環境省大気環境・自動車対策石綿(アスベスト)問題への取組審議会及び検討会の状況中皮腫登録に関する検討会

第1回中皮腫登録に関する検討会議事録


1.日時:平成24年12月6日(木)15:00~17:00

2.場所:TKP東京駅ビジネスセンター カンファレンスルーム9A

3.出席者

(座長)
高田 礼子 聖マリアンナ医科大学 予防医学教室 教授
石川 広己 社団法人 日本医師会 常任理事
井内 康輝  NPO法人総合遠隔医療支援機構 理事長
岡 輝明 公立学校共済組合関東中央病院 臨床検査科病理科 部長
岸本 卓巳 独立行政法人労働者健康福祉機構 岡山労災病院 副院長
小林 香 独立行政法人環境再生保全機構 石綿健康被害救済部 部長
酒井 文和 埼玉医科大学国際医療センター 画像診断科 教授
三浦 溥太郎 公益社団法人地域医療振興協会 横須賀市立うわまち病院 副病院長
森永 謙二 独立行政法人環境再生保全機構 石綿健康被害救済部 顧問医師
(欠席者)
三上 春夫  特定非営利活動法人地域がん登録全国協議会 理事
事務局(環境省石綿健康被害対策室)
神ノ田室長、清水主査、伊藤補佐

4.議題

(1)中皮腫登録に係るこれまでの検討作業
(2)中皮腫登録の実施に向けた検討
  • 諸外国における中皮腫登録の状況について
  • 既に認定された中皮腫症例の整理について
  • 登録シート(案)について
(3)その他

5.議事録

○事務局
ただ今より、平成24年度第1回「中皮腫登録に関する検討会」を開催いたします。本事業請負先として、事務局を務める東京海上日動リスクコンサルティング株式会社、檜山が司会を担当いたします。
冒頭に、傍聴者の方にお願いがございます。本日は公開での検討会でございますが、傍聴者の方にはご発言いただけないこととしております。また、審議中の写真撮影、ビデオ撮影及び録音は控えていただき、審議の妨げとなる行為があった場合には、退場していただく場合もございますので、ご了承願います。
それでは、本検討会の主催、環境省総合環境政策局環境保健部企画課石綿健康被害対策室の神ノ田室長よりご挨拶をお願いいたします。
○環境省 神ノ田室長挨拶
本日は、大変お忙しい中、この中皮腫登録に関する検討会にご出席をいただきありがとうございました。委員の皆様方には、日ごろから石綿健康被害対策に格別のご尽力をいただいており、この場をお借りして、厚く御礼を申し上げます。
昨年6月に中央環境審議会で第二次答申が取りまとめられております。その中で、中皮腫については、機構に集まる救済制度の情報をしっかりと活用して、調査研究をし、その結果を医療機関等に広く還元していくべきである、というご意見をいただいております。
以来、環境省においては、二次答申を踏まえ、フランスやオーストラリアの海外事例の調査や、実際にどういう項目を登録するか、運用をどのようにやっていくかを検討し、準備作業を進めてまいりました。また、予算についても、来年度の概算要求において重要施策として位置づけ、必要な予算を要求している状況でございます。
この検討会においては、これまでの準備作業を踏まえ、来年度から予定されている中皮腫登録事業について、実際に具体的にどのような内容を登録し、実施していくかというころを中心にご検討いただき、ご提言を取りまとめていただきたいと考えております。
中皮腫については、診断や治療がいまだに非常に難しいということでございますが、この中皮腫登録事業を通じて、少しでもその状況を改善できるように環境省として取り組んでまいりたいと考えております。限られた時間ではございますけれども、委員の皆様方には忌憚のないご意見、ご提言をいただきまして、ぜひ実り多い会議にしていただきますようお願いしまして、簡単ではございますけれども、冒頭の挨拶とさせていただきます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
○事務局
それでは、本日は第1回目の検討会となるので、ご出席の委員の皆様を五十音順にご紹介させていただきます。
NPO法人総合遠隔医療支援機構 理事長、井内康輝委員。
独立行政法人環境再生保全機構 石綿健康被害救済部 部長、小林香委員。
埼玉医科大学国際医療センター 画像診断科 教授、酒井文和委員。
聖マリアンナ医科大学 予防医学教室 教授、高田礼子委員。
公益社団法人地域医療振興協会 横須賀市立うわまち病院 副病院長、三浦溥太郎委員。
独立行政法人環境再生保全機構 石綿健康被害救済部 顧問医師、森永謙二委員。
なお、公立学校協会組合関東中央病院 臨床検査科病理科部長の岡輝明委員、社団法人日本医師会 常任理事の石川広巳委員及び独立行政法人労働者健康福祉機構岡山労災病院 副院長の岸本卓巳委員は、ご予定のため、遅れてご出席されます。また、特定非営利活動法人地域がん登録全国協議会の三上春夫委員は、本日はご欠席でございます。
○事務局(資料確認)
次に配付資料の確認をいたします。お手元の資料をご確認下さい。
資料1 中皮腫登録に関する検討会委員名簿。
資料2 第1回中皮腫登録に関する検討会座席表。
資料3 中皮腫登録事業について。
資料4 中皮腫登録事業に係るこれまでの検討作業。
資料5 中皮腫登録事業に関する検討事項。
資料6 諸外国における中皮腫登録の状況について。
資料7 既に認定された中皮腫症例の整理について(中間報告)。
資料8-1 中皮腫登録事業に係る登録シート(案)。
資料8-2 中皮腫登録事業に係る登録シート(案)に関する判定小委員会委員の意見概要。
資料8-3 中皮腫登録事業に係る登録シート(案)の試行的運用について。
最後に、参考資料1として、平成25年度重点予算事業の資料をご用意しております。
それでは、本日の議事に移らせていただきます。座長は事前にご相談させていただいた通り、聖マリアンナ医科大学 予防医学教室教授、高田礼子委員にお願いしております。以下の議事進行は、座長の高田委員にお願いいたします。

議題(1)中皮腫登録に係るこれまでの検討作業

○高田座長
まず、中皮腫登録に係るこれまでの検討作業についてのご説明を環境省からお願いします。
○環境省(清水主査) (資料3~5について説明)
資料3は、中皮腫登録事業の概要でございます。平成23年6月に中央環境審議会から、中皮腫について、救済制度の中で環境再生保全機構に集まる治療内容や生存期間の情報を活用しながら調査研究を行い、その結果を広く情報提供することについて検討すべきといった二次答申が出されました。これを踏まえて、本事業については、治療法や診断精度の向上、発症動向の把握、推計への活用を図ることを目的として、中皮腫罹患患者等についてのデータベース作成、登録された情報の解析、解析結果の情報提供及び過去の症例の整理等の事業を行うことを想定しております。
今後の進め方としては、中皮腫登録に関して本検討会を立ち上げ、平成24年度内を目途に、どのような情報登録をするか、また申請時にどのような対応を行うか検討を行った後、平成25年度からの登録を開始することとしております。
資料3の2ページ目は将来的なイメージ図でございます。救済制度において認定の申請が出された場合、環境省に、医学的判定のため、年齢、職業、ばく露歴、病理標本、画像等に関する情報が集まってまいります。これらの情報を環境再生保全機構にあるデータベースに入力、登録することを想定しています。登録された情報の解析結果を広く一般に情報提供することで、治療法や診断精度の向上などに役立てていきたいと考えております。得られた情報の一部についても、難しいとは思いますが、ホームページ上で公表することなども検討したいと思っております。
資料4は二次答申を受けて、これまで環境省が中皮腫登録に向けて進めてきた経緯を説明したものでございます。二次答申を踏まえて、昨年11月にフランスの中皮腫登録事業を視察し、今年度の4月には、中皮腫登録の検討方針について専門家の方々からご意見を伺いました。また、25年度からの登録開始に向けて、今年8月には本事業を重点項目として位置づけて概算要求を行ったところでございます。参考資料1にも概算要求の説明がございますので、適宜ご参照下さい。
7~9月にかけては、実際の登録にあたっては判定業務を行っている石綿健康被害判定小委員会等にご協力をいただく可能性もあることから、委員の方々に、どのような情報を登録するか、また登録のためのフォーマット(登録シート)についてご意見をいただき、案を作成いたしました。また、9月には登録シート(案)を用いて、過去に認定された中皮腫症例を整理してデータ化しています。こちらは後ほど実際に作業を担当された井内委員からご説明いただくことになっております。さらに、10~11月にかけては、登録シート(案)を用いて、判定小委員会の審査分科会で試行的な運用を行っており、この結果は後ほど資料8-1としてご説明いたします。そして、11月にはオーストラリアにおける中皮腫登録事業を参考のため視察しております。
資料5は、本検討会で検討していただきたい事項を整理したものでございます。まず1点目としては、登録項目、すなわち中皮腫に関してどのような情報を登録するか、登録シート(案)などをもとにご議論いただければと思います。2点目は登録シートの運用方法ですが、実際にどのような方がどの部分を担当して記入するか、この役割分担などについて、でございます。3点目は、申請時の対応でございます。こちらは、申請時からHEの病理標本が提出されれば迅速な救済に資するとともに、同時に中皮腫登録にも役立つことになるのではないかといったようなご指摘を以前からいただいております。
○高田座長
資料5の検討事項については後ほどご議論いただきますが、資料3、4を中心にしてご質問はございますか。
それでは、議事の(2)「中皮腫登録の実施に向けた検討」に移り、諸外国における中皮腫登録の状況について、事務局よりご説明をお願いします。
○事務局
資料6についてご説明いたします。
まず、オーストラリアにおける中皮腫登録制度の導入経緯についてご説明いたします。
オーストラリア中皮腫登録制度は、2010年7月1日以降に診断された中皮腫の全ての新症例について情報を登録する制度であり、2011年1月1日に運営が開始されました。本制度は、これまでオーストラリア労働安全衛生委員会が運営を行っていましたが、旧オーストラリア中皮腫登録制度を中止して、新たに連邦政府機関のオーストラリア労働安全局がニューサウスウェールズ州のがん研究所に運営を委託したものでございます。
新たな制度の導入の経緯としては、1998年に、新しく州及び特別地域のプライバシー法が成立した後、州のがん登録制度から、それまで任意で行われていた中皮腫登録制度への新症例の届出が減少いたしました。その結果として、中皮腫の罹患率が以前の数字を劇的に下回ることになり、石綿ばく露情報の報告も新症例の50%以下まで落ち込んでしまいました。そこで、当時のオーストラリア労働安全衛生委員会は、2005年より中皮腫登録制度を一時中止することとし、データが不完全な状態であったため、中皮腫登録に関する報告書の発行も2004年に中止としました。また、これまでの旧登録制度自体も2007年12月に休止状態となりました。
なお、オーストラリアでは、中皮腫を含むがんの全新規症例を州及び特別地域のがん登録制度に報告する義務があって、これらのデータは、オーストラリア健康福祉研究所が運営している全国がん統計情報センターが全国規模で収集しています。しかし、この地域がん登録制度では、過去の石綿ばく露に関する情報は収集していませんでした。
新たな中皮腫登録制度の導入にあたっては、そもそも中皮腫登録制度の運営を継続すべきかどうかに焦点が置かれ、次のような点が検討されました。まず、中皮腫の新規症例数については、全国がん統計情報センターにより、地域がん登録制度を通じて中皮腫による死亡者数はきちんとしたデータが収集されていたという事実がございました。石綿ばく露と中皮腫の関連性は既に十分証明されていて、オーストラリアでは2003年に石綿使用が全面禁止されていました。また、中皮腫登録制度を運営するためのノウハウを持っている組織がなかったということが論点となりました。このような理由から、中皮腫と診断された患者さんから、30年以上前の石綿ばく露に関する情報を収集するために、中皮腫登録制度の運営を続けた場合の費用効果に疑問が持たれました。
一方で、次のような点も指摘されました。まず、石綿は既に禁止されていましたが、いまだにオーストラリアの建築環境には大量の石綿が残っているという点でございます。これには1980年代前半に建てられた多くの住宅が含まれていて、例えば、石綿セメントシートやヒーターの内部の石綿の絶縁体など、住宅内のさまざまな製品に石綿が使用されていました。そのため、ビルのメンテナンス作業員や配管工、電気技師などの作業員は、いまだに石綿にさらされている可能性が高いということでございます。
さらに指摘された点として、中皮腫症例の「第3の波」についても議論になりました。この「第3の波」というのは、職業的ばく露ではなくて、環境や自宅の修繕などによる家庭内ばく露を原因として中皮腫を発症した方々のことです。女性の中皮腫症例数が徐々にオーストラリアで増加していたという事実も、こうした問題を裏づけていました。また、オーストラリア国内でも、石綿対策に関する政策論議が行われていて、その中には、建築物から全ての石綿を完全に除去すべきだという議論もございました。
このような議論の結果、中皮腫発症の原因となっている石綿ばく露が現在も続いているかどうかという点をきちんと把握するために、中皮腫登録制度は続けるべきであるという結論に達しました。さらに、2009年にメルボルンで中皮腫の専門家を含む中皮腫にかかわる利害関係者の方々を一堂に集めてフォーラムを開催し、中皮腫及びこれに関連する石綿ばく露の情報収集の最善策について協議がなされました。このフォーラムでは、最善策として、既存の州及び特別地域のがん登録制度を利用して中皮腫症例を義務的に報告させて、これと併せて、同意を得た患者から職歴及び石綿ばく露の情報を収集するという方法が推奨されました。
そこで2009年の中ごろには、オーストラリア労働安全局がいくつかの組織に制度運用の見積りをとって、その結果としてニューサウスウェールズ州のがん研究所が率いるコンソーシアムと制度運営についての3年間の契約を結んだという経緯でございます。 
次に、オーストリアにおける新制度の改善点と目的についてご説明いたします。
オーストラリアの新たな制度における旧制度の問題点の改善として、2点が挙げられています。1点目として、旧制度では中皮腫の通知は任意であったため、新規症例数が実際の数より少ないということが判明しておりました。新たな制度では、地域がん登録制度に対する中皮腫の報告は義務になったため、より正確な中皮腫の新規症例数を把握できることになりました。
2点目は、新制度では、石綿ばく露についてより詳細な情報を集めている点でございます。旧制度では、治療にあたった医師が職歴と石綿ばく露の情報を収集していたため、登録票が提出されても、石綿ばく露に関する情報は非常に限られていました。新制度では、職歴に関するアンケートを患者に対して実施し、その後、その患者が就いていた仕事の内容に沿ったインタビューを行います。また、患者に対し、職業ばく露以外のばく露についても質問をするという点がこれまでの制度との変更点でございます。
新制度の目的としては、資料6の3ページにあるように、「石綿ばく露と中皮腫の正確な関連性を理解する」、「中皮腫を引き起こし得る石綿ばく露の性質とレベルをより理解する」、「中皮腫を引き起こしかねない他のばく露の可能性を可能な限り特定する」ことなどが挙げられております。
データ収集のプロセスについてご説明いたします。
今申し上げたように、中皮腫登録制度では、アンケートやインタビューによって石綿ばく露の情報を収集している。その流れが4ページの図1.1である。まず、中皮腫の症例に関する届出は、州のがん登録制度から提供されています。中皮腫登録の記録については、優先的に可能な限り早く処理をしてデータ化をするということになっています。
また、中皮腫症例の届出が地域がん登録制度になされた後、地域のがん登録制度から患者の臨床医に連絡をとって、その患者が中皮腫登録制度の一連の適格基準に合致するかどうか、また患者に対して石綿ばく露について連絡をとってもよいかどうかを確認し、その後、州の地域のがん登録制度のほうから患者さんに連絡を行うという流れになります。
情報の流れとは別に、患者さんに中皮腫登録にデータを登録する同意をとる手続については、各州で倫理規則が異なるため、その手続も州ごとに異なる形になっております。ビクトリア州やタスマニア州、またニューサウスウェールズ州や首都特別地域、西オーストラリア州などについては、3~4週間程度医師から返信がなかった場合は、同意とみなして患者に連絡をとるという“消極的な同意”(opt-out)の制度を導入しています。
5ページは石綿ばく露の情報の収集方法についてご説明しております。石綿ばく露の情報は、同意のあった中皮腫の患者から郵送のアンケートと電話インタビューによって収集いたします(図1.2)。郵送アンケートでは、患者にこれまでの居住や学校、職業履歴を記載してもらうよう依頼し、家族の中皮腫罹患率についても質問いたします。
患者の石綿に関する情報は職業総合データベースばく露評価システムと呼ばれるオンラインのばく露の評価ツールがありまして、そのシステムを使って評価しています。また、電話インタビューについては、まず、その第1段階として行った患者への郵送アンケートへの回答結果をもとに、その患者の石綿ばく露の可能性をさらに評価するために、個別に電話でインタビューを行います。インタビューの質問事項は、アンケート結果に基づき、患者に合わせて調整しているとのことでございます。
5~6ページにかけては現在の登録データの分析状況でございます。2011年4月に始まったばかりの制度であるため、現時点でまだ分析は進んでおりませんが、アンケートに回答していただいた中皮腫患者の100名のうち87名の方に電話インタビュー回答していただき、その結果として、最もばく露の可能性の高い職種としては、建設及び建設業、続いて電気工事業であるということでした。また、非職業ばく露については、家のリフォーム等の作業や車のメンテナンスを通じて、ばく露があったということでした。
6ページにはオーストラリアにおける中皮腫の現在の状況を示しております。中皮腫の新規症例数としては、2008年は661件、年齢で標準化した中皮腫の新規発症率は、人口10万人当たり2.9人でございました。なお、先月11月にオーストラリアでヒアリング調査を実施しておりますので、参考として、8ページ以降に調査結果の概要を添付しております。
次に、フランスにおける中皮腫サーベイランスプログラムの概要についてご説明いたします。
フランスにおける中皮腫サーベイランスプログラムは、1998年から厚生労働省健康局の依頼により、職業ばく露による中皮腫のモニタリングを目的として開始されたものでございます。フランスの全100県のうち全人口の3分の1にあたる人口の多い23県が本プログラムを導入しています。
プログラム運営の必要資金は全て国から出ており、運営主体は公衆衛生監視研究所でございます。本プログラムの目的は、フランスにおける石綿健康被害の状況の調査及びフランスにおける中皮腫の被害の状況・罹患率を調査することであり、基本的には職業ばく露による中皮腫の推移、職業別・業種別の罹患率リスクを研究しております。
実施方法ですが、フランスの人口の3分の1に相当する県を選定して、アンケート調査を通じて情報を収集しています。アンケートでは、職歴以外にも生まれてから現在に至るまでの居住地を記載してもらい、職業以外のばく露があったかどうかも併せて調査しています。
また、登録にかかわるプライバシーの問題については、1978年に制定された情報自由法に基づいて、保健分野での個人情報の管理を厳密に行っています。そのため、患者の承諾を得てから本プログラムにデータを提供しています。データベースに入力する段階で、個人が特定されるようなつながりがなくなるような仕組みになっているとのことでございます。
17ページは最近の状況についてでございますが、2009年には、フランスの人口の30%にあたる1,800万人、22県がプログラムに参加しておりました。2008年12月1日時点で1998年~2006年の間に登録された中皮腫の発症件数は、1,947件でした。これらのうち、男性の90%、女性の40%が職業ばく露であったと分析されております。
また、フランスにおいては、2011年1月に6地域において、パイロット的に義務的な報告制度が導入されました。その結果が順調であったため、今年の1月に法律に基づき、フランス全土での新規の中皮腫症例について義務的な報告制度が導入されました。この義務的報告制度では、全ての部位における中皮腫症例を対象として、中皮腫の診断を行った病理医か臨床医によって、所定の書式を用いて迅速に地域の衛生局に報告を行うこととなっております。
この報告制度の目的としては、サーベイランスプログラムでは胸膜中皮腫の報告でございますが、部位にかかわらず中皮腫発症のモニタリングを強化するということ、また、女性や50歳以下の男性の状況に焦点を置いて、知見を向上させることが掲げられております。
以上でございます。
○井内委員
どうも詳細な報告、ありがとうございました。オーストラリアの登録制度のことを十分知らないので、幾つか教えてください。
日本で言うと、俗に地域がん登録と言っている制度をうまく使っているというか、州単位あるいは特別区、その単位から全部がん登録の情報を吸い上げて、中皮腫だという人をまず同定するというか、そこから調査を始めるということですね。
そういうことが日本で可能なのかどうかということは非常に問題になるとは思うのですが、正確を期すためにはそのほうがいいと思います。例えば日本で言うと、それぞれの地域がん登録というのは倫理委員会というのがあって、データをいただくことはある程度、法的には問題なかろうということで今、動いていますけれども、それを利用するということについてはかなり厳しい縛りがあって、それぞれの倫理委員会で審査を厳密にやっていますね。それも目的がはっきりしていること、期間がどれぐらいかというようなことでやっているわけですが、このオーストラリアは患者さんの同意に関しては、ドクターが消極的同意みたいなものでやっているということなのですが、登録資料そのものを提供するということに関しても倫理的判断というのはどうなのでしょうか。それは法律で決められているわけではないですね。
○事務局
オーストラリアで中皮腫登録制度を導入するにあたって、患者さんの同意に関しては、各州の倫理委員会において倫理的な承認を得てから、中皮腫登録制度を通じて個人情報を収集かつ利用することができるという手続を踏んでおります。この制度を導入するまでに各州の倫理委員会で議論や手続があったため、検討開始から導入までかなり時間がかかったと聞いております。
○井内委員
つまり、それは各州の倫理委員会では、審理の結果は全てオーケーが出たということなのでしょうか。オーケーという意味は、先ほど私が質問したように、要はがん登録制度を運用している立場からはこの利用はオーケーだと。しかし、患者さんの同意というのは、実はがん登録制度というのは不十分ですね。あなたががんですよと、登録してもいいですか、いけませんか、まず胃がんであろうと大腸がんであろうと全部本当は聞かなければいけないのだけれども、それをやることは非常にがん全体の把握の精度を落とすということで、しないわけですね。つまり、法的に個人の特定のある人ががんであるかないかを見るのではなくて、公衆利益のために登録するのだということで、がん登録というのは個人情報保護法には抵触しないという判断で今は動いているわけでしょう。
だから、患者さんの同意というのは、後でやっておられますね。お医者さんを通じて登録していいかどうか、しかも、それはばく露歴のほうを丁寧に知るための同意ですね。要は、もう一回整理すると、各州におけるがん登録制度の倫理審査はきちんとされていて、それは全部オーケーがとれたと理解していいのですか。
○事務局
明確なお答えになるかわからないのですが、資料6の10ページに、現地ヒアリング調査で中皮腫登録制度に関する質問をした際の回答がございます。「新たな制度における過去の問題点の改善」の「[1]中皮腫症例の通知」のところで、中皮腫登録制度の運営にあたり、各州及び各区域の倫理委員会から倫理的承認を得て情報を利用できるようにしたという回答をいただいております。
○井内委員
日本でどうするかはまた次の検討問題だと思いますが、各県単位で地域がん登録というのをやっていますね。ですから、ある意味では全ての県に対してそういう倫理委員会があるわけで、もしこれと同じようなことをやるとしたら、全部了承をとっていかなければいけないという大変な手続を控えているという感じですね。
2つ目の質問は、2011年1月から動いているから、正直言ってどんなデータになっているかという解析は全くできていないと理解していいですか。
○事務局
第1回の報告書が2012年9月に発行されております。ただ、ヒアリングしたときに、まだ今年度についてはデータを一般化することには問題があるだろうというご意見はいただきました。報告書自体は公表されていて、インターネットでも入手は可能でございます。
○井内委員
わかりました。ありがとうございます。
○高田座長
ほかにございますか。森永先生は、何か追加でコメントはございませんか。
○森永委員
今の個人情報の問題は、要するに地域がん登録は、別に個人の個別の患者さんの同意を得なくても登録できるわけですけれども、地域がん登録では個人の患者さんにアクセスすることが禁じられていますね。ですけれども、中皮腫登録は、患者さんのアクセス、許諾を得てばく露歴を聞かなければならないのでその手続が要るということで、この2州、3州については消極的な同意でやろうという話になっていると聞いたということでございます。
今回の中皮腫登録事業と、今、御説明があった中皮腫登録制度やサーベイランス制度とまた異なるものです。つまり、今回やっている中皮腫登録事業というのは、ポピュレーションベースの話ではないですね。誤解しないほうがいいのではないかなと思います。
○井内委員
そのとおりやるという意味ではなくて、どういう考えで動かしているかということを確認したかっただけです。このとおりできるかどうかは全く未知ですし。
○森永委員
中皮腫登録事業のときはそうですね。関係のない話ですねということを言いたいだけです。今回はポピュレーションベースの話ではないからということを言っているわけです。
○高田座長
ありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。
では続いて井内委員に、「石綿救済法における中皮腫認定症例の整理」についてのご説明をお願いいたします。
○井内委員
それでは、お手元の資料7と8をご覧いただきたいと思います。
資料7に書いてございますように、中皮腫登録事業等をどのように構築していくか、特にどのようなデータを集めるかということについてのパイロットスタディをやってみようということで、平成22年度と23年度に、中皮腫であるということで医療費の給付に係る認定を受けた症例、正確に言うと1,030例、ですから、1年で500例ちょっとということになるでしょうが、発生が今1,000例ちょっとですから、環境省で見ている環境ばく露が50%程度とすると、妥当な数ではないかなと考えられるデータでございます。
何をしたかといいますと、10月の第1週目の土日だったと思いますが、病理医が5名と臨床及び画像診断医が5名、環境省に集まりまして、その1,030例の医学的資料、すなわち判定小委員会あるいは部会にかかりました申請時の医学的資料、いわゆる審査してほしいということでドクターがお書きになった患者さんの情報です。判定小委員会では、実際にプレパラートを見たり、画像を見たりしておりますけれども、そのレビューはできませんので、議事録を参照することでそのときにどのような写真を見たか、どのような病理標本を見てどういう判断をしたかという資料をもとに、一例一例ワークシートに記入していったということでございます。
そのワークシートが資料8-1にございますが、基本情報のところは、既に記入を事務的にしていただいたと思います。臨床情報のところから、臨床医がそれぞれ発生部位、確定診断日、発見契機、治療について記入していただいた。石綿ばく露歴も可及的に記入していただいた。
画像所見は大変難しかったと思いますけれども、今日ご同席されている酒井先生を中心に、このような形で少し判断をいただいて記入いただいたということであります。
裏面を見ていただくと、病理所見のほうは組織診と細胞診に分けてございます。細胞診しかないものは細胞診というところ、両方あるものは両方チェックしたと思います。
採取部位、採取方法、組織型、判定に用いた資料となっておりますが、実は判定に用いた資料はどういう意味かといいますと、部会では第1回目のスクリーニングをやるときに、医療機関が申請されました材料にどう書いてあるかということで、確からしさが担保されれば認定ということになっているわけであります。少し所見に問題があるなと思えば、資料の提出を求める、すなわち病理標本の提出あるいは免疫組織化学的染色をやった標本を求めて小委員会に上げる、ないしは分科会でもう一度検討するということをやるわけでありまして、どういうレベルで診断したか、何に基づいて診断したか、1、2と分けたということでございます。
総合判定というのは、確からしさということで5段階に分けています。現在、判定小委員会でも5段階の最終的な判定をしておりますが、5というのがdefiniteである、1というのはdefinitely not、その間を分けている。実際は3以上が認定をされていると理解しております。
細胞診も同じようなことで、特に判定に用いた資料は、免疫細胞化学的染色が含まれているかどうか、あるいは医療機関から出された資料だけでやったか、それとも分科会・小委員会でもう一度判断をし直したかというようなところが問題だと思います。
最終的な総合判定という形で抽出して確からしさを判定している。実は病理担当委員と臨床側の担当委員が別々に作業するということで、最終的には7のところまでは十分に議論をしなかったと思いますが、恐らくこれは事務的に病理の所見と臨床の所見を総合して判断していただいたのだと思います。
それのサマリーが資料7の2ページ、この表はわかりにくいので、サーモグラフで見ていただいたほうがよろしいかと思います。部位別ではどうか。1,030例がここに分類してございますが、938例が胸膜、92%である等々ございます。
2つ目が性別で、男性が78%である。
3つ目が申請時の年齢ということになると、50代が13%、60代が36%、70代が35%という割合でございました。
4ページ、石綿ばく露の類型別ということで、これは申請時の所見が主でございますので、どこまで正確かというのは問題があるかとは思いますが、ばく露に関して職業ばく露なのか、家庭内なのか、立入りなのか、環境ばく露か、不明かというようなカテゴリーで一生懸命中身を読んで評価していただいたということです。
3に書いてある中皮腫発見の契機というのは、そこに書いてある臨床的なデータの評価から出ております。
5ページ目の発見時の症状、治療内容は、全数がまだ1,030になっておりませんが、恐らくこれは下の方が非常にばらばらだったというようなこともあって、100%まだ記載ができていない、そういう意味で中間報告になっていると思います。
6ページに画像の総合判定が書いてございます。一番上の図が、画像の総合判定にはdefiniteというのがございません。probable、possible、probably not、つまり、画像ではいつもそれが議論になるのでありますが、これがdefiniteの中皮腫であるとか絶対違うとかということは不可能であるという判断のもとに、この3段階になっているかと思います。
一方、病理のほうでは、definiteというのは81%ですから、かなりのパーセンテージを占めておりまして、どちらかというと病理で決めていっているという傾向がこれでわかるかと思います。最終的に画像と病理を踏まえた総合判定というのは、判定小委員会ではその場では議論しておりますが、過去の症例のレビューにおいてはそこまで議論はしておりません。
7ページは組織型と予後ということで大変興味深いデータが出ているとは思いますが、残念ながら組織型というのは、医療機関から提出された資料、つまりペーパーだけで判断していますので、果たして肉腫型であるとか二相型であるとかという診断が正しいかどうかということには多少の疑問が残ります。
ですので、後で議論になるかと思いますが、HE標本を1枚出していただければ、もう一度同じ目で見ることはできるかなと思います。しかし、傾向としては上皮型が平均値348日で一番長くて、肉腫型が185日と短い。線維形成型は少し良い。二相型はどちらかというと上皮型に近い。実際、今までの論文ですと、二相型は肉腫型に近いのではないかと思いますので、この辺が必ずしも全国の病理診断が同じ目で見られていない可能性もあるということは想像されます。
この資料についての説明は以上です。
○高田座長
中皮腫登録の実施に向けた議論については後ほどまとめて行いますので、まず、井内委員のただいまの御説明について、ご質問等ございましたらお願いいたします。
○三浦委員
実は私のところに全然相談がなかったものですから、ここでちょっとクレームを言わせていただきます。
この2年、3年間は、小委員会の場でディスカッションがあったものは全部最終的に確認して登録するようにしています。ですから、それをご参照いただいた方が多分正確なものがもう一回出てくる。要するに、認定チェックシートをチェックしたときに、組織型は何ですかというのを私自身も先生方によくお聞きしますけれども、それがほとんど残っているはずですので、その分は正確にしていただければと思います。
○井内委員
部会でこれを中皮腫とすると言ったものが結構たくさんございますね。問題なければ中身を余り議論しないで通していますね。そういうのを不確定かもしれないと言っているわけです。ですから、小委員会にかかった例が何パーセントなのかというのは、22、23で出してみなければいけないのかもしれません。
○三浦委員
そうですね。
○高田座長
ありがとうございます。ほかはございますか。
○環境省(神ノ田室長)
作業をしてみて、やりにくいところとかお気づきの点があれば教えていただきたいと思います。
○井内委員
やはりペーパーワークになりましたので、実際に判定小委員会などでやっていることは、実際の画像を見ながら、実際の病理標本を見ながら議論ができるわけですが、それができないということはまず最大の欠点です。そのことによって、やっていることの確からしさというのが、かなりマイナス方向に動いている可能性があるのではないかなと思います。
あとの作業自身はかなりスピード感を持ってできましたので、これぐらいの資料ですと、整理するのにそんなに苦労はしなかったと思います。これはどういう項目をチェックするかということについて事前の議論がありまして、例えば病理などで言いますと、いろんな免疫染色の種類を書こうではないかとか、それの陽性度を書こうではないかという意見もあったのですが、それは大変時間がかかることであるし、またその精度については染色の方法とか評価の仕方によって随分違いますので、そういうのは思い切って落としていますので、それほどもめる部分ではないかなと思います。
岡先生も作業されているので、何かあればどうぞ。
○岡委員
特に付け加えることはないのですけれども、感想程度のことを申しますと、この間やった作業は、過去のものを整理するということであって、今後は一例一例が審査された段階で登録されていくという形をとるべきだろうと思いますから、これまでのことについてはいろいろと不自由な面もあったと思いますけれども、今後は、審査される、そして結論が出た時点で一定の登録が行われるというふうにリンクしてやっていけば、それほどの不自由さはないだろうと思います。
先ほど三浦先生がおっしゃったような点も、そうなれば十分解決していく。ただ、問題は書類審査だけのものというのと、例えば画像も見た、組織も見たというものの重みづけあるいは例えばそれに印をつけていくという作業は必要でしょう。将来は2種類のものを分けて討論する可能性が出てくるということは、一応今のうちに印づけをしておきませんと後から印をつけると大変なことになってしまうので、事前にしておいたほうがいいだろうという感想を持っております。
○井内委員
画像の方を審査された酒井先生の感想は。
○酒井委員
細かいことを言い出せば病理と一緒で、全部書かないとデータには本当はならないですけれども、どれだけエンロールしやすいようにするのか、どこを落とすのか、どれだけ入れるのかという制度の問題がありますから、ここはトレードオフの関係で選ばなければいけないだろうと思います。
病理でdefiniteの中皮腫と言われたら、画像診断医は何も言う意見はないので中皮腫になるので、そうすると画像を見ていないで判断することはあり得ることだと思いますので、データを入れるのかどうかという問題も出てくると思います。ですので、その辺は病理と一緒の悩みがあるというのは事実だと思います。
実は、これをつくるときにはMRも入れるとかPETも入れるとかいろいろ言ったのですけれども、やはりいろいろやっていただくのにトライアルは簡単なほうがよろしいでしょうということで、こういう形になったと思います。
○森永委員
この資料8-1で、要するに書類審査でオーケーになっているというのはどれを見ればわかるのですか。
○岡委員
今はわからないのだと思います。(小委員会のものと分科会のものを)一緒に扱っておりますので。
○森永委員
そうですか。では、これからやるものはわかるようにしてほしいと思います。
○岡委員
そうすべきだと私は思っております。
○森永委員
この資料8-1は、今後のものですか。それとも今、井内委員が発表した、過去のデータをまとめたときのシートなのですか、どちらなのですか。
○岡委員
恐らくパイロットスタディのための資料と思います。
○森永委員
ありがとうございました。
○三浦委員
「判定に用いた資料」の欄に医療機関の申請資料と分科会・小委検鏡標本とあるので、そこのチェックでわかるのではないか。
○井内委員
現状、この2年間のものについて判定しようと思えばおっしゃるとおりで、そこを見ればわかる。医療機関提出資料とだけチェックしてあるものは、要は書面で書いてあることだけ100%信用して診断しているということです。ですから、それをもっとわかりやすくするために、岡委員の提案は、別の項目を1つ加えたらいいのではないか。これはあくまで我々が作業をしてみようというたたき台、パイロットスタディの資料ですから、これをブラッシュアップしていけばと理解しております。
○高田座長
それでは、資料8の登録シート(案)について、環境省からご説明をお願いします。
○環境省(清水主査)
まずは、右上に資料8-1と打たれました「中皮腫登録事業に係る登録シート(案)」をご参照ください。こちらは先ほど説明しました判定小委の先生方から御意見をいただいて作成した登録シート(案)になります。
項目としては、臨床情報、ばく露歴、画像所見、病理所見などから成っております。また、ばく露歴については、機構において認定者に対して実施しているばく露状況調査アンケートなどを今後は入力するといったことも1つの選択肢としてはあり得るといった指摘もありました。
こちらについては、かなり中身が技術的な部分になっておりますので、適宜御参照ください。なお、先ほど一部、審議の中で御質問のありました「実際に標本を見たかどうか」につきましては、裏面の病理所見になりますが、医療機関申請資料とありますのは、基本的には組織検査報告書、細胞診検査報告書等をもとに判定されたものになります。
2の分科会・小委検鏡標本といいますのは、実際に書類審査のみでは判定ができなかったということで、先方の医療機関にHEまたは免疫染色の標本等を求めて、それを実際に委員の先生方に検鏡していただいた案件とさせていただいております。
1枚おめくりいただいて、資料8-2の説明に移らせていただきます。
こちらは石綿健康被害判定小委員会からいただいた意見のサマリーとなっております。多数ありますので、幾つか例を挙げさせていただきます。登録シートの目的については、広く国民や一般の医療機関に情報発信することを目的とすべきといった意見がありました。
また、登録対象につきましては、まずは他制度における認定症例についても登録する際にはさまざまな課題があるため、時間をかけて検討すべき、まずは第一歩が救済制度で認定された症例の登録から開始すべきといった意見がありました。
入力項目につきましては、中皮腫について過去多くの項目を入力してデータベース化しようとした研究があったが、余りにも多くの項目を入力しようとしたため、うまくいなかった過去の事例なども参考にすべきといったご意見を賜りました。
個別の入力項目についてですが、石綿へのばく露歴については、その有無を入力すべきですとか、ここに記載されているようなさまざまなご意見をいただきました。
資料8-3の説明に移らせていただきます。こちらは先ほど説明しました資料8-1について、資料8-1登録シート(案)を試行的に石綿健康被害判定小委員会審査分科会で運用した結果の説明資料となっております。都合3回の分科会において試行的な運用をしました。3回全ての審議案件を試行したわけではなく、認定案件の約12件について実施させていただきました。
その際、分科会からさまざまな意見が寄せられておりまして、そちらをまとめております。内容としましては、かなり技術的な部分ですとか事務的な字句的な部分もありますので詳細な説明は割愛させていただきますが、中には腫瘍性漿膜肥厚と腫瘍と判断できない肥厚を見極めるための所見のとり方に対するアトラス集、事例集のようなものが必要であるといった意見もありました。
また、そのほかには、私も審査に参加しておりましたが、かなり時間がかかるといった意見が複数の方々から寄せられておりました。具体的には、9例で試したところ約1時間かかったのですが、従来どおりの29例で同様の1時間で審議可能でしたので、分科会の委員からは負担等をぜひとも考慮していただきたいといったご意見が寄せられておりました。
資料8の説明は以上でございます。
○高田座長
それでは、一通り資料の説明が終わりましたので、ここから先は資料5の検討項目に沿ってご議論をお願いしたいと思います。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、検討事項の1.でございますけれども、登録の項目についてということで、登録シートの内容等につきまして、ご意見ございましたらお願いいたします。
○森永委員
資料8-1のところ、登録シートの判定に用いた資料は、分科会と小委員会で分けた方がいいかなと思うのですけれども、どうでしょうか。
○岸本委員
分科会と小委員会に分けると、また小委員会の仕事量が増えるので、分科会の先生方も専門家が多いので、今の案で私はいいと思うのです。2回に分けて行うと小委員会がまた昔どおりになるのではないかと思うのですが、酒井委員、どうでしょうか。
○酒井委員
小委員会と分科会が割れた例だったら最終的に必要になるかもしれません。最終判断はそこでしているわけですので、1本でよろしいのではないかと思うのです。
○岸本委員
私も1本でいいと思います。一応分科会が診断したデータを見ながらやるわけですから、そこで割れてどうしても違うといったところだけチェックすればいいのではないですか。
○高田座長
三浦委員、お願いします。
○三浦委員
ずっとお願いしていて、いまだに実現していないのが、小委員会と分科会の先生方の目合わせです。毎回室長が替わる度にお願いして、毎回行いますと言って、次にやりましょうというときになると大体消滅してしまい、替わられてしまうというのがずっと続いていましたので、ぜひこれは目合わせをしてからでないとこれに入れないと思います。来年度からスタートするのであれば、この1~3月のうちに数回目合わせをやったほうがいいと思います。
○岸本委員
目合わせをやろうと分科会で言っていたのは、例の線維化の話であるが、中皮腫登録にはこれはないので、中皮腫に対して目合わせがそれほど要ると思わない。つまり、何をもって線維化というのかが問題になるということを、分科会の先生方から色々と言われたのだが、中皮腫に関してそれほど目合わせが要るとは思わない。酒井委員、どう思われますか。
○酒井委員
腹膜病変もそうだが、胸膜病変など特殊なものに関しては、私たち画像診断医の意見はそう割れないと思う。確かに石綿肺に関しては、石綿肺そのものが何かわからないからかなり割れるが、中皮腫に関してはさほど大きなぶれはないと思っている。
小委員会では非常に議論が紛糾するが、あれはもめた症例を見ているので、現実には分科会レベルでほとんど了承されている症例もある。中皮腫そのものの画像に関しては、余りもめないと思っている。ティピカル(典型的)なものはもちろんある。
○三浦委員
現実は、資料の中の分科会の先生のご意見にもあるように、腫瘍性漿膜肥厚と腫瘍性と診断できない漿膜肥厚の区別や、びまん性胸膜肥厚とかなり著しい胸膜プラークなどで先生方の意見が結構割れているのです。特に漿膜病変のとり方については、石綿肺の間質の線維化ということとは別個にやったほうがいいとは思います。
○高田座長
環境省の方からコメントございますか。
○環境省(清水主査)
こちらの分科会の先生方の意見を記載させていただアトラスが必要である」といった意見を提出された委員は1名のみでした。
○酒井委員
結局、中皮腫に関して画像診断は、今、井内先生からお話のあったとおり、probablyかdefiniteと到底言えるものではないのです。ですので、腫瘍性莢膜肥厚と書いてあるのは、括弧内に書いてあるように縦隔側胸膜の肥厚、不整胸膜肥厚、あとは厚いというのがもう一つありますけれども、この3つのうちどれかがあったときに我々はprobablyで腫瘍性病変であろうと考えて、それがないときに腫瘍性とは診断できない胸膜肥厚と判断しています。その点では、そんなに多くの人間はずれないと思います。
そこで、程度の問題になっていることでいちいち難しくなるのは、確かにアトラスがあった方が便利ですけれども、仮にいろんなところで出てくるガイドラインにアトラスをつけても典型例をつけるだけなので、どの程度実効が上がるかというのは、正直言ってなかなか難しいかなと。ガイドラインはみんなそうなので、こう書かざるを得ないですね。ですので、目合わせというのは確かに微妙な例はどう判断しましょうという話も、微妙な例は誰が見ても微妙な例、典型例は誰が見ても典型例という判断に多分なるのだと思います。
○岡委員
資料8-3の1ページ目、それぞれの項目が何を目的としているのかがよくわからないというご意見があるが、三浦委員のご提案とも絡むが、このことを始める前には一度全員で集まって、確認し合っていくということはぜひ必要だと思う。それがある意味での目合わせというか、言葉の内容についての共通の理解を得るという会になるでしょう。それなしにスタートすることはできないので、新しい委員も増えるだろうが、毎年度、必ず一度は確認しておくという作業をしていただきたい。そうしないと、正しい用語の運用にならないだろうと思います。
アトラスについては、今、酒井委員が言われたように無理だと思うので、皆が一緒に集まる席で、特に意見の割れた症例を数例選んで、もう一度議論して、どこが問題で、どういう点が議論になるのかということを共通の理解にしておくということが必要になるだろうと思います。
それと、先ほどの森永委員の意見に私は賛成なのです。登録シート案の「5 病理所見」の後に医療機関申請資料、分科会・小委検鏡標本とあるが、これが分科会のみの審査(もちろん小委員会でも追認はしているが)なのか、小委員会で議論したかどうかということについて、これだけではわからない。小委員会で議論したものとそれ以外というのは、後々の資料としてはあったほうがいいのではないかという感想を持っております。
○井内委員
病理に関して、その標本を実際に見たか、見ないかというのは、分科会が実際に標本を医療機関に求めて提出された場合は、全部小委員会の席上に出ていますね。我々がいつも2時間も3時間もかけてあれを全部見ているわけで、そこで問題だという症例はいつも手を挙げてこれは議論しましょうとやっているから、ここで言う検鏡というのは、分科会で見たものは小委員会も見ているという判断で私はいいと思います。この1行というのは申請資料だけでやったか、実際に標本を鏡検して判断したかということで十分いけるかなと思います。事務的にはどうですか。
○環境省(清水主査)
お言葉が足りなくて大変申し訳なかったのですが、資料8-1の2ページの「7 総合判定」というところをご参照いただきたいのですが、7の[3]判定組織の「1:審査分科会」、「2:判定小委員会」とあります。例えば分科会のみで議論された場合は分科会にチェックがつきますが、実際に標本が出ていたら病理所見の部分では分科会・小委検鏡標本にチェックをつけているので、データベース化はされているのではないかと思います。
○岸本委員
今の岡委員のお話で私もいいのではないかなと思いました。始めるときに皆さんが共通の認識で始めるということさえきちっとやっておけばとてもいいと思います。確かにアトラスだとか難しい症例というのは、難しい症例はこれだということで事前にとっておかなければいけない。そういうことができたら目合わせをしたほうがいいと思いますけれども、なかなか実際にそれを執り行うことは難しいこともあろうかと思いますので、共通の認識でやるということで私はいいと思います。なるべく登録する項目は簡便な登録が一番だろうと思います。これを複雑にすればするだけ作業に時間がかかって長続きはしないように思いますので、今ぐらいのデータ入力だけでいいのではないかなと思います。
○酒井委員
結局、わからない症例は誰が見てもわからないので、本当に私たちがリサーチ目的にするのだったら、グレーディングして、本当は「わからない」というのを作らないといけないのですが、それを作ったらまた混乱するので作らなかったのです。
MRIは、やっている症例は比較的少ない。CTにMRIの情報が加えられるということは中皮腫ではほとんどない。PETは、やっている症例はもっと少ない。PETは、SUVmaxが測定してあれば集積の程度を数値で客観的に記載できますが、画像をもらっただけではわかりません。この際、入力項目を減らすという意味では、将来は増えるかもしれませんが、今の時点ではあまり情報が加わらないというのが正直なところです。それとPETとPET-CTはほとんど同じですので、分けて区別する必要はありません。
○井内委員
病理についてコメントだけさせてください。分科会と小委員会の議論が、ディスクレパンシーがあるかないかということについてなのですが、比較的分科会は意見が分かれたら全部小委員会を上げてくるという傾向にあると思いますので、最終的には本当に分科会でもめるというのは小委員会でももめるのです。
我々とすると、以前はなかったのですが、5、4、3、2、1のグレードをつけてもらいましたので、我々がいつも4人ぐらい集まりますけれども、意見が分かれたときはpossibleぐらいになる。そのdefiniteかdefinitely notかというゼロ、イチの判断というのはあまりしていない。ですから、これは認定作業ということになれば、先ほども言いましたように3以上はいいでしょうという話になっているわけですから、比較的最近は楽です。
以前はどちらか決めてくれと言われて非常に悩むことがございましたけれども、今の段階では分科会の方では、そう無理をしないで挙げてくるという傾向がありますので、そう意見の対立とか、先ほどおっしゃったように目合わせをしなければいけないというレベルではないと思います。非常に難しい症例は、私は中皮腫パネルでどんどん出しましょうと言って一応チェックをさせてもらって出してもらったりしておりますので、先ほど酒井先生が言われたような大変難しい症例については、また別のサイエンティフィックな場所で議論するということで解決はできるのではないかなと思います。
○高田座長
ありがとうございました。登録シート、8-1の内容については他によろしいでしょうか。三浦委員、お願いします。
○三浦委員
登録シートの使い方で、分科会でもめたところというのは、具体的にどこなのですか。
○環境省(清水主査)
分科会では大きなもめごとはありませんでした。資料8-3、提出された意見をそのまま掲載しております。あくまでも参考例でございます。1人の委員が複数回意見を提出された場合でも、その意見は全て掲載しております。ただし、全体的に皆さんが共有されていました認識は、記入に非常に時間がかかってしまう。このため、従来比べてかなり審議に時間を要してしまう、という事が分科会の皆様方のほぼ共通した認識でありました。それを踏まえた上でシートを何とかしていただきたいということでした。
ただ、今回は初めてシートを試行的に運用したところがありましたので、かなり慣れておらず、言葉の意味を1個1個説明したりといった場合もございました。今後、回数を重ねていけば幾分か改善されるかといったような可能性はあるかと思います。
○岡委員
今の話は継続的に行うために非常に大事なことで、我々もパイロットスタディをやったとき、最初は1例に10分以上かけていた。最後のころになると、早いものでは1~2分でつけられるように、慣れの問題であったと思います。よって、全員で一度集まってどういうことをやるのかということを確認することは非常に重要だと思います。慣れてくれば項目が頭に入ってきて、審議している途中からつけるべきところがわかってまいります。
もう一つ、さらに検討をしてほしいと思うのは、審議が終わった時点で、すでにチェックがついているようなシステムが作れないかということです。これはもちろん委員が責任を持つべきことですが、チェックをつけることは事務的な作業でもあるので、そういう支援があると非常に早くなるだろうと思います。これは検討事項ということになります。
○三浦委員
先ほど森永委員が言ったことに戻るのですけれども、分科会で時間がかかる。ずっと同じように永遠と悩んでいても仕方がないので、分科会である程度の判断があって、これは判定小委のほうに出してというのは結構ありますね。そういう項目をつけておいて、分科会案で上に上がってきたときにそのとおりでいいですかといってオーケーだったら、それはそのまま使うというような形。ですから、分科会と小委員会で、一応分科会の方は案としておけば、違うものもどれが違ったかというのも記録に残りますね。それもフィードバックするときに非常に大事な点だと思います。今までフィードバックする資料が残っていないので、なかなかやりにくかったというのもあります。
○環境省(清水主査)
判定が難しい案件については、今は分科会では記入をしておりません。このような案件は、小委員会に上げて、そこで委員の先生方にご記入していただくこととなっております。先ほど岡委員から、事務的に一任できる部分というご指摘がございましたが、環境省石綿健康被害対策室と環境再生保全機構でも、事務的に記入できる部分については可能な限りお手伝いしながら実施したいと思います。よろしくお願いします。
○高田座長
それでは、登録の項目の資料8-1については、大体委員の方からご意見いただきましたので必要な修正をしていただくということでお願いいたします。
もう議論が少し先に進んでおりますけれども、登録シートの運用方法を今の事前の準備のことも含めまして、さらに追加でご意見等ございましたらお願いいたします。
○酒井委員
少なくとも基本的に中皮腫と判断したものを入力するわけですね。だから、判定分科会ではつかないものは記入できないというのが原則ですか。
○環境省(清水主査)
ご指摘のとおりになります。分科会で判定出来ない場合は、小委員会の委員の先生方にご記入していただくということを考えております。
○酒井委員
これはエクセルに転記することになると思うので、そのときに検討のステップがわかるのであればよいのかもしれない。何を目的として入れるか、何に使うかということがわかった上でないと、入れたデータが無駄になるので、中皮腫の登録に使うのであれば、中皮腫と認定された症例を入れるということでいいのではないでしょうか。
○井内委員
先ほどの資料7の6ページの円グラフに「未記入」というのがありますね。これは我々の作業の過程で記入が漏れているのですか。これはどういうことだったのか教えていただけますか。
○環境省(清水主査)
これは組織診の総合判定となっております。組織診が出ておらず、細胞診のみで確定している症例もあります。そのようなケースでは組織診の項目は当然未記入の扱いになります。
○井内委員
組織のところは101もあるからおかしいなと思っていたのですが、そういう整理をしないといけませんね。そういうことでいいのですか。
○井内委員
実際にこのシートで5人で作業をしているときに、両方あるときにはどうしようかとか、その時々の判断がちょっとずれている可能性があります。それをルールとしてどう扱うかを決めれば未記入がなくなりますね。
○岸本委員
今のお話に関連して、(3)の中皮腫発見の契機のところで「他疾患治療」が2人で0%になっているが、私1人だけでも20件ほどこれに記入した覚えがあるのに、どうして2人になっているのか、もう一度確認してほしい。
○環境省(清水主査
今回の資料はあくまで中間報告による暫定値なので、再度精査いたします。
○岸本委員
よろしくお願いします。
○高田座長
そのほか運用方法につきましては何かご意見ございますか。
環境省の方もよろしいですか。あとは環境再生保全機構の方はいかがでしょうか。
○小林委員
先ほど事務的にできるところは協力してもらえないかというお話もあったので、そういう点は何なりとやっていきたいと思います。
○高田座長
ありがとうございました。あとは分科会等で実際に運用については、もう少し改善すべきところはさらに検討を重ねていただき、小委員会の方でも検討していただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
資料5の「3.申請時の対応について」ということで、病理標本の提出に関しまして、こちらは井内委員、何かございますか。
○井内委員
フランスの登録制度のご紹介があったのですが、フランスでは、フランソワ・ガラトサレという先生を中心に、中皮腫パネルという、議論のためのパネルではない判定のためのパネルでやっているのです。去年発表されたのを聞いていると、10数パーセントの元々の病院の診断の誤りがあるというデータを出しています。結局、標本を見る、見ないというのは非常に重要なファクターで、10%程度の誤差が出るということでした。誤差は避けられないとは言いながらも、判定作業をしている人間からすれば、できるだけそれを適正にしたいという思いがあります。
よって、HE染色標本を見せていただき、代表的な所見だけでもバーチャルスライド化して残すことをやれば、証拠に残る。つまり、何を見てこれを中皮腫と言ったか言わないかという説明責任としても十分果たせるのではないかと思うので、ぜひ登録に入れてはどうか。すなわちHE標本は最低1枚提出してもらうということ。
免疫染色に関しては数が多いので、この標本を出してくださいと言うのは無理だと思います。つまり、免疫染色というのは1枚しかないわけですが、HE染色はブロックさえあれば作成可能です。2枚作っていただいておけばいいわけで、その手間から考えてもHE染色を出していただくというのは可能だと思っていますが、どうでしょうか。
○高田座長
その点に関しては、森永委員、三浦委員、いかがでしょうか。
○三浦委員
是非やっていただきたいと思います。今回の登録とは直接は関係ないのですけれども、最初からHE標本が出ていれば、新たに標本を請求して持ってきてもらい、今度は免染をするなどという数ヶ月が短縮できる。迅速な診断、判断、判定にも結びつくことなので、是非やっていただけたらと思います。
○森永委員
このことはスタート当初はそうなっていなかったので、通達で変えることになるのでしょうか。その対応は行政としてはどうなりますか。私は当初からHE染色の提出を求めていましたが、井内委員はそれには反対していたと思いますが。
○環境省(神ノ田室長)
迅速に審査ができるという意味では、申請者にもメリットがありますので、そこら辺の事情をよくご説明して、必ず出すようにという言い方はできないと思いますが、迅速な審査に資するために可能な限り提出していただきたいというお願いはできると思います。早く判定し、フィードバックできるというメリットもありますし、また中皮腫登録という意味でも、非常に内容の濃い登録ができると思います。
○森永委員
申請書類の書式のところに、できれば出してくださいという文章をつけ加えるだけで行政的には別に問題ないという判断ですか。
○環境省(神ノ田室長)
あくまでもお願いベースの話になるかと思いますけれども、審査の結果で病理診断をしたり研究した上でないと判断できないということになれば、判断のために出してくださいというやり方でこれまでやってきたのだと思います。今後は、最初のうちに、早めに審査するために可能であれば出してくださいという言い方になるのかと思います。
○環境省(清水主査)
病理標本を要請する具体的な方法については、また追って検討したいと思います。
○井内委員
最初にオーストラリアの報告のときにお聞きしたのだが、このような事業を始めることに関する倫理的な判断に関してはよいのでしょうか。つまり、これをやることが、当然、患者さんの情報等については秘匿するということで可能だとは思いますが、こういう事業が行われるのだということに関しての合意形成みたいなものはどの程度とる必要があるのか、いやとらなくていいと思っておられるのか、そこはどうなのでしょうか。
○環境省(清水主査)
救済小委員会では、患者団体の代表の方も入っていらっしゃいまして、公開の場で検討していただいております。その中で、中皮腫登録事業が必要であるということを指摘いただいておりますので、中皮腫登録事業の必要性については、概ねここの場で検討していることも含めて、合意いただいていると考えております。
○井内委員
私は最初の頃に発言していたときに、判定小委員会での判定、つまり認定作業をするときに、「中皮腫であったらこれが登録されることに同意する」という一札をとったほうがいいのではないかという意見を私は述べたことがあるのですが、その点については不必要ですか。
○環境省(清水主査)
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律では、基本的には個人情報の利用目的以外の目的のために利用してはならないという記載があります。ただし、例外事項は幾つかありまして、例外事項に該当する場合はこの限りでないという規定があります。例外事項の中に、専ら学術研究に用いる場合には活用できるといったような規定がありますので、そちらで運用出来るかもと考えております。
○岡委員 
確認ですが、調査研究の例外規定は、目的外使用には当たらないという理解でよろしいですね。つまり、この資料は法に照らして患者を認定するというための資料であるということで。
○環境省(清水主査)
使用は可能では、と考えております。
○岡委員
今言われたような調査研究が例外事項であるということが明確であれば、目的外使用には当たらないと思いますけれども、申請書の一番下に、これが登録されて、社会のために有効な資料になる、ということが書かれていればもちろん問題ないと思いますが、現時点では書かれていないと思います。そうなると、目的外使用であることは明らかだろうと思いますので、その点は確認をしていただいた方がいいと思います。
○環境省(清水主査)
正確な回答は次回に提出したいと思いますが、原則的には、集まったデータについて判定小委員会のデータであっても匿名化すれば、調査研究に用いることは特段問題がないのではないかも、と考えています。
○酒井委員 
皆が心配しているのは、私たちが通常の倫理委員会にかけたりするときには、かなり厳しい縛りがかかり、色々なことを聞かれて、目的外に流用したら倫理規定違反になるので他には使えないのだと言われていますので、そういうことはこの事業では大丈夫なのかとお伺いしているのです。
○環境省(清水主査)
行政機関の保有する個人情報保護法に照らし合わせて、先ほどのような解釈を述べさせていただきました。
○石川委員
私は個人情報の方をやっているのですけれども、基本的にはそういうことであっても、患者さんには許諾は得た方がいいです。どういうふうに分析で発表する可能性があるとか、そういうことはちゃんとやったほうがいいです。それをやらずに、今言った一言でやってしまうと後で問題が出てきますので。
これから来年の秋ぐらいにまた別の医療に関する個人情報の個別法が出てくると思うのですけれども、そこではもっと厳しくなりますので、先生方が言われる、これが第二次活用ではないかというようなご心配は、とにかく最初の段階できちんと患者さんのところに許諾を得ているということが条件になります。そこは間違いないので、疾病の申請に伴って、その疾病の研究だとかそういうのに使うからいいという議論は成り立たないと思います。
○岡委員
石川先生にお伺いしますが、先ほど申し上げたように、申請の時点の書類の中に使用の許諾が1行入っている場合には、可能と考えてよいのでしょうか。
○石川委員
もちろん、先ほど事務局のほうにもありましたように、最低限個人情報のわかるようなことがないようにするという注意がまず1つです。
もう一つ、この分析だとかそういったものに当たって、世の中に広く使われる可能性があるということだとか、そういったことについて許諾するということをちゃんととれば、そこは今の段階でも十分許されるし、次の個人情報のところでも許される可能性があると思います。
○高田座長
それでは、大体議論は尽くされたと思いますが、その他、全体を通じてご質問、ご意見などあればお願いします。
○岡委員
議論を蒸し返すようで申し訳ないのですが、先ほど井内委員、森永委員からご指摘のあった標本の件ですが、環境省のご回答、現在の見解では、可能ならば出してほしいと、それが審査に非常に有用だからということだと思うのですけれども、審査に必要な色々な書類の中の1つと同格に捉えることは現在では難しいでしょうか。つまり、病理学的な検査がしてあれば、それは審査に最低限必要なものの1つと考えることは難しいですか。
○環境省(清水主査)
過去、平成18年に救済制度が始まってから6年間、報告書のみでも認定としている事実があります。その点との整合性も検討しなくてはいけないと考えています。
○岡委員
是非ご検討いただきたい。
○高田座長
具体的に標本提出が必要になっている割合はわかりますか。
○環境省(清水主査)
今すぐお答えは難しいのですが、漠然としたイメージでは半分ぐらいかなといったような印象があります。正確な数字ではないのですが。
○高田座長
その必要性も精査していただき、是非ご検討いただければと思います。迅速な審査ということは重要なことなので。
○井内委員
確かにスタートのときは書面でもいいと思っていたのですが、現実には審査を6~7年やってみて、やはり組織型や良悪性についても問題があって、標本の必要性がわかってきたというのもあります。当初そうだったから現状どおりというよりは、ワンステップ上げて、それが上皮型か、肉腫型か、二相型かということを、統一的な目で見る必要もあるみたいなことは加えられませんでしょうか。そのためにHE染色標本が要るのだということです。
この登録事業の趣旨に、治療方法の改善、改良に資するためにというようなことが書いてあります。当然、以前のものよりは少し質の高いものを求めているのだという考え方もできなくはないと私自身は思います。そこは検討していただきたい。
○高田座長
ほかはご議論、ご意見等はございますか。全体的なことを通じまして、この登録事業のことにつきましても、ご意見はございますか。よろしいでしょうか。
長時間にわたってご議論いただきまして、ありがとうございました。またお気づきの点がございましたら、事務局にメールでご連絡いただければと思います。また環境省におかれましては、本日いただいたご意見、また追加でご意見等ございましたら、そこを踏まえて作業を進めていただければと思います。
それでは、こちらの進行は以上で、事務局にお返しいただきます。
○事務局
これをもって、本日予定した議事は全て終了いたしました。本日の検討内容に関して、追加のご意見や、後日お気づきの点があれば、私ども事務局までご連絡下さい。
それでは、第1回検討会を終了いたします。今後ともご指導のほどをよろしくお願いいたします。

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