環境省大気環境・自動車対策大気汚染状況・常時監視関係光化学オキシダント関連情報光化学オキシダント調査検討会(平成28年度)

平成28年度第1回光化学オキシダント調査検討会会議録

1.日時 平成28年9月21日(水)15:00~17:00

2.場所 一般財団法人日本気象協会 第一・第二会議室

3.出席者(五十音順 敬称略)

秋元 肇、  板野 泰之、 井上 和也、 指宿 堯嗣、 浦野 紘平、
大原 利眞、 古関 恵一、 坂本 和彦、 紫竹 益吉、 星  純也、
向井 人史、 米原 洋一、 若松 伸司
(欠席者)
金谷 有剛
(事務局)
環境省 水・大気環境局大気環境課 瀧口課長、伊藤課長補佐、船越課長補佐、
環境省 水・大気環境局総務課 須藤分析官
一般財団法人 日本気象協会

4.議題

(1)平成28年度の解析作業計画について
(2)光化学オキシダント調査検討会報告書の作成について
(3)その他

5.配付資料

資料1
平成28年度 光化学オキシダント調査検討内容について
資料2
平成28年度 光化学オキシダント調査検討会解析作業計画
資料3
光化学オキシダント調査検討会報告書の作成について
参考資料1
平成28年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱及び委員名簿
参考資料2
平成27年度光化学オキシダント調査検討業務報告書_本編(抜粋版)
参考資料3
古関委員提出資料

6.議事

事務局 定刻になりましたので、ただいまから第1回平成28年度光化学オキシダント調査検討会を開会いたします。委員の皆様にはお忙しいところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 議事に先立ちまして、環境省 水・大気環境局大気環境課 瀧口課長様よりご挨拶があります。瀧口課長、よろしくお願いいたします。

瀧口課長 本日は平成28年度光化学オキシダント調査検討会の第1回にご参加いただきましてどうもありがとうございます。
 この検討会はご承知のように光化学オキシダントの改善効果を適切に示すための指標の提案や、あるいは昨年度には作業部会も設置していただいてシミュレーションモデルを用いた解析、長期的な濃度のトレンドに影響を及ぼす要因等の解析あるいはVOC排出量の削減に伴う光化学オキシダントの改善効果などを示していただいたところです。昨年度の成果につきましては、先月開催しました中央環境審議会の微小粒子状物質等専門委員会でも報告させていただいておりまして、活用させていただいているところです。
 今年度は、この3カ年にわたる検討のまとめとしてシミュレーションの改善を図り、O3濃度に影響を及ぼす3つの要因、越境大気汚染、前駆物質の排出量、NOタイトレーションの効果の解析をさらに進めて報告書を取りまとめていただくという予定にしております。これまでの3年間の検討の一区切りということになりますが、今年度も引き続き委員の皆様のご専門の立場からの忌憚のないご意見をいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

事務局 どうもありがとうございました。
 続きまして、委員の異動がございましたのでご紹介させていただきます。
 一般社団法人日本塗料工業会、橋本委員から米原委員。
 JX日鉱日石エネルギーの小野委員から東燃ゼネラル石油の古関委員に交代されております。
 なお、公益社団法人におい・かおり環境協会の岩崎委員と、埼玉県環境科学国際センターの竹内委員は退任されております。
 なお、本日、海洋開発研究機構の金谷委員は所用によりご欠席という連絡を受けております。
 続きまして、今年度の座長の選任でございますが、事務局としては昨年度から引き続き秋元委員に座長をお願いしたいと考えております。異議はございませんでしょうか。

   〔「異議なし」の声あり〕

 ありがとうございます。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。
 議事次第
 資料1   平成28年度 光化学オキシダント調査検討内容について
 資料2   平成28年度 光化学オキシダント調査検討会解析作業計画
 資料3   光化学オキシダント調査検討会報告書の作成について
 参考資料1 平成28年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱及び委員名簿
 参考資料2 平成27年度光化学オキシダント調査検討業務報告書_本編(抜粋版)
 参考資料3 古関委員提出資料
 以上でございます。参考資料2は分量が多いため委員のみの配付とさせていただいておりますのでご了承ください。参考資料3は今回取り扱いに関してはまだ未定でございますので、委員の皆様に同じように配らせていただいておる次第でございます。資料の過不足等はございませんでしょうか。よろしいですか。
 それでは、これ以降の議事進行は秋元座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

秋元座長 本日は皆様お忙しいところを検討会にご出席いただきましてありがとうございます。
 先ほど課長からもお話がありましたように、この検討会は今年が3年目で一区切りということで、今年度は検討会としての報告書を作成するというのが最終的な目標でございます。今までOx問題は科学と政策、サイエンスポリシーの1つの格好の例ではないかということを前に申し上げて、現在の科学的な知見をもってどういうことが言えるのか、どこまでNOx、VOCを下げるべきなのかというようなことについての1つの指針、ガイドラインを出すことがこの3年間の1つの目標ではなかったかと思います。
 その方向でそういう具体的な数字を計算するのが今年度の実際の作業の内容になりますので、それを見ないと答えがまだ見えないわけですが、そういう方向で部会を今年度進めて、最終的に3月までに報告書を作成するという段取りになっておりますので、ご理解いただきたいと思います。
 先ほど課長も言及されたように、昨年度から作業部会を立ち上げました。実際の検討会の作業をやっていきますと、化学輸送モデルのシミュレーション、これの取り扱いはかなりいろいろ難しい問題がたくさん出てまいりまして、単に委託事業でこれとこれを計算すればいいということではないことがだんだんわかってまいりました。大原委員に作業部会の部会長になっていただいて、この中の委員の中の何人かの方、また、委員以外でモデルの専門家の方に数人入っていただいて、現状で何ができるのか、どこをどうするのがベストなのかを検討いただいております。今年度も引き続き作業部会にいろいろ助言いただくという形でやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは早速、本日の議事に入りたいと思います。最初の議題(1)平成28年度の解析作業計画について、事務局、よろしくお願いします。

議題(1)平成28年度の解析作業計画について(資料1、2)

事務局 議題(1)ということで平成28年度の解析作業計画について、資料1と2を使ってご説明させていただきます。資料1のほうでは、本検討会のこれまでの経緯も含めて全体的に概要についてご説明させていただきまして、資料2のほうで今年度実施予定の計画について詳しくご説明させていただきます。
 まず、資料1をご覧ください。光化学オキシダント調査検討会では、平成25年度に光化学オキシダントの環境改善効果を適切に示す仕様として日最高8時間値の年間99パーセンタイル値の3年平均値を新指標として取りまとめました。この中で、過去の統計解析から光化学オキシダント濃度の長期トレンドに影響を及ぼす要因として、越境大気汚染の増加、前駆物質排出量の減少、NOタイトレーション効果の低下が効いているということが示唆されました。
 これらを受けて平成26年度からはこれらの要因についてシミュレーション解析によってOx濃度への影響を明らかにするとともに、今後のOx対策に資する知見を得ることを目的として、これまでの光化学オキシダント排出抑制対策の効果の把握、前駆物質の排出量削減の感度解析等の調査検討を実施しているところでございます。
 昨年度までに引き続きまして今年度の調査検討内容ということで、調査検討内容の項目としては大きく2つを予定しております。
 1つはシミュレーションモデルによる解析・検討ということで、Oxの前駆物質でありますVOC及びNOxの削減効果の検討、それから冒頭で述べました光化学オキシダント濃度のトレンドに影響を及ぼす要因の1つでありますNOタイトレーション効果の低下の影響、これをシミュレーションモデルにより解析・検討を行いたいと考えております。
 2番目としまして、モデル精度向上のための解析ということで、昨年度までのシミュレーションの中でもまだまだ課題が残されている部分がありますので、これについては引き続き精度向上のための解析を実施したいと考えております。
 もう1つ、先ほど来お話がありますとおり、今年度は、3年間やってきました26年度から28年度までの本検討会での調査の結果を整理しまして「光化学オキシダント調査検討会 報告書」として取りまとめる予定にしております。
 2ページ目では、これまで3年間実施してきた内容と今年度実施する予定の項目について、フローの形でお示ししております。この中で赤枠のところが平成26年度に実施した項目、青枠が平成27年度に実施した項目、グレーの網掛けをしているところが今年度取り組む予定にしている項目になります。
 26年度、27年度においては、この図の主に上半分のシミュレーションモデルの構築・改善に力を入れまして、インベントリデータの整理、モデルの設定、精度検証等を行っております。それから、昨年度、解析として光化学オキシダントの前駆物質濃度の影響、越境大気汚染の影響についてシミュレーションを行いまして、解析を行っております。
 今年度につきましては、引き続きシミュレーションによる解析、あとは下のほうへ行きましてモデル精度向上のための解析、最後に検討会報告書の作成という流れで作業を進めるということで考えております。
 資料1については以上のご説明です。
 資料2に行きまして、具体的に今年度実施する解析作業計画についてご説明させていただきます。
 資料1でもご説明したとおり、今年度は解析としましては、光化学オキシダント濃度に影響を及ぼす要因の解析としてNOタイトレーション効果の解析、それから前駆物質でありますNOx、VOC排出量削減の効果についてシミュレーションを実施したいと考えております。
 解析作業項目ですけれども、シミュレーションモデルによる解析・検討につきましてはOxの前駆物質の削減効果の検討、NOタイトレーション効果の低下の影響、モデル精度向上のための解析としましては5つほど候補を挙げております。本調査で用いたモデルと他モデルの既存の計算結果の比較、10km格子による長期トレンドの確認、九州地域の再現性の再評価、モデル不確実性の検討、モデルの設定変更による濃度変化への影響の把握といったものを考えております。2ページ目以降、それぞれの項目について具体的にご説明させていただきます。
 まず、シミュレーションモデルによる解析・検討の中のOxの前駆物質(VOC及びNOx)の削減効果の検証についてです。この解析の目的としましては、O3の高濃度事例の発生日数及び新指標相当値を指標としまして、O3の前駆物質であるNOx、VOCを削減した場合の効果についてシミュレーションを用いた解析によって明らかにし、今後の対策立案のための知見を得ることを目的として実施します。
 モデルの具体的な設定ですけれども、モデル自体は平成27年度に構築したモデルを使ってシミュレーションしたいと考えております。モデルの細かい設定については後に出てくる表2-4に整理をしております。
 解析の対象地域としましては、関東地域(10kmメッシュ計算値)を対象に実施したいと考えております。ベースケースとする解析対象年としては、気象的に異常年でないことが確認されている2009年を対象にしたいと考えております。
 具体的な感度解析の方法は、O3の前駆物質である人為起源NOxあるいはVOCの排出量を段階的に変えまして、それぞれシミュレーションモデルを回すということで行おうと考えております。具体的には図2-1に示すプロットが打ってあるVOCとNOxの削減比率をそれぞれ設定しましてシミュレーションを行います。なお、関東領域の外側の親領域である東アジア領域の計算については、今回は基本的には排出量は変化させないという形にします。一方で、人為起源VOC、人為起源NOxをそれぞれ50%ずつ削減した条件のみ、親領域である東アジアの計算についても日本域の排出量を変化させた条件でも計算を行い、境界値が変わることの影響を検証したいと考えております。
 計算結果からどのように評価するかです。まず、新指標相当値による評価です。計算自体は図2-1で示しました19ケースの条件で行いまして、NOxとVOCの削減割合を変えた場合における対象地域、今回は関東地方ですけれども、ここのO3の新指標相当値を算出いたします。算出に当たっては、これまでの検討結果からシミュレーションによるO3の計算値は実測と比較すると絶対値で比べると過大に評価する傾向があるため、今回、新指標相当値による評価についても、シミュレーションの計算値そのものを使うことではなく、基準ケースと感度解析ケースの計算結果の比(レスポンスファクター:RF)を使って、これを測定値に乗じることで評価を行いたいと考えております。
 この手法をもう少し具体的にお示ししたのが3ページで、上のほうはフローチャート、下のほうが図で整理をしております。下の図のほうでご説明いたしますと、計算値でまず基準年の計算を行う、これが②の青いグラフになります。それから感度解析ケース、例えばVOC50%、NOx50%削減した計算値を計算して、これが③という形になります。②と③で濃度比を算出します。これが④のRF(レスポンスファクター)です。これを基準年の測定値に乗じることで、感度解析ケースの新指標相当値を推定するという手法を考えております。
 この手法を採用するに当たっては、3ページ真ん中辺に書いてありますように、今回はO3を対象に解析を行いますけれど、POについても併せて解析を行いたいと思っております。RFについても、日別に算出する方法や暖候期全体で出す方法、幾つかありますので、これについてはその出し方によって結果が異なるかどうか、このあたりを検証したいと考えています。最終的には感度解析の結果を関東地方といった格好でまとめるんですけれども、都心や郊外といった地域によって差が見られないかどうかについても検討を行いたいと考えております。
 4ページにまいります。高濃度発生日数による評価ということで、新指標相当値から高濃度発生の日数がどう変わるかについても検証を行いたいと考えております。従来はO3の高濃度の指標として1時間値120ppb以上の日数といった形で整理されることが多かったんですけれども、今回は新指標を使ってこれを整理したいと考えております。
 図2-4及び表2-1に、平成25年度の検討結果からO3の8時間値の日最高値と昼間の1時間値の最高値について統計解析した結果、これは関東の部分と、表のほうは一部他地域も含まれておりますが、こういった解析を行っておりますので、この結果から従来の昼間の1時間最高値の60ppb、80ppb、120ppbに相当する日最高8時間値として50、70、100を設定して、この閾値以上になった日数を基準ケースと感度解析ケースでどのように変化したかを整理したいと考えております。
 5ページのアウトプットイメージは最終的に解析の結果をどのように整理するかということで、メインで考えていますのは5ページ下の図2-5にありますとおりコンターの形で、VOC排出量削減比率、NOxの排出量削減比率に応じて、左側の図ですと新指標相当値がどう変わるかを色合いで示す、右側の図ですと例えば日最高8時間値50ppb以上の発生日数がどう変わるかを色で示すというような形で整理したいと思っております。高濃度発生日数等については表形式でも整理できればと考えております。
 6ページです。もう1つシミュレーションによる解析の項目としましてNOタイトレーション効果の検証が入っております。
 解析の目的は、Ox濃度の長期トレンドに影響を及ぼす要因の1つとしてNOタイトレーション効果の低下が挙げられておりますので、これをモデルのほうで検証するといった形になります。
 具体的な評価方法は、O3とPOの増加量を同時に着目して、これの差を取ることで評価したいと考えております。具体的には図2-6にお示ししているとおり、基準ケースから排出量などの条件を変更したケースの計算結果について、O3、POに関してその変化量ΔO3、ΔPOを算出いたします。
 この両者を比較することによって、例えば図2-6の左側のようにNOタイトレーション効果によってO3が増加した場合、この寄与が大きいという場合にはO3のほうは変化量が大きくてPOはあまり変わらないという結果が出るであろう。逆に右側のグラフにあるとおり、域内生成や移流により実質的にO3が増加した場合にはO3が上がるとともにPOも同時に上がるだろうことが予想されますので、これがシミュレーション結果においてもどのような傾向が見られるかを検証したいと考えております。
 解析対象地域は、昨年度計算した東アジア領域の60km格子及び関東地域10km格子を対象に実施したいと考えております。
 解析評価ケースは、昨年度実施した計算ケースの中で、東アジアの大気汚染物質排出量を2001年に設定したケースと2009年に設定したケースを、表2-2に具体的にお示ししていますが、2009年を基準年にして越境大気汚染の増加の影響を見るために東アジア大陸の排出量だけを2001年にしたケースを計算していますので、まずはこれでPOとO3の増分の比較を行い、併せて、2001年から2010年につきまして東アジア及び関東について10年分の計算結果がありますので、この中から2001年と2009年を対象にして同じようにΔO3とΔPOの差分を評価したいと考えております。
 具体的なアウトプットイメージとしましては、7ページにありますとおり、まずΔO3、O3の変化量の分布、あとPOの分布を並べまして、この差分を取ることによってΔO3とΔPOの差が小さいところ、大きいところを当てていくということを想定しております。
 8ページにまいります。モデル精度向上のための解析です。平成27年度作業、昨年度までに構築・改善したシミュレーションモデルについて主な課題としては、O3濃度が実測よりも過大ぎみに出る、一方で前駆物質であるVOC、NOx濃度については過小評価の傾向がある、地域別に見た場合は関東に比べると九州地域の長期トレンドの再現性がまだ不十分であるといった問題がございました。
 これらについて精度改善・向上に結び付くと考えられる解析項目として5つほど候補を挙げております。1つは本調査で用いているモデルと他モデルの既存の計算結果との比較。10km格子による長期トレンドの確認。これについて昨年度は2009年単年度でしか10km格子についての計算はできておりませんので、これを10年間やってみる。それから九州地域の精度の再評価、モデルの不確実性の検討、モデルの設定変更による濃度変化への影響の把握を想定しております。
 ただ、これにつきましては、今年度は時間の都合もありますので、すべてについてはできないかなと思っております。実際にやる作業の項目・順序については、ほかの解析の進行状況や検討会報告書の進捗状況に応じて、作業部会の方々ともご相談しながら適宜進めていきたいと考えております。
 それぞれの項目についての具体的な方法です。
 まず、本調査で用いたモデルと他モデルの既存の計算結果の比較です。これについては、本調査で用いたモデルと他モデルの既存の計算結果を提供いただいてモデル精度レベルを確認するとともに、モデル間で精度レベルに差が見られた場合はそれが何に起因するかを検討することで、今後のモデルの精度向上に資する知見を得ることを目的として実施したいと考えております。
 これにつきましては昨年度も若干行っておりましたけれども、今年度は比較検討のモデルを作業部会の委員の方にご協力いただいてもう少し充実させた形でやりたいと考えております。具体的には、表2-3にありますとおりモデルAからモデルGまでのモデルについてデータをご提供いただきまして、本調査のモデルの結果と比較をしたいと考えております。
 解析対象地域としては、モデルによって地域差もあるんですが、基本的には関東と九州。解析対象期間としては本調査のターゲットである2001~2010年の暖候期ですけれども、これについてもモデルによってデータを入手できる年が違いますので、入手可能な年という形になると思います。
 具体的にどういった比較を行っていくかにつきまして、9ページ以降に記載をしております。
 まずは図2-8にお示ししているとおり、O3、前駆物質、POにつきまして月別の平均濃度がモデル間でどれくらい違うかを評価したいと考えております。
 10ページ、図2-9にありますとおり、時刻別の平均濃度についても時間値データをいただけるモデルについては評価を行いたいと考えております。O3、前駆物質であるNOx、VOC、それからPOについて、時間値の平均で観測値とどれぐらい差があるか、モデル間でどれぐらい差があるかを評価したいと考えております。
 最後に、図2-10にありますとおり、長期トレンドが本調査の結果とほかのモデルで比較できるものについては比較したいと考えております。
 解析方法としましては、データ自体はメッシュごとのデータをいただきまして、これから毎時データを入手できる場合は毎時データをいただいたものから各統計値を算出し、領域の平均を取った値で関東平均あるいは九州平均という形で値を比較したいと考えております。
 続きまして11ページ、10km格子による長期トレンドの確認という項目です。ここにつきましては、昨年度までのシミュレーションでは10km格子については関東地方について2009年のみ実施しております。今年度については2001~2010年の再現計算を実施しましてOx濃度の長期トレンドの再現性を評価したいと考えております。東アジア領域の60kmの場合と精度がどれぐらい違うかを把握したいと考えております。
 評価項目としましては、Ox新指標相当値、Ox、NO2、NMHCの平均濃度の推移と、NOx/VOCの比率の推移を確認したいと考えています。
 続きまして、九州地域の再現性の再評価という部分です。こちらにつきましては従来九州地域の解析対象は新指標策定時の解析対象となっていた福岡県及び山口県のみを対象に行ってきております。今年度は、九州地域としての代表性がより得られるようにという目的もあって、解析対象としてもう少し領域を広げた形で評価をしたいと考えております。具体的には佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県についても解析対象といたしまして、より広い範囲で九州全体のモデルの再現性評価を行いたいと考えております。
 続きまして、モデルの不確実性の検討です。シミュレーションモデルにはさまざまな不確実性が伴っているということがございます。特に本調査の目的としている光化学オキシダントの削減対策検討に関連しては、大きく2つの不確実性の評価が重要と考えられております。1つがMissing VOCの存在ということで、冒頭にお話ししたとおり、前駆物質の1つであるVOCがモデル上で過小評価になることについての不確実性。あるいは植物起源のBVOCの排出量については、これも不確実性が大きいと言われております。
 本調査の中ではこれら2つに関連する既往調査事例のレビューを実施し、モデル不確実性の定性的評価を行いたいと思っております。
 併せて、この2つのうちBVOCの排出量の不確実性につきましては、今年度感度解析を行う予定にしておりますOxの前駆物質の排出量削減効果の検証で実施しますOx濃度に対する排出量削減の感度への影響がどれぐらいあるかということで、植物VOCの排出量を変化させた場合でシミュレーションを実施したいと考えております。
 具体的には、先ほど説明した5ページの図2-5で排出量削減比率を変えた場合の新指標相当値あるいは高濃度日数を評価するわけですけれども、これは植物VOCの排出量を変えた場合にこの結果がどう変わるかを評価したいと考えております。対象期間は、通年の実施は時間の都合で難しいと今のところ判断しておりまして、暖候期の中で代表的な1カ月を選んで解析を行いたいと思っております。植物起源VOCの排出量の変化の幅としましては、基準ケースに対して1/2にした場合と2倍にした場合のそれぞれ計算を行って、どれぐらい感度解析の結果が異なるかを把握したいと考えております。
 最後に、モデルの設定変更による濃度変化への影響の把握です。こちらにつきましては、現在本調査で使っているシミュレーションモデル(WRF/CMAQ)についてはいろいろな設定やバージョンがございます。これを変えた場合にOx濃度が変化する可能性があります。本調査の中ではモデルの設定やバージョンの違いがOx濃度にどの程度影響するかを把握したいと考えております。
 具体的な設定の変更の項目、どういったものを変えるかという候補としては、下に4つほど具体例を挙げていますけれども、WRFという気象モデルの設定の変更、化学輸送モデルでありますCMAQのバージョンの変更、CMAQの中のサブモデルの変更、計算領域の拡大、具体的には関東領域の計算領域をもう少し広げた場合に結果が変わるかどうか、このあたりが考えられると思っております。この中でどういった設定変更をするかについては、先ほどお話ししたとおり、今後の作業の進捗具合等を見ながら時間が許す限り実施したいと考えております。
 14ページにまいります。光化学オキシダントシミュレーションによる解析作業部会についてです。冒頭に座長からもお話があったとおり、本検討会の下で解析作業部会を設置しまして、シミュレーションに関してはより専門的な観点から検討を行うということで、表3-1にお示ししている委員の方々に作業部会の委員としてご協力いただいて、適宜アドバイス等をいただきながら業務を進めてまいりたいと考えております。併せて、今年度につきましては報告書の取りまとめについてもいろいろご協力をいただく予定にしております。
 最後に、本年度の検討会のスケジュールを16ページ、17ページに整理しております。検討会自体は、今日、第1回の検討会ということで開催をしております。これに先立ちまして解析作業部会を8月に実施しておりまして、主に今日お示ししております作業の解析計画についての意見等を頂戴しております。
 第2回検討会につきましては12月下旬に開催予定にしておりまして、ここで今ほどお話ししました解析結果のご報告、併せて検討会報告書の素案についてお示しできればと考えております。3回目の検討会で報告書について取りまとめという形で最終的な報告書案をご提示できればと考えております。報告書の取りまとめについては、この後の議事のほうでもう少し詳しくご説明させていただきたいと思います。
 資料の説明としては以上になります。

秋元座長 ありがとうございました。今年度の重要な作業についてご説明いただいたわけですけれども、まず、昨年度までの検討でいろいろ問題点があることはわかった。ただ、それを全部一つ一つつぶしていかないと先へ進めないということではないだろう。この検討会としてやらなければいけないミッションがございまして、それを優先的にやるべきだ。そのときに、科学的な意味での不確定性は科学をやる以上必ずあるわけで、それがどんぴしゃり決め打ちである数字を出せばいいという問題ではない。あくまでもガイドラインのようなもので示しながら、それが今どの程度の不確定性があるかもその裏ではきちんと検討していこうというのが全体の流れでございます。
 その中で特にこの検討会の今年度の作業として重要なのが、今ご説明いただいたうちの2.1.1というところです。Ox前駆体濃度の削減効果の検証。NOx、VOCを何%ぐらいずつ下げたらどの程度に感度があるのかを明らかにする。これが最も重要な報告書の骨子になるかと思います。そこから後の2.1.2以降はいろいろそのために検討しておいたほうがいい問題、昨年度までのいろいろな宿題にできる範囲でシミュレーションで応えていこうというようにお考えいただければいいかと思います。
 この2.1.1のところで重要な点は、さっきご説明いただきましたけれども、2ページの一番下にあるRFの考え方で行こうということを作業部会からご提案いただいて、こういう形で進めさせていただくことにしたという、これが一番重要かと思います。
 というのは、これはアメリカのEPAもそうですけれども、こういうシミュレーションモデルで今後NOx、VOCをどれだけ削減すべきかということをやるときに、どんなにいいモデルになっても観測データを100%きちんと再現することはあり得ないわけです。ある程度の不確定性があるときに、絶対値で議論すると誤差が常に表に出てしまって難しい。それで、RFという、計算値でのこれだけ削減したらば何%減るというのを観測値のほうに同じようなパーセンテージで減らしてやる、絶対濃度ではなくてそういうパーセンテージで議論していくという考えでございます。これがレスポンスファクター。これが1点、非常に重要な点だと思います。
 もう1つは、これはむしろ今回の検討会の前で常監局の観測データのほうの統計解析から出てきた答えですが、今まで日本ではいつでもOxの問題になると1時間値120ppbを超えた、いわゆる注意報基準を超えた日数が何日ということが1つの判断基準になってきていたんですが、これは過去の統計を見るとわかるように年々変動が非常に大きい、これでは今後の対策を打ったときに本当に減ったのか減らないのかの評価対象にならない、つまり統計的なロバストネスがないということがわかりまして、それに代わるものとしてOxの8時間値の日最高値を使おうということを決定いたしました。
 それと1時間値の対応が統計的に有意であることが重要なわけですが、それを示したのが4ページの図2-4でございます。この図に基づいて1時間値120ppbは8時間値に直すと大体100ppb、これは注意報基準です。1時間値80ppbというのは、これはアメリカが8時間値70ppbをエア・クオリティ・スタンダードにしているのを逆に1時間値にすると80ppbに相当するというもので、これが1つの目標になるかと思います。1時間値60ppbは、ご承知のように我が国の環境基準は今でも1時間値60ppbです。これだとすると8時間値にするとどのぐらいになるかというと、ここにありますように50ppb。そこをぜひご理解しておいていただきたいと思います。
 一番重要なポイントはその辺かと思います。あと、今ご説明いただいた資料2について、資料1も含めて結構ですが、何かご質問なりご意見なりコメントがございましたらどうぞ。

紫竹委員 日化協の紫竹です。まず、気象協会さんというより環境省さんにお聞きしたほうがいいのかもしれません。微小粒子状物質等の専門委員会が昨年の春に中間取りまとめを提示されて、その中に平成30年度以降に向けた課題の検討スケジュールが提示されました。その中長期的課題の中にVOCに関する科学的知見の充実とかシミュレーションモデルの高度化という大項目がありまして、それらを3年かけて平成30年度以降にある方針を出したいというマスタープランが出ていたのですが、本調査検討会もこの項目に対応する位置付けと理解してよろしいでしょうか。それがまず1点質問です。

船越課長補佐 環境省でございます。そのような理解でよいと思います。微小粒子状物質等専門委員会のほうで対象としておりますのは「等」というのが入っておりますので、光化学オキシダントも含まれておりますし、中間取りまとめの中でもきちんと書いておりますとおり、知見の充実ということではこの調査検討会でのミッションは非常に役立っていくものと考えております。

紫竹委員 わかりました。それを前提に2点確認があります。
 資料2の11ページにモデルの不確実性の検討という項目があって、その中で特に植物起源のVOCの把握については12ページに感度分析というのでしょうか、量を減らして影響を見る予定になっています。先月の微小粒子状物質等専門委員会の席で複数の委員の方から、植物起源のVOCを解明しなければいけないという点、もう1つはVOCのOx生成能に関係する解明も必要という課題といいますかご意見があったと記憶しております。後者のほうのOx生成能の解明という部分については、このシミュレーションの因子の中にもう既に織り込んであるという理解でよろしいかどうかです。

秋元座長 Oxの生成能は一義的にはOHラジカルとの反応速度とかVOCのある単位量当たりのOxの生成量とかそういう指標がもうできております。そういうものでBVOC、植物起源のものはどのぐらい、塗料のものはどのぐらいということはある程度は推測がつきます。それはモデルの中には自動的に入ってきますので、それは含められているとお考えいただいて結構かと思います。

紫竹委員 そうしますと、先ほど座長から特に重要なポイントということで、特にシミュレーションモデルの設定ということでNOxとVOCの比率を変えてというお話がありました。VOCの排出量の比率を変えるというのは、いろんな生成能のあるVOCが排出されていると思うんですが、それを一律50%にするあるいは25%にするといったようなことをやるという意味合いでしょうか。

秋元座長 今回のこの3年間の検討会の中ではそういうことです。それをそれぞれのものについて、塗料の場合、自動車排気ガスの場合、何の場合というふうにまで分割して感度を見るというところまでは本検討会の作業には入っていません。

紫竹委員 わかりました。長くなると申しわけないので最後に1点だけ、これはあくまでコメントです。今回の検討では2001年から2010年の10年間という解析対象期間を設定していて、それの経緯はずっと検討会に参加させていただいているので理解しているつもりです。本年度の年度末に報告書を出すという意味合いで、ある程度すべてが終わった後という形になるでしょうけれど、直近のなるべく近い年度の検証も1つ加えるということは時間的な面で難しいかどうか。報告書を公表するということはいろんな方がその報告書をご覧になると思うんです。2016年、来年になると2017年になるにも関わらず、なぜ2009年あるいは2010年の10年間なのかと言われないか気になりました。

事務局 本調査の中ではあくまでも2010年までを対象にしていたので、報告書についてもそれがメインになるかと思います。ご指摘のとおり最新の観測値がどうなっているかにつきましては、環境省さんともご相談の上、追加できるものがあれば追加するという検討をさせていただければと思っております。

紫竹委員 わかりました。ありがとうございます。

古関委員 東燃ゼネラルの古関です。今のご質問と関わる部分があるんですけれども、11ページのMissing VOCとBVOC排出量の不確実性の扱い方です。私もここの部分は、最初に書かれているように対策の立案に資する資料にして感度解析をやるという、意味があるところだけに、きちんと議論をしていいのではないかと思うので、その質問をします。
 まず、人為的なものと人為的でないもの、あるいは移動発生源と移動発生源でないものがまだきちんとできていない。大体ざっくり5倍ぐらい、500%ぐらいVOCの振れ幅がある中で、委員長が言われたように何とかマネジしてやっていかなければいけないという状況で……。

秋元座長 すみません、500%というのは何の話ですか。

古関委員 VOCの排出量評価です。

秋元座長 人為起源のですか。植物起源のですか。

古関委員 九州における計算値と測定値の違いです。
 ここでこれからVOCの削減効果を光化学オキシダントに対して評価していくわけですよね。そのときに大もとがずれているものをファクターでやっていくという考え方が妥当かどうかです。そこの論点は去年から議論されているとは思っているんですけれども。
 何が問題かというと、人為発生源を下げるという対策をあらゆる業界に今後対策立案をした上で出すということを想定していると、全部の寄与も含めたものと人為的対策を半分にしたものと両方提示する必要があるのではないかと思います。なぜならば、Missing VOCの部分は実際には半分にならないですよね、削減できないと思います。そういう点が1点です。
 もう1つ、参考資料3に僭越ながらつけさせていただいたんですけれども、越境の流入汚染を考える場合のメッシュの切り方と皆さんご専門の大気のメッシュの切り方を同じにしてしまうと、平均化の効果で反応や流動拡散のものがかぶってしまって、結局本質的なものが見えていないのではないかと思うんです。それがVOCの過小評価やOxの過大評価につながってくる。
 だとすると、この作業を否定しているわけではないですけれども、そこの限界についてはあらかじめきちんと示しておかないと。これをどのタイミングで対策立案に使うかということは後で事務局の方に聞きたいと思うんですけれども、そこをクリアにしたほうがスムーズにできるのではないか。とりあえずまずこの2点です。

秋元座長 ありがとうございます。最初のご質問は私のほうから答えたいと思います。
 VOCの測定値と計算値が合わない問題、これは確かによろしくないので検討したいと思うんですが、特にMissing VOCに関しましては、実はこの検討会の前に3年間、観測データの解析の検討会がございまして、その中からも出てきた問題です。これを何がミッシングなのか、どの程度そういうものがあるのかを明らかにするというので、推進費のほうで京都大学の梶井さんが代表になった形の3年間のプロジェクトがありまして、その結果をここにある程度反映させようということになっています。
 簡単に言いますと、Missing VOCとは何かというと、発生源があるんだけれども見つからないものももちろんあるんですが、特に暖候期、夏の時期のミッシングは、元はアロマティックハイドロカーボンだったり植物起源ハイドロカーボンだったり、そういうものから二次的にできてきたものが普通のガスクロやガスマスでは捕まらない、その物がミッシングになっている分が非常に多いです。これは反応のほうには確かに効いてくる可能性はあるんですけれども、これは元のものを減らすと大体同じ比率で減ってくるような性質のものでございます。
 そういう意味で、先ほどの質問のうちの1点の、人為起源のものを減らしたからこれが減らないということではない。そこはざっくり人為起源のものについては人為起源を減らした分だけのミッシングが減るというふうにお考えいただいていいのかなと思うんですが。

古関委員 百歩譲ってそうだとしても、人為的なものと人為的でないものの寄与率は見ておかないと、例えばある業界さんが半分にしても全体の中でわずかしか減らないという議論になったら、これは対策議論にならないはずなので、そういうデータベースは使いにくかろうという点がございます。

秋元座長 人為起源の中での話と、人為起源と植物起源との相対比の問題と、2つを分けて考える必要がありますね。
 植物起源のものについてはこの検討会でも最初から随分議論があって、これをちゃんと評価してその不確定性を入れないとだめだという話で、それを反映して今年度こういう作業をするということになっています。

古関委員 経緯の話をしているのではなくて、今やろうとしていることにつきまして、書くときの書きぶりですね。目的と、限界があるのだったらそこはぜひきちんとしていただかないと。対策立案のところの話にもし関わるのであればということですが。

秋元座長 そこはこの後の報告書のストーリーの書きぶりの話になってくると思いますので、この後ないしは原案が出てきたところでコメントいただいたほうがいいかなと思います。
 ほかの方、どうぞ。

古関委員 すみません、私の質問の2つ目に答えていただいていないので。スケジュールの対策立案のイメージは、前回ブリーフィングを受けたときに、例えば今年度の13次答申に絡む話ではないという話が出たんですけれども、ここでやっている本年度の資料を対策立案に生かすというのは、具体的にどういう形のスケジュールでしょうか。そこだけクイックにお願いします。

瀧口課長 このVOCの削減対策は、これまでも10年以上にわたってやってきておりまして、それはこれからもやっていくということです。具体的にはPM2.5あるいは光化学オキシダントという観点から中央環境審議会の微小粒子状物質等専門委員会で中間取りまとめをいただきまして、それに沿って対策の検討を進めているところです。
 一方、こちらの光化学オキシダントのほうはそれと関連する形で3年計画でシミュレーションと解析をしておりまして、今年度が3年目ということで取りまとめということになります。その対策をすることについてある程度の科学的知見は得られているというのが、中央環境審議会のほうでのご議論の大体のところだったかと思っております。一方で、科学的知見についてはこれからも解明していかないといけないところもありますから、それはこちらの検討会なりで進めていただこうということで考えております。

古関委員 今のご回答だとわからないのは、本年度、3年分の光化学オキシダント調査検討会の報告を取りまとめて、例えばVOCを削減したとき、半減させたときのものでいいですけれども、Oxにどれぐらい効果があるのかを出したものを直接使うようにイメージするんですけれども、今回はそこまで内容的に詰められるのかというと、委員長も言われたようにそこまでは難しいのではないかと理解したんですが、そうではないでしょうか。
 もしそういうことを対策の議論に求めるのであれば、やはりそれなりに必要な、全体の中での寄与率の問題や時間のファクターの問題やさまざまなここで議論されている以外の問題もあるのではないか。それを詳細に言い始めると時間がないので申し上げませんけれども、そういった問題が本質的にあると思います。

秋元座長 私の理解では、この検討会はあくまでも先ほど申し上げたように1つのガイドラインのようなものを示すもので、具体的に何を何%削減すべきだというような、いわゆる対策に直結したような議論はいたしません。それを受けて環境省がほかの情報と合わせて今後どういう施策を取られるかはこの検討会の先の話になりますので、ここではそこまでご議論いただかないほうがいいかなと思います。

浦野委員 今のご質問で誤解されているのではないかと思うのは、12ページの上のほうに1/2倍、2倍と書いてありますが、これは生物由来のBVOCは1/2、2倍に変えて、人為起源のものは1/2、2倍に変えないという理解でいいですよね。先ほど両方まとめて全部を1/2にするという話があったんですが、そうではなくて、BVOCについては非常に不確定要素が多いので、今推計しているものの半分とか2倍にしたときにどのぐらい変化が出るか推計してみるということで進んでいると思いますので、誤解のないようにしていただきたい。
 その1つ上に、対象期間が暖候期の4月から9月の中の1カ月と書いてあるんですけれども、これはもう決めているんですか。4月に1カ月やってもしょうがないような気もするので、決めているなら決めているで、はっきり書いておいたほうがいいような気がするんです。
 あとは細かい事務的なことですけれども、役所は年度で動いているんですけれども、解析は何年の8月とかになっているので、年度と年は、夏場はどちらにしても同じですけれども、表記を混乱しないように、西暦何年とか、平成何年と書くなら何年でやってくださったほうがいいと思う。年度が交ざってくるとややこしくなるので、そこら辺を確認していただきたいと思います。

事務局 1点目のご指摘の暖候期(4~9月)中の1カ月ということで、現時点では何月というのは決めていません。候補としては、月ごとに見てOxの平均的な濃度が高い月、あるいはもともと植物起源の感度を見るので植物起源のVOCの排出量が多い月になると7月8月になるかと思うんですけれども、このあたりについてはベースになる感度解析の結果を見ながら、何月にしたらいいかを作業部会の委員の方のご意見もいただきながら決めていきたいと考えています。

浦野委員 ということは、一応4月から9月まで全部やってみるということですか。

事務局 VOCと植物起源の排出量を削減しての感度解析は4月から9月まで全部やります。その結果を見て、植物起源のVOCの感度解析の月を決めたいと考えています。

浦野委員 その不確実性の検討というのは感度解析が連動していると考えていいですか。

事務局 説明不足だったかもしれません。感度解析で、資料2の5ページの図2-5のような形で、それぞれ排出量削減したケースで新指標相当値あるいは高濃度の日数はどう変わるかという解析を、これは暖候期すべて4月から9月を対象にしてやるわけですけれども、この結果が植物起源のVOCが半分あるいは倍になった場合に、これ自体がどれぐらい結果が大きく変わるのか検討しようと思っています。
 その中で、では何月をやるかというのは、月ごとに5ページの評価結果を見ながら何月がいいか検討したいと考えております。

浦野委員 わかったようなわからないようなですけれども、関係者に誤解のないように徹底していただければ。

秋元座長 植物起源の寄与が大きいのはおっしゃるとおり夏、気温の高いときになるので、その辺の8月とか7月とか決めてしまっても大した問題ではないような気がするけれども、影響の大きそうなときにそれを2倍、1/2にして振ってみるということだと思います。
 年度の話はなるべく混乱のないように。再確認ですけれども、この検討会の中では必ず西暦を使うということでお願いしたいと思います。
 ほかに何かご質問は。

板野委員 各論で申しわけないですけれども、NOタイトレーションの効果の検証のところの最後のアウトプットのイメージで、7ページの一番下の点線で囲ったところで、ΔO3とΔPOの差が大きい場合にはタイトレーション効果の影響が大きくて、その差が小さい場合は実質的にO3が増加したと考えられると書かれているのですが、ここに違和感があります。
 特に下のほうの、実質的にO3が増加したと考えられるというのは、これはひとえにΔPOが大きければ実質的に増加したと考えられるわけです。ΔPOが増えているときにさらにΔO3も大きくて、実質的なO3の増加にさらにタイトレーションの効果が上乗せされたとか、あるいはΔPOがほとんどゼロでPOとして全然増えていないのにO3が減ったか増えたかとか、そういったことが重要になると思うんです。見せ方もそうだと思いますが、ΔPOに対してその差がどうだったかとか、そういったことが重要になるのではないかと思うんですけれども。

事務局 ご指摘いただいた点も含めて書きぶりについては、報告書の素案も見ていただく形になるかと思うので、その場でもいい表現等あればご指摘いただければと思います。

秋元座長 要するにΔPOがプラスになれば実質的に増えたということですよね。

板野委員 そうです。なので、差がどうかで判断するべき。

秋元座長 これは差の議論になってしまって、上はそれでいいと思うんですけれども、下のほうは差の大きい小さいよりもΔPOがプラスかマイナスかで判断するほうがわかりやすいと思います。ほかにございますか。

向井委員 教えていただきたいのですが、4ページの図2-4、その下の表2-1もそうですけれども、1時間最高値と日最高8時間値の関連とこの図自身は関東全体で、下は各県ごとに式を書かれているので、比較するときは各県単位だということですか。RFを計算するときもそうですけれども、そういうことでよろしいですか。

事務局 RFについては基本的には測定局ごとに評価をします。ただ、最終的に取りまとめる段階で、最終的な推定された新指標相当値を県ごとでまとめるのか、北関東・南関東ぐらいまで平均するのか、関東地方全体でエイヤで決めるのか、この辺は結果を見ながら取りまとめていきたいと今のところ考えております。

向井委員 もし測定場所ごとにやると、測定場所ごとの測定値のばらつきも入ってくることが考えられますね。この期間はKI法でやっていますので、少しバイアスが何かに乗るかもしれないので、なるべく平均されたほうがいいと思うのが1点です。
 それと、1時間最高値と最高8時間値の関係を直線で引いておられますが、関東の図を見るとこれは直線でいいのかというのがちょっと気になった点です。1県ごとにやるとどうなるかわからないんですが、この図で例えば120ppbが100に対応すると言われても、そうなのかなという感じがします。
 もし評価するときに100と設定して何日間超えましたとかいったときに、この線の引き方によって本当は90だったのに90で評価すると日数が違うとか、そういうあまり変なことが起こらなければいいなというような心配がちょっとあります。

秋元座長 おっしゃるとおり、細かく見ると確かにこれはこの赤の直線が高濃度の部分は真ん中を通っていないみたいに見えますね。私もこれは気になったんですけれども、ただ、今年度の作業としてはあまり細かいところまでは立ち入らない。120が100といっても場所によって105±5ぐらいあったりするんですけれども、おっしゃるように平均値で議論するほうがよさそうなので、ざっくりと、120が100ぐらいとしたときにそれに対してNOx、VOCの削減がどの程度の感度があるかというふうに、まさにガイドラインといいますか、そういう形で見ていく、今年度のこの検討会のここまでの作業としてはそういうふうにしたほうがいいのではないかと思います。どんぴしゃり120を超えないようにするにはどこまで下げなければいけないという決め打ちの数字を出すわけではないので、その辺はそういうふうな目でご覧いただいていいのではないかと思っているんですけれども。

向井委員 それを県ごとにやられるんですか。

秋元座長 いや、これも県ごとに書いてあるけれども、あまり細かく出すというのは私としては個人的には。なるべく平均的なことで議論されたほうが、全体像がつかめるのではないかと思います。
 ここは後での作業のときに作業部会の方ともぜひご相談していただいて、あまり細かく分けないで出されたほうがいいかと思いますが。

浦野委員 基本的には、Oxの最高値とは言いながら、低いところはあまり問題にする必要はないわけですよね。例えばこれの100ppbを超えるようなところだけで相関を取ったら全然違う相関になりますよね。その辺の考え方はどうですか。うんと低いところ、0まで線を引いて相関を取って解析するのが妥当なのかどうかというのは、検討の余地があるのかなという気がします。

秋元座長 浦野さんのおっしゃるのは、図2-4で高濃度のほうを重視すると、これよりももうちょっと立ったような直線になるだろうという意味ですか。

浦野委員 別に原点を通る必要は全くないので。

秋元座長 確かにこれは高濃度の部分と低濃度の部分で傾きが違うのが。

浦野委員 問題になるのは高濃度なので、高濃度域の相関を取っていろいろ解析したほうがよろしいのではないか。どこから取るかは別ですが。

坂本委員 統計的には大きい値のほうが重みは大きくなっているから、そういう要素はある程度入っていると思うんです。

秋元座長 その辺は今回どこまで問題にするかだけれども、例えば1つの妥協案としては50か60から上のところで線を引いて、それとの対応を見るぐらいにするのも1つの手ではあるかと思います。ここはご検討ください。どの程度に数字がずれるか。

坂本委員 9ページの表2-3で「※2:VOCの成分についてはデータ取得後に解析可能な要素を検討する」、これはここの中でやるということでよろしいでしょうか。

事務局 はい。各モデルの中でVOC成分についてのデータを保存して提供いただけるものについては、この中で比較できるものは比較したいと考えています。

坂本委員 ということは、VOCの組成に関する情報も多少整理される可能性があるということですか。

事務局 はい。

大原委員 1つ前の議論に戻りますけれども、4ページの表2-1は、私の理解では都道府県別の一次回帰式を使って云々するということではなくて、あくまでも8時間値と1時間値の関係を大ざっぱに関係づけるために、関東全体でやったのではきめ細かさが足りないので都県別でもやってみましょうぐらいの意味合いだと理解したのですが、もし違うのだったら補足の説明をしていただきたいと思います。
 もう1つ、NOタイトレーションのところですけれども、これはたしか作業部会でも発言した記憶があるんですが、7ページの表2-2でAとCのケースだけを比較していますね。これは越境汚染の影響を見るためで、NOタイトレーションの場合にはそれ以上に国内の前駆物質の排出量、とりわけNOxの変化がどういうふうに影響をもたらしているのかを見たいというのが趣旨であると思います。そうするとAとCを比較しただけではわからないので、何か追加的なケースが必要ではないか。繰り返しますけれども、それについては部会でも発言したと思いますので、それに対するお答えをいただきたいと思います。

事務局 まず1点目のご指摘の4ページですけれども、ここで記載している表と図の意図は大原委員からご指摘いただいたとおりです。新指標で幾つだったら今まで言っていた1時間相当値で幾つに相当するという目安がないと、高濃度日と言ってもよくわからないというところで、関東全体で分布を見ると図2-4になります。当然、ご指摘のとおり、関東の中でも都道府県ごとにばらつきはあるでしょうということで、都道府県ごとでやってみたのが表2-1です。これを見ますと例えば1時間値が120ppbに相当する8時間値は、都道府県によって多少ばらつきはあるんですけれども、これを見ても概ね100ppbで設定しておけば目安としてはいいのではないかということで整理しています。
 2点目のNOタイトレーションの話は、おっしゃるとおり表2-2のケースは越境大気汚染の増加を感度解析したケースですので、これだけですとNOタイトレーションの効果がどうだったかという解析は不十分というご指摘を作業部会でいただきまして、追加として記載させていただいたのが6ページの下に「また、」ということで2行ほど書いているんですけれども、これとは別に10年分通年で計算した結果を使って2001と2009を使って、同じようにΔO3、POの差分が一緒に上がっているのか、O3だけ単独で上がっているのかという同じような評価をしたいと考えています。

大原委員 もしそうであるならば、表2-2は中途半端な書き方だと思いますので、今の趣旨を反映したような対象ケースの書き方にしていただいたほうがいいかと思います。

事務局 はい。

星委員 今のに関連して私も疑問に思った点があります。例えば2.1.1は、2009年のVOCとNOxの排出量に対して人為起源のものを削減していくとどうなるかという、将来への示唆が含まれている気がするんですが、NOタイトレーションの2001年と2009年の比較をするというのは、過去のこれまでのトレンドを理解する上では必要かと思いますが、今後の対策にどういうふうにこれを反映していくのか、この先のことをどういうふうに予測していくのかが見えない。これは大原先生が示唆されたようなことも含まれているのかなと思うんですけれど、これを最初の目的に照らし合わせると対策立案のための基礎資料を得るということで、どういうふうに活用されるのかイメージがあったら教えていただきたいです。

秋元座長 私の感じでは、先ほどの図2-1のようにNOx、VOCをそれぞれ何%下げていきますね。そうすると、VOCをあまり下げないでNOxだけを下げたようなケース、右のほうですかね。そういうことのシミュレーションをやると、恐らく東京の都心部やNOxのたくさん出ているところでは逆にO3が増える図が出てきて、それはコンターにそういう形で反映されると思うんです。
 そういうことも考慮しながら、コンターも場所によるわけで、東京都心と風下側とでコンターの形は変わってくると思うんですけれども、そういうものを眺めて、どの辺のところの対策に持っていったらいいかというような議論につながるのではないかと思います。
 それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。議題(2)光化学オキシダント調査検討会報告書の作成について、事務局からご説明をお願いします。

議題(2)光化学オキシダント調査検討会報告書の作成について(資料3)

事務局 資料3に従って、光化学オキシダント調査検討会報告書の作成についてご説明させていただきます。
 本検討会では、繰り返しになりますけれども、光化学オキシダント濃度の長期トレンドに影響を及ぼす主な要因として、越境大気汚染の増加、前駆物質排出量の減少、NOタイトレーション効果の低下が挙げられています。これを受けて、平成26年度から28年度の3カ年にかけまして、これら3つの要因についてシミュレーションを用いて定量的に解析、これまでの対策の効果の検証、今後の対策に資する検討、感度解析等を実施してきております。今年度は、3年間の本調査での取り組み、解析結果を整理して、検討会報告書として取りまとめるということにしております。
 報告書につきましてはこの後表3-2をご説明しますけれども、原則として解析作業部会の委員の方々にご協力をいただきまして報告書案を作成し、次回の検討会で素案という形でお示しして、本検討会でのご意見を踏まえながら修正を行って最終的に報告書としてまとめたいと考えております。
 次のページのA3縦長の表についてご説明させていただきます。報告書構成案、まだ案という形ではありますけれども、大まかな構成としましては、「はじめに」ということでイントロダクションがありまして、「シミュレーションモデルの構築」「シミュレーションモデルによる解析の結果と考察」「まとめ」という形で今のところ考えております。
 最初の「はじめに」というところでは、本調査の背景、先ほど来お話ししている25年度調査までの概要と経緯、主には新指標を設定したということと、測定値の統計解析により長期トレンドを解析した。その中で長期トレンドの変化には前駆物質排出量の変化、越境大気汚染の増加、NOタイトレーション効果、この3つが組み合わさっているということが示唆された。
 それを受けて、1.2 本調査の目的で、長期トレンドの3つの変動要因についてシミュレーションにより定量的に評価する。これまでの前駆物質排出量削減対策の効果検証、今後の対策に資する知見を得るという目的でNOx、VOCの削減の感度解析を行うことを目的としますというところを記載する予定でございます。
 1.3では本調査の概要ということで、調査に当たっては必要なインベントリデータの整理、シミュレーションモデルの設定・最適化、精度検証、シミュレーションによる変動要因の影響解析、これまでの排出量削減対策の効果検証、前駆物質削減の感度解析の実施を行ったというところを概要として記載しようと考えております。
 「2 シミュレーションモデルの構築」では、排出インベントリをどう整理したか。モデルの設定、境界値やサブモデル、格子サイズ、このあたりについて整理したいと考えております。2.3でモデルの再現性の評価ということで、いろいろな側面から再現性の評価を行いましたので、ここでその結果を取りまとめて、最終的に本調査においてはどういった部分で使えそうかということを整理したいと考えております。
 「3 シミュレーションモデルによる解析の結果と考察」では、3.1としまして光化学オキシダント前駆物質の排出量変化の影響解析の結果ということで、これまでの排出量削減対策の効果の検証をしたシミュレーション結果の整理、これから実施しますNOx、VOCをそれぞれ段階的に減らした場合の感度解析の結果、このあたりを整理したいと考えております。
 3.2として越境大気汚染の影響解析の結果ということで、これは昨年度実施済みですけれども、2009年をベースケースとして東アジア排出量のみを2001年にした場合の計算結果から得られた結論。日本の広い範囲で東アジアの排出量の増大がOx濃度に影響している、関東よりも九州のほうがその影響が大きいといったあたりを整理して記載したいと考えております。
 NOタイトレーション効果の低下の影響解析の結果、これにつきましては先ほどご説明した今年度実施予定の解析結果を整理して記載したいと考えております。
 3.4 解析結果に関連するその他の考察ということで、このあたりで先ほど来議論になっている不確実性の評価やモデルの問題点について整理していきたいと考えております。
 3.5としてシミュレーションモデルによる解析結果と考察のまとめということで、全体のシミュレーションモデルによる解析結果のまとめという形で整理したいと考えております。
 最後に4は調査全体のまとめということで、これまで3年間やってきたことの全体の取りまとめということで、現状においては最新の知見を反映したモデルを使ったということ。Oxの長期トレンドについては概ね再現できていること。あとは感度解析の結果得られた結果。今後シミュレーションモデルをどのように使っていくべきか。Ox対策に向けてどうしていくかといった提言あたりまで盛り込めればと考えております。
 最初のページに戻りまして、以上のような構成で報告書案を作成したいと考えております。作成のスケジュールは表3-1にお示ししておりますけれども、これから報告書案の作成に入りまして、次回の検討会は12月下旬を今のところ予定しておりますけれども、そこで素案という形でお示ししたいと思っております。そこでご意見等をいただいて、当然その場だけでは足りないと思いますのである程度時間を取って見ていただいて、そのあたりの意見を踏まえた格好で3月上旬にもう1回修正版という形で提示させていただいて、最後に取りまとめというスケジュールを考えております。
 ご説明は以上です。

秋元座長 ありがとうございました。この報告書の中身、目次案及びスケジュールの問題についてご意見がございましたらどうぞ。

指宿委員 報告書の話ではなくて前のほうに関連してです。先ほど、VOCとNOxをいろいろな比率で減らすというときに、VOCの量を種類に関わらずパーセントで減らすというご説明でした。この報告書案の中にあるように、固定蒸発VOC排出量の削減というのは、現実的にはかなりVOCの種類が違ったものが違う削減率で変化しているわけですね。そういうものと機械的に何%減らすというシミュレーションの結果がきちんと対比できるのかがすごく気になっています。。
 それを考えたときに、図2-1にVOCとNOxを減らすのが機械的に並べてあるのですが、19個もの例をやる意味があるのか。むしろO3生成ポテンシャルの現実を見ながら変化させたものでシミュレーションをして、その上でモデルの有効性を考えたほうがいいのではないかと思った次第です。報告書と離れますが、報告書を書く上で重要かと思います。

秋元座長 まず、図2-1の数が必要かどうかということですが、図2-5のようなコンターを描くために、これが必要だったのかなというのが私の理解です。もちろんやれるのはやっていただいたほうがいいと思うんですが、固定発生源VOCの排出量云々というのがこの内容の記述にあるんですが、これについてはどういう作業をされる予定ですか。

事務局 ここにつきましては、実は昨年度にやったケースの中で固定蒸発VOCの削減をしなかった場合にO3濃度がどう変わるかという解析結果を既に計算としてやっていますので、それを取りまとめるということで、今年度新たに計算するとか固定蒸発について感度解析をするということではございません。

秋元座長 大原さん、今の固定発生源の話はご理解いただいていますか。

大原委員 そう理解しています。

秋元座長 昨年度の作業である程度計算が出てきていると。

大原委員 この検討会の大きなミッションであった、固定蒸発VOC発生源の削減が光化学オキシダントの低減に結び付いているのかどうか、それを狙った解析として昨年シミュレーション計算をしてもらって、少なくとも定性的にはその傾向が見て取れる結果が得られております。そのあたりの知見を基にして、この辺は記述するのだろうと理解しています。

秋元座長 わかりました。ということで、今年度のには入っていないということのようです。

浦野委員 報告書の目次に戻ります。大体よくできていると思うんですけれども、課題のところが今後につながるわけで、先ほどから幾つか指摘されています。3.4のところに課題について整理するということが書いてあって、3.5のほうは定性的、定量的に言える内容を整理するとなっていますけれども、ここも当然、課題があると思うんです。
 それから課題というときに、いろんなモデルで解析したり、データの評価などのところで気象を相手にするとか植物由来とかがあるので、基本的に限界があるわけですよね。限界的なものはどうやっても限界があるわけなので、そことまだ改善できる課題とは分けて表示をしてもらえると非常にいいかなという感じがします。
 その課題が3.4と3.5である程度整理されて、それを受けてまとめが来るということになるので、課題に対する何かがないといけないんですけれども、これを見るとできたできたみたいな感じであって。シミュレーションモデルの活用方法と書いてあるけれども、ここに課題と活用方法みたいな形でまとめていただいて、課題がありながらこれに頼らざるを得ないので、その辺、整理の仕方をつけて、その課題というところに、もともと限界があるということもあるし、データがそろえば改善していけるところと整理をしていただくといいかなと。

秋元座長 ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。作業部会の方々にご協力いただくということで話が進んでいるかと思うんですけれども、実際に書いていただくときに、一言で課題といってもいろんな課題があって、まだ誰が見てもそんなすぐには答えがないよねという、例えば植物起源の排出量の絶対量がどのぐらいかなんていうのは誰も本当の答えはわからないわけで、幅をどの程度に推測するかというような意味の課題もありますし、シミュレーションモデルそのものがもうちょっと良ければもうちょっと合うというようなケースもあり得るし、その辺は課題をちゃんと分ける。
 特にまとめのところで今後の対策に向けての提言と書いてありますけれども、研究としてまだやらなければいけないことがたくさん残っているんですね。そこがまだできていないから、答えを出そうとしても無理なことがたくさんある。この問題もPM2.5の話と一緒になって今後10年以上続く話ですので、それまでにそのモデルをもっと精度のいいものにしていくというような、そういう意味の課題というか今後の研究としてやるべきこと、そういったこともこの4.1の中には書き込んでいったほうがいいのではないかと思います。

坂本委員 まさに今の話で、先ほどの指宿委員の話等々に関係するわけですけれども、結局、今ここでやっているのは光化学オキシダントという視点でやっているけれども、PM2.5という視点でどうなるかというのも考えていかなくてはいけない。茶谷さんの推進費のほうで結果が整理されるのは少し時間がかかるのかもしれませんけれども、要はここでVOC、NOxという形で議論をしていって、冬季のPM2.5はどうなるか、NOxのほうがかなりウエイトを持っていく。
 使うほうがそれを意識してちゃんと使えばいいんですけれども、ここで出てきたそのものを使ってしまうと、そちらの部分の対策がなおざりになる可能性も出てくると思います。ですから、ここでやっているのは何であるか。その際に考えなければいけないものが同時にどういうことがあるか、まさにきちんと書いておく必要が最終的なまとめではあると思います。

秋元座長 ありがとうございます。まさにそのとおりだと思います。VOCの中でも、O3に寄与するVOCとPM2.5に効いてくるもの、共通のものもあれば違うものもある。その辺も今後見きわめながら、両方を統合するようなものを作っていかなければいけないのではないかと思います。

古関委員 まとめのところですけれども、委員会の建付けとしては、Ox濃度を物差しにしてシミュレーションして対策の是非を議論するというのはいいと思います。一方で、光化学オキシダントの被害届を見ると、むしろ2009年以降から劇的にトレンドとしては減っている。これは環境省さんがまとめられて各自治体でされていますけれども、昨年は被害届が2件で、今年は私が自治体に聞いた限りでは東京、神奈川、千葉は0件です。
 ですから、何をターゲットにしてやるかというのが対策に関わるとすると、光化学オキシダントを物差しにした場合はこういうことになるけれども、その物差しについての高次のメッセージ、つまりどういうふうに基準値なり警報のレベルを示すかというのはあると思うんです。つまり、1時間値、8時間値と言っている物差しは、基本的にどういうふうに国として規制値を設けていくのか。アメリカを見るだけではなくて。そういうところをちょっと書いていただけると今後につながると思います。

秋元座長 ありがとうございます。私は前から言っているけれども、これはまさに日本のOxの環境基準の見直し問題に直結する問題なんです。あれは70年当時の最善の知見で作った基準ですけれども、その後何十年もたっていろんな疫学調査が随分出てきて、どういうO3が一番人体に対して被害があるか。それを踏まえてアメリカなどの環境基準は改定されている。我が国でもそういうものをちゃんと取り込んだ形で、我が国としては国民の健康を守るためには何を基準にするのがいいのかという議論は当然なければいけない。そういうこととどこまで削減すべきかということは、まさに一体の問題として今後進めていかなければいけないと思います。今後の対策に向けた提言の中にはそういうことも……。
 ただ、あえて申し上げるとすると、確かに今までみたいに120を超えたようなもの、また被害件数だけで見ていくと、確かに世の中で我が国のNOx、VOCが減ってきているので、高濃度O3が減ってきていますよね。そのために2010年以降、被害届が減ったり注意報の発令日数が減ったりしているわけです。
 だけれども、例えば8時間値80ppb、70ppbという指標で見たときにどの程度我が国はひどいのか。これは私も論文を書きましたけれども、アメリカよりも日本のほうがずっとそういう意味ではOxの健康被害は大きいはずです。それについてはWHOなどのプレマチュア・デスと言われるようなもの、入院患者数、それがPM2.5とO3とでどのぐらいずつ何千人というのが1つの目安になるわけです。
 そういうことを考慮しながら、どこまで我が国はOx問題に対処すべきか。そういう指針を出していくのが、本来の将来の対策につながるのではないかと思います。そういう考え方も、できればまとめの中に記述できればと思っています。

大原委員 幾つか議論があった点について私なりの考え方を発言したいと思います。
 1つは、今話題になった物差しをどうするのかという話ですけれども、それについてはこの検討会でもう十分に議論していて、新指標というのはそのために作ったわけですから、それが物差しであるということを改めてここで認識していただいて、報告書にもきっちり書くということに尽きると思います。
 2番目は、PM2.5に関するご指摘でありますけれども、確かにそういう指摘を報告書の中に取り込んでおくことはすごく重要だと思います。ただ、この検討会の中でPM2.5に関してはスペシフィックに議論していないし検討もしていないので、課題としては明示しつつ、具体的には書けないというのが書き手としての立場からの意見であります。
 3番目は、課題がいろいろありますということで、確かにそのとおりですけれども、課題があるということを羅列的に書くだけでは報告書として物足りないといいますか、何のために3年間調査をやったのかということになると思います。やはりストーリーラインをある程度意識して明確にしつつ、課題もその中できちんと書くことによって、今後につながるような報告書にしていくことが大事。
 今の整理としては、2.3のところでモデルに関わる課題について書く。3.4あるいは3.5あたりで、モデルを活用する際における課題を書いていく。4.1については、今後につながるような提案みたいな感じで書けるといいのではないかと思っている次第です。

秋元座長 ありがとうございます。ぜひそのようにお願いいたします。

井上委員 3.1と3.2については結果が箇条書きで書かれているんですけれども、3.2だと、越境汚染の効果が全国で大きいというような書き方。3.1だと、VOC排出量削減の効果が大きいということが強調されているような書き方。実際のデータはどうなっているかというと、例えば越境汚染については参考資料2の48ページのことを言っていると思うんです。ケースCに対するケースAの濃度は、ケースCが越境汚染の効果がない場合、ケースAが越境汚染でどれぐらい上がったかということ、この差が越境汚染の効果だと思うんです。これで見ると、関東地域はほぼ越境汚染の効果はないという書き方のほうがいいのではないか。九州については若干確かに上がっていますが、1割も上がっていない。要するに越境汚染の効果は1割もないということのほうが、むしろわかったことではないかと思います。その辺、この書き方にはかなり違和感があります。
 同様のことはVOCの効果についても、例えば55ページは過去のとはちょっと違いますが、50%削減した場合がケースDだと6%減っている。左の図によると50%削減した場合の結果であることがわかるので、50%削減しても6%しか下がっていないことのほうが言うべきことなのでは。ちょっと違和感があります。

秋元座長 その辺の書きぶりは、今年の結果が出てこないと全然話が違ってくる可能性もなくはない。

井上委員 今のは、前年度までの結果でそういうことを言うということになっていますよね。

秋元座長 前年度までの結果で?

井上委員 例えば関東の、要するに越境汚染の効果のこういうのをまた今年もやるのかということです。

秋元座長 越境汚染のほう、3.2ですね。

井上委員 3.1は、一番下のポツの下に平成28年度の結果が入るということは書いてありますけれど。一般の人は文面を読むわけで、恐らく資料までは見ないので、書きぶりは結構重要なのかなと思ったりしました。

秋元座長 実際に書かれる方がこのとおりに書くかどうかはわからないけれども。

大原委員 検討会の委員としてこの報告書の作成に責任があるわけですけれども、今さらではありますが、平均値だけで議論していいのかどうかというのは非常に疑問です。
 地域平均、例えば関東地域平均で見るとこうなるけれども、その内部構造をもう少し見ると、どこかにマップがあったと思いますけれども、関東のどこの地域は何%ぐらい減っているといった結果も部分的に書かれておりますので、もう少しきめ細かい評価の仕方が必要。今年度の報告書を作る際にも、再計算はできるだけしないということでいいと思いますけれども、既に計算された結果についてはもう少し解析を深めるというようなことも含めて、記述していくということにさせていただきたいと考えています。

秋元座長 ありがとうございます。今日出てきたこれは事務局のたたき台とご理解いただいて、実際にこれはいろいろ複雑な問題があるし、入り組んでいて難しいので、作業部会の先生方の全面的な協力を得てそれぞれの節を分担していただくぐらいのことを考えています。研究者の目から見ておかしくない書きぶりになってくれるものを期待しております。先ほどのデータと違うようなことがここに書かれることはないだろうと思います。今日のをこのまま字面で捉えられると、確かに井上さんのおっしゃるようなご心配があるかと思いますけれども、次回までに具体的な、どなたにお願いするかということも含めて、ちゃんと書いていただければいいなと思っております。
 ほかにいかがでしょうか。この報告書についてございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、先ほど申し上げたのをもう1回はっきり申し上げますが、この報告書の中身は、普通だと委託の請負先が全部たたき台を作るんですが、それだとストーリーラインを作るのが難しいのではないかという印象がありまして、作業部会のほうに具体的な執筆をお願いするということにしたいと思います。
 次回たたき台を出していただかなければいけないので、大原さんの下で作業部会の方々に具体的にこれを割り振っていただいて、それぞれのお得意なところを。

大原委員 すみません、資料2の14ページの上から5行目ぐらいに書いてあると思うんですけれども、解析作業部会の役割は監修ということで執筆は……。

秋元座長 最初の原稿は事務局が書くんですか。

大原委員 それにチェックをするとか、いちゃもんをつけるとか、そういう感じで思っています。

秋元座長 そうですか。私はもうちょっと直に書いていただきたいと思っていたんだけれども。事務局はそういうご理解ですか。

事務局 監修という形でお願いしますけれども、書く段階よりまず構成、こういう骨子でいいかどうかとか、その辺は適宜ご相談しながら書いていこうと。

秋元座長 そうしないと、また出てきたときにこんなのではと浦野さんに言われても対応しきれなくなるんですよ。だからそういうことのないように、ストーリーラインという言葉をこの前から使っているけれども、その辺の流れ、不確定性の評価、どの程度に何を言うか、そういうものは作業部会の目を通った形でのたたき台で、次回出てくるものはそうしていただきたいと思います。そうでないと、またそこでごちゃごちゃに言われても、座長として対応し切れなくなる。今だったらまだ間に合うと思いますので、作業部会の方には本当に負担が大きくて申し訳ないですけれども、ぜひ全体の流れがちゃんとなるように。

浦野委員 報告書で、計算結果は自動的にと言ったらおかしいけれどもある程度出てくるので、それについての結論とか解釈の表現をどうするかはよく相談して書いていただくことが大事だと思うんです。それと併せて今後へつなげるという形で。結果だけ出しても、どう解釈・評価するかというあたりの文章はどうしてもつけるので、そこのところの書きぶりは慎重に検討していただいて次につなげるということが大事だと思います。

秋元座長 まさにそのとおりで、そのときにこれなら最初から自分で書いたほうが楽だったなんていうことのないように、ちゃんと最初の構成案のところでよくご相談いただいてお願いしたいと思います。ほかによろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 本日の議題はその他というのがありますけれども、何かその他議題はございますか。

事務局 特にございません。

秋元座長 特にないようでしたらば、事務局にお返しいたします。

閉会

事務局 今日は長時間のご討議ありがとうございました。本日の議事内容につきましては議事録案として作成しまして、また電子メールで送らせていただきますので、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
 続きまして、第2回検討会は先ほど提示がございましたけれども12月下旬、昨年もクリスマスのころになってしまいましたけれども、再度日程調整させていただきますのでよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の検討会はこれで閉会といたします。皆様、どうもありがとうございました。

以上

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