいますが、京都議定書というのは今作りあげつつある京都の家です。細かい運用ルールはハーグで合意できませんでしたが、それをこれから作っていくということですから。実はブッシュ大統領が否定する京都の議定書、あるいはEUが批准すべきであると言っている京都の議定書、この枠組みは実ははっきりしていないんですね。という現実があるということを申し上げておきます。
(質問)日本として京都議定書を批准するかしないかと言うタイムリミットはどのへんと考えておられますか。
(大臣)タイムリミットがいつかと言うよりも、むしろ批准できるプロセスです。批准をするということは日本が実行していくと国際的に約束をする訳ですから、約束をするための国内措置があるということが必要なわけです。それから国内措置を作るためには京都議定書の詳細が決まっていないとできないということです。そういうことを踏まえて、できるだけ早く2002年の発効を目指して、最大限の努力を今度のボンでのCOP6再開会合でしようということです。
(質問)日本の批准には米国の参加が不可欠ですか。
(大臣)批准をするためには、京都の家の内部がきちんと決まっていて、日本の国内的措置がそれを担保出来るような体制ができているということが必要です。
(質問)米国が最終的局面でも2002年までに参加しないとしたら、日本としてはそれはそれとして批准するということですか。
(大臣)繰り返しになりますが、温暖化防止の取組をするために、国際的枠組みは1つであるということが非常に重要なことです。ですから、それに向けて日本が全力を向けて努力していくのが従来からの日本の方針です。今後も変わらず、その努力をしていきます。(質問)繰り返しかもしれませんが、米国の参加が絶対条件であるということですね。(大臣)京都議定書の意味というのは、国際的に全部の国が温暖化防止の取組をするための枠組みがあるということです。京都議定書は今完成途上にあります。ですから、京都議定書を完成させ環境十全性が保たれるように、日本は今度のCOP6再開会合で最大限の努力をし、米国に参加するよう積極的に働きかけるということです。
(質問)日本と他の国々が京都の家を建てかけているのに、米国が別に自分の京都の家を建てようとしているのだからそれはどうぞと、日本は他の国々と協力して粛々と今の枠組みで家を建てていこうということにはなりませんか。
(大臣)米国が別の家を建てようとしているのかどうかは今回の声明ではわかりません。
(質問)米国は明言しているのではないですか。
(大臣)京都の家が何を意味しているのかは、まだ京都の家が出来ていないのでわからないわけです。これから作ろうとしているわけで、米国の声明と比べてみますと京都議定書と共通の部分があるわけです。米国が約束年次と削減目標について言及していないのでわからないところは確かにありますが。
(質問)ブッシュ大統領の声明ではあらゆる意味で京都議定書が非現実的であり、恣意的で科学に基づくものでないとか、このような欠陥のある条約を米国が受け入れるわけにはいかないとまで全世界に宣言しているのにもかかわらず、日本政府としてこういう表現でいいのでしょうか。
(大臣)きちんと考えなければいけないのは、環境十全性です。地球温暖化を抑制するために何が大事で何が今できるかということです。日本政府は、米国の参加を働きかけるということで、閣僚も国会もやって下さっています。その努力を引き続き続けることが大事だということです。

(了)