EST名古屋国際会議について

ESTプロジェクトは、「Environmentally Sustainable Transport」の未来を描き、輸送環境政策の道標を残すという理念に向けた国際的な実践です。同プロジェクトが進められてゆくにつれ、刷新的・革新的でかつ実践的なソリューションが求められ、そして履践されなければならないことが明らかになりました。ESTプロジェクトは、SFではなく実現可能で将来性のあるものです。
このプロジェクトに必要とされる移動(輸送)についての行動様式に関わるプロジェクトや技術そして変革は、実のところ、今日でも、あらゆる形で存在しているのであることが次第に明らかになってきました。
ESTのこれらの様々な分野における実践例を紹介すべく、2000年にオーストリア農林・環境・水資源管理省は、OECD 環境局の協力のもと、同年ウィーンで開かれた「Environmentally Sustainable Transport: Futures, Strategies and Best Practice会議」にて展示・披露する「est! best practice」の具体的事例を募集しました。
5つのカテゴリー全体で43もの応募があり、多くの目を見張る活動事例の中から18のプロジェクトが展示される運びとなりました。
この選考の基準は次のとおりです。Sustainabilityへの貢献度、輸送・環境・人体の健康へのインパクト、刷新的であることと将来性のある戦略であること、実践への移しやすさと実際にあげた成果、流行る可能性と意識改革。選考された全てのプロジェクトが現在実践されているか、あるいは立ち上げられていることも条件となっていました。とりわけ、前述のESTの理念を発展させてゆくような融合的な手法を用いているか否かに重点がおかれました。

ブレーメン市(独)における公共交通とカーシェアリング共用カードの導入         

   

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(概要)

(効果)

様々な交通手段(自動車、路面電車、バス等)で利用可能。車内広告、映画コマーシャル等により宣伝。

2,200回のカーシェアリングが行われ、630枚の定期カードが利用された。その結果、年間2千トンのCO2排出、500~700回の自動車使用が減少された。

ハンガリーにおけるCNGバスの開発・導入

  

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(概要)

(効果)

オランダのエンジン製造メーカーが開発したCNGエンジン(EURO4を達成)を搭載したバスを製作。98年9月から99年10月の間に試験運用。

現在、関連バス会社が35台を導入。

グリーンピースによる自動車燃費向上技術の開発

    

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(概要)

(効果)

グリーンピースがSmILEプロジェクトを実施し、1.ガソリンエンジンの改良、2.車重の削減、3.空力性能の改善、4.路面との摩擦の低減に関する技術開発を自ら行うとともに、技術開発に対する啓発活動を実施。

1~4の技術で合計5割の燃費改善を可能とした。96年時点ではあり得ないとされた3リッタークラスの省燃費自動車が市場に出た。

独カッセル中央駅の再生

     

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(概要)

(効果)

長距離交通の駅としての機能を失ったカッセル市(独)の中央駅を再整備。ニューメディア、文化(映画・美術館、展示、会議)、教育を中心とした多目的施設として使用。

EXPO2000が推奨事例として紹介。97年にWorld Exhivition of Art "DocumentaX"の会場として使用。映画撮影会社が構内で撮影を希望。

Tulln市(オーストリア)の病院における交通管理

  

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(概要)

(効果)

オーストリアで人口密度が最も低く、自動車保有率が最も高いTulln市の市営病院が、国のSoftMobilitiyPartnership Programに基づき、CO2削減を目的として市内在住の職員の自動車通勤を抑制する取組を実施。駐車禁止等に加え、職員に問題意識を伝え自主的な取組を要請。

自動車以外で通勤する職員の割合が50%から67%へ向上。取組手法の有効性を立証できた。

企業のオフィス移転に伴う通勤交通の誘導 

   

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(概要)

(効果)

Vorarlburg Media Officeという企業は、オフィスをBregenzからSchwarzachへ移動したことに伴い職員を自動車通勤が増えたことを契機に、オーストリア農水・環境・水利省と商工会議所の支援を受け、職員に対して自動車通勤を避けるよう訴える運動を展開。

自動車通勤の割合が73%から60%に低減。通勤に伴うCO2排出を17%削減。

Langenlois市(オーストリア)における交通削減社会の実現 

  

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(概要)

(効果)

個人利用による自動車交通量の削減のため、オーストリア政府が”交通削減社会”を推進。人口7千人以下の過疎地域(国土の95%)としてLangenlois市を選定。環境にやさしい代替交通の選択による自発的な自動車利用の削減を目標とする関連施策を実証。(規制的手法は含まない。)更に、他地域へ施策を展開するための交通削減マニュアルを策定。

27%の住民が歩行等の環境にやさしい交通手段を使いはじめている。

スイスにおけるMobility Car Sharing

  

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(概要)

(効果)

チューリッヒに本部を持つMobility Car Sharing Switzerlandはスイス全土に800拠点(そのうち250が鉄道駅)14車種合計1,400台を保有。3万6千人の顧客を持つ。国鉄との乗り合いパス、繁忙期におけるレンタカー会社との車両の融通、ショッピングセンターでの車両貸し出し、全国ネットの小売業者との共働体制によりサービスを向上。

全体の運行距離は3%しか低減していないが、ライフサイクルマネージメントによる環境負荷については、20%低減。顧客の特徴→(1)5km以内の移動に多用。(2)他の環境にやさしい交通手段も選好。(3)実乗車人数が多い(スイス平均1.3人/台に対し2.1人/台)。(4)公共交通利用率が高い(スイス平均20%に対し75%)。

オスロ市(ノルウェー)の公共交通事業者による宣伝活動 

  

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(概要)

(効果)

自動車ユーザーになる前の若年層に狙いを絞り、公共交通のイメージアップやサービスに対する理解増進(運行の遅延、料金値上げ、本数減少への理解増進)のための宣伝活動を実施。87年よりCM(公共交通の背景を活用したもの)を作成し市内の映画館で上映。

不明

Green Supply Chain ManagementによるCO2の削減 

   

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(概要)

(効果)

独OTTO社は自社の郵便、輸送事業についてCO2の排出削減の為、低・ゼロ排出を可能とする代替燃料の使用のほか、輸送の効率の向上、交通手段の転換(航空、陸運から海運へ)を実施。

CO2排出量の削減(93年184千トン/年→99年104千トン/年:40%減)。トルコ向けの輸送では、5%を陸運から海運へ切り替えた結果、トン当たり0.16トンのCO2排出、300マルクの費用を削減。香港向けでは、全体の8%の航空輸送について海運も併用することによりトン当たり2.8トンのCO2排出、1,800マルクの費用を削減。この結果、ジャストインタイム、クイックレスポンスが求められる現代においても、物流連鎖の構築や低燃費・低排出な海運の利用により汚染物質の低減やコストの削減が可能であることを実証。

荷主のための排出量の算出 

   

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(概要)

(効果)

荷主や公共部門における環境負荷低減への要請に応えSchenker-BTL社は、輸送に係るCO2、NOx、HC、SO2、PM排出量のモニタリングシステムを開発。

スウェーデン、ノルウェー、デンマークではプロジェクト参加者から必要性の認知を得た。株式分野では、企業の環境思考の評価項目として利用可能との指摘があった。

オーストリア運輸省による自動車の個人利用を削減するケーススタディの実施        

  

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(概要)

(効果)

オーストリア運輸省は、ソフト施策による自動車の個人利用削減の潜在的可能性、適切な市場戦略(公共交通サービスの改善など)を利用した実証プロジェクトの実施とその効果の評価を目的としたプロジェクトを97年から99年にかけて実施。

以下の事実を実証。(1)ソフト施策のみでも相当程度の可能性がある。国内の自動車個人利用ノ1/3には代替可能な公共交通があるが、情報不足、料金や旅行時間に対する誤認のために利用されていない。(2)潜在的な可能性を呼び覚ますための手段としてIndiMarkを開発したが、これにより、個人の欲求に訴えかけるきめ細かな情報提供が可能となる。(3)Linz、Salzburg、Viennaで数万人づつを動員しケーススタディを実施したが、それぞれの都市でIndiMarkにより相当程度の公共交通利用の増加と自動車利用の減少が実現する。IndiMarkの効果が継続することで公共交通事業者の増収をもたらす。

イタリアの歴史的都市における人を中心とする交通体系の構築 

    

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(概要)

(効果)

帝政ローマの頃より栄える古代都市Spoletoにおいて人を中心とする交通体系を構築するため、市内中心部に駐車場(2箇所)、動く歩道、エスカレーター等を設置。

自動車による大気汚染、騒音の抑制、地域経済の活性化を期待。

水素燃料バスの開発

  

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(概要)

(効果)

イタリアのトリノ市が運営する公共交通事業者であるATM(Azienda Torinese Mobikita)がイタリア環境省の関連企業の資金協力を得て水素燃料で走行するバスを開発。

ATMは、運行する車両内外騒音の50%低減、使用燃料の10%削減などの環境目標を設定。本プロジェクトでは、水素燃料利用の有効性の実証を目指す。

NGOによる大学への自動車通学の縮減運動

  

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(概要)

(効果)

自動車利用が多い加Great Vancouver Districtにおいて若者の自動車利用に対する意識を変革するため、NGO団体が徒歩・自転車・公共交通の利用による大学生の通学を呼びかける運動を展開。現在53%の自動車利用率を20%まで下げることを目指す。

運動を通常のカリキュラムに組み込む努力がなされている。

自動車を使わない観光の推進

   

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(概要)

(効果)

オーストリア農水・環境・水利省、科学技術・交通省、経済・労働省の3省、Salzburg州、モデル都市であるBad Hofgastein市とWerfenweng市が共同で自動車を使わない観光を実現するためのプロジェクトを実施。自転車道等の整備、自転車や電気自動車の共同利用、魅力的な道路デザインや駐車スペースの確保、鉄道旅行の魅力を増進するための国際極力などを実施。

不明

ベルギーにおける鉄道廃線や運河の有効利用

   

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(概要)

(効果)

RAVeLは、歩行者、自転車、乗馬の利用に供するSoft Mobility Network。鉄道の廃線や運河の引船道を活用してWallonia地方を縦横にカバーする25千キロのネットワークを構築。

98年にベルギー道路交通法が改正され、RAVeLが新たな通行帯として承認された。

オーストリアの公共交通サービスにおけるブランドイメージの向上

   

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(概要)

(効果)

オーストリアの公共交通サービスを独占してきた企業(Wiener Linien)がEU移行に伴い競争に曝されることを契機として、自社のサービスに対する利用者の印象を向上するための宣伝活動を99年より実施。

公共交通に対する利用者の共感やウィーン市民の期待が向上。宣伝活動はニューヨーク広告フェスティバル等で高く評価された。

※上記の一覧及び詳細内容は、下記より抜粋したものの仮訳です。
・(仮訳)
・(出典)Synthesis Report of the OECD project on
Environmentally Sustainable Transport EST
presented on occasion of the International est! Conference
4th to 6th October 2000 in Vienna, Austria


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