記者会見大臣発言要旨 (平成13年4月13日)

 本日は、閣議の前に公益法人等の指導監督等に関する関係閣僚会議がございました。議題は3つありまして、「国所管の公益法人に対する総点検の結果について」と「行政委託型公益法人等の改革について」と「公益法人に対する指導監督体制の整備について」でございます。各省で実施したチェックの報告書がまもなく公表されると聞いております。指導監督体制の整備状況については責任体制の確立や立入検査の実施等を各省が整備するということで、環境省は整備済みです。環境省所管の公益法人は92で、少ない方の下から4番目です。一番多いのは文部科学省で1948,一番少ないのは防衛庁で22です。閣議では、環境省関連の質問趣意書が2件出ています。1つは、社民党の原陽子議員から京都議定書への米国の態度急変に関する質問で、答弁書は、外務省、経済産業省、環境省が分担して作成しました。もう1つは、民主党の佐藤謙一郎議員からブラックバス等外来魚に関する質問です。これは、農林水産省と環境省で答弁書を作成しました。原陽子議員には、米国に対して関係閣僚が手紙を出したことなどを答えておりまして、ブラックバスについては、生態系を乱すものとして認識していて、今、勉強会をしていますという話を答えております。環境省関連は以上です。

(質問)プロンク議長の新調停案の米国及び日本への影響についていかがお考えですか。
(大臣)日本にとっては、シンク(吸収源)が大変厳しい内容になっています。我が国はハーグでの最期の段階の交渉、あるいはそれ以降の交渉を反映したプロンクペーパーであるべきと言っていましたが、それが受け入れられていないと思っています。プロンクペーパーは、これからの交渉のベースとしては問題だと思います。このペーパーはかなり前から用意されていたフシがありまして、ハーグで出たペーパーからあまり変わっていない、議論のベースとして問題があると思います。
(質問)プロンクペーパーの米国に対しての影響はどうでしょうか。
(大臣)米国の一連のことが起こる前に作られたペーパーであると認識しております。米国を京都議定書の議論に戻ってもらうという点でいうと、反対の方向にいくペーパーではないかと思います。
(質問)今月19日から渡米されますが、国連の非公式閣僚会合に出席されるほかに、なにかご予定はありますか。
(大臣)非公式閣僚会合は20日の夜から始まります。20日の昼は、各国の閣僚と会います。19日の夜、アンブレラの閣僚が集まると思います。ホイットマン環境保護庁長官がニューヨークにいらっしゃらなければ、ワシントンに行って、お会いしたいと思います。また、NGOやシンクタンクを訪ね、自分の目で、肌で感じを得たいと思います。
(質問)プロンクペーパーがEUより遅れて日本に出されたと聞いていますが。どうお考えですか。
(大臣)確認していません。もし遅れて出したのであれば、問題にすべきだと思います。
(質問)当初は、ニューヨークに来る40カ国にしか配布していなかったとも聞いていますが。
(大臣)プロンクペーパーの性格ですが、昨年の非公式閣僚会合があった時、その場にいた国にしか配布されなかったペーパーはありました。全員に配布したのであれば、そのケースとは違う位置づけのペーパーだと思います。事実関係を確認していませんが、そういうことであれば、ペーパーの位置付けをプロンク議長が変えたということではないでしょうか。
(質問)昨日、森嶌中央環境審議会会長が、「米国の提案を待つのではなく、日本として米国の対応に対しどうするのか、あるいは米国が京都議定書からはずれるのであれば米国とたもとを分かって批准するなどの政府の方針を明らかにしてから、ニューヨークの会合に行くべきだ。」とおっしゃいましたが、それに対してどうお考えですか。
(大臣)森嶌先生とは直接お話していないのですが、新聞報道を見る限りにおいてはちょっと違うニュアンスだと感じましたが。森嶌先生は米国が入らなくても批准をすべきだとおっしゃっていると報道されていますが。
(質問)前段は、日本がいつも後手に回っている、米国の提案が京都議定書の枠組みを越えるものであったならどうするつもりなのか、ちょっとした手直しで米国が応じるとは考えていないとの見通しを示したうえで、日本は後手に回らず、きちんとした対応を考えておくべきで、自分としては、米国が入らなくても日本は批准するという覚悟を持ってニューヨークへ行ってほしいとおっしゃています。
(大臣)どういう意図でおっしゃたのかご真意を伺いたいとは思いますが、今のお話を前提に申し上げれば、私と森嶌先生とは、「京都議定書が2002年に発効すべく全力をつくす」という考え方で違いは無いと思っています。あとは、方法論の話と、様々なおこりうる変化に対応できるいくつものシナリオを持っているかどうかということです。しかし、そのシナリオを作るための情報が現在ないわけで、それは、米国自体がどこにも情報を発信していないからです。EUとも話しましたが、誰も情報は持っていません。事前にシナリオを考えておく姿勢は大事ですが、具体的にどんなことが考えられるかというと、今はあいまいな前提しかないということです。大事なのは米国に入るように皆で働きかけるということです。その理由は、環境十全性ということです。米国のような温室効果ガスの大排出国が入るということが大切です。また、米国抜きで温暖化抑制の行動を取っていっても、25パーセントの排出国である米国が入らないのでは、将来発展途上国も入る可能性は小さいと判断しています。環境十全性を保つ考え方から、米国を巻き込むよう働きかけるのが、人類の歴史を考えた上でも非常に大事だと思っています。森嶌先生がおっしゃたことと、私の言っていることは方法論の違いです。過去の歴史を見ると、米国は署名しても入っていない条約が沢山あるわけです。京都議定書について始めから米国抜きでやった時に必ず米国が後から入ってくるというのであれば、ひとつの方法論としてありうると思いますが、今の段階では、それは不確定な前提をもとにしています。米国に入ってもらうよう働きかけるということが一番大事なことです。
(質問)森嶌先生があえておっしゃたのは、日本が京都議定書を批准するかどうかは米国が批准するかどうかに左右されると、産業界はじめ国民が思ってしまうという危機感からではないかと思います。日本としては、批准するんだという政府の強いメッセージを環境省から発してほしいということで、対応を先送りすることへの危機感を持っておられるのではないでしょうか。
(大臣)お気持ちはよくわかります。我々としては、2002年の発効を目指しているのは変わりがないので、森嶌先生の危機感はわかります。私も危機感を持っています。従って、政府としては一生懸命米国に対して働きかけるということです。米国が入る入らないという事と日本が入る入らないという事が繋がって議論されていると思います。米国が入らなければ日本もはいらないのでしょうということではなく、我々が今やろうとしているのは、米国が入れるような、そしていずれ途上国も入れるような枠組みを作っていく努力をするということです。みんながそれを認識するのが大事なのであって、形のところだけの議論になっているのではないか。そういう問題ではなく、温暖化を抑制することが非常に大事で、そのために米国を参加させることが大事ということです。みんなで力を合わせて温暖化を抑制する仕組みを作って、50年後、100年後の世代に良い環境を残せるかが大事なんです。EUも言っていますが、最終的に思うところはみな同じです。皆で努力をすればいい枠組みを作れるじゃないかと、そこのところを忘れてはいけないということです。
(質問)NGOなどが懸念を抱いているのは、米国が批准しなかった場合、日本の産業界などは競争上不利になるので、日本が批准をためらうのではないかということではないでしょうか。そのあたりはどうお考えですか。
(大臣)方法論の違いにとらわれていると間違うと思います。大事なことは、日本が温暖化を抑制していこうという姿勢を持つことであり、国、地方公共団体、産業界、NGO、国民一人ひとりもそういう意志を持ってやっていこうとすることです。それを実際にやっていこうとする時には、昨日も国際シンポジウムで議論していますが、排出量取引がどういう形で作られるか、そういうことの議論が大事なのです。良い枠組みを作ることができるかどうかが今の最大の課題です。その先の批准について方法論をどうするかということを中心に考えない方がいいです。今は、枠組みを作るために皆で議論しているので、その議論に米国も参加してもらうことが大事です。
(質問)一般的な受け止め方は、米国が参加しないことによって日本の京都議定書の批准が危うくなる、米国がどういう提案をするかわからないとしても日本としては環境を第一にやっていくんだよという強いメッセージを環境省から発して欲しい、ということではないでしょうか。
(大臣)私たちとしては強いメッセージを発しているつもりです。その発し方は、温暖化の抑制のために今大事なことは、できるだけ多くの国が参加して枠組みを作ることなんだということです。みんなが参加できるような枠組みを作るというこです。それを軽々にあきらめる話ではないということです。
(質問)先程、大臣からニュープロンクペーパーは米国に交渉にもどってもらうということとは反対の方向のものだというご発言がありましたが、その点と、またシンクについて厳しいということであれば、日本政府としては温暖化の交渉を今後どう進めていくかについてお考えを聞かせて下さい。
(大臣)それは、米国に対して働きかけるということです。昨日、今日と国連大学で開かれている「京都メカニズムに関するシンポジウム」などの議論を通じて実際に信頼できる枠組みを作る努力をし、交渉していくということです。
(質問)シンクについて、受け入れ難いという点はどうでしょうか。
(大臣)日本のポジションを主張し、交渉をしていきます。
(質問)今までは、シンクについて米国が非常に熱心で日本と共同歩調をとってきましたが、米国が京都議定書不支持ということで、なかなか議論に乗ってこないと思われますが、交渉の方はいかがでしょうか。
(大臣)アンブレラが崩壊したわけではありません。先日も米国を含めて電話で会談などもしていたわけですから。今までの枠組みで交渉をしていくことに変わりはないです。新しいプロンクペーパーは、ハーグとまったく同じとは言いませんが、基本的にはハーグで出されたペーパーと同じで、そういう意味では、新しいプロンクペーパーの内容を見れば、議長として会合をまとめるという立場の者として取るべきやり方であったか、非常に疑問です。
(質問)遵守についても日本が従来主張してきたことが認められず厳しい内容だと思いますが、その点についてはどうお考えでしょうか。
(大臣)遵守もハーグにおいてかなり議論があったところです。遵守の案が少し内容が変わってきていて、ペナルティーレートが変わっています。それをどういうふうに評価するか、1パーセント増えたあたりがどういう意味を持つのか分析・検討しないとわかりません。ただ、交渉の仕方としては、ハーグのところから、基本的に同じようなことからスタートしようとしているので、日本としても同じ事を主張し、同じ事をやっていくということです。
 私の個人的意見を申し上げれば、このペーパーは、米国の様々な変化が表に出る以前に準備をされて、それがそのまま出たという印象を持っています。米国を枠組みにもどすという必要性からは、あの内容では今の時点で出すべきではなかったと思います。
(質問)内容的には、シンクの問題に米国の意向が反映されていないということが、あるいは、根本的に途上国問題が問題なんでしょうか。(大臣)途上国の問題は別です。京都議定書自体が途上国の責任は問わないという合意ができています。これはそのままです。たとえば排出量取引などはハーグより厳しくなっています。どこまで排出量取引で排出量枠を市場に出して良いか、ハーグでは3割まで、今回のペーパーでは1割までです。そうすると、排出量取引のマーケットが小さくなってしまいます。米国やアンブレラ諸国が言っているような市場のメカニズムを活用した効率的な制度ということから言えばまったく反対のものです。
(質問)まったく同じでないにしろ、ハーグの始めの段階に戻ったということであれば、ハーグから今までの交渉は何だったのか、ハーグで一生懸命やってまとまらなかったのに、COP6再開会合が開かれる7月までの短い期間で本当に合意ができるのかという点ではいかがでしょうか。
(大臣)日本がずっと言っていましたのは、新しい提案はハーグの最終段階の壊れた案、あるいはその後の会合での合意を踏まえたペーパーであるべきだということです。しかし、実際に出てきたものは、そういうペーパーではなかったということです。プロンク議長は、一生懸命まとめようとしているのですから、何かお考えがあってなさったことだと思いますが、伺ってみないとよくわからないと私は思います。

(了)