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インドネシアにおける環境汚染の現状と対策、環境対策技術ニーズ 

環境協力の現状

(最終更新日:2013年3月21日)

1991年から1992年にかけて日本の無償資金供与により建設されたインドネシア環境管理センター(EMC)に対しては、環境政策の推進を目的とする環境保全技術研究、研修、環境モニタリングを行うことを目標として、1993年から2000年まで施設整備と人材育成が継続して行われました。この支援は地方環境管理システム強化プロジェクト(2002~2006年)として引き継がれ、EMCとモデル地域(北スマトラ州)における地方環境ラボの整備と運用、モニタリングの実施、環境データ・情報の水環境行政による活用推進などについて支援が行われました。この地方政府に対する環境支援は2009年から2011年までの地方政府職員環境管理能力強化プロジェクトに引き継がれています。これは地方政府職員の水質管理法令施行能力強化を目的とする支援であり、環境省のみをカウンターパート(C/P)とせず、関係機関及びチサダネ川流域の複数の地方政府がC/Pとなっています。エコラベル導入支援も行われました(2003~2007年)。

工場の排水対策については、上述のプロジェクトのほか、ジャカルタ汚水管理マスタープラン(2010~2012年)、スラバヤ市水質管理能力向上(2007~2009年)、インドネシア排水処理適正技術センターの創設と運営計画(2001~2004年)、スマラン市モデル都市環境改善プロジェクト(2001~2004年)、産業公害防止技術訓練計画(1993~1998年)などの技術協力が実施されています。産業公害防止技術訓練計画には広範な内容が含まれており、プロジェクト終了時には公害防止インセンティブ強化に効果的な公害防止資格制度導入の重要性が指摘されました。これは後に成功裡に進められているゴム産業公害防止管理者育成支援(2003~2007年)及び西ジャワ州公害防止管理者制度導入支援(2002~2007年)につながり、長期間の連携した支援が成功につながる良い事例となっています。

環境モニタリングについては上述のEMCへの技術協力のほかに、環境モニタリング改善事業(1994~2001年)が行われており、水質測定機器(対象:14州39ラボラトリー)や大気汚染・騒音測定機器(対象:14州26ラボラトリー)に関して支援が行われています。短期のハードウェアに重点を置いた支援であったこととC/Pの財政力が弱かったこともあり、一部では機器が充分に活用されていない地域もあります。そのため、息の長い人材育成支援、機器維持管理技術の支援などの重要性が示唆されています。国際協力機構(JICA)はプログラム化を行い、連携した技術協力を重視する、としています。

実際の環境行政の権限をもつ地方政府(県・市)の環境部門へは、2006年から毎年度、国家予算(特別交付金, DAK*)により水質管理のための施設や機器整備などハード的な支援が中央政府によって行われているものの、それらを使いこなす人材育成への技術協力も求められています。

注*:Dana Alokasi Khusus

(2012年2月時点での調査結果に基づく)

インドネシアにおける日本の環境協力案件概要

  • 1.環境管理全般
プロジェクト名 適合性評価(ISO14001)研修
実施期間 2006
形態 経済産業省技術協力(受入研修)
概要 途上国で不足しているISO14001の審査員を育成し、アセアン諸国の適合性評価制度の基盤を強化する。
プロジェクト名 省エネルギー制度導入協力プログラム (東ジャワ州におけるエネルギー診断能力向上のためのキャパシティビルディング)
実施期間 2005~2006
形態 経済産業省専門家派遣  (実施機関)JICA、JETRO、AOTS (1)現地カウンターパート:インドネシア商工会議所東ジャワ州支部 (2)日本側協力機関:(財)省エネルギーセンター
概要 東ジャワ州のモデル工場において、企業のエンジニア等を対象に、省エネ診断方法、エネルギー測定、データ解析及び省エネルギー対策の提案等の実地指導を行い、省エネ技術がもたらす経済性に対する意識の向上、企業の技術能力の向上がみられる。その結果、一部のモデル工場では小集団活動による独自の省エネに取り組むなど積極的な取り組みを開始した。一方、東ジャワ州政府も省エネ法等の州法制定の検討開始することを表明した。
プロジェクト名 インドネシアクリーナープロダクションセンター
  ※日本ではなくドイツの協力案件(参考のため掲載)
実施期間 2003~2009
形態 技術協力
概要 クリーナープロダクションの普及を目指して、人材育成、パイロットプロジェクト実施等を実施する。
詳細情報 [PDF 119KB]
プロジェクト名 インドネシア地方環境管理システム強化
実施期間 2002.07~2006.6
形態 JICA技術協力プロジェクト
概要 環境管理センター(EMC;SARPEDAL)の主導のもと、EMCと地方政府環境局が協働する環境管理体制が構築されることを目指す。
詳細情報 [PDF 161KB]
プロジェクト名 環境モニタリング改善事業
実施期間 1994~2001
形態 有償資金協力(一般アンタイド)
概要 全国的な環境モニタリングネットワークの末端である地方における保健省、公共事業省、工業省のラボラトリーの整備する(水質測定機器、大気汚染・騒音測定機器、移動ラボラトリーの供与)。
実行額27億4,300万円、金利2.6%、返済30年(うち据え置き10年)
プロジェクト名 インドネシア共和国環境管理センター
実施期間 1993.01~2000.03
形態 JICAプロジェクト方式技術協力※
概要 無償資金協力により設立された環境管理センターに、ラボの機能、モニタリング計画の実施機能、環境情報の収集・分析機能及び研修機能を持たせることを目的とし、大気汚染・水質汚濁・有害物質・研修などの分野の技術移転を実施する。
プロジェクト名 環境管理センター設立計画
実施期間 1991.06~1991.07
形態 無償資金協力
概要 環境モニタリング手法の確立及び環境行政分野の人材育成を目的とした環境管理センターの設立計画及び関連機材の供与を行う。
【邦貨】:8.88億円
  • 2.産業公害
プロジェクト名 環境基準遵守(産業排水)・改善協力プログラム(ゴム産業公害防止管理者育成支援)
実施期間 2003~2007
形態 経済産業省専門家派遣 (1)現地カウンターパート:インドネシアゴム協会 (2)日本側協力機関:(社)産業環境管理協会
概要 - 環境概論(臭気)、活性汚泥の設計、運転管理、臭気対策の研修用テキスト(インドネシア語版)を作成した。
- テキストを使って6月、11月にそれぞれ約1ヶ月をかけ北スマトラ及び南スマトラの2ブロックずつ悪臭対策についてのOJT指導及び活性汚泥装置の設計、最適運転管理指導を実施した。
- 研修テキストの内容を基に研修受講者の中心メンバーがゴム産業向けEPCMテキストを作成した。
プロジェクト名 環境基準遵守(産業排水)・改善協力プログラム(西ジャワ州公害防止管理者制度導入支援)
実施期間 2002~2007
形態 経済産業省専門家派遣(実施機関)JETRO、(財)海外技術者研修協会(AOTS) (1)現地カウンターパート:チタルム川管理・運営委員会 (2)日本側協力機関:(社)産業環境管理協会
概要 公害防止管理者制度導入に向けた認証方法の基本コンセプトの策定支援、標準教科書の策定支援、試験方法、研修方法策定に係る支援等を実施した。
プロジェクト名 インドネシア産業公害防止技術訓練計画
実施期間 1993.10~1998.10
形態 JICAプロジェクト方式技術協力※
概要 民間企業に対する産業公害防止技術の普及・指導のできる人材を工業省内に育成するための技術移転を行う。
  • 3.水質管理、水質汚濁
プロジェクト名 ジャカルタ汚水管理マスタープランの見直しを通じた汚水管理能力強化プロジェクト
実施期間 2010.07~2012.06
形態 JICA技術協力プロジェクト
概要 汚水セクターにかかる適切な政策、システム及び計画を構築する。また、ジャカルタ特別州に汚水セクターの現状を改善する十分な能力を獲得させる。
プロジェクト名 地方政府環境管理能力強化プロジェクト
実施期間 2009.03~ 2011.08
形態 JICA技術協力プロジェクト
概要 地方政府環境管理部局が国の指導のもとで、水質管理及び水質汚濁制御に関する大統領令(2001年第82号)を的確に執行するために必要な能力の強化を図る(対象地域はジャカルタ近郊の一級河川流域都市)。
プロジェクト名 スラバヤ市水質管理能力向上
実施期間 2007.11~ 2009.3
形態 JICA草の根技術協力事業(地域提案)
概要 スラバヤ市水質保全担当者の、モニタリング、データ管理能力、水質改善政策立案能力を向上させる
プロジェクト名 ガロガ第2中学校給排水施設整備計画 (インドネシア)
実施期間 2007
形態 草の根・人間の安全保障無償資金協力
概要 【邦貨】:8,340,516円
プロジェクト名 デンパサール下水道整備計画(第二期)
実施期間 2007
形態 有償資金協力
概要 バリ島において、下水道管渠(かんきょ)の敷設を行うことにより、当該地域における下水普及率の上昇を図るとともに、当該地域の生活環境改善及び観光資源の保全を図る。
【邦貨】:60.04(億円)
プロジェクト名 ジャカルタ市内貧困地区排水改善計画
実施期間 2003
形態 無償資金協力
概要 「ジャカルタ市内貧困地区排水改善計画」を策定し、内水対策を必要とする9地区を対象に排水事情を改善し、住民の居住環境の向上に資することを目的として、緊急排水対策に必要な排水ポンプ車を購入するために必要な資金を供与する。
【邦貨】:3.35(億円)
プロジェクト名 スマラン市モデル河川環境改善プロジェクト
実施期間 2001.10~2004.03
形態 JICA開発パートナー事業※ 日本側:(財)北九州国際技術協力協会(KITA) 相手国側:ビンタリ財団
概要 豆腐工場排水に起因する河川汚濁による悪臭を解消するため、以下の成果を目指した取組を実施:
- モデル河川流域の指定、管理体制の整備
- 適正な排水処理技術の開発、工場排水の収集システム・処理施設の建設と運転技術の獲得
- 新たな豆腐製造技術の衛生管理技術の獲得
- 住民の環境保全意識の醸成、コミュニティ意識の増大
詳細情報 [PDF 144KB]
プロジェクト名 ジョグジャカルタ下水処理場建設計画 (インドネシア)
実施期間 1992.07~1992.09
形態 無償資金協力
概要 下水処理場供与及び下水幹線の建設のための詳細設計を行う。
【邦貨】:0.71億円
  • 4.大気汚染
プロジェクト名 森林火災予防計画Ⅱ(正式名:森林地帯周辺住民イニシアティブによる森林火災予防計画) (インドネシア)
実施期間 2002~2003
形態 JICA技術協力プロジェクト
概要 森林周辺地域における住民イニシアティブによる火災予防施設、組織化に必要な技術開発の協力を実施する。
プロジェクト名 ジャカルタ市大気汚染総合対策計画調査(インドネシア)
実施期間 1994.11~1997.05
形態 JICA開発調査※
概要 - 気象観測(地表、上層)実施
- 大気質モニタリング実施
- 発生源調査実施(燃料分析、固定発生源調査(アンケート及び煙道測定)、交通量調査)
- シミュレーション解析実施(現況及び将来、SO2、NO2、CO)
- 発生源対策計画策定
- アクションプラン策定
  • 5.地球温暖化
プロジェクト名 インドネシア中部ジャワ州グンディガス田における二酸化炭素の地中貯留及びモニタリングに関する先導的研究
実施期間 2012.09~2017.09
形態 技術協力プロジェクト -科学技術(京都大学)
概要 インドネシアの陸域ガス田におけるCCS事業推進のため、CCS技術を安全に適用するために不可欠となる深部地層の評価技術、地下でのCO2分布・挙動のモニタリング技術に関するSOPを提案させる。
プロジェクト名 短期気候変動励起源地域における海陸観測網最適化と高精度降雨予測プロジェクト
実施期間 2010.04~2014.03
形態 技術協力プロジェクト-科学技術 (独立行政法人 海洋研究開発機構)
概要 極端気象現象 の予測精度向上および降雨による災害緩和対策立案のための基礎研究・開発を推進し、その成果を世界に発信させる。
プロジェクト名 地球環境対策(温暖化)
実施期間 2004.02~2004.05
形態 JICA専門家派遣
概要 - 地球温暖化に関する認識強化のための協力、調査
- 地球温暖化に関する活動のレビュー・分析、戦略再検討
- 地方政府担当者向け・一般向け普及活動展開
プロジェクト名 インドネシア地球環境対策(温暖化)プロジェクト
実施期間 2004.02~2004.05
形態 JICA技術協力プロジェクト
概要 - 地球温暖化現象理解
- 地球温暖化対策理解
- CDM啓発プログラム作成

※JICA事業の分類は、近年以下のように整理、統合されました。

  • 「プロジェクト方式技術協力」→「技術協力プロジェクト」(平成14年度より)
  • 「開発調査」→「協力準備調査」→「開発計画調査型技術協力」(平成20年10月より)
  • 「開発パートナー事業」→「草の根技術協力」(平成14年度より)


(2011年3月時点での調査結果に基づく)