1.日時 平成24年11月30日(金) 15:00~17:30
2.場所 一般財団法人日本気象協会 第一・第二会議室
3.出席者(五十音順 敬称略)
- (委員)
- 秋元 肇 石井 康一郎 板野 泰之 井上 和也
指宿 堯嗣 岩崎 好陽 浦野 紘平 大原 利眞
金谷 有剛 坂本 和彦 紫竹 益吉 下原 孝章
竹内 庸夫 土屋 徳之 橋本 光正 若松 伸司 - (欠席)
- 向井 人史
- (環境省)
- 環境省大気環境課 大森課長、後藤課長補佐
一般財団法人 日本気象協会
4.議題
(1)平成24年度光化学オキシダント調査検討会の開催について
(2)今年度の検討内容と予定について
(3)その他
5.配付資料
- 資料1-1
- 「光化学オキシダント調査検討会」報告書(H24.3)について
- 資料1-2
- 光化学オキシダント対策に関する最近(H24.3以降)の動きについて
- 資料2-1
- 本検討会での検討内容について(全体像)
- 資料2-2
- 今年度の具体的な検討内容と予定について
- 参考資料1
- 平成24年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱
6.議事
後藤課長補佐それでは定刻となりましたので、ただいまから平成24年度光化学オキシダント調査検討会の第1回目を開催いたします。本日は委員の皆様には、お忙しい中ご出席を賜りまことにありがとうございます。私は本日司会を務めさせていただきます環境省大気環境課の後藤と申します。よろしくお願いします。
それでは、検討会に先立ちまして、環境省水・大気環境局大気環境課長の大森からご挨拶申し上げます。
大森課長環境省大気環境課長の大森でございます。平成24年度の第1回光化学オキシダント調査検討会の開催に当たりまして一言ご挨拶を申し上げます。
師走が近づきまして急に寒くなりましたが、委員の皆様方には大変お忙しい中ご出席を賜りましてありがとうございます。まず、御礼を申し上げます。
さて、皆様方には、昨年度、光化学オキシダントに関する今後の調査研究のあり方についてご検討いただきまして、本年3月に報告書をまとめていただきましたことを改めてお礼を申し上げます。ご存じのように、光化学オキシダント対策につきましては、他の大気汚染物質がおおむね改善傾向にある中で、大気濃度がむしろ漸増傾向にある、あるいは環境基準の達成率も非常に低いという状況が続いていまして、その取り組みの強化が求められているところでございます。
こうした状況を受けまして、本年4月には、環境大臣から中央環境審議会の会長に対して、今後の揮発性有機化合物の排出抑制対策のあり方についての諮問がなされ、中央環境審議会大気環境部会揮発性有機化合物排出抑制専門委員会におきまして議論が重ねられ、報告書がまとめられました。現在、この報告書の内容については、また後ほどこの会議でもご説明申し上げますけれども、パブリックコメントがなされているところです。この報告書の中におきましては、VOCのみならず、光化学オキシダントやPM2.5も含めて総合的な検討を行う専門委員会を新たに立ち上げることが提言されていまして、今後、こうした光化学オキシダントとVOC、あるいはPM2.5、それらの大気汚染物質について相互関連等について検討を求められているところでございます。
そういう中で、今年度のこの検討会における検討結果は、新たな専門委員会での議論にも反映されることになると考えており、昨年度以上にこの検討会に対する期待は大きいものと考えております。委員の皆様方には、限られた時間ではございますけれども、忌憚のないご意見、活発なご議論を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
後藤課長補佐本日は第1回目の検討会ということですが、委員につきましては昨年度の検討会と基本的には同じメンバーでして、変更がありましたのは日本化学工業協会環境安全部長の紫竹様が安藤様から変更になっているというところのみでございます。ですので、委員のご紹介は省略させていただきます。
なお、本日は国立環境研究所の向井委員がご欠席でございます。
事務局につきましては昨年度から顔ぶれが一新しております。先ほど挨拶をさせていただきましたけれども、環境省大気環境課長の大森、それから私が大気環境課で課長補佐をしております後藤でございます。また、本年度の解析業務を受託しておりますのは、こちらの一般財団法人日本気象協会でございます。よろしくお願いします。
それでは引き続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第。座席表。資料1-1「「光化学オキシダント調査検討会」報告書について」。クリップでとまっているかと思いますけれども、資料1-2「光化学オキシダント対策に関する最近の動きについて」。別紙1、2、3までついております。資料2-1「本検討会での検討内容について(全体像)」。資料2-2「今年度の具体的な検討内容と予定について」。参考資料1としまして「平成24年度光化学オキシダント調査検討会開催要綱」。それから、昨年度の報告書も机の上に1冊ずつご用意させていただいております。これはお持ち帰りいただいても置いていかれても、また次回も用意しておきますので、どちらでも構いません。よろしくお願いします。
以上の資料ですけれども、皆様おそろいでしょうか。もし過不足がありましたら、その都度おっしゃってください。よろしくお願いします。
それでは次に、本検討会の座長を選出したいと思います。座長につきましては、参考資料1の検討会開催要綱にありますとおり、事務局が指名することとなっております。つきましては座長には、昨年度の検討会でも座長をお願いしております秋元委員にお願いしたいと思います。秋元委員、よろしくお願いいたします。
それでは、これ以降の議事進行につきましては秋元座長にお願いいたします。よろしくお願いします。
秋元座長ご指名いただきましたので座長を務めさせていただきます、新潟にありますアジア大気汚染研究センターの秋元です。よろしくお願いします。
この検討会は、昨年度、今お手元にある報告書をつくるために6回ほど開きました。そこでの議論の一番のポイントは、まず、VOC対策が5年前になされたにもかかわらずオキシダントのほうは下がっていない、それはなぜだということから出発して、それでは、今後それをどのように考えて、どのようにすればオキシダントをよくすることができるかについての方向づけをするというのが大きな役割でございました。
そのときに私のほうからも申し上げたのですが、今、世界的にも、「科学と政策(Science and Policy)」といって、科学的な知見を政策に生かしていくことの重要性が強調されています。これは日本でも今まで、この大気の分野ではなかなか行われてこなかったと私は認識しております。「科学と政策」というときに使われる科学というのは、本当に国際的に通用するような先端の科学でなければならない。それを使った上で、今の知見で、Best of Our Knowledgeで言えることと言えないことをはっきりさせる。つまり、不確定性というのは科学には常に伴いますので、きちっとした答え、こうすればこうなるのだ、100%こうなるということは科学の世界では普通あり得ない。だから、今の知見ではこれだけの不確定性があって、その範囲内でこれをこうすればこうなるはずだということを、きちんとした論理のもとに位置づける、意味づけるという、これが「科学と政策」だと私は理解しています。このオキシダント問題はそういうものの一つの試金石としては非常に格好なテーマではないかと思いまして、この検討会をぜひそういう場にしたいということを申し上げました。
今回、先ほどご紹介のように昨年度とほとんど同じメンバーでやっていただきますので、昨年度の議論を踏まえて、その次のステップですね、もちろん今年度は答えを出すことになっていないと思いますので、昨年度提起された問題についてもうちょっと具体的に、ここをこういうふうに押さえるべきだというあたりをご審議いただければと思います。
本日、時間が3時からということなので、5時までだと2時間ということで、昨年度来の議論を踏まえますとちょっと短いかなという気もありますが、諸般の事情でそうなっています。多少延びても5時半までには絶対に終わりたいと思いますので、ご協力よろしくお願いいたします。
それでは早速議事に入りたいと思います。まず、議事(1)「平成24年度光化学オキシダント調査検討会の開催について」。これは事務局のほうからご説明をお願いします。
後藤課長補佐議事(1)では、本年度の光化学オキシダント調査検討会の開催についてということで、資料1-1と資料1-2を用いて、昨年度取りまとめていただいた報告書とその後の最近までの光化学オキシダント対策をめぐる動向について、今年度の検討会開催に至る経緯についてご説明させていただきたいと思います。本年度からの具体的な内容については議事(2)で説明をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
では、資料1-1をごらんください。これは昨年度まとめていただいた報告書についてのペーパーでございます。昨年度のこの報告書は、今後有効なオキシダント対策を立案するため必要な調査研究のあり方を審議し、取りまとめたものになっております。
3番の「報告書のポイント」に行きます。ポイントとしましては、「光化学オキシダント濃度について」、これは分厚い報告書の中では115ページぐらいにありますけれども、「全国平均では漸増傾向にあるが、例えば夏季のうち一定の気象条件で抽出した日による経年変化を見ると、高濃度のパーセンタイル値が平成17~18年度を境に減少トレンドへ転じた地域があるなど、VOC等の対策効果の発現を示唆する傾向も確認された」ということで現状についてはまとめさせていただいております。
また、「今後の調査研究のあり方」につきましては、報告書では164ページから173ページぐらいまで書いていますけれども、このペーパーでは、裏面に示してある「今後の調査研究のあり方(全体像)」を見ていただきたいと思います。まず、現象解明のためのモニタリングデータの多角的解析とか、VOCを初めとしたモニタリングの拡充を行ったりするような「モニタリングの充実、データの多角的解析」。それから、植物起源VOC排出量の精度向上とか、未同定VOCのオキシダント生成寄与の把握といったような「排出インベントリ精緻化など」。それから、実測データによるオキシダント濃度の再現とか、VOC環境濃度の現況再現の検討という「シミュレーションの高度化」。これらを通じましてオキシダントに関する現象解明を行っていこう、こういうことで昨年の報告書はまとまったところです。
この報告書がまとまりましたその後の動きについては、資料1-2をご覧ください。
今年5月18日に中央環境審議会の大気環境部会が開催されています。これは何かといいますと、1枚めくっていただきますと別紙1がついております。これに先立ちまして、平成24年4月20日付で環境大臣から中央環境審議会会長に対しまして、「今後の揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制対策の在り方について」の諮問がなされております。
この諮問理由ですけれども、「揮発性有機化合物の排出抑制対策は、大気汚染防止法に基づく排出規制と事業者の自主的取組を適切に組み合わせること(ベスト・ミックス)により取組が進められてきた。この取組の結果、「揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制の在り方について」における目標(固定発生源からの揮発性有機化合物の排出量を平成22年度において平成12年度比で3割程度削減)を達成する見込みである」と。このときは見込みですけれども、今の時点でいえばもう既に4割以上を達成しています。そういうことで、「このような状況を踏まえ、今後の揮発性有機化合物の排出抑制対策の在り方について貴審議会に意見を求めるものである」ということで諮問がなされております。
1枚目に戻りますけれども、この諮問を受けまして、この諮問の内容は揮発性有機化合物排出抑制専門委員会で検討していくことにこの大気環境部会で決まりました。ほかにも、この大気環境部会のときには昨年度の報告書についても内容をご報告させていただいております。そのときには委員の方からは、VOCだけにとどまらず、光化学オキシダントやPM2.5も含めて全体として考えることが必要だというような意見も出されておりますし、光化学オキシダントの緊急時の措置の内容についても検討すべきというような意見も出されておりました。
その後、専門委員会を6月7日に開催いたしまして議論を始めたわけですけれども、この中でも再度、昨年度のこの検討会の報告書は報告させていただいております。この場でもやはり、この専門委員会を発展的に解消して、VOCだけにとどまらず、光化学オキシダントやPM2.5も含めて全体を議論する新たな専門委員会を設置する必要があるのではないかというような意見が出されました。
こういうことがあって、その後も専門委員会とか大気環境部会の議論を経て、10月11日に揮発性有機化合物排出抑制専門委員会のほうで報告書の案を提示しまして、その場で所要の修正を経た後は、最終的な報告書として大気環境部会へ報告することで了承を得ております。先ほども挨拶でありましたけれども、現在パブコメ中でありまして、年末の大気環境部会へ報告する予定でございます。
報告書の内容ですけれども、これは別紙2をごらんください。別紙2の、本件に関連する部分を中心にかいつまんで説明をしたいと思います。
まず、5ページ目、「1.検討の経緯」。経緯としては、VOC排出抑制制度はもともとオキシダントとSPM対策として始めたものでして、平成22年に3割削減しようという目標に対して、実際は4割以上の削減をしていただいていまして、まずここに感謝したいと書かせていただいております。その結果、SPMは当初の見込みであった環境基準の達成率を超える水準まで改善しましたし、オキシダント濃度も昨年の検討会でありましたように高濃度域で改善傾向が示唆されるということで、いろいろ効果があったという経緯はありますが、今後どうするのかというのを検討することになりましたというのが経緯でございます。
7ページからの「3.」にありますように、今後どうするのかということにつきましては、現行の法規制と自主的取り組みを組み合わせた現行のVOC排出抑制対策を継続していくということでこの報告書はまとまっております。
そして、この検討会と直結するところは13ページからの「8.」になるわけですけれども、この5月からの中環審の中でも何度も、VOCは、SPMとか、今でいえばPM2.5とかオキシダントとかいうこととも密接に関連するという話もございましたし、総合的な対策検討のための新たな専門委員会の設置ということがこの報告書の中で位置づけられております。
ここを若干詳しめに説明いたします。13ページです。VOC排出削減が進められたことで、高濃度域の光化学オキシダントが改善している可能性が示唆されております。一方で、環境基準達成率は0%と依然として著しく低かったりします。また、大陸からの越境移流や植物起源VOCの把握が十分でないなどの新たな課題も明らかになってきている。このように、光化学オキシダントについてはいまだその発生源寄与の解明が不十分ということです。また一方で、平成24年4月に閣議決定されました第四次環境基本計画では、「光化学オキシダントについては、広域大気汚染や気象条件の変化などの影響を大きく受けやすい注意報等とは別に、環境改善効果を適切に示す指標について検討を行い、結論を得ることを目指す」ということがうたわれております。こうしたことから、今後は、光化学オキシダント調査検討会報告書に基づきまして、現象解明を十分に進めて、今後必要な対策等を検討するとともに、環境改善効果を適切に示す指標の検討も行って、並びにその対策の評価につなげていく必要があると考えております。
また、近年、PM2.5についてもまだ現象解明も十分でなくて、VOCとPM2.5とオキシダントについては複雑に関連しているということがありますので、VOC排出規制のみを取り扱うこの排出抑制専門委員会というのは本年度をもって発展解消し、今後は、VOCのみならず、光化学オキシダントやPM2.5を含めて総合的な検討を行う専門委員会を新たに立ち上げ、今後必要な対策の検討などについて幅広い議論を行うことが適当である、この報告書ではこのようにまとめられています。
この「8.」の内容をかなりかみ砕いて絵にしたものが、次の別紙3のポンチ絵です。
右半分の説明になりますけれども、まず現状の問題点としましては、オキシダントの「環境基準達成状況が非常に悪い」、それとあと課題としては「環境改善効果を適切に示す指標がない」ということがありますので、目的(Target)としては、「今後必要な対策の検討」「環境改善効果を適切に示す指標の検討」、こういう二つがあると考えております。また、昨年度のこの検討会でも出されていた課題とか問題点として、「発生機構や発生源寄与の解明が不十分」「対策検討に必要な発生源データが不足」「シミュレーションモデルの高度化が不可欠」ということがあるので、その下にありますように、「モニタリングの充実」「データの多角的解析」「排出インベントリ等の整備」「シミュレーションモデルの高度化」を通じて、Target1と2を目指す、こういう取り組みを進めていきたい。こういうものが今後必要な取り組みであり、新たな専門委員会で議論していく取り組みであるということでまとめさせていただいています。
ここまでが、昨年度のこの検討会後の最近の動きでございます。説明は以上です。
秋元座長ありがとうございました。
これまでの経過説明をいただきましたが、何かご質問はございますか。
ここまでのところはよろしいですか。
よろしいようでしたら、次の議事(2)「今年度の検討内容と予定について」を引き続きお願いいたします。
後藤課長補佐それでは続きまして、議事(2)の今年度の検討内容の説明に移りたいと思います。まず、資料2-1をごらんください。これは、本検討会での検討内容についての全体像ということでお示しさせていただいております。
まず、この検討会の目的です。先ほどの資料1-2の別紙3のポンチ絵にもありましたとおり、大きな目標としては、「Target1 今後必要な光化学オキシダント対策等を検討する」「Target2 環境改善効果を適切に示す指標について検討する」。これに向けてやっていく必要があると考えております。右側にありますけれども、昨年度この検討会で、現象解明がまだまだ不十分で、環境改善に向けて必要な調査研究を進める必要があると示されました。そのため、今後の全体の流れとしては、大きな目標(Target1、Target2)に向けて、データの多角的解析とかインベントリの整備とかシミュレーションモデルの高度化に取り組んでいく必要があると考えております。
では、今年度何を検討するのかということでございます。先ほどの資料1-2の別紙2のVOCの報告書にもありましたけれども、昨年度の報告書に基づいて、現象解明をさらに進めて、対策の検討に取り組んでいくことが必要です。
資料2-1の裏面を見ていただきたいのですけれども、これは、昨年度の報告書に示された、「今後の調査研究のあり方(全体像)」と「今後のオキシダント対策の評価フロー(例)」の図です。
「モニタリングの充実、データの多角的解析」と「排出インベントリ精緻化など」と「シミュレーションの高度化」の三つが大きなテーマであるわけですけれども、まずは「現象解明のためのモニタリングデータの多角的解析」に取り組んでいきたい。まずこれがスタートかなと思っておりますので、これに取り組んでいきたいと思っております。また、その下にある昨年度の報告書の対策検討の例にあるように、対策を検討するには、まずやはり現象解明を進めるとともに、どのような指標を意識して対策を検討するのかを決めることが重要であると考えております。このことを十分に意識して、多角的解析は行っていきたいと思っております。また、さきほどの資料1-2(の別紙2)にありましたけれども、環境基本計画の中でも「環境改善効果を適切に示す指標」の検討というものがございますので、こういうものにも当然つながることを強く意識した多角的解析にしていきたいと考えております。
ちなみに、ほかにも植物起源VOCのことも課題に上がっていますけれども、今年度、環境調査に若干着手しており、この辺も後々出てくるシミュレーションの高度化等につながるようなものにしたいと思っております。ですから、植物起源VOCの調査の関係のご報告も今回の検討会で少しさせていただければと考えているところです。
資料2-1の表に戻りまして、そういうことですので、「「今後必要な光化学オキシダント対策等の検討」や「環境改善効果を適切に示す指標の検討」に資するデータの多角的解析を行い、光化学オキシダントの現象解明を進めるとともに、これらの検討に役立つ指標を明らかにする」ということを今年度の検討目標にしたいと考えております。
そのためには、「データの多角的解析」、あと「評価指標の検討」まで行ければいいと思っています。それから、「発生源情報収集」といたしまして、別途、今ちょっと着手しております植物起源VOCの環境調査の結果についてもご意見をいただく。こういうものを今年度の検討内容にしたいと思います。
また、検討会の開催としましては、本日も含めまして3~4回は開催したいと思っているところです。
今年度の多角的解析の詳しい説明は資料2-2になりますけれども、こちらは日本気象協会のほうから説明していただきます。よろしくお願いします。
事務局それでは、資料2-2を用いまして、今年度の具体的検討内容と予定についてご説明させていただきます。この資料は今年度調査の具体的な内容の計画についてまとめたものです。内容としましては、基本方針と、多角的解析の計画について、植物起源VOCの環境調査について、検討会の概要と予定という内容で構成されております。
ページをめくっていただきまして、2ページから基本方針をまとめさせていただきました。昨年度の検討会報告の中の6.2章「今後の調査研究のあり方」の項目だけをまとめたのが、2ページの表1-1になります。この中の「(2)モニタリングについて」の「①光化学オキシダント濃度に関する現象解明のためのデータの多角的解析」という部分と、「(4)インベントリについて」の「①植物起源VOCの精度向上など前駆物質排出インベントリの精緻化」という部分に係るところについて今年度は調査を進めていきたいと考えております。この結果が、昨年度の報告書で整理された「今後のオキシダント対策の評価フロー」をまとめ直した3ページの図の中の「①施策目標の設定」につながる指標になっていけばいいかなと今考えております。
4ページに参ります。4ページ、5ページは本年度調査の概要をお示ししております。
多角的解析については4ページの1.1からになります。昨年度の報告書の中でもありましたように、現在、光化学オキシダントの評価は1時間値を基準としたものとして評価されていますが、これらの指標がオキシダントの濃度上昇の原因究明や対策効果を適切に評価することが困難ということで、新たな指標を設定するとともに、多角的解析というものが必要になってきています。その多角的解析を行いまして指標づくりを行うわけですけども、表1-2に示すような目的と解析項目に従って今回は解析を行おうと考えております。目的としましては、「地域別Ox高濃度の現象解明」、もう一つは、「影響要因に関する既存の知見の検証」、あと3番目として、「環境改善効果を適切に示す指標の検討」。それに対してそれぞれ検討を行うことを考えております。
1.2に「植物起源VOCの排出量の把握に向けた環境調査」が示されております。既に秋の調査については実施を進めているところですが、基本的には植物VOCの実態把握のために環境調査を行う予定です。それに向けて専門家の方にヒアリングを行いまして、調査計画等を立て、実施に移らせていただいているところです。そのほか、専門家ヒアリングとか文献調査を通しまして、既存の排出量の課題抽出を進めていこうと考えております。
このほか、1.3「光化学オキシダント及び前駆物質に関する情報収集・整理」ということで、文献収集等を通じまして資料整理を行っていきます。
最後に、この検討会を開催いたしまして、指標づくりのための検討を行っていただく。以上が全体的な概要になります。
データの多角的解析の具体的な内容についてご説明させていただきます。6ページからになります。
まず初めに、前提条件、使うデータとか地域を設定していこうということで、初めに優先解析地域の設定というものを考えております。これは、昨年度の報告書の中でも、優先解析地域を設定していくということがありましたので、それに従いまして、関東地域、東海地域、阪神地域、九州地域を今回の解析対象として考えております。
解析期間と季節区分につきましては、表2-2に示すような形で、期間は2000年以降2010年までのデータを使います。季節につきましては、昨年度の検討の中では4月から5月の春と7月から8月の夏という2季で行われていたのですが、今年はその間の梅雨時の6月も加えて、4月から8月までの期間について解析を行おうと考えております。
解析対象物質につきましては、7ページの表2-3に示すような形で、オキシダントと、前駆物質のNOX、VOC、ノンメタンハイドロカーボン(NMHC)について行いつつ、PM2.5及び硫酸イオン濃度も使っていこうと。あと、測定値ではありませんけどもポテンシャルオゾンについても解析を進めていこうと考えております。
これらのデータは、「使用するデータ」ということで7ページの下段のところにまとめさせていただきました。基本的には、大気汚染常時監視測定データということで、国立環境研究所のデータベースを利用させていただこうと考えております。硫酸イオンにつきましては、福岡県が測定されているデータをご提供いただきまして解析を進める予定です。VOC成分濃度につきましては、環境省が行っているVOCモニタリング調査の結果というものがありますので、これを経年的なところで利用しようと考えております。排出インベントリにつきましてはJATOPで排出量としてまとめられたデータがありますので、そちらを利用しようと考えております。あとそのほか、気象データとしましては、気象庁の気象官署及び客観解析値等を利用して解析していこうと考えております。
これらのデータを使いまして解析を進めるわけですが、具体的な解析につきましては8ページ以降に整理させていただきました。目的として先ほどもお示ししましたけれども、(A)として(地域別オキシダント高濃度の)現象解明のための解析、(B)としては(光化学オキシダントの影響要因に関する)既存の知見に対する検証、(C)としては(環境改善効果を適切に示す)指標の検討ということを考えています。それぞれの目標に対して、具体的な解析項目、解析内容、想定される成果を表にまとめさせていただいたのが、9ページ、10ページです。
(A)地域別オキシダント高濃度の現象解明につきましては、基本的には現在のデータを解析し、濃度に関する解析を行います。オキシダント濃度と前駆物質の関係とか、インベントリの関係について解析を行う。もう一つは高濃度事例の解析ということで、エピソードについて、典型事例について解析を行っていきます。10ページは(B)影響要因に関する既存の知見の検証ということで、越境汚染の影響の程度の解析と、NOによるタイトレーション効果に関する解析を考えております。最後は(C)環境改善効果を適切に示す指標の検討ということで、これは前段までの解析のところでもいろいろ指標に準ずるようなものが出てきますので、それにプラスアルファとして、昼間の8時間平均値による解析、週末効果に着目した解析、気象影響を除いた統計的解析を考えております。
具体的な内容につきましては11ページ以降を用いてそれぞれ項目ごとに説明させていただきます。
初めに、「地域別オキシダント高濃度の現象解明のための解析」というところを説明いたします。
この解析のために一番初めに行いますのは、経年変化のところをきちんと押さえていこうということで、(1)として「光化学オキシダント濃度と気象要因の推移及び相関」という項目で整理させていただこうと思っています。昨年度につきましても経年変化についてはされていますけれども、その解析に加えて、天気図分類というようなものを導入してみまして、総観的な天気のパターンによって高濃度の起きやすさとか越境の効きやすさみたいなものがうまく出ないかなというところに着目して解析を進めていくということを考えております。ページをめくっていただいて、12ページのところに天気図分類の例としてお示ししていますが、気象協会のほうで昔から天気図を客観的にパターン分類しようということをやっておりまして、こういう28分類に分けた天気図分類を持っております。それに基づきまして、高濃度になったときの天気図を割り当てて、平均濃度とか起きやすさとかいうものをうまくさばけないかなと考えております。この結果は、この後の高濃度事例の解析とか越境汚染の程度の解析とか気象要因を除いた統計解析にも使っていけるかなと考えております。
13ページになります。(2)としては「光化学オキシダント濃度ランク別出現頻度の推移」というものを考えております。これも昨年度の報告書の中でされていますが、割と高濃度の側の頻度について解析された例でして、逆に低濃度側でもう少し何か変化がないのかというところを考えております。具体例として、中段の図2-2に、国設新宿の測定局でのオキシダントの出現頻度を整理させていただきましたが、経年的に2000年から2010年まで、割合を示しております。下のほうから、濃度の低い0~10ppb、10~20ppbという、10ppb刻みで色づけしております。これを見ていただきますと、10ppbのところの出現頻度が経年的に減っている傾向が見える一方で、中濃度の30~40ppbぐらいの紫色のところについては徐々にふえつつあります。低濃度が減っているので、その辺が、地域的に何か差があるのか、全県的に何か傾向があるのかというところを捉えていこうと考えております。
(3)としては、「前駆物質の濃度推移とオキシダント濃度の関係」ということを考えています。前駆物質のノンメタンハイドロカーボン(非メタン炭化水素)に着目しまして、それの空間分布を把握することと、空間分布時における濃度の変化率みたいなもので何か関係が見えるものがないかというところを考えております。具体的な例としては14ページ下段の図2-4でお示ししております。
これは、国立環境研究所のホームページに出てくるものですが、2000年と2009年のそれぞれ濃度分布を示したものです。左上のところは、2000年から2009年にかけてのオキシダント日最高値の年平均値。ちょっと見にくいですが、緑色の部分が2009年でふえている傾向があります。それに対して、前駆物質のNOXの濃度は、右上の図ですが、2000年から2009年、これは色が変わるぐらいはっきりあらわれるという傾向があります。右下の非メタン炭化水素につきましても、黄色からオレンジのところが青とか緑色に変わって、濃度が減っているという傾向が分布としてあらわれています。その分布の変化率が、地域的に差があるのかどうかというのを地理的な感覚の中で把握していこうというふうなところを考えております。
(4)としては「VOC成分濃度の経年変化」ということで、環境省の揮発性有機化合物モニタリング調査の結果が経年的にございますので、その結果について整理させていただこうと思っております。解析の例としまして、15ページの図2-5。九州(福岡県)から群馬県あたりまでピックアップしまして、それぞれ、濃度の比率、濃度の積み上げの図を描いています。地域によって出現する濃度が大分違うようなところもございますので、その辺の成分濃度も含めたところで経年的なところを何か捉えていけないかなと思っております。
16ページへ行きまして、(5)の「季節別・時間帯別のオキシダント濃度の出現状況」ということで、1日を8時間帯に区切りまして、大体、朝と昼と夜と三つぐらいに区分できるかと思いますが、それぞれについて平均値を求めて経年変化を見るということで、季節と時間帯によるオキシダントの変化を捉えていこうと考えております。
16ページの(6)は「積算濃度や基準値以上の時間数等の経年変化」ということで、濃度だけではなくて、積算濃度とか、ある基準値以上になった時間数について経年変化を捉えていこう、それで何か見えるものがないかというものを考えております。
具体的な解析例は17ページにあります。これは東京都さんの常時監視局についてまとめたものです。上段は積算濃度の解析で、下段は基準値以上になる時間数の解析という例です。上段の積算濃度につきましては、ある基準値、例えば120ppb以上になるものについての積算濃度であれば、その基準値と実際の濃度の差を求めて積算していくというような形でまとめたものです。こうして見ますと、(高濃度を示す)赤い線は16年度あたりから徐々に減りつつあって、22年度にちょっと上がっているというような傾向がとれる一方、低濃度の40ppb以上あたりは継続的に上昇している。これは先ほどの出現率のところでも同じような傾向がありましたけれども、そういうものが見てとれるかと思います。下段のほうは基準値以上になる時間数ですので、120ppb以上になる時間数が年間で累積どれぐらいあったかというものを示している図になります。こういったものをまとめまして、積算濃度や時間数について指標として使えないかを検討していくことを考えております。
18ページの(7)は「環境濃度データと排出インベントリの比較」ということです。排出インベントリはJATOPさんのものが総合的にまとめられているので、それをベースにして、地理的な分布とか環境濃度との比較というものを進めていこうと、今考えております。
ここまでが経年変化的なところを捉えようというところでして、次の19ページの2.6.2は高濃度事例の解析ということで、典型的な高濃度の事例について具体的に解析していこうと考えています。
高濃度の事例の抽出ですけれども、基準値以上になった時間数と局数の和というところで、広域的に高濃度になった日について抽出して事例解析をしていこうと。そのときの天気図パターンとうまく組み合わせて、何か言えるものがあればいいかなと思っています。事例が抽出できましたら、そのときの気流とか分布を具体的に見ていくということを考えております。20ページのところに抽出するためのスコアの例を示しています。図2-9は、汚染スコアになります。赤色の棒グラフが実際のスコアで、このスコアが高いということは広域に高濃度になったので積み上げが高くなっているということです。そのときの気流につきまして、毎時大気解析GPVというものが今配信されていて客観解析値として3次元的な分布が把握できますので、そういったもので気流解析をしていこうかと考えております。
次に、2.7「光化学オキシダントの影響要因に関する既存の知見の検証」というところが21ページからです。越境汚染の部分とタイトレーション効果の話になります。
初めに、21ページの2.7.1「大陸からの越境汚染の影響の程度の解析」というところから説明いたします。(1)では「天気図分類に着目した解析」ということで、前段でうまく解析できて、越境汚染が起きそうなときの天気図がうまくパターン分類できれば、ここのところにも多く利用していきたいと思っております。そこで抽出した事例につきまして、(2)の「後方流跡線解析に着目した解析」を行いまして、21ページの下段のような図を描いていけば、何か見えるものがあるのかなと考えております。あと、22ページの(3)に「他の汚染物質に着目した解析」ということで、初めにご紹介させていただいた福岡県さんが測定されている硫酸イオンの連続測定値をご提供いただいていますので、それを使ってうまく解析していければなと考えています。福岡県さんだけが今行っていて、ほかの地域については同じような物質がないので、参考としてPM2.5みたいなものに着目して、越境汚染と組み合わせたときに何か言えるものがないかというふうに考えております。
あと(4)として「越境汚染と複数要因の検討」ということで、越境汚染が起きているときの気象要因とか環境要因というものを、数量化Ⅰ類を用いた多変量解析を行いまして、指標として何か言えるものがないかというふうに検討していく予定です。あと、(5)の「越境汚染の頻度と影響の程度の検討」につきましては、上段(4)までのところの解析結果と、参考として地域別の発生源寄与解析をCAMxというシミュレーションモデルを使って試しでやってみて、どの程度発生源寄与が求まるかというのも参考としてお示ししていこうかと、いま考えております。
ここまでが越境汚染でして、もう一つ、23ページの2.7.2のところに「NOによるタイトレーション効果に関する解析」をお示ししております。基本的には、タイトレーション効果の解析につきましてはポテンシャルオゾンというものを計算して、前段までの解析と同じような解析を適用して、何か言えるものがないかということを検討していくことになるかと思います。
ここまでのところでも指標につながるような解析は結構あると思いますが、それにプラスアルファとして、2.8「環境改善効果を適切に示す指標の検討」ということで、2.8.1「昼間の8時間平均値による解析」。8時間平均値を求めまして、前段までの解析と同じようなことをして、指標として使える可能性を検討するというもの。それと、2.8.2「週末効果に着目した解析」ということで、平日、休日の前駆物質の濃度比とかオキシダントの分布を調査して、週末効果と経年変化をうまく組み合わせた解析をしていきたいと考えております。あと、最後、24ページの2.8.3「気象影響を除いた統計的解析」ということで、気象による変動がかなり大きいところもありますので、その辺のデータの均質化を図って、統計解析を行っていくようなことを考えております。ここでも、天気図型がうまく使えて、うまい場合分けになっていけばいいかなと思っております。
以上までが多角的解析の部分になります。
25ページからは、植物起源VOC排出量把握に向けた環境調査になります。
既に秋の調査を実施しておりまして、今月20日から今日まで、関東地方の2地点について既に実施させていただいております。実施に先立ちまして、植物起源VOCの専門家の先生にヒアリングを行いまして、調査方法とか測定地点についてご相談して、環境調査計画を立てさせていただきました。それと、その際に、植物起源VOCインベントリに係る課題についてヒアリングをさせていただいています。
具体的な調査内容は、26ページの表3-2にまとめさせていただいております。調査地点は、山間部の1地点と市街地1地点ということで2地点。26ページの図3-1に示したさいたま市役所の常監局のところと群馬県の林木育種場という2地点で測定させていただいております。調査回数は、今年度については秋と冬を予定しておりまして、来年度も春、夏を環境省で実施予定とお聞きしております。各季節10日間連続測定を行います。調査項目は、植物起源VOCの成分ということで、イソプレンとテルペン類を行います。捕集方法はキャニスターによる捕集ですが、10日間の期間中の5日間については24時間の連続捕集。それで、専門家の委員の方にご相談させていただいたところ、昼夜別の濃度についても把握したほうがいいだろうというお話もありましたので、残りの5日間については昼夜別についてサンプリングさせていただく。なるべく長い期間でいろいろなことをしたいということで、こういう形にさせていただきました。このサンプリングしたものを分析室に持ち込みまして、ガスクロで定量化するというようなことを予定しております。
27ページの図3-2は調査地点周辺の状況の把握の中で行ったものですが、スギの分布をあらわした図になります。緑色のところがスギ林になりまして、植物調査の中ではスギ-ブナ群落、スギ-ツガ群落、スギ群落、スギ天然林といった形で分類されたものを集計したものです。関東地域についてはかなりの部分がスギ林になっているというのを確認しておりまして、実際、測定を行う林木育種場はこの図の中では左上にある青い点になりますが、スギ林の中で行っています。
具体的な調査地点の環境ですが、28ページに現場写真を入れさせていただきました。林木育種場は育種場なのであまり背の高い木はないですけれども、こういったスギ林の中で行っております。さいたま市につきましては、さいたま市役所の常時監視局の脇をちょっとおかりして測定を行っております。
これらの結果につきまして、表3-3に示すような結果の解析を行っていきます。あと、参考の資料としまして、この期間について、平成22年度まで環境省で行われた「揮発性有機化合物の浮遊粒子状物質及び光化学オキシダントの生成に係る調査」の中でつくられたモデルを使って実際にシミュレーションを回してみまして、測定濃度とシミュレーションで出てくる濃度にどれぐらい違いがあるかというところを見ていこうと思っております。
そのほか、植物起源VOCに係る文献等調査というものを行ってまいります。
あと、29ページの下段、既存の光化学オキシダント及び前駆物質に関する情報収集・整理のところは、特に、VOC排出量と大気環境中のVOC濃度の経年変化の関係とか、アルデヒド類の大気中における動態に着目して文献収集を行っていこうと考えております。
あと最後に、30ページ、検討会の予定についてまとめさせていただいております。概要につきましては、一応、3回から4回を想定しております。4回だとすると、表5-1のような形で、1回目が本日、2回目が1月、3回目が2月、4回目が3月ぐらいです。具体的な検討予定としましては、31ページのような形で、今回1回目については全体的な調査計画について検討いただき、2回目については、ある程度結果をお示しできるような形を考えております。2回目、3回目で結果についてご検討いただきまして、4回目で最後のまとめと報告書(案)の検討及び今後の調査方針の検討を行っていただければなと考えております。
以上でございます。
秋元座長ありがとうございました。いろいろおもしろい結果が出てくるかと思いますが。それでは、これから1時間弱ぐらいいろいろご議論いただきたいと思います。
まず、主に資料2-2のほうでよろしいでしょうか。中身の細かい解析に入る前に、それ以前のところも含めて、全体の進め方などについて何かご意見があれば最初に総論でお伺いしておきたいと思います。
浦野委員確認したいことと、意見も若干ありますが。
資料2-1にありますように、今回の検討会は昨年度のものをベースにして、Targetとして「今後必要な光化学オキシダント対策等」あるいは「環境改善効果を適切に示す指標」に資する検討を行うということになっております。まずこの点を、第1回に委員の共通認識をつくるという目的がございますので、最初にちょっと申し上げておきます。
昨年度は、資料2-1の裏にありますように、オキシダント濃度に関する現象解明、要は、今現状はどうなっていてどんなところが不明であるか、どういうところをさらにやらなければいけないかという、どちらかというと学術的な状況と課題を整理したと考えられるわけです。今年度は、これを踏まえて、対策等の検討あるいは指標の検討に資するにはこれらの研究等を今後どう進めたらいいのか、あるいは途中まで進めてみたらどういう状況になるのかということを明らかにする。ですから、いわゆる学術的に不明な点とか不確定だったものをずっと追いかけていると、これはいつまでたっても終わらない話になります。資料2-1の一番上の図に矢印がついておりますけれども、この矢印は、あくまでも左側に役立つ右側をやる。だから、どっちかというと矢印が双方向に向いていて、片側からの要求に対して右側をどうするかという、それがまた戻ってくる、そういう意識でぜひ皆さんがご議論をいただきたいということを、まず念のために申し上げます。
その中で、今年度の検討内容を見ますと、現実のデータを解析して現象解明を進める、それから、役立つ指標を明らかにしていく、あるいはそれに参考になるデータを出していくことが主になっておりますので、基本的には、上の検討目標のうちの後者、TargetでいえばTarget2に関するものを主にやって、Target1は一応頭の中では考えるけれども、今年度の検討の主なる目的ではないと。まず第1段階としてTarget2をやるのであるという理解でよろしいのかどうかという確認をさせていただく。それが1番目です。
それからもう一つ、ちょっと気になるのは、資料2-2の3ページ目に昨年度の検討会報告より作成した図1-1がありますが、これはシミュレーションの角度からするとこれでよろしいかと思います。しかも、施策目標が先にあってそこから下へ下がっていますので、考え方はこれでかなりいいと思います。しかし、今年やるさまざまな実測データの解析というのがこの図には入っていません。さまざまな実測データの解析がかなりいろいろあって、それとシミュレーションとが対応して両方でやりとりしていくという図が正しいと思います。「検討会報告より作成」ということで事務局がつくっていただいたこういう図が独立してどこかほかへ出ると、絵というのは非常に見やすくて、これでいろいろ考えられる。やはり、実測データのさまざまな解析があって、それとシミュレーションがやりとりしていくということなので、この絵を出すならもう少し直していただきたいということが一つあります。
主にはこの二つです。ほかの細かいことはまた後で申し上げますが、この辺をひとつご確認いただければと思います。
秋元座長ありがとうございました。それでは環境省のほうからお答えいただけますでしょうか。特に、今年度はTarget2が主な目標と考えていいかどうかというあたり。
後藤課長補佐確かに、Target2、環境改善効果を適切に示す指標をまず探さないといけないというのもありますのでそれも当然やっていきたいと思っておりますし、Target1のほうも、「対策等を検討」するためには、どういう種類の指標というか、どういう値をTargetにするのかというのがやはり要ると思いますので、Target2のウエイトが大きくなると思いますが、Target1にも役立つようなものを、両にらみで考えております。
Target1の「対策等の検討」はおそらく高濃度域を減らさなければいけないというようなことがあると思います。その際の指標というかデータの扱い方等にも役立つものも多角的解析から見つかるといいなと思っております。したがって、Target2だけではなくて、両方にらんでやりたいと一応思っておりました。
浦野委員お気持ちはよくわかりますけれども、第1回から第3回までのスケジュールを見ても、指標づくりの議論につなげますというふうになっています。何らかの対策をとったときにその効果がどう出るかが割とわかるような指標をつくることが主であって、それがある程度明らかになれば対策のほうもつながりますよと、今はそういうスタンスなのかなと思っています。
というのは、「対策等の検討」となると、では具体的にNOX対策をどうするんだ、あるいはVOC対策をどうするんだ、あるいはVOC対策でも固定発生源もあれば自動車もあれば植物由来等もある、そういうものをどう対策をとったらば指標がどう変わってどれぐらい効果があるかと。それはその次のステップだと思います。意識はするけれども、あくまでも今年度は「対策等の検討」にまであまり欲張らないほうがすっきりする。というか、逆に、これだけの数の皆さんがいると、あれも必要だ、これも必要だ、こういう観点も要る、ああいう観点も要るということになって、下手すると話が発散してしまうんですよ。そうすると非常に混乱するので。
対策効果を見ることは当然ですけれども、あくまでも今年度は、それに必要な適切な指標というのはこういうものでやったらいいんじゃないかというのを検討する。次のステップとして、その指標をよくするためにどういう対策があるというのを検討する。当然、頭の中に対策は幾つか描かれると思いますけれども。その辺を少し明確にして議論したほうがいいというのが私の意見です。
この辺は皆さんの共通認識をつくっていただかないと、この先、困るかなと。当然、最後は対策が要るに決まっているわけです。ただ、対策のほうの話がどんどんどんどん出てきてしまうと、混乱する。指標と対策をやりとりしながら検討するというのは、それはそれで出来たほうがいいと思いますけれども、今年度はそういう計画になっていないように思うので、ちょっと確認したい。
秋元座長ありがとうございました。お答えありますか。
大森課長浦野先生ご指摘のとおりだと思います。最終的には、こういう現象の解明なり改善効果を適切に示す指標、それに基づく評価があって初めて対策につながる話だと思います。最初にいきなり対策と書いておりますが、それは、今後の議論を踏まえて最終的にそっちの方向に結びつけたいということですので、そのようにご理解いただければと思います。
秋元座長ありがとうございました。座長の認識としましても、「対策等を検討」するということになると、実際に何をどう減らしたらこうなるよという答えを出すことになると思いますが、それは少なくとも2年ぐらいかけてやるというのが、前から伺っていての私自身の理解です。だから今年度は、浦野さんの言うように、対策に資するというのをちゃんと見据えた解析をしていくということだと思うんですね。ということで、今年度に関してはそういう方向でよろしいですね。
大森課長はい。
秋元座長はい、ありがとうございます。
もう一つありましたね。シミュレーションと実測の解析の対応の図がないではないかと。これはどうお答えになりますか。
後藤課長補佐それについてはこちらで引き取らせていただき、対応させていただきます。
秋元座長今後つくると。
後藤課長補佐はい。
石井委員確認になると思いますけれども。これまでの対策について例えば十分であったかどうかというふうなこととか、指標について検討するということになっておりますのは、今回の対策についてこの指標でどうだったのかがはっきりするということを期待していいものでしょうか。今回のではなくて、これから先の話だけを対象とするのではないのですよね。今回の評価も当然含むと考えてよろしいでしょうか。
秋元座長これは私のほうからお答えしたいと思います。
今まで我が国のオキシダントの問題でやってきたのは、常に、注意報が何回出たとか、注意報がちっとも減ってないからオキシダントがちっともよくなってないという議論でした。しかし、昨年度のデータ解析でも明確になったように、120ppbを超える・超えないというのはその年々の気象要素によって非常に影響されるので、いわゆる統計的に有意な数字になってこない。それをいくら眺めても、よくなったのか悪くなったのかは見えない。だから、もうちょっと別の形の、統計解析にたえるような指標、例えば8時間値、それも単に8時間値だけではなくて何パーセンタイルをとるとかいろんな統計的な、いわゆるロバスト(堅牢性)を持ったような指標を評価指標として考えるべきではないかということが、昨年度の結論で一つ出てきたと思います。
だから、今年度はそれを踏まえて具体的にそういうものを検討しましょうと。何をどう減らしたらどうなっている、過去20年間減っているのかふえているのかを評価できるような、そういうものを考えましょうということだと理解しております。だから、そういうものを具体的に今年度のうちに試案としてつくってみて、それでやってみるということだと思います。
まさに先ほどの、最終的に対策を目標にしてやるかどうかというのは来年度以降のことだと思います。まず、ふえているのか減っているのか、その辺のところを、統計的にある程度意義のあるような数字で議論できるベースになるようなものを具体的につくっていくことだと理解しています。そういう方向で気象協会のほうにも作業していただくのだと思います。よろしいでしょうか。
石井委員すみません、しつこいようですけれども、これまでの対策についてどうだったのかという結果がそれで出てくるというか、一応の結論が出てくると考えてよろしいわけですね。
秋元座長先ほども、高濃度のところは減っているとか低濃度のところはどうだとかというのがありましたね。ああいうものはそれぞれ別々に見れば確かにそうだけれども、もう少しわかりやすく、ある統計指標を使って、例えば今までVOCはこれだけ減りNOXはこれだけ減っているけれどもオキシダントはこういうふうにふえていますよというようなことを、地域ごとにすることで、評価できるような指標を検討するということだと思います。
ですから、注意報云々以外に何か共通に使えるようなものはないかと。環境基準だと全部超えてしまうから使えないわけですよね。あとは注意報しかないけれども、注意報だけだと、出たり出なかったり、年々変動があまりにも大き過ぎる。その中間になるようなしかるべき指標を考えていく。これは統計の専門家から一回話を伺うとわかりやすいと思いますが、いわゆるロバストネスをきちんと担保できるような指標を考えていくということだと思います。いいでしょうか。
浦野委員ちょっとよろしいですか。多分、行政の方とか業界の方からすると、やはり最終的には、対策等の検討とか対策の評価に関心度が非常に高いと思うんですね。いま秋元先生がおっしゃったように、今年度は指標をいろいろ検討する。そうすると、過去の数値も全部いろいろ解析することになります。逆に言うと、過去しか解析できないので。ただ、今後、例えばVOCをさらに減らしたらどうなるか、あるいは過去に減ったのがどのぐらい効果があるか、あるいはNOXがどのぐらい影響するか、そういうことがかなり出てくると思います。
そうした場合、過去のVOC対策が、どういう面では効果があった、あるいはどういう面では効果がなかったというのが一応見えてくると思います。全く効果がなかったとは思えないわけですけど、思ったほど効果がなかったという言い方もあるわけです。その辺が見えてくることによって、次に何を対策としてやっていけばいいのかが考えられる。それも、どれか一つだけでぱっときれいになるというわけにいかないので、その他の社会的な負担とか全体を考えて優先順位をつけて、将来の対策につなげていく。そのための仕事だと。
ですから当然ながら、過去のものもある程度評価されるというふうに理解しています。ただし、ある程度効果があったということと効果がなかったということの両方が見えてくる。ですから、前の対策が全然だめだったのかすごく効果があったのか、イエスかノーかみたいな二者択一ではないものが出てくるというふうに理解しています。そういう理解で皆さんやっていただければいいかなと思っています。
坂本委員今のお話でいいと思いますが、エミッションインベントリ、特にオゾンの場合には植物のBVOCが大きくきいているから、信頼し得る過去のそのデータを我々がどの程度持っているかどうかによって、今のような評価がすごくしにくかったりできたりするということが一つある。そこは我々がきちんと理解しておかないといけないと思います。
一方、VOCの規制をするときに粒子状物質とオゾンと言ったけれど、粒子状物質の場合にはまだ比較的、どういうプリカーサー(前駆物質)からどういうものが生成するか、そういうものをきちんと分析すればある程度わかる可能性はあるけれども、オゾンの場合には、1対1対応をしないということと、リニアリティーがないということ、それからBVOCについては我々がデータを十分に持ってなかったというようなことが、昨年までの検討でもわかってきました。その情報が、比較的信頼に足る、もしくは推定値としてでも信頼に足るようなものがあれば、今考えていた指標値がわかってくると効果がどうだったかという議論ができるのだと思います。
秋元座長ありがとうございました。指標に関しては、まさに浦野さんが非常にうまく説明していただきました。そういうことで、過去も未来も含めて、対策の評価に使えるようなものというふうに捉えていただければいいのではないかと思います。
大原委員今の皆さんの議論にシンクロするような形で発言したいと思います。
多角的解析としていろいろなことをやられる予定ですけれども、多分、結果はいろいろ出てくるけれども、それで何が言えるかというのがなかなか見えないような、最終的にそういう結論になる危険性があるのかなと。いろいろやられるのはいいのですけど。
解析するということは、やはりそれぞれその目的を明確にする必要があって、今回特に重要なのは、先ほど浦野先生がおっしゃられたように、昨年度の検討会で検討したように、ひょっとしたらVOCの対策効果が出ていてオキシダントが減っている可能性があるのではないかということが示唆されたという、その点はすごく重要なので、そこをもっと追求するのは一つ重要なポイントなのかなと思います。
ですから全体的に、対策を考える上での科学的知見として資するような、そういった面での目的を明確化して、それぞれどういう解析をしたらいいのかというあたりを整理し直されるといいのではないかと思います。
秋元座長ありがとうございました。
岩崎委員私も大原先生の意見に賛成です。この検討会に期待されていたのは、直接対策というのではなくて、例えば植物起源がどれぐらいあるのかというものを見ていくことによって、固定発生源を努力するよりもそちらの対策が重要になる、あるいは、大陸からの移流問題に関してどのぐらいの寄与率を持っているのかということであると思います。こういう検討をきちっとしていくことによって、将来、対策に結びついてくるだろうと。
それからもう一つは、PM2.5に関して、資料2-2を見ますと、大陸からの移流のところで硫酸イオンとあわせて書かれていす。これぐらいの解析でPM2.5に対する寄与率などを検討することがよいのか疑問です。これは、PM2.5がこれから重要になるということですし、ほかのところからもPM2.5の関係に関して議論されていますので、PM2.5の解析は、もう少し力を入れる必要があると思います。
植物起源に関しては実際に専門家のヒアリングとか測定に入ってレイアウトがある程度見えるのですけれども、大陸からの移流に関して、ではどのぐらいの寄与を持っているのか、地域によってどうなのか。例えば今年ですか、去年もそうですけれども、九州の測定局で新たに注意報が出たところがどんどん出始めていて、全体的にはそういう意味で達成率が悪くなっている。指標の問題もありますけれども。もしそうであれば、福岡の調査だけでそういう移流の問題が解決するのかどうか。例えば日本海の地域と比較してみるとか。
大陸からの移流の脅威を見るためにどういう調査が必要なのか、どういう検討をしたらいいのかというのが資料2-2では少し見えにくかったので、目的をもう少しはっきりさせて、そこに狙ったような調査を組んでいくのも大事ではないかと。それが、結局は最終的な対策に結びついていくというふうに思っております。
秋元座長ありがとうございました。貴重なご指摘をいただいていると思います。ほかに。
下原委員今までにVOCの削減をやった結果、削減効果が無かったのではないかとの意見もあります。例えば、VOCとNOXの比で、VOC律速の地域とNOX律速の地域が多分あると思いますので、VOCを削減に対して、全体のグロスであまり効果がなかったと見るのではなくて、NOX律速・VOC律速の地域に分けて、本当に効果がなかったのかを検討する必要があるのではないかと思います。
それともう一つ、私は植物起源のVOCが全VOCのどの程度を占めるか確認する手段として、もちろん測定を行うことは大事であると思います。しかし、例えば、気象で、風速が似通った条件、日射を同程度、気温も同程度ということでプロットしてオキシダント濃度の経年変化を見ている過去のデータがあります。ここで、もし午前なら午前の同じ時間帯で、例えば、気温だけが違うということは無理でしょうけれども、日射がちょっと違う条件で、その経年変化をとって、その傾きがどう違うのかを見てみる。VOCの量が固定で大きな変動がないとして、日射がこのぐらい違えば、どのぐらいオキシダントを生成するかの予測値を出してみる。実際の傾きが、予測値を超えて大きくなれば、もっと未知のVOCがあるかもしれないし、あるいは移流の影響があるかもしれない。もしかしたら、そういうものが、気象条件で分類した解析の濃度のずれから予測できるのかなというのが一つ。
もう一つ、福岡の場合ですけれども、移流というのはもちろん、半地球規模でいろんな汚染、つまり、オキシダントで移流してくる部分と、前駆物質で来る部分があって、日本のOx濃度を底上げしていることは事実だと思います。しかし、やはり九州とか四国地方とか中国地方は、中国大陸からの汚染が一番多く来ているはずですよね。ところが、福岡県で見ても、清浄地域というか一般大気の地域では、オキシダントはそれほど経年的に上がらないんです。それでも、4分の1に時間を変えて夜間だけ切り出してみると、清浄地域で夜間に濃度が経年的に上がるんです。都心部まで解析に入れてくると、オキシダントの上昇がもうちょっと顕著に認められる。まだこの辺は解析しないとわからないですけれども。
そうすると、オキシダント濃度が都市部で上がるのは、NOXのタイトレーション効果なのか、あるいは大陸から流れてくるVOCの前駆物質の影響なのか、そういう見方をしていくのはどうでしょうか。全国的にオキシダント濃度が経年的に上昇しているのであれば、大陸からの影響を強く受けやすい福岡でオキシダント濃度がぐっと上がっていい。そこがちょっとわからないところがあります。
秋元座長ありがとうございました。先ほども言われたけどもポテンシャルオゾンの話は非常に有用だと思いますので、進めていただければと思います。
井上委員言葉の問題で、資料2-1のTarget2で「環境改善効果を適切に示す指標」となっていますが、「環境」といえば、どこから来ようと、中国から来ても日本が原因であっても、どっちにしても濃度が上がれば環境が悪くなるということです。お話を聞いていると、「国内対策の影響が適切に見えるような指標」ということなのかなと思いました。
秋元座長これは必ずしもそういう意味ではなくて、先ほどちょっと出ていたような例えば8時間値。その8時間値のとり方にもいろいろあると思いますが、そういうもうちょっと安定したものをとった上で、それの濃度ランクを分けて見ていくと、国内対策のあらわれやすい濃度ランク、越境の分の寄与の大きく出そうな濃度ランク。そういうものに分けて何か見えてくるのではないかなということではないかと思っているのですが。
指宿委員ちょっと関連して。ちょうど今、環境改善効果について発言しようと思っていたところで井上さんからご意見が出たのですが。そういう意味でいうと、環境改善って何だというところがすごく曖昧になっていますよね。これはオキシダントのことについて検討する会なので、オキシダントが減ることに関する改善効果ということだと思うのですが、Target1と2の二つを並べると、そこが曖昧になってしまうんです。例えばリスクというところからいえば、オゾンがふえてもNOXが減ればいいとか、そういう議論と紛らわしくならないように、ここはみんな認識しておいたほうがいいと思います。
それともう一つは、いま座長がおっしゃったように、8時間平均値とかいう話になったときに、それではオゾンの全体の暴露量で指標にするのかと。多分、そういうのも一つの大きな基準にはなると思いますが、「環境改善効果を適切に示す」ということだけでは、論理としては弱い。例えばオゾンの環境基準の達成率が悪いから困ったというだけではなくて、むしろ暴露量は減っている、それを示すような指標を我々として見つけて,それについてデータの解析をきちんとするとか。多分、そういうような道筋をとるのがいいのではないかと思いました。
浦野委員今の何人かの方のお話にまたコメントしたいのですけれども、その前に事務局にもう一度確認です。この検討会は光化学オキシダントの調査検討会ですね。それで、別にVOCのほうの委員会では、先ほどの諮問もありまして、NOXも含めてオキシダントとPM2.5とをトータルに考えた全体的なものを議論する検討会を別途つくるという方向が出ていて、それは別につくられるわけですよね。その検討会とここの検討会がある程度やりとりをせざるを得なくなる、あるいはこちらの基礎的なものもそちらに上げていくという形になるので、その辺も混乱のないように考えておかないと、PM2.5の話とかほかのものの話まで全部ここで出してくると話が違ってきてしまいます。岩崎先生はちょっと誤解されているのではないかと思って。それは別のところでもう一度議論される。ここの検討会はオキシダントについて議論する場でして。
そういう意味では、先ほど指宿さんがおっしゃったように、「環境改善」と言った場合はいろいろとられてしまうので、オキシダントというのをはっきり示して、「オキシダント低減効果を適切に評価する」と言うほうが正しい。それが1点。
それからもう一つは、オキシダントの低減ということもありますけれども、それをどういう指標で出すかというときに、やはり最終的には健康被害をどう防ぐかという視点だと思うんですね。だから、本当に低濃度で長時間暴露していて、その暴露量が幾つだからいけないという議論になるのか、あるいは高濃度で短時間でも暴露すればいろいろ被害が出るのだというふうに考えるのか、その辺のことによっても指標が変わってきます。指標というのは統計的な議論だけではなくて、あくまで人の健康との絡みで議論しないといけないと思うので、その点をちょっと確認しておきたい。
それからもう一つ。今回の指標を検討するときに、当然、海外からの移流とか植物由来のVOCの影響を明らかにしていく、あるいは切り分けてやっていくことは非常に重要だし、今まで不足している点もあるのでしっかりやりましょうというのは全く異議がないですけれども、やはり、中国から来るあるいはヨーロッパから来るものを抑えることは対策としてなかなかできないわけですね。あるいは植物由来も、むしろこれから温暖化すると若干ふえてくる傾向があって、山をなくしましょう、森林をなくしましょうというわけにいかない。そうすると、対策としてとれるものはやはり自動車とか固定発生源になるわけなので、そういうものがどういうふうに寄与してくるのか。要するに、国内対策として、自動車とか固定発生源の影響をどうやって明らかにしていく、あるいはどこをどうすれば減るか、あまり減らないとか、それに対して社会的負担はどうかというようなことが見える形に持っていくのが正しい。ですから、大原さんのおっしゃったのもそういうことなのかと思いますけれども。
ですから、海外からの移流とか植物由来というのを明らかにすることは必要だけれども、それは対策には必ずしもつながらない。対策につながるところにやはり力を入れて、見える形に持っていく、そのために移流とか植物を明らかにしていくという視点がないと、全部を学術的に明らかにしましょうで終わると、やはり対策につながらない。先ほどもお話があったけれども、過去の対策もよかったのか悪かったのかよくわからない、曖昧なままになってしまう。いろんなことの誤差があるからわかりません、あるいはいろんな影響があるからわかりませんという結論になったら、先へ行けない。
ですから、その辺をぜひ、ウエイトの置き方をしっかり考えて、目標、明らかにしたいことをしっかり考えて検討していただきたいと思います。
秋元座長ありがとうございました。最初ですので、まだご発言ないほかの方も、この機会に一言言っておきたいという方がおられましたら、どうぞ。
金谷委員私は、植物起源のVOCの影響評価のアプローチについて、得られる情報からどこまで十分なことができそうかというところに若干懸念を持っております。
先ほどの資料2-2にございますとおり、群馬県の1地点での、しかも限られた日数でのデータのみを利用してエミッションインベントリをよくしようという、かなり大胆に私には見えます。しかも、27ページの図3-2にありますように、特に優占種であるからという理由でスギ林の中での1点を選ばれたようですけれども、一方でスギはイソプレンをあまり出さないというような報告も最近随分ありますし。そういう意味で、関東周辺の森林を調査対象にするのが適切なのか、しかもイソプレンの起源はもしかしたらこれとは違うパターンかもしれない。恐らくそういった話は、ここにも触れられているJATOPのエミッションインベントリにも反映されているものではないかと思います。
そういう意味で、ここの選び方、しかも1点の選び方というのが適切なのか、あるいはもうちょっと多地点ないとここの検討会での議論に資するようなデータが出てこない可能性があるのではないかというところを若干懸念しております。その辺、何か情報をいただけますでしょうか。
秋元座長かなりスペシフィックな質問なので、今の点でお答えいただければ。なぜそれを選んだかと。これは気象協会のほうからお答えをいただけますか。
事務局今回、調査のところで2地点から始めようというのか、始めさせていただきたいと思っていまして、これだけで何か言えるというところは多分すぐには出ないと思います。しかし、植物について始めていかなければ何も出てこないところがあるので、スタートとして、関東の一番多そうなスギ林のところで1地点と、オゾンが一番高くなりそうなところで1地点というところの2地点を今回選ばせていただきました。限られた予算なり資源の中でやるというところで、10日間で昼夜ぐらいの時間区分で何とか見えるものがあればという期待がありますけれども、これだけで、植物がこれだけ効いているとかいう話をしていくのはちょっと危ないかなとはこちらでも思っています。
これからデータを蓄積していくスタートだというふうに認識いただければと思います。
秋元座長これはもちろん、1地点を測っただけで日本全体のミッションインベントリなんかに資するというのはかなり無理があります。直接的にはそういうことだけれども、いずれにしても、こういう行政目的の対策の中にこういう植物起源のVOCというのを今後意識的にやっていかないといけないよということを認識して、そのまず手始めの調査を開始したというふうな捉え方のほうがよろしいのではないかと思います。だから、日本全体でカバーするのだったら、もちろんもっとあちこちでやったり衛星データと組み合わせたりいろんなことがあると思いますが、ここの部分は初めてそういう行政調査として手をつけたというふうに理解しておいたほうがいいかなと思います。
ほかの方はいかがですか。
下原委員確認です。今後の解析項目の中に、昼間の8時間平均による解析というのがあります。私は6時間ごとに4分割ぐらいしたほうがいいと思っています。けれども、8時間で分割したときに、夜間に例えば光化学で生成したオキシダントが残留することもあるでしょうし、夜間だけで経年を見るとオキシダントが上がるとか、タイトレーション効果で昼間のNOXで昼間は下がっているよとか、わかってくと思います。昼間8時間だけの解析でいくんですか。
坂本委員これは1日を3等分して、8時間を解析する。
下原委員夜間は解析しなくていいんですか。
事務局16ページのところですけれども、1日を3区分しまして、夜間を含めて、0時から8時、8時から16時、16時から24時という3区分での解析も行います。昼間の8時間値も行いますけども、並行して同じように行いたいと思っております。
秋元座長ありがとうございます。
多角的解析のところについては個別のことでいろいろご意見があると思いますが、今日は最初なので、総論の部分で今年度の進め方で一言言っておきたいということがほかの方でありましたら、先にお伺いしておきたいと思います。
紫竹委員この検討会に初めて参加させていただくので学術的な細かなことはちょっとわからない部分があるのですが、冒頭から浦野先生なりがお話ししているとおり、私ども産業界にとってみますと、固定発生源のVOCを当初は30%以上減らせば光化学オキシダント注意報も9割減るんだというようなことが最初にあって、VOCを減らすというのは、単にそれだけではなくていろんな効果はあるという信念のもとで多額な投資をしてやってきたのが事実です。それで、揮発性有機化合物排出抑制専門委員会の報告書案にも書かれていますとおり、40数%削減することができたと。ですので、光化学オキシダント濃度なり注意報がなぜ減らないのか、それが海外からの越境の影響なのか植物由来なのか、それとも地球温暖化の影響も関係しているのかもしれませんが、その辺のところがこの検討会で何らかしらの原因らしきものを追及するということをやっていただけると、我々産業界としては非常に助かるなと感じています。総論で申しわけありませんけども。
秋元座長ごもっともなご意見だと思います。昨年度も冒頭に出たのですが、なぜ当初もくろんだようにならなかったのかということで、それなりの議論も昨年度したのですけれども。
今までの議論の中で、国内対策をどれだけやったらどう影響が出るかということのuncertainty(不確定性)をどうやって減らすかということにこの検討会の一つの役割があるのではないかという気がしています。今までデータの解析とかシミュレーションとか植物起源とか越境の影響とかといういろいろなものがあって、そういうものをただ総論的にやったのでは単なる科学的知見の解明になってしまうではないかというのはまさにそのとおりです。だからそれは、そういうことを押さえることによって、今、言われたVOCをこれだけ減らしたのになぜ減らなかったのかということの説明になるような因子がはっきりしてくる。植物起源VOCを全然入れないで評価しても仕方ないし、もしかしたらそれが原因で人為起源VOCを減らしてもオキシダントが減らなかったというのが本当の結論であれば、それはそれで一つはっきりするわけで、では今後どうしたらいいかということにつながると思います。そういうふうに捉えていただければいいのかなと。
だから、最終的にはやはり人為起源のVOC、これは必ずしも固定だけではなくて移動起源もありますけれども、いずれにしても国内の人為起源のNOXと人為起源のVOCを減らさざるを得ない。ただ、もし越境なんかが今後もし悪くなるとしたら、それがないとき以上に減らさなければいけないというふうな行政対応をせざるを得ない。それをどれだけ明らかにできるかということではないかと思っています。
下原委員VOCを削減しましたというときに、オキシダントは減らなかったと言われますけれども、本当に減らなかったのかをもう少し精査するのが大事かと思います。週末効果で逆に上がっているところがありますよね。同じように、場所によっては効果があったのかもしれない。そこを決めなければ、ほかのVOC、植物由来がどうこうということは多分できないと思います。
秋元座長それがまさに、先ほどから議論している指標なんです。それを評価できる指標をまずつくらなければいけない。
坂本委員今の意見にまさに関係するところで、BVOCにしろ、人工起源のVOCにしろ、地域によって発生形態が相当違うということも考えに入れなければ、全体の効果を見ることにならない。
我々が一番基本的に考えなければいけないのは、環境基準がどのように決められているか。それは、我々が暴露されるものによって、濃度、積分値、そういったものによる健康影響を考えてやっている。とすると、外国から来ようがどこから来ようが関係なく、それをある望ましいレベル以下に抑えたいというような考え方のもとに実は環境基準を定めているわけですね。少なくともそういった考え方のもとにやってきている。
それで、今後どうするかというときに、幾つの値を超えたらとかいったようなこれまでの光化学オキシダントの環境基準で果たしてよかったのかどうかというのは、先ほどのお話のように統計的にロバストを持った指標値とかそういったものを考えていかなければいけない。
今、健康影響についても別の形で調査が行われていて、文献レビューも含めて動いているものがありますので、長期的な考えとしては今後そういった方向へも必要になれば行くわけですが、現時点で私たちがやるべきことは、社会的コストを上げない形で我々が暴露される汚染物質の濃度を下げるためにどうするべきかを考える。そうすると、そのためには今どういった形での値が統計的に一番耐ええる値かということ、それから基準値、それから対策。浦野先生がおっしゃったように矢印は両方に向かうのですが、最初はどちらをより優先的な考えのもとに進めていくかというようなことでやっているのが今この段階だと思います。
この検討会ではオキシダントという点にフォーカスした形でやって、PM2.5とオゾンを一緒に考える場は中環審の中に別途つくられる。ただし、オゾンを考えるのであっても、PM2.5もしくは微小粒子を考えに全然入れなくていいかといったらそんなことはなくて、先ほど、越境移流の場合に、少なくとも粒子のほうがより越境移流を判断しやすい材料をいっぱい持っているので、そのときにオキシダントがどうなっているかということを考えれば、越境移流の大きさをちゃんと判断できる情報が集まってくる。そういう意味では、そこでも少し考えなければいけないけど、この検討会はまずオキシダントということだと思います。これは先ほど秋元座長が確認されたことでございます。
秋元座長ありがとうございました。残りの方はよろしいですか。
板野委員オキシダントについての対策効果を考える上で、個人的にポテンシャルオゾンというのが非常にある意味キーになるのではないかと思っています。その上で、資料2-2の23ページ、NOタイトレーション効果に対する解析ということで、ポテンシャルオゾンを用いた解析をする目的として、「NOによるタイトレーション効果を把握するために」という書き方をされています。認識としてちょっとどうなっているのかなという確認もありますけれども、私の考えとしては、NOによってオゾンがタイトレーションで壊されるという影響があるのはもう明らか。であるからこそポテンシャルオゾンを使った解析もしないといけないということなので、ポテンシャルオゾンを使った解析は、オキシダントに対する解析とあわせて必ず並行でやらないといけない。オキシダントに対して解析をする項目であれば、必ずポテンシャルオゾンもあわせて解析をすることが重要ではないかと思っています。つまり、タイトレーションの効果があるかどうかを把握するのが目的ではなくて、オキシダントの解析だけでは見えないことをポテンシャルオゾンで見ようというのが重要ではないかということが1点。
それから、少し各論になってしまうかもしれないですけれども、ポテンシャルオゾンをどういった計算式で出すかというのも少し問題があります。主に問題なのは、直接排出されるNO2を差っ引くのかそうでないのかといったある係数がありますけれども、どういう係数を使うかも結構重要だと思いますので、今それをどうするかという話ではなくて、そういった問題点もあるということを認識すべきではないでしょうか。
秋元座長ありがとうございます。そのとおりだと思いますので、ご検討ください。
それでは、よろしいでしょうか。最初ですので本当に総論の部分で、昨年からいろいろ皆さん思いを持たれているので、非常に貴重なご意見をありがとうございました。
それでは残りの時間で、少し各論の部分になるかと思いますが、気象協会の資料(2-2)でいえば1以下、(2の)多角的解析というところ。(3の)植物起源VOCの調査のところはちょっと別にして、その前のところまでで何かご意見があれば今の時点で伺っておきたいと思います。
竹内委員6ページ、解析期間の表があります。検討会報告書は2009年までと書いてありますけど、実は報告書では2010年と2009年までが混在しています。私の認識だと、初期のころは2009年まででしたが、データが間に合ったところから2010年が入ってきて混在したのですが、今回も間に合えば2010年まで入れたほうがいいのかなということ。あと、2010年はオキシダントがかなり上がる年で、おそらく異常高温によるところが大きいのかなとは思うのですが、その2010年が一番右で終わると、かなり引っ張られた印象がどうしても出てしまうので、やっぱり新しいデータがあるのであれば、あわせて見たほうがいいのかなという気はします。間に合わないのだったら無理かもしれませんけど。
秋元座長では、間に合う限り直近のものまで入れるということですかね。
岩崎委員私もその意見に賛成です。今年(2012年)のデータはなかなか難しいと思いますけれども、ここ近年、注意報の発令からしても急激に落ちていまして、これは関東だけではなくて近畿でも落ちていますので。
そういう情報からいうと、例えば今回の2012年のインベントリのデータは多分2013年2014年に出てきますから、それは間に合わないのですけれども、もしかするとVOCは50%以上減っている可能性もあります。そういう意味で、最近のデータをできれば少しいろいろ、使えるところまでで結構ですから集めていただいて解析に入れていただけると、おもしろいデータが出るのではないかと思います。
秋元座長なるべく直近のものを入れるにこしたことはないですが、ただ、濃度が減ったからVOCの効果が出たという解釈を恣意的にするのは非常にまずい。だから、2010年が高かったら、なぜその年が高くなったのか、その後もし減ったのならば、何で減ったのかということが、気象予想を含めてきちんとモデルで説明できるということがあって初めて対策に資するということになると思います。その辺は、ただ印象だけで、右に上がったからまずい、下がったからよかったということの次元で捉えていたらあまり進展がないと思いますので、よろしくお願いします。
大原委員いま言葉が出ましたが、モデルについてです。この調査の中ではモデルの役割が非常に曖昧ですよね。書かれている分量も少ない。多分、いろいろな制約がある中で、今年度はシミュレーションモデルがあまり動かせないということだと思いますが。
その上でちょっとお聞きしたいのは、例えば22ページに、OSATを使って越境汚染の解析をされるとありますが、これをどのぐらいの期間でいつを対象にしてどういう解析をするのかというあたりが全く書かれていないのでわからない。あるいは、BVOCのほうについても、29ページに「シミュレーションによって推定される濃度を比較する」と書いてはありますけれども、これを具体的にどうするのかなというようなあたり。とりわけ、これは2012年度の測定データなので、2012年度のインベントリをどうするんでしょうねという。震災後、固定発生源等の排出量が結構変わっているというようなところをどういうふうに取り込むのかなというあたりも含めて。
今日お答えいただく必要はないですが、全体的に、どういったようなシミュレーションをして、どういったような成果を狙うのかといったあたりをもう少し明確にしていただきたいと思います。
秋元座長シミュレーションの話が出たので、ついでにちょっと私のほうからも。大原さんも昔、気象協会の委員会でかかわっておられたと思いますが、このバージョンのモデルは、バリデーションはどこまでされていると理解しておけばよろしいですか。例えば、越境の議論が当然入ってくるので、いわゆるEANETのような離島局で季節変化ないしはオゾンの絶対値がきちんと合っているのがまず第一歩ですね。そこを合わせておいた上で、今度は都市部なり郊外なところ、首都圏とかいろんな4カ所を選んでいる、そういうアーバンなところでモデルが実測をどれだけ再現できているかということの検証。今後の対策、議論に使っていくためにはそのツーステップがともかく絶対前提ですが、そこは現状でどうなっていましたか。そこまではもうできていると理解していていいのか。
大原委員今回のモデルはその時のものとは違うモデルですよね。
秋元座長違うモデルなんですか。前に一緒にやられたモデルと違うんですか。
大原委員今回使おうとしているモデルはCAMxですから。
秋元座長CAMx? CMAQではないのですか。
大原委員CMAQとは違います。
事務局まず、越境汚染の話ですが、今回はCMAQとは違うモデルを使おうと思っています。というのは、OSATという解析方法がCMAQには入っていないのでちょっと使いにくいところがあるので、入っているモデルでよく似たものを使ってみようと。その結果が合っているか合っていないは、参考として見ていただこうというぐらいのところを考えています。
先ほどのご意見にあった、どれぐらいの期間をやるかというのはここには書いてないですけれども、基本的には、エピソードで高濃度になった事例で行ってみて、この方法でうまくいくのか、うまくいったときにはこれぐらいの寄与があるという話をさせていただこうと思っています。
もう一点、平成22年度まで環境省請負業務で作ったモデルは、5年間かけてそれなりには再現できる。いろいろ統計値とか平均値とか120ppb以上の超過日数とかというものを実測と比較させていただいて、それなりに合っているという形までは持っていきましたので、5年間の報告書をまたごらんいただくわけにもいきませんが、その中でいろいろ取りまとめさせていただきました。
あと、幾つか一緒に答えてしまいますが、植物起源のほうにつきましては、今回の植物起源の調査の期間についてシミュレーションを行おうかと思っています。排出量ですけれども、この中ではちょっとそろえきれない部分があるので、そのときの調査の2010年度あたりのものをそのまま流用させていただいて、人為起源のほうは入れていこうかなと。秋と冬季なのでそれほど光化学反応は進まないという期待をしながら、BVOCのほうのシミュレーションの中で、シミュレーションで再現する濃度が実測と比べて少ないのか多いのかを比べたことがなかったので、そこを比べてみて、インベントリのほうが過小なのか、それともどれぐらい足りないのかというのを参考にお示しできればと思っています。
秋元座長わかりました。今、幾つかのご意見をまとめてお答えくださいました。
大原委員バリデーションはシミュレーション解析する上での前提ですので、バリデーションなしでいくら解析しても、それはほとんど意味がないとは言いませんけれども、非常に危険だと思います。ですから、例えば東アジアのシミュレーションの場合には、少なくともEANETの測定局でオゾンの再現性をチェックする、これはマストだと思います。
それから、関東のほうのシミュレーションについては、確かにこれまで実績がありますけれども、では2012年のこの測定期間でどうなのかと問われたら、多分答えられないでしょう。パフォーマンスとして、結果はかなり違う可能性がある。ですからやはり、オゾンなりNOXなり、さまざまな測定されている物質できちんとバリデーションをすべきではないでしょうか。もし、時間的な余裕がない、予算的な余裕がない等々であるならば、どちらかに絞ってもいいような感じもします。非常に中途半端な印象を持ちました。
秋元座長ありがとうございます。これは非常に重要な点で、むしろ環境省に聞いておいていただきたいのですが。いま大原さんが言われたように、検証されていないモデルというのは少なくともサイエンスの世界では全く通用しません。バリデーションされたことがちゃんとレフェリードジャーナル(査読付き論文)に発表されてないと、それを信じてはいけないよというのがむしろ常識です。冒頭に申し上げた「Science and Policy(科学と政策)」と言ったときのScience(科学)というのは、まさにそのレベルのサイエンスでやらないと正しい行政施策は出てきませんよということを申し上げたい。
ご承知のように、日本は昔からモデルの使い方が、こう言ってはなんだけど、いいかげんに、その場その場で、使いやすいようにというか、答えが得やすいように使ってきているんですよね。だけど、そういうことはもう今や通用する時代ではないということをはっきり認識しておいていただいたほうがいいと思います。環境省もそのことをしっかり踏まえた上で、委託を出すのであれば、きちんとお金を出して、バリデーションの手間暇も含めた形でやっていかないと、その答えを使ったらまた昔と同じ危ないことになりますよということだと思います。
だから、今の大原さんのほうからのご指摘は非常に本質的なところなので、今年度を含めて、具体的にどのモデルを使ってどういう手順でどれだけやっていくかというのを改めて議論した上で着実に進めないと、あまり早急に答えだけ出しても、使えない答えだけ出てきてもしようがないので、時間とお金が少しかかるのかもしれないけれども、やっぱりやる以上はちゃんと意義のあることをやっていただければという気がします。
後藤課長補佐秋元先生のおっしゃるとおりだと思いますので、そのように対応したいと思います。
少し補足説明ですけれども、今年度、私ども環境省から発注している業務の中では、基本的にシミュレーションの部分は入っていませんでした。このシミュレーションの部分は、気象協会からの提案を受けて加えたもので、基本的には発注した業務量の中には含まれていません。したがいまして、このシミュレーションについてはプラスアルファということで考えています。本年度は、指標の検討に重きを置きたいと考えていますので、そちらメインでいきたいと思っています。このプラスアルファでやっていただける部分につきましては、どこまで出すのか、どういう内容で行うのが適切かというのは、慎重に判断させていただいて、よく検討したいと思います。
秋元座長よろしくお願いします。
坂本委員エミッションインベントリにしても、先ほど来出ている地震の後と前で相当変わるだろうし、あともう一つ、6ページに解析期間と季節区分という形で、4~5月、6月、7~8月という形で非常にしゃくし定規的にやっているけれども、これも現状からすると、温度とか日射強度とかを多少考えて区分されたほうがいいのかなという気がします。6月だけがこういう(梅雨の)時期ではないだろうし、5月なんていうのは日射強度が非常に強くて、むしろ夏よりも日射強度も強くなるぐらいのときが結構あるわけですよね。そういったことも考えた場合には、日射強度とか温度とかそういった形で少し分けられることも考えてやっていただけたらと思います。
秋元座長私のほうから一つ。15ページに図2-5というのがあって、VOC成分濃度の解析例というバーグラフ(棒グラフ)があります。このVOCというのは何を基準に選ばれたVOCでしょうか。
後藤課長補佐基本的には、オキシダント生成能という観点は別にして、平成12年度当時の排出量の多いもの、推計値が多い順に選んだと聞いています。
秋元座長もしそういうことでしたら、ちょっと認識のずれがあると思います。冒頭の中環審の大気部会で今まで進めてこられたVOC対策、あそこで使っている言葉としてのVOCと、オキシダント対策で今この検討会で使おうとしているVOCの中身とが相当ずれていますよね。これは前年度の中でも問題になったけれども、規制のほうは、固定発生源のいわゆる19種類が頭の中に非常にあって、あのVOCを減らしたから減るはずだというような議論で来ているけれども、オキシダントの側から見れば、もっとVOCの中身といわゆるリアクティビティーとを全部考慮した上で、移動発生源のVOCというのも無視してよいはずがないし、それにさらに植物起源という話も出てきている。
ただVOCという言葉にしてしまうと、人によって認識の誤解があるので、ちょっと分けたほうがいいと思います。例えば植物起源VOCはBVOCでいいので、固定発生源はSVOCですかね、移動発生源だとMVOCとか、少なくとも何かそういうふうに分けた上で、それを全部合わせたものはトータルVOCとか、そうやって議論したほうが、誤解がなくていい。
今ここに並べられているのも、トルエン、キシレン、この辺はわかりやすいですが、上のほうになってcis-2-ブテンやn-ペンタンなんていうのが入ってきているけれども、何でcis-2-ブテンがここにあるのかなという気がするし。もちろん光化学のほうからいえばエチレンやプロピレンとかその辺が濃度的にもすごく重要なわけですよね。そういうものは全く抜け落ちていますよね。そういう光化学の方からいってのランキングをちゃんと意識した上でのデータの整理をしないと、今後の対策を議論するときのベースにあまりつながってきません。この辺はVOCの捉え方の皆さんのイメージが人によってずれているので、今後、統一していく必要があると思います。
では、ほかのご意見をどうぞ。──よろしいですか。
よろしければ、今ちょうど5時ぐらいなので、あとちょっと時間の超過を許していただいて。
植物起源のVOCの測定に関しては、先ほど金谷委員のほうからもかなり本質的な意見があったので、そういう意味で、これだけで何かがわかるわけではない。ここの地点についてはわかるけども、日本全体のエミッションデータベースがよくなるわけではない。それにしても、一つのデータとして積み上げる以上は、できるだけいいデータ、役に立つデータをとっていただきたいと思います。
例えばさいたま市というのがあって、これはアーバンの地点で、発生源地域の森林と比較するということでしょうけども、こちらはまさにVOCの測定する項目は何ですか。イソプレン、テルペンだけを測定するのか、ほかの人為起源のものも含めて、ガスクロで出てくるものは全部きちんと分析されるのか、その辺はどうなっていますか。
事務局植物のVOCにつきましては、今回、イソプレンと、テルペン類はモノテルペン類を中心に。標準ガスは、今後幾つかの業者さんに当たって、入手できる成分を考えております。ほかのVOCについては、今回の調査の中では常監局のノンメタンハイドロカーボンとかNOX、このあたりとの相関等の解析をするということで、一応正式に考えている成分としてはイソプレンとモノテルペン類5成分。
秋元座長それをさいたま市役所あたりで測ることの意味は何ですか。
事務局目的は、先ほど来お話に出ているように、この調査で全てのものがわかるとは当然考えてないですけれども、まずいろんな知見が不足している中で、今回、とりあえず環境濃度がそもそもどれぐらいあるのかを把握しようということで、発生源に近い山間部と、あと市街地の代表ということです。市街地の代表といっても住宅地の中とか本当にビルが建っている中とかこの池袋みたいな商業地など考え方もいろいろあると思いますけれども、今回はとりあえず市街地の代表としてさいたま市あたりが、周辺に適度に住宅とかビルもあるということで代表しているという考えのもとに選定したということです。
秋元座長ただ、ご承知のように、VOCというのは非常に反応性が高くて、発生源から離れればどんどんなくなります。少なくともテルペンのようなものは、よっぽど測定地点のすぐ近くに木があれば別だけども、そうでない限りはほとんどゼロになっているだろうし、イソプレンにしても、むしろ自動車排気ガス中のイソプレンというのが当然あって、そういうものがひっかかってくる可能性もありますよね。
だから、こういうアーバンなところで測るのもいいけれど、その場合には、ほかの人為起源のVOCと同時に測って、そういうものがどれだけあるかという相対比というのでしょうか、その上で初めて意味のある数字だと思います。そうでないと、ここでテルペン、イソプレンだけを狙って測ることにあまり意味がない。しかも、地域代表性という意味からいって、森林の発生源で測るほうは1点であってもまだそれなりに意味はあると思うけれども、都市のほうの1点でそういうものを測ることの意味はほとんどないような気がしますが、いかがですかね。井上さん、何かご意見ありませんか。
井上委員私のほうも同じようなご意見です。地域代表性がどの程度あるかということ。それがシミュレーション結果とも比較されるということですけども、シミュレーションの結果というのは5キロメッシュなら5キロメッシュの濃度を平均したものですので。それとあとは、高さ方向も、シミュレーションは大体10メートルが多いわけです。そうすると、実際に測っているところはもっと木の近くでしょうから、そういうことを少なくとも考慮した上で比較されたほうがいいとは思いました。
秋元座長ほかにご意見はありますか。でも、これはもう調査が始まってしまっているのだろうし、今さらこの検討会で、ここをやめてこっちにしたらと言うのは無理なような気もしますが。
大原委員もうやってしまっているので仕方がないと思いますが。過去のことになりますけれども、私たちの研究所で、連続測定をさいたま市でずっとしていました。何年間だったかは正確に覚えておりませんけれども、かなりの成分を測っていて、イソプレンも測定していたと思います。ですから、そういったようなデータも活用しつつ、このデータを解析されるといいのではないかと。そのころと状況は大分変わっている可能性はありますが、そういうデータも使われたら如何でしょうか。
秋元座長埼玉は環境科学国際センターで測っていたのですか。
竹内委員元公害センターだと思います。
大原委員そうです。
秋元座長では、環境科学国際センターができる前。
竹内委員そうです。埼玉大学のすぐそばです。
秋元座長でも、そうなると随分昔ですね。今のあそこでは測ってないのですか。坂本さんのほうがご存じかもしれない。
坂本委員いや、もうわかりません。でも、今回の調査はさいたま市役所で、以前調査を行っていた公害センターとは異なります。
秋元座長以前の調査も1点だけですか。埼玉県の中で何カ所か測ったというのはないですか。
竹内委員うちの県で測っているものはありますけれども、国環研が測ったのは、埼玉の、いま衛研局(衛生研究所測定局)と言っているところです。
秋元座長その1カ所。
竹内委員はい。
浦野委員前に事務局にもお話ししましたけれども、植物のCO2の吸収と同時に排気もありますけれども、温暖化のほうでかなり詳細に検討されています。どこの地域に主にどんな年齢のどんな樹木がどのぐらい生えているというのが温暖化のほうで全部明らかにされています。今はCO2で議論していますけれども、その中の主な樹種について、若いものと年をとったもので違いますけれども、それがどんなVOCをどれぐらい出すかがもしわかれば、非常に精度の高い植物由来のVOCの発生がわかる。
例えば例として、埼玉県でもどこでもいいですが、埼玉県のこのぐらいの温度地帯のスギをはかりましたと。次にナラの木ならナラの木がいいかもしれない、日本で多い木の種類について、ある程度木の年齢も考えて、古い木ばかりあるところと新しい木ばかりあるところで違いますので、大ざっぱでいいですから、それを見てデータを蓄積できれば、かなりの精度が出る。それを、すぐにはできないにしても、時間をかけてでも主要なものからデータをためていくことがすごく重要ではないかと私は思って提案しているのですけれども。
とにかく、ぽつんぽつんとどこか測っても積み上げにならないわけなので、ぜひともその辺、温度と木の種類と樹齢を考慮して、主要なところを少しずつ押さえていく。あるいは文献調査も含めて。それで全部はわからないでも、日本の主な木は決まっていますので、幾つかデータが集まればかなり推計精度がかなり上がると思うので、ぜひご検討いただきたい。
秋元座長非常に重要なご意見だと思います。今の日本全体のBVOCの発生インベントリの精度を上げるのは非常に大きな仕事で、この検討会の中だけでできるものではないし、ましてや委託の中でできるわけではないですが、やっていかなければいけない仕事です。まさに今ご指摘があったように、一方では気候変動のほうでそういうものを結構やられている。ただ、それとこういう大気汚染のほうのエミッションインベントリとがいろいろな意味でリンクしていない。これはVOCだけではなくて、ほかのものでもそういうことが今までままあって、苦労してきています。
でも、そういう今言った樹種とか温度のデータというのはまさにエミッションのパラメーターとしてそのまま使えるわけです。だから本当は、これとは別にそういうものをこの際整備するというようなものがあってもいい気がします。大原さん、何か。
大原委員認識が間違っていたらすみません。BVOCの排出インベントリについては、JATOPが実際に日本でフィールド観測を一生懸命やって、それをベースにして樹種別の排出係数、もちろん気温依存性等も考慮しつつ、かなり力を入れてデータを出しています。かつ、アクティビティーデータとしては、メッシュ別の、樹木の年齢とかもちろん種類も考慮した上でインベントリをつくっています。
多分、この調査で狙っているのは、そのBVOCのインベントリを使ってシミュレーションをして、そのシミュレーションの結果とこの観測された結果を比較してどのくらいインベントリが正しいのかどうかという検証をまずはしてみましょうと考えられたのだと私は理解しました。
秋元座長JATOPのデータがそこまでちゃんとしているなら、それは非常に結構だと思います。
浦野委員実は前にもそういうお話があって、ある程度されていると思いますけど、今回、例えば植物由来のVOCを調査する、あるいはそれを詳しく、まあおまけなのか本格的なのかどのぐらいかわかりませんけれども、やるという場合には、過去のそういう情報のどこが足りないのかあるいはどこが使えるのかということを明らかにして、だからこうするという話が出ればいいのですけれども、独立してやるみたいな話になると、さっきの私らのような意見になる。
その辺、どこまでが把握されていて、どういうふうに使う気であって、どこが足りない、どこをもう少し充実する、だからここを充実するんだという形でいけばいいのだけど、そうでなくて、ぽつんとさいたま市ではかりますとか言っても、何のためにやるのかよくわからないという話が出てくる。大原先生のご指摘も、私もそうですけど、過去のいろんな情報がどこまで使えるのか、どこが足りないのか、そこら辺をしないと、ただやみくもに測ってもしようがないという気がします。
秋元座長そうですね。JATOPのVOCのインベントリは、どのぐらいのメッシュでつくっているんですか。
事務局1kmだと思います。
秋元座長かなり細かく出ているんですね。そうであれば、ここのスペシフィックな点に関して、それのまさにインベントリの検証ですよね。JATOPのほうで出されているものがどれだけ実測と合っているかということの検証。むしろインベントリを検証するという立場でこの測定データを使うという、むしろそういう位置づけになるのではないかと思いますが、どうですか。
事務局これまでオキシダントとかNOXとか常監局ではかられているものについては、比較して合っている・合っていないという話をさせていただいていましたけれども、植物起源VOCの濃度の再現というのはあまり比べたことはなかったので、一つはそれを比べてみて、今まで使っているインベントリで再現したものと実際に測ったものが、本当に倍半分の中で違うのか・違わないのか把握すらできてないので、まずそこを比べてみようと。ただ、やってみてたまたま合っているということもあるし、たまたま合わないということも含めた中で話をすることになってしまうので、一つの参考としてお示ししようと思っています。測定のほうも情報が少ない中で比較をすることになるので、確実なことは言えないと思いますけれども、何か足りないなら足りないなりの指標というか、どれぐらい足りなさそうだというものが見えてくれば、シミュレーションがひとつ役に立つのかなと思って入れている次第です。
秋元座長目的をもうちょっと明確化されないとまずいと思います。というのは、昨年度の中で議論が出ましたが、JATOPのものにしてもBVOCのエミッションインベントリの不確定性の幅は、それこそ5倍とかそのぐらいあるんです。10%・20%の誤差の話ではない。だから、その範囲で合うか合わないかというは、ある意味、非常に重要です。
だから、今回、実測をやられてそういうシミュレーションの中に入れて、少なくともそこのメッシュの中でどの程度に合うのか。ファクター2で合うのか、ファクター5の誤差があるのか、それを明らかにすること自身がものすごく重要だというふうにお考えいただいたほうがいいと思います。今までやられたことがないからとか、そういう話ではない。
少なくとも、この1点でやることの意味はそれしかない。それ以上に、日本全国にこのデータが使えるわけはないわけです。ほかは、樹種も違えば気温も違う。それはJATOPのものを使うしかないので。だけど、そのJATOPのもののそこの時点での検証として、モデルで一回かまさないとそれは検証にならないから、それを入れた上で、やる。
そのモデルが正しいかどうかというのは、エミッションインベントリがどの程度の精度で合うかということの検証をやっているという、そういう位置づけにすればかなり意味はあるかと思います。
浦野委員全くそのとおりですけれども、そうだとすれば、今まで使っている予測の誤差になる要因として過程が幾つかあるわけですね。木の種類とか温度とか年齢とか地域の分布とかいろいろあるわけで、それがいろいろな誤差要因になっているとすれば、その辺の影響因子を今回実測するところもしっかり押さえておかないと、ただVOCをはかりました、スギの木ですというだけでは、検証にも何にもならない。検証するなら検証するらしく、ほかの情報もきちっと把握して、そこでちゃんと測るということをしていただきたいと思います。
秋元座長具体的に言うと、VOCの発生に効いてくるパラメーターは日射と気温と、あと何でしょうか。
浦野委員やはり木の種類と樹齢と密度ですよね。1キロメッシュでやるときに、当然、1キロが全部森林のときもありますけれども、一部が森林で一部が市街地みたいなところもありますので、シミュレーションでやるときにはそれも平均化して出るわけですよね。だから、今回測るところがスギ林の全く真ん中だとすれば、その辺もちゃんと考慮して、どういう密度でどういう管理をしてどうだというのをちゃんと把握しておかないと、検証にも何にもならなくて、やっぱり誤差が大きかったですねという話にしかならない。ですから、やるなら、ぜひ、蓄積される周辺情報も得てやってください。
秋元座長そういう意味では、このサイトはどのぐらいの森林が広がっている場所ですか。
事務局27ページにあるような感じで、これは環境省さんの自然環境保護基礎調査の植生調査の結果から作成させていただいたのですけれども、周辺はほとんどスギ林というような環境です。
秋元座長27ページは関東地方のスギ分布の図ですか。
事務局そうです。
秋元座長これですとわからないですよね。
事務局少し見えにくいのですが、左上に青い点があると思いますが、そこが測定する地点になります。
秋元座長そうすると、これはスケールがちょっとよくわからないけれども、この森林は大体大ざっぱに言って、10キロぐらい広がっているような感じですか。
事務局現場へ行きましたけれども、見渡す範囲では山で、スギ林が広がっているという感じです。
秋元座長大ざっぱに、スケールでいうと何キロぐらいとか。1キロのオーダーなのか10キロのオーダーなのか。
事務局10キロとかそういうオーダーです。
秋元座長そうですか。それだったら結構だと思います。
では、後藤さんのほうから、先ほどの関連で何かお答えはありますか。ちょっとお答えになろうとしていたと思うのですが。
後藤課長補佐植物のBVOCを調査する趣旨は、先ほど大原先生や秋元先生のご議論にありましたとおり、既存のBVOCの排出量のデータが5倍とか10倍とか違うというのがある中で、そういうものがどうなのかを確かめようというのがもともとBVOCを調査しようと思った趣旨ですので、そこはしっかりやっていきたいと思います。もともとそれが発端です。
秋元座長それであれば結構だと思います。
金谷委員今のことにも関連しますけれども、やはり井上さんの先ほどの発言にもありましたが、高度方向の代表性がどれだけあるか。キャノピーの中、すなわち林内での測定と先ほどおっしゃっていましたけれども、結局、モデルと観測の濃度を比較することになるわけですよね。エミッションのフラックスは測定しているわけではないでしょうから、濃度と濃度の比較を、インベントリを考慮したモデルと観測ですることになるわけで、そのときに林内とキャノピーよりも上の濃度というのは当然数倍違ってもおかしくない可能性もあるわけですから。そういったモデルシミュレーションは、ご専門の方がたくさんされているとは思いますけれども。
その辺も含めて、代表性という観点で本当にどこまで大丈夫かというのは、常に処方は持ってないと。樹齢とかそういったことにも加えてその辺もしっかり押さえていただきたいと思います。
浦野委員気象協会だから、測定地点の気象条件は必ず測るんですよね。当然ながら、風向とか風速も。それでも、風が強ければ濃度が全然変わってしまうから。
事務局近くに常監局があるので、そちらのデータを見ていこうかとは思っています。
浦野委員近くで、ですか。現地で測らないのですか。
事務局現地では風は測っていません。
浦野委員風向、風速ぐらいは測れるでしょう。
事務局ちょっとそこまでは計画がなくて。
浦野委員測定値をそこで測ったほうがいいと思う。
秋元座長温度は測っていますか。
事務局気温、湿度は測っています。また、林木育種場でも百葉箱が置いてありますので、そちらのデータもいただけるというお話があったので。気温湿度は測る予定です。
秋元座長常監局か何かで日射量はありますか。
事務局日射量のほうは測ってないので、近くの気象庁のアメダスなり官署なりのデータが使えればと思います。
秋元座長モデルの最下層の鉛直高度はどのぐらいですか。
事務局平成22年度にやっていたのは、大体20メートルのセルサイズです。
秋元座長本当はそのぐらいを代表するような高度ではからないといけないと思うけれども。今はどのぐらいの高さで測っておられますか。
事務局1.5メートルぐらいです。
秋元座長その辺をどう評価していくかということですが。わかりました。
どうもありがとうございました。お約束の、延びても30分と申し上げた時間に近づいてきました。今日のところは初めてのデータ解析の第一歩のところを見せていただいたということなので、個別のことでの議論はあまりできませんけれども。
特に今日の議論で、かなりいろいろ本質的なこと、この検討会の進め方、考え方はある程度ご理解いただいたと思いますので、なるべくそういうものに沿った形でデータ解析を再構成していただくといいますか、そういうことに直接関係するようなものにかなり絞っていく。あれもやれ、これもやれというのではなくて、これがわかればこういうことにつながるということがある程度説明できるようなものに絞ってきちんとしていっていただく。今日の時点で要望させていただくのはそのぐらいかと思います。
ほかに、よろしいでしょうか。よろしければ、時間が超過しましたが、今日のところは第1回の検討会はこの辺で終わりたいと思います。あと、事務局のほう、その他で何かございますか。
後藤課長補佐議事(3)「その他」は、もうご議論いただきましたので、特にこちらからはありませんので、最後に幾つか事務連絡をさせていただきます。
先ほどからVOCの調査のこともいろいろ出ていまして、自治体の皆さんにおかれましてはVOCの調査を独自にいろいろ行われてデータをお持ちのところもあるかと思いますので、もしいろいろデータがございましたら、ぜひ活用の検討をしたいと思っておりますので、ご提供いただければと思っております。
それから、本当に事務連絡ですけれども、次回以降の検討会につきましては、先ほど資料2-2にありましたけれども、1月中旬に第2回を予定しております。2回目以降は結構短期間に何回もありますので、検討会の日程については、この会が終わりましたら早速、電子メールで皆さんにはまとめてご予定を聞かせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
それから、今日もいろいろご意見をいただきました。この検討会が終わりましても、何かまた有益なご意見等がありましたら、いつでも電子メール等でお寄せいただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
秋元座長ありがとうございました。
それではこれで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。