1.日時 平成23年11月2日(水)13:30~17:00
2.場所 経済産業省別館 9F 944会議室
3.出席者(五十音順 敬称略)
- (委員)
- 秋元 肇 安藤 研司 石井康一郎 板野 泰之
井上 和也 指宿 堯嗣 岩崎 好陽 浦野 紘平
金谷 有剛 坂本 和彦 下原 孝章 竹内 庸夫
橋本 光正 向井 人史 若松 伸司 - (欠席)
- 大原 利眞 土屋 徳之
- (環境省)
- 山本大気環境課長 山本大気環境課長補佐 栗林大気環境課長補佐
小林大気環境課長補佐 芳川係長
4.議題
- (1)科学的知見の収集について
- [1]光化学オキシダントに関するモデル解析((株)豊田中央研究所 茶谷研究員)
[2]オキシダント測定器の校正法について((独)国立環境研究所 向井委員)
[3]九州北部地域におけるOxに係る現状について(福岡県保健環境研究所 下原委員)
[4]大阪市における光化学オキシダント研究と国環研と地環研のC型(II型)共同研究(大阪市立環境研究所 板野委員)
[5]埼玉県(都市域+郊外域)における光化学オキシダントに係る現状について(埼玉県環境科学国際センター 竹内委員)
[6]東京都における光化学オキシダント関連の調査・研究結果((財)東京都環境科学研究所 石井委員)
5.配付資料
- 資料1
- 光化学オキシダントに関するモデル解析
- 資料2
- オキシダント測定器の校正法について
- 資料3
- 九州北部地域におけるOxに係る現状について
- 資料4
- 大阪市における光化学オキシダント研究と国環研と地環研のC型(II型)共同研究
- 資料5
- 埼玉県(都市域+郊外域)における光化学オキシダントに係る現状について
- 資料6
- 東京都における光化学オキシダント関連の調査・研究結果
- 参考資料1
- 光化学オキシダント調査検討委員名簿
6.議事内容
(1)[1]
- 茶谷研究員より「光化学オキシダントに関するモデル解析」について説明があった。主な意見・質問及び回答は以下のとおり。
- (質問)VOCのシミュレーションと観測が合わない話は、各成分、特に自動車排気ガスが主と思われるような成分についても合わないのか。
- (回答)成分で違いがあるというより、どのグループでも合わない。ALK5だけ比較的合っているという結果だが、観測では大きな直鎖は把握しにくいという面もあるため、今の時点でどの成分が足りないとかいうことは判断が難しい。
- (質問)発生源が押さえきれていないため、モデルにおける排出量が少ないのではないかと思うが、自動車排ガスのような比較的軽いものと、固定発生源の溶剤などの部分と、どちらが足りないのか分かると良い。自動車排ガスについては比較的VOCは測られていると思うが、どのような原因が考えられるか。
- (回答)JATOPでは自動車が主な対象であり、推計モデルの不確実性が残っているのでそれをつぶしている。VOCの組成も今まで使用していた組成のプロファイルの更新作業をしている。本年度最後までには反映させて、評価していきたい。
- (質問)VOCの成分濃度が過小評価されているが、VOCが低いということはVOC limited寄りに推定されていることになるので、仮にこの排出量を使ってVOCを削減したときにオゾン濃度がどのくらい減るかを推計すれば、VOC削減の効果が高いという結果になると思うが、どのように考えるか
- (回答)VOCの削減は進んでおり、NOxもこれから車が置き換わることで下がっていくが、現在の将来予測シミュレーションではオゾンが上がる方向になるという結果に必ずなる。これについては現在検証中であり、VOC limitedでの計算になっているためなのか、まだ原因がつかめていない。
- (質問)植物系VOCについて、都市部の街路樹等は押さえないのか。
- (回答)植物系VOCは、面積として寄与の高い8樹種に関して排出量を推計しているが、その他は既存のデータを使って推計している。都心部の樹木からの排出量の推計はしている。
- (質問)VOCの計算値が観測値と合わないのは、発生源の分布が観測場所と非常に違うものと、反応性が高いもの、これらの要因を両方持つ成分が特に合わないようであるがどうか。特にテルペン類、オレフィンの一致度が悪い。
- (回答)自動車由来以外は、3次メッシュの分布を再現できているかは課題である。3次メッシュや細かいスケールで発生源が分布している情報は手に入りにくく、なんらかを代用しないといけないと考えている。
モノテルペンが植物以外でもかなり出ているようである。人為起源のものも考えていかなければならない。 - (意見)モデルの中に入っている各VOCとOHあるいはオゾンとの反応データの信頼性をチェックすることも必要ではないか。特に植物系VOCが過小評価になっているが、オゾンとの反応性が高い物質であるため気になる。例えば早朝の1時間値データをとり、反応性を無視して観測値と計算値の比較を行うなど特定の条件で比較をすることも重要。1日の平均値で比較しても反応性が違うと比較の上で誤差が非常に大きくなる。可能性として一度チェックしておく必要がある。
- (意見・質問)missingVOCに関し、これを何らかの手法で代用することは将来のVOC削減効果に非常に影響すると考える。また、NOxを下げたときにオゾンが増えるのはタイトレーションの影響なので、メッシュが粗いと避けられない。タイトレーションが効く夜間や冬季を除いて評価したほうが今後の議論につながりやすいと思うがどうか。
- (回答)実測によるOH反応性とシミュレーションのOH反応性の比較は行っている。どれくらいの不確定性があるのかという評価も必要である。JATOPではNO2、PMを対象としており、時間値等に対する評価が不十分であるので、オゾンに関しては時間値など細かいスケールでの空間分布を見ないといけないということが、今後の課題である。
(1)[2]
- 向井委員より「オキシダント測定器の校正法について」説明があった。主な意見・質問及び回答は以下のとおり。
- (質問)今回の校正方法と、は従来のKI基準との差は10%前後ということか。
- (回答)校正履歴が残っていれば過去との繋がりも分かる。UV法の方がKI法より精度が良いのでスパン変更の履歴をさかのぼると大きなギャップがあった時の理由付けなどに役に立つ。
- (質問・意見)新しい基準器での校正は常時監視局のすべてで終わっているか。その記録方法、今後のデータ収集への反映方法は決まっているのか。データ集の中でいつの時点で変わったというのが分かるようになるのか。ユーザーが把握した上で使えるように、システム化してほしい。
- (回答)校正はすべて終わっている。校正方法は2010年に日本全国同時に変わった。どのくらい変わったかは県の基準なので県ごとに異なるが、そこまでの情報をデータ集に追加する話は出てはいないが、情報としては重要なので、なくなってはいけない。
- (質問)ppmという単位なので、その温度、その圧力でのppmという理解と、UVで見るということは圧力温度が変われば当然体積が変わるので、解釈が誤解されないか。
- (回答)今の測定器には圧力変化に対する応答が補償されていないものが多いので、圧力温度補償を付けてほしい。また、JIS法の表示がμg/m3という基準で書いてあるのが分かりづらくなっている。
(1)[3]
- 下原委員より「九州北部地域におけるオキシダントに係る現状について」説明があった。主な意見・質問及び回答は以下のとおり。
- (質問)成層圏からの流入、地域生成、越境輸送の3つの起因で議論ができるのは何年ぐらいからか。また、最近の傾向として、どの要因が増えているか。
- (回答)データとしてあるのは、4、5年前からである。硫酸イオンに着目し、1時間ごとの測定を行っているのは2年前からである。ベリリウム-7濃度が上がって、比湿が上から下まで変わらないような落ち込みがある場合、25%くらいは成層圏からのオキシダントだという説もあるが、実際は原因の一部であり、日本の別地域からの流れ込みもあるかもしれないので、細かな議論は難しい。
大陸からの移流に関し、黄砂はここ数年頻発しており、煙霧もひどいが、福岡県のオキシダント濃度はここ数年下がっている。大陸、中国の影響、北京辺りの影響を強く受けているからなのか、他の日本の地域がグローバルな広域的なアップの部分があるのかはわからない。 - (意見)オキシダント濃度が高い日が問題であり、春から夏の解析が重要。オキシダント最高値と硫酸イオンの季節別の関係は、直線近似をして相関係数で議論するだけでなく、オキシダント濃度と硫酸イオン濃度でグループ分けをして特徴を解析することも有効ではないか。オキシダント濃度が高い時と低い時との間の注意報、警報のレベルで分別して特徴を捉え、オキシダント濃度が高くなるケースの原因究明や高濃度予測などの方面により力を入れれば、住民にも、我々にも有効である。
- (意見)ある一つの原因だけで高濃度になるわけではない。越境汚染が多いといっても、越境汚染の寄与は普通は20ppb程度、高くて40ppb程度であり、残りは他の要因による濃度も増減していて、例えば成層圏からの流入部分がいつもより10ppb多いとか、他の要因と重なって100ppbを超えたなど、そういうケースが非常に多いと考えられる。観測から解析するのはよいが、観測結果だけで振り分けるのは難しい。モデルでやると一番分かりやすい。
- (回答)成層圏からどの程度流入するかというのは計算しないと無理なので、観測だけでは難しい。
- (意見)成層圏からの流入分は20~30ppb程度なので、その要因だけで高濃度になるわけではないが、積み重なったことにより高濃度になっている日もあり得るし、地域生成と越境汚染などが重なっている日もある。相関だけを取ると確かに越境汚染の寄与があるのは間違いないとは言えるが、高濃度の要因がすべて越境汚染だということにはならない。一般の方には誤解がないよう上手く伝えるようにしてほしい。
- (回答)なお、前日の高濃度が次の日に影響するなど時間がずれた場合は相関が合わない。
- (意見)成層圏からの流入もあるが、大陸からの移流も、風向というのは非常に重要なファクターとなる。風向やそれに伴う硫酸イオンがどうかという主要なパラメータをきちんと決定して、一次近似だけではなく多変量解析などを行えば、もう少し見えてくることもあるだろう。データを一段詳しく解析していただけると非常に役に立つ。
- (回答)多変量解析を含めた解析を、今後行いたい。
(1)[4]
- 板野委員より「大阪市における光化学オキシダント研究と国環研と地環研のC型(II型)共同研究」の説明があった。主な質疑応答は以下のとおり。
- (意見)VOC排出量が増えればポテンシャルオゾンも増えるので、VOC排出量を30%削減した地域に一つ当てはめてみるなど、全国でポテンシャルオゾンだけで比較してみてはどうヵ。
- (回答)C型共同研究の中でもポテンシャルオゾンの経年変化などについては実際に全国的に調べている。
- (質問) さらに解析するには年平均値ではなく季節別に見たほうがよいかもしれないが、季節別ではどのような結果か。
- (回答)C型共同研究の第三期の報告書で月別に行ったが、概してばらばらになった。事例の解釈が難しいが、月ごとにまとめるということに問題があるのではないかと考えている。
- (意見)気象条件は常に変動しているので、3日、5日というようにある時間ごとにポテンシャルを出し、特徴をみてはどうか。週末効果があるなら平日だけなど、月や季節にはこだわらない解析をした方がよいのではないか。
地域ごとに統一した集積データで共通な図を作るのは有効であり役立つが、集計の仕方を共通にするだけでなく、越境の影響か、地域生成か、などの解析をするには、もう一段違う方法があるのではないか。多くの自治体が協力し、本当の解析のための方法論を検討してほしい。 - (回答)ポテンシャルオゾンの平均のとり方はその通りだと思っており、どういう解析をするかによってケースバイケースで考えたほうがよい。また、データ集計だけでなく高濃度エピソードなどの解析も行っており、ここでは自治体ごとではなく地域ごとに、高濃度の現象解析も行っているので、参照していただきたい。
(1)[5]
- 竹内委員より「埼玉県における光化学オキシダントに係る現状について」の説明があった。主な質疑応答は以下のとおり。
- (質問)オキシダントの経年変化と日射量のところは、空がきれいになっていると解釈してよいのか。紫外線や日射も標準の問題があるので、データの確からしさの議論になる。注意願いたい。
- (回答)2000年頃のオキシダント濃度の数値が上がっているときにSPMの濃度が急激に良くなってきているので、視程も良くなってきていると考えている。全日射量なのですべての波長でオキシダント生成に関係しているかということはわからない。
- (質問)総VOC濃度とモニタリングのNMHCの濃度が相関が良いと言えるという話だが、単位が違うので濃度ではわからない。NMHCとして測られているもののうち、どのくらい個別の成分の結果で説明できるか。
- (回答)ppmCという同じ単位で計算しなおした場合、戸田についてはかなり説明ができている。他の地点も日によって違うが、かなりの部分が説明できるのではないかと考えている。
- (質問)NMHCは非メタン炭化水素計でトータルのカーボンを測っており、VOCというのは各成分で測っているのか。
- (回答)VOCは、それぞれの成分で測っている。非メタン炭化水素計のほうはFIDの感度がそれぞれ違うので難しいが、傾向的には説明できる部分が多いと解釈している。
- (意見)オレフィン濃度やパラフィン濃度は各成分で分かっているので、それにMIRをかけて足し算するとオキシダント生成ポテンシャルが数値化できる。それとの相関をとる場合は、合計濃度で出すのは主要な成分の濃度変化がそのままデータ変化に現れるので、意味がはっきりしなくなる。例えば合計濃度がppmCであればカーボン数の大きさが生成ポテンシャルに相関があるので意味が出てくると思う。もう少し違う解析をやっていれば示してほしい。
- (回答)主だったものについては個別の濃度とオキシダントの関係、相関、変化の度合いというのは確認している。
(1)[6]
- 石井委員及び東京都環境局星課長補佐より「東京都における光化学オキシダント関連の調査・研究結果」の説明があった。主な質疑応答は以下のとおり。
- (質問)一時間ごとのVOCのデータは、モデルの検証等のために使うことは可能か。貴重なデータなのでぜひ活用したい。
- (回答)可能であるが、精度の確認が難しい。膨大なデータが出てくるが、チェックが追いついていない。もう少し精度を上げないと使いづらい。
- (質問)ホルムアルデヒドのデータは貴重である。一次排出のホルムアルデヒドの量は、どのくらいの量なのか。どういう意味をもっているのか。
- (回答)特に夏は二次生成が増えるので計算をしたが、八王子ではホルムアルデヒドの濃度は多くないが10対1くらいでほとんどが二次生成であった。都心部ではこれが1対3くらいとなるが絶対量は都心部のほうが多い。
- (意見)PRTRでホルムアルデヒドの排出量が推定されているが、大部分は点源、後は自動車で、東京都の中で一次排出としてどのくらいであるというのがわかる。モデルで使うなら、そういうデータと比較すれば使えると思う。
- (意見)茶谷研究員の説明でホルムアルデヒドがモデルと観測値があわない、ということがあったので、一つのガイドラインとして、押さえられているものといないもの、一次排出と二次生成の比率のモデルとあっているのか、ということに使えるデータになる。
- (質問)二次生成の部分をデータとして出していただいて上手に活用できないか。
- (意見)同時測定の切片が、COとアルデヒドでどうなっているか、それが平日で違うのか、夜間ではどうかなどを解析すればよい。
- (質問)重回帰式の二次生成を推定する解析は東京都が独自で行っているのか。
- (回答)共同測定のときは、梶井教授と一緒に行っている。アルデヒド濃度は測定器が安定して測れるようになったので、連続して測定している。 COもオゾンも測っているので、解析する用意はある。
- (質問) 1992年から1998年までNOx、NMHC、オキシダントともに横ばい傾向で、1998年以降はNOxもNMHCも減少して半分以下になっているにもかかわらず、オキシダント濃度がは上がっているが、この理由をどう考えているのか。
0.12ppmを超える高濃度になる理由や、それを減らすためには具体的どうすればよいか、あるいはこうしてほしい、こういうことがあるという希望、考えがあったら教えていただきたい。 - (回答)東京都では4年位前に検討会を開き、当面VOCを減らすことが大事だという結論になっており、今年3月に終了した関連調査の結果解析が非常に重要だろうと考えている。
- (意見)産業界はNOxを減らし、VOCも減らし、東京都で半分も減っているのに対しオキシダントがどんどん上がっているので、何のために努力したのかと言っている。行政はそれに答えないといけない。なぜそうなっているのか、どうやったら減らせるのかという方向にぜひとも考えていただきたい。不確定なことも含めて考えを出していただかないと、データを解析するだけでは本来の研究の目的が達せられない。
事務局より :次回の検討会は11月下旬頃を予定している。