環境省大気環境・自動車対策自動車排出ガス等関係自動車排出ガス規制についてディーゼル車対策技術評価検討会とりまとめ

ディーゼル車対策技術評価検討会とりまとめ

3.対象とした技術及びその技術的評価結果

3.1 対象とした技術

 本検討会では、使用過程のディーゼル車からの排出ガスを低減する技術のうち、排気系に装着して、特にPMの削減に有効と思われる後処理装置に関するもので、既に実走行試験を行っている等実績のある装置を中心に評価を行った。

 具体的には、DPFとしては以下のものを評価した。

 なお、[4]については、精密な燃料噴射制御等のエンジン本体での対応が必要であり、使用過程車に適用できないため、最終的な評価対象から除いている。
  また、DPF以外のものとして以下のものを評価した。

3.2 DPFの試験結果等

(1)メーカーヒアリング結果
 メーカーヒアリングでは、対象技術毎に、概要、排出ガス低減効果、制約条件、適用可能な車種、耐久性、不具合発生状況、価格、供給能力等について調査を行った。(表3-1参照)
(2)実証試験結果
 実証試験は、交互再生式DPFとしていすゞセラミックス社製、連続再生式DPF(NO2による酸化方式)としてジョンソンマッセイ社製等、連続再生式DPF(触媒による酸化方式)としてエンゲルハード社製について、国、地方公共団体、全日本トラック協会、JCAP(Japan Clean Air Program)において実施された。(表3-2参照)
 なお、連続再生式DPFについては、個々の走行条件を考慮して排出ガス低減効果が得られるよう触媒の量等を設計していることから、走行条件から外れたモードで試験を行った場合、想定した排出ガス低減効果が得られない可能性があることを考慮する必要がある。
[1]交互再生式DPF
(ア)排出ガス低減効果
 3台の試験車両について、ディーゼル13モード(D13モード)及び3種類の実走行モード(東京都モードNo.2:平均速度8.4km/h、No.5:平均速度18km/h、No.8:平均速度28.5km/h)で排出ガス試験を実施した。(図3―1~図3-4参照)
 その結果、PMの低減率について、D13モードでは80%前後、実走行モードでも同程度の低減率が得られたが、一部に約40~60%と低減率の低いものがあった。
 なお、CO、HC、NOxの低減率については、車両やモードによって多少のばらつきはあるが、影響度も小さく、系統的な傾向は見られなかった。
(イ)路上走行試験結果
 平成12年7月から9月の2か月間、28台の車両について路上走行した結果、不具合のあった車両は12台、不具合は延べ24件であった。主な不具合の内容は、フィルターの入口にある再生・捕集の切り替え時期を判断する圧力センサーの異常や再生時の燃焼に使用する空気の流入量不足による再生異常であった。
 なお、不具合を修理した後には、同様な不具合は発生していない。
(ウ)その他
 いすゞセラミックス社製のDPFの場合、DPF本体の取付けの他、発電機の交換が必要である。東京都の試験車の例では、取付け/改造に要した期間は、取付/改造前の検討を含めると、小型トラックで5日、中・大型トラックで5~12日、バスや特種車では3週間を要した。また、DPF本体または発電機の取付スペースがないために、取付け困難な車種もあった。
[2](a)連続再生式DPF(NO2による酸化方式)
(ア)排出ガス低減効果
 3台の試験車両について、D13モード及び2種類の実走行モード(JARIモード:平均速度15.2km/h、45km/h)で排出ガス試験を実施するとともに、3台の試験エンジンについて、D13モードで現行軽油及び低硫黄軽油を使用して排出ガス試験を実施した。(図3-5~3-8参照)
 なお、試験車両のうち1台(16t積トラック)については、連続再生式DPFが効率的に再生できるように、NOx/PM比を40程度と高くするためのエンジン調整を行っている。
 その結果、低硫黄軽油を使用した場合、PMの低減率はD13モードでは82~97%であった。ただし、16t積トラックにおいて、約3,500km走行後に測定した結果、低減率が42%に落ちているが、これはフィルターに何らかの不具合が生じた可能性が考えられる。実走行モードでは一部を除き86~98%であった。
 また、現行軽油を使用した場合、新しい規制に適合した車ほどPMの低減率が低くなっている。これは、新しい規制の適合車ほどエンジンのPM排出量が少ないのに対して、いずれも酸化触媒の作用によりサルフェート(硫酸塩)が発生しているためと考えられる。
 なお、CO、HCについても80%以上の高い低減率が得られたが、NOxについてはほとんど変化はなかった。
(イ)NO2排出量への影響
 連続再生式DPF(a)を装着した場合のNO2排出量への影響を確認した結果、DPFを装着しない場合に比べて、NOxの排出量の増加は見られないが、酸化触媒によりNO2の割合が増加するため、NO2排出量が、現行軽油で約1.5倍、低硫黄軽油では約2倍となっている。(図3―11参照)
(ウ)再生の確認
 1台の試験車両及び3台のエンジンについて、DPF前後の排気圧力の差(差圧)及び排気温度の変化を調べることにより、再生の確認を行った。(図3―9、図3―10参照)
 この結果によると、排気温度が200℃程度の低速走行時には、差圧が上昇していることから、再生が行われずにフィルタにPMが堆積しており、その後、排気温度が300℃弱程度の高速走行時には、PMが燃焼して差圧が下がり、再生が行われていると考えられる。
 エンジン試験においても、排気温度が300℃程度以下では差圧が上昇し、再生が行われていないと考えられる。
(エ)耐久性能
 1台の試験車両について、図3-12に示す基本走行パターンを繰り返し、耐久走行試験を行った。耐久走行試験前後の排出ガス試験は、2種類の実走行モード(平均車速15km/h、平均車速45km/h)及びD13モードにより、燃料は低硫黄軽油(約40ppm)を使用して行った。なお、総走行距離は約13,000kmとなった。
 この結果、走行前後の排ガス低減率を比較すると、実走行モードでは、PM及びNOxの低減率が悪化傾向を示した。
 また、D13モードでは、走行後のPMの低減率は大幅に悪化した。この理由としては、D13モードの前に行った実走行モード試験が低温条件のため、フィルターの再生が十分行われず、PMが堆積し続け、その後、D13モードの準備のために行った全負荷試験により、フィルター内が高温となり、多量のPMが着火・異常燃焼し、フィルターが溶損して、すき間が発生し、捕集効率が悪化したものとと考えられる。(表3-3、図3-13~図3-16参照)
 本試験は総走行距離が13,000kmと初期の耐久走行試験であるが、今回のように再生が十分行われず、フィルターが溶損することがあるため、より低温活性を向上させた触媒の開発、より高耐熱性を有する材質のフィルターの採用など、技術的課題が残されている。
[2](b)連続再生式DPF(触媒による酸化方式)
(ア)排出ガス低減効果
 各規制年次の車両について、D13モード及び4種類の実走行モード(東京都モードNo.2:平均速度8.4km/h、No.5:平均速度18km/h、No.8:平均速度28.5km/h、No.12:平均速度53.4km/h)で排出ガス試験を実施した。さらに、現行軽油と低硫黄軽油を用いて、軽油中の硫黄分の影響を確認した。(図3―17~図3-22参照)
 これらの結果から、現行軽油を使用した場合、PMの低減率は、D13モードでは、-15%となった1データ(10t積トラック用エンジン)を除いて、53~93%であった。なお、低減率が-15%と低くなった原因としてはサルフェートの生成が考えられ、サルフェートを生成しやすい貴金属触媒の担持量が多かったことが可能性として挙げられる。また、実走行モードでは、東京都モードNO.2で27%となった1データを除いて、いずれも90%以上の低減率となった。
 さらに、低硫黄軽油を使用した場合、PMの低減率が規制年にかかわらず93~98%を示しているのに対し、現行軽油を使用した場合、新しい規制適合車ほどPMの低減率が低くなっている。これは、新しい規制適合車ほどエンジンのPM排出量が少ないのに対して、いずれも酸化触媒の作用によりサルフェートが発生しているためと考えられる。したがって、PMの低減効果をより高く得るためには、低硫黄軽油の使用が有用である。
 なお、CO、HCについても60~90%程度の低減率が得られた。NOxについては、ほとんど10%以下の低減率で、大きな変化は見られなかった。
(イ)PM中の成分の違い
 現行軽油を使用した場合のD13モードにおけるDPFの取付けの有無によるPM中の成分の違いを確認した。(図3―23参照)
 この結果によると、DPFを装着すると、黒煙は除去されるが、SOF(Soluble Organic Fraction:可溶有機成分)は変化がなく、逆にサルフェートは増加した。
(ウ)NO2排出量への影響
 連続再生式DPF(b)を装着した場合のNO2排出量への影響を確認した結果、DPFを装着しない場合に比べて、NOx排出量の増加は見られないが、酸化触媒によりNO2の割合が増加するため、NO2排出量が、現行軽油、低硫黄軽油のいずれにおいても、約5倍となっている。(図3―27参照)
 また、NO2による酸化方式のDPFと比べてNO2排出量が高い結果になっているが、これは酸化触媒中の貴金属の担持量が多かった可能性が考えられる。
(エ)再生の確認
 1台の試験車両について、連続運転した場合の再生の確認を行うとともに、3台のエンジンについて、DPF前後の差圧及び排気温度の変化を調べることにより、再生の確認を行った。
 車両の試験は、[1]実走行モード(JARIモード:平均速度26km/h)の9回連続運転、[2]実走行モード(東京都モードNO.2:平均速度8.4km/h)の3時間連続運転により実施した。(図3―24~図3―26参照)
 これらの結果から、高速モードを含む平均速度の高いモード(JARIモード:平均速度26km/h)では、再生が行われているが、平均速度の低いモード(東京都モードNO.2:平均速度8.4km/h)では、差圧に若干の増加が見られ、再生が行われているかは明確でない。
 また、エンジン試験においても、排気温度が概ね300℃程度以下では差圧が上昇し、再生が行われていないと考えられる。
(オ)耐久性能
 1台の試験車両について、図3-28に示す低速型の実走行モード(東京都モードNO.2:平均速度8.4km/h)を繰り返し連続走行し、排出ガス低減効果、再生機能の劣化状況を確認した。なお、総走行距離は1,000kmとし、軽油は現行軽油を使用した。(図3-29~図3-36参照)
 これらの結果から、低速の連続走行を行うと走行距離が増えるに従いDPFの背圧が上昇し、モード運転中の最高圧力が当初400mmAq程度であったものが、約800kmで約2000mmAqに達した。PM排出量も、増加傾向にあり、背圧の上昇が燃焼に悪影響を及ぼした結果と考えられる。
 なお、800km以降、高負荷状態で100km程度走行するとDPF背圧が減少する傾向が見られる。
 以上のことから、低速連続走行では再生が行われないため、再生を行うためには、少なくともある間隔で高負荷運転が必要であると考えられる。
 また、他の1台の試験車両について、DPFを車両に取付け実走行試験を行った結果、8,000~9,000km走行した段階で、黒煙濃度が装着前と同じレベルとなった。これは、排気温度が低かったことから、フィルターの再生が十分行われず、PMが蓄積し続け、蓄積したPMの異常燃焼により内部溶損したものと考えられる。(図3-37参照)
 さらに、他の3台の試験車両について、DPFを車両に取付け実走行試験を行い、そのうち1台について装着後2万3千km走行後に排出ガス試験を実施した。このうち排出ガス試験結果からは、PM低減率が当初の9割程度から2割程度に悪化していることが分かった。なお、約8万4千km走行している高速道路走行を主とする車両では、特に不具合は見られていない。(表3-4参照)
  以上のとおり、本検討会では国、自治体等において、可能な範囲で再生性能、耐久性の確認を行った。しかし、時間的制約もあり、限られた温度範囲の走行条件の調査しかできず、また初期耐久走行試験しか実施できなかったことから、広範囲な温度範囲の多種多様な運転条件がある一般走行での使用について、十分な確認ができたとは言えない。さらに、DPFのメーカーで行われている確認も限定的な条件であることを踏まえると、今後も耐久性等の確認が必要であると考えられる。
(3)DPFの評価
[1]交互再生式DPF
  • 従来はコーディエライト製ウォールフロー型フィルターで開発が進められてきたが、再生時に高温になり、その結果、溶損や温度勾配による割れ等の問題があった。最近開発されたセラミック繊維不織布型フィルターはこの問題を解決したものである。PM低減率は約8割程度であり、コーディエライト製ウォールフロー型のフィルターに比べPM低減率が若干低く、一部にはさらに低いものもみられる。
  • CO、HC、NOxの低減効果はない。
  • フィルターの再生は電熱線により行うことから、排気温度に影響を及ぼす走行条件の制約を受けない。但し、PMが大量に発生した後に再生が重なり温度の急上昇によりフィルターの溶損につながるといった希なケースがみられる。
  • 触媒を使用していないことから、燃料中の硫黄分の影響を受けないため、現行軽油の使用が可能である。
  • 高温に曝されるため、3年程度でフィルターの交換、また、1年程度でセンサー類の交換が必要であるとしている。
  • 交互再生式DPFについては、フィルターを2つ必要とし、取付けに際しては、マフラーとの交換、大型発電機への交換作業を伴うため、取付けスペースに余裕があることが必要等、物理的な理由から装着できる車種が限定される。なお、他のメーカーが作成した交互再生式DPF(ハニカム型)についても、同様の状況である。
  • 原理的には車種を選ばないが、現在のところ、2t及び4t積トラック並びに路線バス以外の車種について適用可能性は十分に明らかになっていない。
[2](a)連続再生式DPF(NO2による酸化方式)
  • フィルター本体はコーディエライト製等のウォールフロー型のため、PMの低減率は概ね9割を超え比較的高い。
    ・ 酸化触媒の作用によりCO、HCにも低減効果がある。
  • 限られたモードにおける結果のため一般的な傾向とはいえないが、NOxの排出量の増加はほとんど見られないが、触媒により生成したNO2が場合により未反応のまま排出され、NO2の排出が増加することがある。
  • フィルターの再生は触媒を利用して行うことから、排気温度が300℃弱程度以上となる走行が一定比率以上必要である。このため、排気温度が低温となる低速で長時間走行する車両や乗用車には適用が困難である。
  • NO2による酸化のため、エンジンのNOx/PM比が8以上である必要がある(理想は20)。このため、平成元年及び短期規制適合車については、NOx/PM比が規制値レベルで8程度であることから、一般的には適用が困難であると考えられる。
  • 再生に必要となるNO2生成のためフィルターの前に酸化触媒を配置している。燃料中の硫黄分が高い場合、サルフェートの生成により触媒が被毒され、NO2の生成が不十分となる。このため、現行軽油での使用は困難であり、低硫黄軽油の使用が必要である。
  • 従って、軽油が低硫黄化されるまでの間は適用が困難であり、低硫黄化後も元年規制適合車及び短期規制適合車への適用は困難である。
  • フィルターについては、アッシュの除去のため、1年又は10万km毎のフィルターの逆洗及び反転が必要であるとしている。再生が不十分な状態で連続使用した場合、背圧の上昇により加速性能が悪化するとともに、蓄積したPMが一気に燃焼することによりフィルターが溶損するおそれがある。耐久性能の確認結果でも溶損したケースがあり、比較的短い期間に交換が必要となる可能性がある。
  • フィルターの再生は触媒を利用して行うことから、一定以上の排気温度が一定比率以上確保できる走行条件を満たす一部の自動車に適用できると考えられる。再生の可否が温度に依存するため、適用可能な車種を明確にするには、温度に影響を及ぼす車両の走行条件を明確にする必要がある。しかしながら、走行条件は、ユーザーや走行時期・時間によって異なるため、明確化は困難である。
[2](b) 連続再生式DPF(触媒による酸化方式)
  • フィルター本体はコーディエライト製等のウォールフロー型のため、PMの低減率は概ね9割を超え比較的高いが、現行軽油で高負荷の場合、一部に低いものがみられた。
  • 酸化触媒の作用によりCO、HCにも低減効果がある。
  • フィルターの再生は触媒を利用して行うことから、排気温度が300℃程度以上となる走行が一定比率以上必要である。このため、排気温度が低温となる低速走行で長時間走行する車両や乗用車には適用が困難である。
  • 燃料中の硫黄分の作用を受けにくいため現行軽油でも使用可能であるが、高負荷時にサルフェートが生成されてPMの低減率が低くなるため、低硫黄軽油の使用が望ましい。
  • フィルターについては、アッシュの除去のため、1年又は10万km毎のフィルターの逆洗及び反転が必要であるとしている。再生が不十分な状態で連続使用した場合、背圧の上昇により加速性能が悪化するとともに、蓄積したPMが一気に燃焼することによりフィルターが溶損するおそれがある。耐久性能の確認結果でも溶損したケースが見られ、比較的短い期間に交換が必要となる可能性がある。
  • フィルターの再生は触媒を利用して行うことから、一定以上の排気温度が一定比率以上確保できる走行条件を満たす一部の自動車に適用できると考えられる。再生の可否が温度に依存するため、適用可能な車種を明確にするには、温度に影響を及ぼす車両の走行条件を明確にする必要がある。しかしながら、走行条件は、ユーザーや走行時期・時間によって異なるため、明確化は困難である。
[3]バッチ式DPF
  • フィルター本体は炭化ケイ素製等のウォールフロー型のため、PMの低減率は比較的高い。
  • CO、HC、NOxの低減効果はない。
  • 原理的には車種を選ばないが、現在のところ、フォークリフトや建設機械のほか、2t積トラック及び中型バスについてのみ実績がある。
  • フィルター本体は、高温に曝されるため、3年程度で交換が必要である。
  • 一回の捕集量に限界があるため(元年規制適合車で100km程度)、1度に長距離を走行する自動車には適用が困難である。また、フィルタに堆積したPMを加熱燃焼して再生するための外部電力を必要とし、そのための電源設備が必要である。
  • 触媒を使用していないことから、燃料中の硫黄分の影響を受けないため、現行軽油で適用可能である。
  • 従って、一回の走行距離の短い一部の自動車に適用できるが、使用者による再生等の管理を十分に担保でき、かつ、再生用の電源設備を準備できることが条件となる。
  • 使用者による再生等の管理が必要なことから、不正使用の防止を担保する手段が必要である。
  • 一回の捕集量に限界があることから、一度に走行できる距離に限りがあるため、再生を確実に行う管理が十分可能な使用形態に限られる。

3.3 DPF以外の排出ガス低減装置の試験結果等

(1)メーカーヒアリング結果
 メーカーヒアリングについては、対象技術毎に、概要、排出ガス低減効果、制約条件、適用可能な車種、耐久性、価格等について調査を行った。(表3-5参照)
(2)実証試験結果
[3]DPF付き水エマルジョン燃料システム
(ア)排出ガス低減効果
2台の試験車両(短期規制/小型貨物・乗用)について、 D13モード、実走行モード2種類(平均速度14.7km/h、平均速度43.1km/h)のモードで排出ガス試験を実施した。
 その結果によると、小型貨物車について、NOxは減少したが、PM、HC及びCOは大幅に増加した。また、小型乗用車については、NOx、PM、HC及びCOともに低減効果は見られなかった。なお、これらの結果は、試験モードにより幅はあるものの、同様な傾向を示した。
(図3-38~図3-40参照)
(3)対象技術毎の評価
[1]高酸化力触媒
  • PMのうちSOFを低減するが黒煙を低減しないため、PM低減率はDPFに比べ低く、2~3割程度であるが、実走行モードでは約5割の低減効果があるとの報告もあった。
  • CO、HCにも低減効果があるが、NOxは低減しない。
  • 原理的には車種を選ばないが、現在のところ、2t積トラックや大型バス等についてを中心に開発中又は試験運転中である。ただし、EGR付きの自動車に装着した場合には、背圧の上昇によりEGR量が増大し、燃焼が悪化してPMが増加する。このため、装着する場合には、EGRの再調整が必要となるので、使用過程車への適用は困難である。
  • 現行軽油ではサルフェートが生成されるため、低硫黄軽油の使用が必要である。
[2]吸蔵還元型NOx触媒を利用した技術
  • エンジン側(燃料噴射)の精密な制御が必要であることから、新車対応の技術であり、使用過程車への適用は困難である。
  • 低硫黄軽油の使用が必要である。
[3]DPF付き水エマルジョン燃料システム
  • 水エマルジョン燃料システムは一般的にNOx及び黒煙に対して低減効果があるとされているが、今後は、PM及びHCについて低減を図る必要がある。
  • 走行状態に応じて、水と軽油を適正に混合した燃料を適時エンジン内に供給するためには技術的な課題が残されている。

(参考)
 東京都より、本検討会に関連して、以下の報告があった。

 再生方式は[2](a)連続再生式DPF(NO2による酸化方式)と同様で、フィルター部の材質を金属製(ワイヤーメッシュ、メタルフォーム)に変更したDPFについて、排出ガス試験、路上試験等を実施中である。

(ア)排出ガス低減効果
 元年規制適合の車両を用いて、ワイヤーメッシュ、メタルフォームのフィルターそれぞれについて、D13及び実走行モード(東京都NO.5:平均車速18.4km/h)で、排出ガス試験を実施した。
 その結果、PMの低減率については、D13モードで60%~70%、実走行モードで50%~55%であった。また、CO、HCについては、80%~100%の低減率が得られ、NOxについては、ほとんど低減率が得られなかった。
(イ)路上走行試験結果
 平成13年3月からワイヤーメッシュ、メタルフォームのフィルターについて、元年及び短期規制の都バス(計8台)を用いて、路上走行試験を実施している(コース:品川駅~レインボーブリッジ~東京テレポート駅)。
 4月末の時点で3,000~6,000km走行した結果においてフィルターの破損、目詰まり等の不具合は発生していない。
(ウ)その他
 DPF本体はマフラーサイズに合わせて作製されているため、DPFの装着に要する時間は2時間程度である。また、車両又は走行状態によっては、DPF入口の排気温度を高い状態に維持するために、マフラー部までの排気管を中空二重構造管に交換する必要がある。

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